愛子の失恋


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愛子の失恋

小雪のちらつく空、愛子は一人で佇んでいた。
大きな道の反対側には、寄り添うように歩く眞一郎と比呂美の姿が見える。
二人は次第に愛子の視界から遠ざかっていく。視界がぼやけて、涙が溢れそう
になり、顔を上げて空を見上げた。とても苦しそうな表情。

「愛ちゃん…」
三代吉が近づいて、話しかけてきた。
「来ないで!」
愛子は、そちらを振り向きもせずに叫ぶように言う。
「今は私に近づかないで!」
「…」
「もし…近づいたら…一生口もきかないから!…」
「…」
「だから…今は…今はっ!…」
「…」
三代吉は何も言えずに、立ち尽くしていた。傷ついた愛子を慰めたい。しかし、
それでは失恋の痛手を利用していることにもなってしまう。想い人が苦しんで
いるのを見ていられない。何か力になりたい。
(今はオレじゃあ…、ダメなんだろうなぁ…)
愛子の望むことでなければ意味がないことを悟り、三代吉自身が傷ついたよう
な顔で、ゆっくりとその場を離れていった…

(ごめん…)
愛子は涙で歪む空を見ながら、心の中で謝った。
(眞一郎…眞一郎…眞一郎ぉ…)
離れていく姿が目に浮かぶ。自分が隣を歩きたかった、隣で笑っていたかった、
隣であの笑顔を見たかった、隣で…誰よりも近くで。自分だけに見せる笑顔が
欲しかった…自分だけに…。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

今川焼き屋の店に裏口から入る愛子の頭や肩には、雪が積もっていた。店内に
入り暖房をつけ、椅子に座る。カウンターを見ると、そこに眞一郎が座ってい
る風景が目に浮かんできた。

「はははっ。そんなことないってー」
目に浮かぶのは、いつもの眞一郎の笑顔。あっという間に涙が溢れ出してきた。
「眞一郎…ううっ…ううっ…うううっ…」
大粒の涙が愛子の頬を伝う。
「ううううぅ…」
しばらく愛子は、一人であることを噛み締めるように泣いていた。

泣き止んだ後、携帯電話がメール着信を知らせていた。
「あれ?誰からだろう?…」
画面には"眞一郎"の文字が見えた。
「えっ!?うそっ!?」
慌てて開きメールを表示する。



Fm:眞一郎
Sub:<無題> 
そうなれればって思った
こともある
でも、やっぱり愛ちゃん
は幼馴染で、大好きで、
とても大切なお姉ちゃん


好きでいたい、大切にし
たい
だから、謝らないよ
眞一郎




愛子はメールを読んで、今度は大声で号泣した。
「あああああああぁっ!…」

眞一郎に気持ちは伝わっていた。自分を"女"として見てくれて、考えてくれた。
それでも、越えられない…、届かない…、隣に並ぶことはできない…。
愛子の心にとても大きな穴ができていた。この世でたった一人しか埋めること
ができない、そこに居て、笑って欲しかった…
声が枯れるまで…、涙が尽きるまで…、泣いて、泣いて愛子は寂しさと戦った。

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

どのぐらい時間が経ったのだろうか、外はすっかり暗くなっている。力が抜け
たようにして座っていたが、突然ある考えがひらめいた。

(そうかっ!諦めるなんて、まだ早いよ!)
愛子…
(比呂美ちゃんとずっとそのままって、ないかもしれないじゃん!)
愛子ってば…

元気良く立ち上がり、こう叫んだ。

「これからっ!これからだよっ!」

END

-あとがき-
どうですか?泣いたわりには、ちっとも諦めていない愛ちゃんは?
愛ちゃんがアタックしても、比呂美を見ている限りは眞一郎が
なびくことは無いでしょうが…

8話の涙のシーンから連想したSSです。比呂美END後としています。
テーマは、眞一郎の気持ちです。短いメールしかないですけど。
この続きは考えてありますが、書くかどうかは未定…。

眞一郎からのメールに一番悩みました。どうかなぁ。
もう一つ何かインパクトが必要だと思うんです。
"ごめん"としない方がいいと思ったのですが、どうでしょう?
これが眞一郎にとって、都合が良く見えるかもしれませんが、違う意図で書い
たつもりです。
愛ちゃんから本気告白を受けると、眞一郎がかなり悩むと思うんです。
4話で見た二人のやりとりから考えたメールなんですが…、うーん。

ありがとうございました。
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