比呂美の停学 前編 仲上家


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 true tears  SS第七弾 比呂美の停学 前編 仲上家

「俺も決めたから」

 停学中の比呂美には情報が不足する。
 朋与からのメールや電話だけでは、状況がわかりずらい。
 眞一郎と乃絵との姿を見て、比呂美は嫉妬しながら確認できた。
 昨晩、比呂美が眞一郎の部屋を訪れたことにより、ふたりの関係が変わりつつある。

 第十話の内容を予想するものではありません。
 与えられた情報から構成してみました。
 今後の展開は未定ですが、純との決別と眞一郎とのすれ違いは描きたいと思います。
 できるだけ明るい展開を心掛けてはいます。

 前作の続編です。
 true tears  SS第六弾 比呂美の眞一郎部屋訪問
「私がそうしたいだけだから」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4366.txt.html



 学校に行くのと同じ時間に起きる。
 登校する眞一郎くんと顔を合わせづらいけれど、
昨日のように私の部屋の前で、行ってきますと言われるだけでは物足りない。
 私は普段着に着替えて、居間に行く。
 おじさんとおばさんとの昨日の話し合いで、私の仲上家の手伝いは減らされることになった。
 特に朝食や弁当はおばさんが作ってくれるようになった。
 おばさんからの申し出で、とてもありがたかった。
 いつかは一緒に並んで食事の準備をしたいとは考えている。
 先に食事をしているおじさんとおばさんに挨拶をする。
 返事はいつもと変わらなかった。
 特におばさんには、昨晩に眞一郎くんの部屋から帰るのを見つかったために不安だった。
「おはよう」
 眞一郎くんが居間に来てくれた。
 三人の声を揃えて返した。
 私はそっと眞一郎くんのご飯をよそって渡してあげる。
 さすがに平常と同じ調子でだ。
 ほんの少しだけでも視線が合ったのが嬉しかった。
 眞一郎くんは味噌汁に口を付ける。
「眞一郎、比呂美にノートを見せてあげなさい」
 おじさんの提案に、私は口をぽっかりと開けてしまい、
眞一郎くんはお椀を落としそうになった。
 ふたりでおばさんを見て判断を待つ。
「比呂美の勉強を遅らせるわけにはいかないわ」
 誰とも目を合わせずに、少しの苛立ちを含めていた。
「昨日の時間割で今日に関係ないのは、古文と日本史だな。
 登校する前に渡す」
「古文は助かるわ。訳せなかったところがあるから」
「あの先生は早いから、聞き取れていないところがあるかもな」
「後で他の人にも借りるから」
「ひどいな」
 急に眞一郎くんと会話が弾んだので、すぐにやめて食事に取り掛かる。
 私のほうが先に食事を終えて自室に戻る。
 当然ながら、ごちそうさまの感謝をしてからだ。

 部屋の扉を開けると、眞一郎くんがノートを届けてくれた。
「それにしても父さんは急にこんなことを言い出したんだろうな」
「昨日、私が部屋に戻るとき、おばさんに見つかったからかも。
 ただ話をしていただけですと打ち明けたら、そうよねと背を向けられた。
 挨拶をすると、返してくれたけれどね」
 私の告白に眞一郎くんは苦渋を滲ましている。
「そんなことがあったのか……」
「私の軽はずみな行動で」
「別に構わないよ。いずれわかることだから」
「良かった……」
 私は安堵感に包まれている。
「俺も決めたから。乃絵と別れるって」
 私を直視する瞳には明確な意思が込められている。
「いいの? 本当に?」
 今の私がどういう表情をしているかはわからない。
 すべての封印を解いてしまっているので、隠すつもりはない。
 うまくゆきすぎて身体全体に熱を帯びてくる。
「できれば今日にでもと考えているが、どうなるかはわからない」
 眞一郎くんは照れくさそうに視線を逸らしていた。
 現段階でも達成できる可能性が低いのだ。
「待っているから、無理をしないでね。
 石動乃絵とは今後とも顔を合わせる機会があるから」
 私は否定的なことを口にせずにいた。
 期待できる眞一郎くんの台詞だけで充分だった。
「そろそろ行く」
「行ってらっしゃい」
 私はにこやかに送り出した。
 それから扉を閉めてもたれる。
 立ったまま身体を支えられない。
 今になって昨晩の眞一郎くんの部屋の前にいた緊迫感が甦ってくる。
 鼓動が激しくなり意識が朦朧とし始める。
 仲上家に来てから初めての好機だ。
 誰からも非難されない程度で、一気に揺るぎのない関係を築いておきたい。
 石動乃絵のような女の子が、私の夏祭りの思い出までに入ってくる悪夢を見たくない。
 気分を落ち着かせてから、机に向う。
 私は眞一郎くんの古文のノートを開いた。
 書かれてある最終ページの欄外の上には鉛筆で記入されていた。
『がんばれよ』
 たった五文字の言葉。
『がんばるから』
 私も六文字で返答した。
 何をかを特定できないけれど、すべてのことだろう。
 それから勉強しようとしても、切り替えができずにいた。

 三時になるとPCの作業場に行って、椅子に座る。
 それまでは学校にいるように勉強することになっている。
「いつものように、これお願いね」
 少し遅れて来たおばさんから伝票を手渡された。
「それとお互いの部屋の行き来くらいは認めるわ。
 私は何でもあの人に相談してから、比呂美に言うようにする。
 今までそうしてこなかったから、ひどいことになったかもしれないわね」
 かすかに目を細めて淡々と語る。
 本当におばさんの表情は読みにくい。
「おじさんにも昨日のことが伝わっているのですか?」
「そういうことになるわね。だからあのときは何も言わなかったのよ。
 家族なんだし、部屋の行き来くらいはあるわね」
 おばさんはかすかに家族を強調した。
 そうすることで眞一郎くんと私との仲を封じ込めるように。
「部屋の行き来だけでも認めてくださって、ありがたいです」
 軽く頭を下げた。
「あの人が認めたのだから、仕方がないでしょう」
 おばさんはすぐに去って行く。
 私はPCで帳簿を付けながら眞一郎くんを待っている。
 石動乃絵を振れるのかな?
 私は石動乃絵とあの逃避行の後から会っていない。
 朋与からのメールでは眞一郎くんの喧嘩を仲裁したのが石動乃絵ということ。
 高岡キャプテンによると、鶏小屋の近くに一人でいたこと。
 そのような断片的な情報しかない。
 私が一目だけでも見れたら石動乃絵の様子を探れる。
 さすがに朋与に頼むわけにもいかないし、歪曲されてしまうかもしれない。
 停学中でもっとも動揺させられるのが、石動乃絵の現状である。
 解除されてから、石動乃絵に何と声を掛けるべきなのかは、まだわからない。

               (続く)



 あとがき

 比呂美と眞一郎とのあのすれ違いの画像を見てしまうと、続きが書きたくなりました。
 あれは本当に何を意味しているのか、気になっています。
 恋愛に積極的になった比呂美が、ようやく眞一郎が振り向いてくれる状況になりました。
 眞一郎父はもとより、眞一郎母は夫に何でも相談するという方針にしました。
 これでふたりの子どもである眞一郎と比呂美が、どういう形であれ、絆を深めて欲しい。
 今後の予定では純との決別と眞一郎とのすれ違いを描きたいです。
 時間があれば眞一郎と乃絵も描きたいのですが、次の機会になるかもしれません。
 最後に前作では、あらすじにおいて停学なのに退学になっていたり、
前作のアドレスが誤っておりました。
 ご精読ありがとうございました。

 前作

 true tears  SS第一弾 踊り場の若人衆
ttp://www.katsakuri.sakura.ne.jp/src/up30957.txt.html

 true tears  SS第二弾   乃絵、襲来
「やっちゃった……」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4171.txt.html

 true tears  SS第三弾 純の真心の想像力 比呂美逃避行前編
「あんた、愛されているぜ、かなり」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4286.txt.html

 true tears  SS第四弾 眞一郎母の戸惑い 比呂美逃避行後編
「私なら十日あれば充分」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4308.txt.html

 true tears  SS第五弾 眞一郎父の愛娘 比呂美逃避行番外編
「それ、俺だけがやらねばならないのか?」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4336.txt.html

 true tears  SS第六弾 比呂美の眞一郎部屋訪問
「私がそうしたいだけだから」
ttp://www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4366.txt.html
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。