終業式イベント


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=比呂美が眞一郎と結ばれた後の話です。

終業式イベント


終業式が近づいたある日の朝、比呂美と眞一郎は相変わらず手を繋いで登校し
ていた。通り過ぎるクラスメイト達も慣れた風景なので、何も言わなくなった。
一人を除いて…
「おっはよ!」
挨拶をしながら比呂美の肩を、ぽんと叩いた。
「おはよう、朋与。今日は暖かいね?」
肩を叩かれた時から誰かわかっていたので、普通に話している。眞一郎も挨拶
をする。
「お、おはよう」
未だに朋与との会話に慣れていないというより、からかわれることが多いので、
ちょっと警戒気味だ。
「おはよ。そうだねー。雲が少ないから、日が差すからでしょ? でさー…」
眞一郎との挨拶は簡単に、朋与が比呂美と話し始めた。その後、教室までずっ
とそのままだった。
今日は平和な一日になりそうだ、眞一郎はそう感じていた。

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この日は終業式を前に、いくつかの決め事がHRで議題となっていた。
「はーい、次はパーティーの飾りつけでーす」
進級するとクラス分けが行われる。その前に教室で簡単なお別れ会のようなも
のが企画されていた。全員強制的に参加させられ、準備も行う。
「はい、立候補する人、いる?」
クラス委員が次々と役割を決めていた。最後の一つとなる。
「えーっと、後は先生へのプレゼントか…? 何がいいか、アイデアあるー?」
見回しても誰も反応しない。
「困ったなー…、ん? 誰だ? 寝てる奴?」
一人だけ机に伏せて寝ている不届き者がいた。めざとく発見して、割り当てて
しまう。
「はい、先生へのプレゼントは仲上君に決定。あと一人の担当は…」
と、眞一郎が寝ている間に役割が決められてしまう。その瞬間を逃さずに動く
人物がいた。
「はいっ! 私がやります!」
比呂美が元気よく手を上げて立候補した。それまで何食わぬ顔をして、それま
での振り分けを回避していて、何も担当していなかった。
(まただよ…)
クラス全員が心の中で溜息をつく。これまでも、何かイベント毎に比呂美と眞
一郎は常に一緒であり、別々になったことはない。どちらかというと、片方が
それ程積極的ではなく、片方が常に寄り添っている、という感じだ。
しかし、こう毎回連続となると、周りとしては疲れがたまる。クラス委員が他
の"空き要員"を探すが、黒板を見ると"問題の二人"以外は埋まっていた。
「はい…、仲上君と湯浅さんで決まり…」
力なく、"プレゼント"担当の横に名前が並んで書かれた。比呂美はにこにこし
ながらそれを見ている。眞一郎はまだ眠っていた。

二人に容赦ないツッコミを入れることができる唯一の人物がこう言った。
「また、だね…。諦めるか、見ないことにするしかないわね…」
朋与の独り言にも思える言葉に、教室のあちらこちらから溜息が漏れた。

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放課後、比呂美と眞一郎は掃除当番で教室にいた。
「でね? 私達が先生へのプレゼントの担当に決まったの」
「えーっ?、いつの間に?」
笑顔で言われたことでも、面倒そうな役割に困った声を出した。
「ずっと寝てたでしょ? 変な顔だったよー?」
「今日はあったかくてさー、つい…。って、変な顔だったか?」
「うん…、今思い出しても…、ぷぷっ…」
「起こしてくれればいいじゃないか」
簡単な役割を狙っていた眞一郎としては、比呂美に抗議したいところだった。
「だって、面白かったから…。あははっ」
「んん~?」
真剣な顔を作ってみたが、効果はない。しょうがないので、話題を変える。
「で? 何をプレゼントすればいいか、知ってるのか?」
「ぷぷっ…、はぁ、はぁ。…え? 知らないよ? 何でもいいみたいだけど…。
 それも考えなくちゃならないみたい」
ひとしきり笑い終わってから、答えたが何をプレゼントするのかは決まってい
ない。"二人で考える"ことができるので、相変わらず機嫌の良い比呂美。
「えー? それも決めなくちゃならないのかぁ…」
「いいじゃない。二人でがんばろう? ね?」
今度は眞一郎の顔を覗き込んでいる。

そんな様子に、朋与が冷たい言葉で言った。
「イチャイチャしてないで、さっさと掃除したら?」

二人分だけきっちり残された場所を、慌てて掃除した。

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その後、あっという間に終業式の前日となり、教室はパーティーの準備でにぎ
わっている。比呂美と眞一郎は隅の方で二人で作業していた。
「あっ! ちょっと、はみ出しちゃった…」
「ん? うーん…、何とかなる…か。ごまかすから、そのままでいいよ」
「ほんと? ありがとう♪」
「いいって」
「うん…」
と言っている間に見つめあう。仲良く椅子を並べて作業しているようだ。
「「「ごほん、ごほん」」」
慌しく作業しているはずなのに、そんな様子に邪魔が入った。
「あっ! あまり時間がないね…。がんばろう?」
「よし。じゃあ、席を入れ替えよう。今度はそっちをやるよ」
「うん…、お願いね♪」
「まかせとけって」
「うん…」
と、またもや作業が中断しそうになると、
「「「ごほん、ごほん」」」
邪魔が入る。

「だからー! 諦めるか、見ないことにするしかないって言ったじゃない!」
朋与の虚しい声があがる。

「ここはどうすればいいの?」
「ん? こうやって…、こうして…」
と、手を添えて指導が始まると、
「「「ごほん、ごほん」」」
やっぱり邪魔が入る。
二人は担任の先生へのプレゼントを"絵"に決めて、最後の仕上げにかかってい
た。イチャイチャお絵かきタイムは既に長い時間を経過している。
目立たないように教室の隅で作業しているのだが、どうしても視線を集めてし
まっていた。それもそのはず、
「おっ! その辺りはいい感じだな…」
「ほんとっ? うれしいなぁ♪」
等と、いちいち眞一郎が比呂美を褒めながら作業するため、少しずつ自然にイ
チャイチャが始まってしまうからだ。
朋与の言葉の通り"諦める"か"見ない"ように、全員が思っていたのだが…
「あっ…」
「あ…」
大きくも無い紙に二人が同時に筆を走らせる為、体の触れ合いが発生してその
度にリアクションを取る、どうしても気になってしまうのだ。今更担当を変え
るわけにもいかず、全員が我慢するしかない。しかし、
「あっ! また変になっちゃったぁ…」
「どれどれ? あー、これはちょっと大変かもな…」
「ごめんなさい…」
「いいって、何とかするから」
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫だって。心配すんな」
「ありがとう、眞一郎くん♪」
と、またもや始まりそうになる。無視しようとしても結果的に気になってしま
うので、全体の準備がちっとも進んでいない。その状態に陥ったとき、人には
偉そうにアドバイスしていた朋与が我慢の限界を超えてしまった。

「あーっ、もうっ!! 比呂美! こっち手伝いなさい!」
「えー? だって、私は…」
「いいから! 来なさいっ!!」
朋与の怒りの表情を見て、比呂美が後ろ髪を引かれるように立ち上がった。
「いいよ、あとは一人で何とかするから、手伝ってきなよ?」
「うん…」
「早く来なさい!」
見つめ合うタイミングと見るや、催促の声があがる。比呂美が慌てて行った。
「ひ~ろ~み~、ここがどこだかわかってんの~?」
朋与の説教が始まった。

結局、その後の説教が長引いて準備が進まなかった。

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終業式当日。
クラス全員が終業式なのにも関わらず早朝から登校して準備を終えた。
二人に罰を与えよう、そういう意見がパーティー開始早々で次々に出たが、こ
の言葉で静まってしまう。
「今日で終業式じゃん。新しいクラスで決めればいいだろ?」

誰一人として、比呂美と眞一郎が別々のクラスになるとは考えていないようだ。

END

-あとがき-
うーん、イチャイチャ成分が足りない、かなぁ?
本編のキャラではこんなことは有り得なさそうですけど。

ありがとうございました。






-おまけ-
=アパートに移り住んでから、眞一郎と付き合うことになった比呂美。
=夕飯を仲上で食べ、二人のことを報告すると何が起こるか?、です。
=まあ、名家にありがちなお話ってことで。
=あくまでも"おまけ"です。実はこっちが先にできていたりしてます。


思いがけない"贈り物"


今日は、比呂美が夕食を仲上家で食べた。その後、眞一郎が付き合うことを二
人で両親に報告すると、父から奇妙な返事が返ってくる。
「ん? そうか…、よかったな、二人とも。おめでとう」
父が言った意味がわからない、眞一郎は聞いてみる。
「よかった?」
比呂美もきょとんとしている。父が続ける。
「ああ、湯浅とは二人が結ばれればいい、と話していたこともあるからな…」
「「…」」
二人は初耳なので、黙るしかない。話の続きを待つ。
「元々、比呂美を引き取ったのも…、その…、なんだ…、許婚…のようなもの
 だからな。お前がいるのに、そういう意味も無く家には入れられん。
 二人ともとっくに承知している、とばかり思っていたが…」
そうならそうと言ってくれ、眞一郎は心の中で毒づいた。うっそぉ、比呂美も
同じような感想だ。

「それなら…、比呂美"さん"はここに戻ってきてもらわないと…」
いきなり"さん"付けで呼ばれ驚く比呂美は、眞一郎の母に聞く。
「えっ!? ど、どういうことですか?…」
「当たり前でしょう? しんちゃんをアパートに通わせるわけにはいきません
 からね。世間体というものがあります。
 どうせなら、ここに戻ってきなさい」
今のアパートへの引越しから、それ程月日は経っていない。その方が世間体を
考えたら良くないのでは…、と比呂美は思ったが、
「はぁ…」
と、あいまいな返事をするに留めた。眞一郎が口をはさむ。
「ちょっと! 勝手にそんなことを言われても…」
その言葉を無視して、父が横を向いた。
「ああ、そうだ。お前、"あれ"…、比呂美"さん"にやったらどうだ?」
混乱する二人にはわからないが、母に通じるらしい。
「"あれ"ですか? …早くないですか?」
母の返答もわからない。何が"早い"のだろうか…。
「同じことだろう? ここに戻ってくるわけだしな」
どうやら、比呂美の再引越しは決まったらしい。
「…」
母は黙っている。仲上家に戻ってくるように言ったのは、若い二人が暴走しな
いように"監視"するには近くにいた方がいいと思ったからで、そこまでは考え
ていなかった。しかし、父は続ける。
「持ってきなさい。いいプレゼントにもなる。亡くなった湯浅夫婦も喜ぶ。
 けじめをつけるのはもっと先になるだろうが、家の慣わしのようなものだ」
何かくれるらしいが、眞一郎にはまだわからない。
「…わかりました。いいんですね?」
渋々といった表情で確認すると、比呂美を一瞥してから奥の部屋に行った。

「な、何をプレゼントしてくれるんです?」
恐る恐る、眞一郎が聞いてみると、さらに意味不明な回答がくる。
「まあ、作ったのはお前の曽祖父になるがな…。古い物だが、しっかりした細
 工がしてある。母さんもしばらくの間付けていたものだ」
曽祖父、古い、母親も使っていた、これだけでは眞一郎はわからないが、隣に
座っている比呂美も同様だった。
「はい…、持ってきました。あなたから渡しますか?」
渋い表情の母が奥の方から帰ってきた。手には小さな古い箱が見える。
「そうだな、私から渡そう。眞一郎、これを比呂美"さん"に」
箱を受け取って中身を確認すると、そのまま息子に手渡した。
「何ですか? これ…、って! ええっ!?」
眞一郎は、箱に納められた"ある物"を見て、驚きの声をあげた。慌てて箱を閉
じる。
「どうしたの? 何が入っていたの? 見せて?」
比呂美が聞くと、目が合った眞一郎の顔が赤く染まっていく。箱を比呂美から
遠ざけた。代わりに母が答える。
「それは私が昔にもらったものよ。結婚前にね…」
今度は渋い表情ではなく、優しい目で比呂美を見ている。その言葉を聞いて、
赤い眞一郎の顔から"ある物"が想像できてしまった。
比呂美は、顔に体中の血液が集中してくような錯覚を覚え、体を硬直させた。

「眞一郎、そのくらいはわかっていただろう? 渡してあげなさい」
「しんちゃん…」
両親が追い討ちをかける。
(いや、こんなことになるなんて、想像できないって…)
眞一郎がもう一度こっそりと箱の中身を確認する。さっきと同じ、指輪が入っ
ていた。仲上家の家紋が見える。派手さは無いが丁寧な細工、安いものではな
いことを物語っていた。曽祖父は結構お洒落だった様だ。
「それはな、仲上に何代かに渡って受け継がれている、"嫁入りする娘"に家を
 継ぐ長男が贈るものだ。私も昔、母さんに贈った。今度はお前の番だ」
父が止めを刺した。両親しの視線を受けてから数十秒後、眞一郎が覚悟を決め
た。
「ひっ、比呂美…。てっ…てっ、左手…」
動揺しながら、横を向いて言う。指輪を掴んだ指先が震えていた。
「…う、うん」
耳まで赤い比呂美は、がくがく、といった感じで左手を差し出す。
比呂美の左手の薬指に、"曽祖父の代から受け継がれる指輪"が収まった。この
瞬間に"婚約者"となる。この家に住んでも只の同居人だの、ましてや同居して
いる恋人でもない。"将来の家族の一員"だ。
母が比呂美に向って言う。
「お義父さん、お義母さんって呼ぶのはまだ早いわよ…」
しかし、二人には聞こえていない。お互いに向き合ったままで俯いている。

まだ二人はお互いの想いを伝え合っただけ、何も始まっていない。友達も知ら
ない。なのに、どういう訳か"婚約"になっていた。
「ひっ、比呂美。それ…、学校にしていくなよ?」
プロポーズとかが先だろ?、じゃなくてその前にデートとか、ほら…、と考え
ながら、眞一郎が言った。
「う、うん…」
比呂美は俯いたまま、指輪を凝視している。聞こえているかどうかもあやしい。
とりあえず声に反応しただけだった。

だが、眞一郎の両親はこの一言を忘れなかった。
「比呂美"さん"、その指輪は子供が生まれるまで、外すんじゃないぞ」
父は当然のことだ、という態度で話す。
「そうね…、私も思い出すわね…」
母も同じ、頷いている。
「はあぁっ!?」
ガタン、とテーブルに身を乗り出して、眞一郎が今日一番の大きな声で叫ぶ。
「はい…」
しっかりとその言葉だけは聞いていた比呂美が頷く。

比呂美の世界が広がり、明るい場所に出る。

左手の薬指に、本当の幸せの始まりを実感していた。今までの事が頭をよぎる、
色んな選択が今の結果を導いた。しかし、恥じたり後悔する必要はないと思っ
ている。辛くて、寂しくて何度も泣いたが眞一郎を信じてよかった、そう感じ
た。その時、ぱしっ、と左手が握られる。
「ま、よろしく…な?」
照れくさそうな眞一郎の顔を見て、比呂美は我慢できなくなった。この手が自
分を暗い道から明るい場所に連れてきてくれたのだ。
「うっ…、うっ…」
涙が溢れてしまった、眞一郎の肩に額を付ける。この家で初めて流す種類の涙。
眞一郎の両親も優しい目で見ている。大体の事情は知っていたようだ。
ぽんぽん、掴んでいた手を離して、元気付けるように眞一郎が背中を軽く叩く。
「うわああぁん…」
この家で初めて声を上げて泣く。比呂美は眞一郎の胸でしばらく泣いてから、
「ありがとう…眞一郎くん…、私…、私…」
しかし、最後まで続かず、もう一度泣いた。

嬉しいときの涙は止まらない、そう思っていた。


-おまけのあとがき-
両親の暴走っぷりを描いてみました。
最後に比呂美を泣かせましたが、文章力が足りなくてすみません。これが限界。

終業式イベント、思いがけない"贈り物"のテーマは共通しています。
何かが終わって何かが始まる、です。

今度こそ、ありがとうございました。
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