true tears (アニメ) まとめwiki
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true tears (アニメ) まとめwiki
ja
2010-05-12T23:54:25+09:00
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無題(ふしぎなおくすり)
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/553.html
「あれ?これなんだろう?」
首を傾げる比呂美の手には錠剤の入った小瓶
ラベルは貼っていない
「うーん・・・とりあえず・・・飲んでみようかなぁ。
あっ、もしかしたら眞一郎くんったら新しい・・・ふふっ可愛い。久しぶりだもんね」
まるで聖母のような比呂美の微笑み
「んっ・・・ごくっ」
「遅くなっちゃったなぁ。比呂美、待ってるかな」
こんこんとドアをノックする。
返事がない
「ひろみーー?」
「し・・・しんいちろうくぅーん」
「比呂美!?入るぞ!」
バン!と思いきりドアを開ける。
そこには・・・
「ひ、比呂美・・・?」
「し、しんいちろうくん・・・うっうえーーん」
眞一郎の足に泣きついてるのは比呂美
小さい。小学生くらいだろうか
そんな比呂美がいる。確かに比呂美だ
かわよい。眞一郎の脳みそはショートしている
「比呂美・・・なんで・・・?」
「だって・・・おくすり・・・おいてあったからぁ
しんいちろうくんの新しいびやくかとおもったの!
くる前に飲んでおけばいいのかなって・・・///」
眞一郎、暴走
「ひっ、ひろみぃっ!」
「きゃんっ」
その後は夜まで管理人の頭を悩ませましたとさ
~おしまい~
天国より比呂美の父母の会話
「ふふっ比呂美ったらもう・・・
眞一郎君も若いわね。血は争えないって奴かしら」
「ぐぬぅ・・・なかがみしんいちろう~我が愛娘に
なんてうらやま
(ギロリ)
「なんてうらや・・・うら・・・きれいな裏山だなぁあはは。ぐはっ・・・」
「あらおとうさん。いきなり気を失ってしまって可哀想に・・・いつもの発作かしら?
さっ病院に行きましょうか。」
「うっ・・・だれ・・・か・・・ぐはぁっ(チーン)」
~ホントにおしまい!~
いや電波だからきにしないで・・・
すまんちょっと修正いれた
連投すまそ
つかハズカシス
かぶってたらどうしよ・・・
2010-05-12T23:54:25+09:00
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比呂美が仲上家を出た日
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/552.html
このSSは、10話で眞一郎が比呂美に「俺、ちゃんとするから」と約束した後から、11話で眞一郎が比呂美の部屋を訪れる前の空白を補完する妄想SSです。
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目の前に、固く凍った残雪に所々覆われたアスファルトの道と岸壁が続いており、その先に真っ青な海が開けている。
そして、遙か上空では真っ青な空と白い雲がぐるぐる回っていた。
湯浅比呂美は、気が付くと、仲上眞一郎の上に倒れかかったまま、自分たちがが今どういう状態にあるのか、全く把握できないでいた。
何か、自分が自分でない、体がふわふわ浮遊しているような感覚。
比呂美には、自分の魂だけが何か、まるでテレビか映画の画面の奥の、およそ非現実の世界にいるように感じられた。
そればかりか、運搬トラックの助手席を飛び出してから今までの、ごく短い時間のできごとが、まるで遠い昔のできごとのようでもあり、永遠に訪れない遠い未来のできごとであるようにも思われた。
「比呂美・・・」
すぐ側で発せられた眞一郎の声が、彼女を現実に引き戻した。
「あ・・・」
その瞬間、ようやく彼女は自分たちが今現在どういう状態に置かれているのかを認識した。
「ごっ・・・ごめんなさい!!!」
比呂美は耳まで朱に染めると、ばね仕掛けのおもちゃのように、ぴょこんと眞一郎の上から飛び退いた。
(眞一郎くんとぴったり躰を密着させちゃった・・・)
心臓がドキドキ音を立てて、身体から飛び出しそうになる。
その後に、眞一郎がごそごそと体を起こす。
「怪我、なかった?」
「私は大丈夫。真一郎くんこそ、体のほう大丈夫?」
二人はぎこちなく言葉を交わしたきり、どちらも彫像のように固まってしまっていた。
そして、時間にしてほんの数分の間であったが、無限の長さにも思える空白が過ぎた後、背後でクラクションが2回鳴る音が聞こえる。
「あ・・・」
漸く我に返った眞一郎が顔を上げ音の元の方を向きやったが、比呂美はずっと顔を赤らめて俯いたまま、身じろぎ一つする気配がない。
それどころか、微かに身震いしながら、必死にこらえている彼女の表情が、横から目に突き刺さる。
「ヤバい・・・」
一瞬眞一郎は狼狽した。
今の比呂美は到底トラックに戻せる雰囲気ではない。
かといって、ここは往来の
2010-05-12T23:49:41+09:00
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ある日の比呂美・台風編7
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/551.html
次の日、台風一過の朝のこと。
眞一郎と比呂美は、先送りにした《現実》と対決していた。
二人で仲上家に向かう道すがら、眞一郎が情けない声で比呂美に耳打ちをする。
「やっぱり、あの作戦でいこう」
提案されているのは《朝起きたら天気が良くて散歩に……》とかいうアレの事だろうか?
比呂美は眞一郎の往生際の悪さを、鼻で笑って一蹴した。
この人は本当に……《彼女》の息子を何年やっているのだろう?
おばさんに、そんな小細工が通用する訳がないではないか。
「正直に謝りましょう。 大丈夫よ。 私たち、夕べは《何もなかった》んだから」
そうだ。 昨晩は何もしていない。 ただ、一緒に寝ただけなのだ。
…………
「あ、坊ちゃん、比呂美さん、おはようございます」
玄関先に辿り着くと、従業員の彼が満面の笑顔で出迎えてくれた。
いや……出迎える、という表現は語弊があるかもしれない。
彼は明らかに、意図を持って二人が来るのを《待ち構えていた》ように見える。
……少なくとも、比呂美はそう感じた。
「台風の後片付けか。 大変だなぁ」
少年の手にしている掃除道具を見て、眞一郎は気の毒そうに声を掛けたが、
それに対して返ってきた言葉は、「頑張ります」でも「任しといてください」でもなかった。
「はい、坊ちゃん。 よろしくお願いします!」
噛み合わない会話と、無理やり押し付けられた掃除道具に困惑する眞一郎を横目に、比呂美はひとり得心していた。
これはおじさんの命令に違いない。
そして、その推測は、従業員の少年が前掛のポケットから取り出したメモによって、裏づけられる事となる。
「オホンッ。 『眞一郎。 町内会の人たちを手伝って、通りの清掃をするように。 理由は言わんでも分かるな』」
軽い物真似を織り込んで、少年は《親方》から託された伝言を読み上げた。
それを聞いて引きつった眞一郎の顔は、まるでマンガかアニメのキャラクターみたいに見えて、思わず比呂美はプッと吹き出してしまう。
「ご愁傷様。 お掃除、頑張ってね」
笑いが収まらない比呂美の様子に、眞一郎は「何をのん気な」と溜息をついた。
「オヤジに全部バレてるってことはだなぁ……」
「おかえりなさい、眞ちゃん」
ガラッと音を立てて開いた玄関から、低
2010-03-28T04:42:53+09:00
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ある日の比呂美・台風編6
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/550.html
「…え……」
「だいじょうぶ。 ひろみちゃんには、ぼくがついてる」
聞き覚えのある…それでいて、とても懐かしいセリフが耳元で響く。
そうだ……昔……子供だったころ、自分は同じ言葉を確かに聞いた。
一緒に仲上の家に遊びに来た両親が、所用で先に帰宅してしまい、比呂美一人で夜を過ごす事となった…あの日。
台風が来るから一緒に寝ましょうと言ってくれたおばさんの気遣いを、生意気にも断った嵐の夜……
結局自分は、《世界の終わり》のような風の音に耐えられず、眞一郎に助けを求めたのだった。
『……こわいの……いっしょにねていい? しんいちろうくん』
べそをかきながら枕元に立つ自分を、眞一郎は今のセリフと共に迎え入れてくれた。
同じように……抱きしめてくれた…………
…………
「あのさ…… 反省、してるから」
比呂美の震えが治まるのを確認してから、眞一郎が謝罪の言葉を口にする。
先程までのことは、もうどうでもよくなっていた比呂美だったが、一応、眞一郎に合わせて意地悪を言ってみることにした。
「……なにが?」
「なにが?って…………全部、さ」
話を聞かずに携帯を切ったこと。 嵐の中に飛び出し、危険に身を晒したこと。 エッチな想像したこと。
今夜の罪状を、眞一郎は思いつく限りに羅列していく。
「えっと~ あとは……」
「あとは?」
男臭い胸元に鼻柱を擦りつけながら、比呂美は更に追い討ちをかけ、次の謝罪を促した。
そう…… まだ一番大事なことを謝ってもらっていない。
「…………」
「ん?」
ふと視線を感じ、埋めていた顔を上げてみると、じっとこちらを見つめる眞一郎と目が合った。
少し照れが混じっていた表情が、真摯なものへと変化していき、次の瞬間、唇から比呂美の求めていた言葉が生み出される。
「お前に…比呂美に、凄く心配かけたこと」
語尾に《か?》も《かな?》も付いてはいなかった。
これが今夜一番の失敗だと、眞一郎ははっきりと自覚したようである。
比呂美は胸の奥が充足感に満たされ、じんわりと身体の芯が温まっていくのを感じた。
さすが眞一郎だ。 私の一番大切な人だ…… と改めて思う。
顔全体を更に強く胸板に埋めながら呟いた「許す」という言葉は、眞一郎に届いただろうか?
2010-03-28T04:42:00+09:00
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ある日の比呂美・台風編5
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/549.html
(もう、何か言いなさいよ……)
床についてから約十分。 眞一郎が眠っていないのは分かっている。
背後でたまにモゾモゾと蠢く気配の主は、きっと自分と同じことを考えているに違いない。
…………このまま眠ったら、明日の朝、たぶん喧嘩になってしまう…………
仲上眞一郎と湯浅比呂美は、はっきり言って素直な性格とはいえない。
本心とは真逆の行動をとることなど、日常茶飯事なのだ。
最初のボタンを掛け違えれば、元通りに修復するには、かなりの時間を要してしまう。
比呂美はそれを、《過去の経験》から嫌と言うほど理解していた。
それに、こうなった経緯はどうあれ、《初めてのお泊り》には違いないのだ。
しかめっ面で睨み合う、なんて最悪の目覚めは、絶対に迎えたくない。
(何でもいいの。何か話してよ)
きっかけが欲しい。 そう比呂美は思った。
二人が素直に口を開くことが出来る…きっかけが……
…………
ドガアアアアアアァァァァァァン!!!!
「きゃああああああああッッッ!!!」
その凄まじい音が、台風により副次的に発生した落雷の音であることは分かっていた。
しかし、頭で分かっていても、思わず金切り声をあげて飛び起きてしまう……それが《女の子》というものだ。
「うおっ、凄ぇ音。 かなり近いな」
釣られて飛び起きた眞一郎が、これまた《男の子》らしい淡白な反応を見せる。
海岸の方に落ちたか?などと雷を楽しむような眞一郎の声に、ゴロゴロという地鳴りのような音が重なった。
その直後に窓の外がストロボのごとく発光すると、間を置くことなく、電気の塊が地面に叩きつけられる轟音が響き渡る。
(光ってから落ちるまでの間隔が短いってことは、雷の中心は真上にあるんだ……)
身体を縮こまらせながら、比呂美は脳内にある雑学的知識を検索して気を紛らわせようと試みたが、それは無駄な努力だった。
なにをしてみたところで、《怖い》ものは《怖い》!!
幼少の頃ほどではないが、本格的な……そう、頭の上を直撃するようなヤツは、やっぱり《怖い》し《嫌い》だ。
(あぁ、どうしよう……どうしよう!)
雷が……その原因である台風が通り過ぎるまで、震えているしかないのだろうか。
比呂美の心が恐怖と諦め
2010-03-28T04:41:14+09:00
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ある日の比呂美・台風編4
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/548.html
弱まる気配のない雨と風を避けるため、二人は階段を駆け上がり、比呂美の部屋へと逃げ込んだ。
朋与の助言どおりに用意されていた大きめのタオルで水滴を拭い、無言のまま濡れた衣服を着替える。
「この後どうするの?」
「どうするってお前……ここに泊めてもらうしか……」
《こんなこともあろうかと》常備されている自分用の着替えに袖を通しながら、眞一郎は申し訳なさそうに言った。
外の台風は更に強さを増し、麦端の町を破壊しかねない勢いで荒れ狂っている。
比呂美の様子を確かめたからといって、「じゃあな」と帰路に着くことは、もはや不可能だ。
「……ふぅ……」
先に着替えを終えた比呂美は、やれやれ、という風に溜息をつくと、キッチンへと向かった。
朋与のもう一つの提案…《温かい飲み物》を用意しなければならないからだ。
自分と眞一郎、それぞれの専用マグカップにインスタントスープの粉を入れ、少し冷めてしまったヤカンのお湯を注ぐ。
(こんな夜中に、スープみたいなカロリーの高い物を飲んだら太るかな?)
そんなことを考えないでもないが、芯まで冷えた身体を回復させるためには必要な栄養だと、比呂美は自分を納得させた。
「はい、これ飲んで」
着替えを終えて自分の定位置に納まっている眞一郎の目の前に、ちょっとだけ乱暴にカップを置いてやる。
無事な姿を確認した直後は、嬉しさと安心のあまり情熱的な行動に奔ってしまった比呂美だったが、
時間が経ち冷静になると、これから先の事を想像してしまい、僅かではあるが気持ちが苛立ちに傾いていた。
眞一郎はといえば、この状況を理解していないのか、礼もそこそこにスープを飲みはじめている。
「泊まるのはいいけど、明日の朝どうするの?」
「?? 家に帰るさ」
狙っているのか天然なのか…… 直球の質問にとぼけた返答をされ、比呂美は軽い眩暈に襲われた。
眞一郎が思考より行動が優先する男だということは、よく理解しているつもりだったが、
ここまで《考えなし》だったとは……さすがに想定外である。
「そうじゃなくて! 私の部屋から朝帰りして、おじさんとおばさんに何て言い訳するのかって訊いてるの!」
「……だ、大丈夫さ。 朝、目が覚めて散歩に出かけたって言えば……」
全く説得力のない嘘を、ちょっと自信
2010-03-02T23:00:11+09:00
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春雷-7
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/547.html
――第七幕『あなたの大切って、なに?』――
眞一郎と比呂美の『あの夜』からの数日間、眞一郎は、心と体の潤滑油が切れてしまっ
たように、ぎこちなかった。それでも、比呂美がいつも通りの笑顔を向けていたことで、
徐々に『なめらかさ』を取り戻していった。
比呂美も、彼が自力で立ち直ることを期待していた。
五日ぐらい経って、比呂美は、眞一郎に自分をぶつける頃合を計っていた。いつもの
『寒い冗談』が眞一郎の口から出はじめているのを確認すると、よし、今日よ、と比呂美
は『決行の旗』を心に掲げた。
眞一郎と比呂美は、久しぶりに一緒に歩いて下校していた。まだ夕陽は落ちていなかっ
たが、空はきれいな茜色に染まっていた。比呂美は、夕陽が見たいと言って、眞一郎を
『あの砂浜』へ誘った。
砂浜に二本の点線が徐々に伸びていく。
比呂美は、スカートの裾を絞って握り『あの地点』へ向かって歩いていく。眞一郎は、
比呂美の後につづく。やがて、比呂美が足を止めると、眞一郎は、比呂美の右横に来て、
止まった。
「……この場所……覚えてる?」
「……うん」
「眞一郎くんと、私が、初めて……キスした場所」
「…………」
「初めてにしては、うまかったでしょう?」
ふたりは並んだまま、海を見ていた。
「……わからないよ、そんなこと」
「もう、キスの感想がそれ?」
比呂美は、正直に不満を漏らして呆れた。
「いや……その……や……温かかった」
眞一郎は、やわらかかった、と言おうとして止めた。その言葉は使ってはいけないと思
ったのだ。
「ふ~ん、私は、冷たかった…かな……寒かったしね」
沈黙。ふたりは、まだ手も繋がない。
ふたりの間を、海風が疾走する。観客のカモメたちは、二人に演技のつづきを求めるよ
うに騒がしく啼いた。そんな観客に耳を貸したつもりはなかったが、ふたりの一騎打ちの
始まりのゴングが鳴った。
ザッッパァァ――――ン
「…………ねえ」
「ん?」
気持ちのない眞一郎の返事。
「これから、私の部屋行って……エッチする?」
「なっ!!」
眞一郎は、すぐさま比呂美を見て、目を白黒させた。比呂美は、海を見たままつづけた。
「セックス、しようか?」
「な、何だよ、急に……」
眞一郎は、比呂美と
2009-11-22T22:29:10+09:00
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春雷-6
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/546.html
――第六幕『男の子でしょ?』――
次の日、案の定、眞一郎は、教室の自分の席で蒼い顔をしていた。
一時限目が始まる前、比呂美と眞一郎は、自分の席にいながら目を合わせたが、眞一郎
は、辛そうに瞼を半分下ろし、目線を外した。
内容が内容だけに、学校ではお互いに話す機会を設けない方がいいだろうと比呂美は思
っていたが、眞一郎の方は、堪えられなかったようだ。
放課後、比呂美が体育館へ向かっている時に、眞一郎は話を切り出してきた。ここじゃ
さすがに朋与が嗅ぎつけると思った比呂美は、出来るだけ明るく努め、早々に眞一郎を帰
すことにした。そもそも、比呂美は、眞一郎を軽蔑しているわけではないのだから。
「比呂美」
「……何?」
「……きのうの……事なんだけど……悪かった」
「気にしないで。私、気にしてない」
比呂美は、眞一郎に笑顔を向け、肩をポンポンと叩いたが、
「本当に、すまない……」
と眞一郎は、明るさを取り戻さなかった。
「ううん、分かってる……その……ぁ……うれしかったし……」
このとき、眞一郎は、比呂美が言葉を選んで話しているのに気づいた。
(比呂美が、言葉を選んでいる)
まだ、晴れない顔をしている眞一郎に、比呂美は、胸めがけて軽くパンチを繰り出す。
「もう、しっかりしてよね」
眞一郎、全然よろめかなかった。あの時、そのくらい堂々としてくれたら……眞一郎の
そんな様子が少し癇に障った比呂美はこんど、拳を眞一郎の胸に押し当て、グッと体重を
かけた。さすがに眞一郎も耐え切れず、片足を引いてバランスを取り直した。
「男の子でしょ? あのくらい、別に……」
「比呂美……」
眞一郎は、無理して少し笑った。
「嫌いになったりしないよ、じゃ」
踵を返し、比呂美は体育館へ歩きだした。
そんなやり取りを途中から見ていた朋与は、珍しく心配した顔で比呂美に声をかけた。
「喧嘩でもしたの?」
「ううん、なんでもない」
比呂美のそっけない態度に朋与はカチンと頭にきた。
「ちょっと待ちなっ」
比呂美の手首をつかみ、険しい顔を向ける朋与。
「雷のすごかった日、私、見てたんだけど」
「!」
……雷……ゲーム……お願い……キス……
睨み合う二人。そんな時、高岡キャプテンの声が響く。
「女
2009-11-22T22:28:27+09:00
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春雷-5
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/545.html
――第五幕『幸せをひとつひとつ』――
仲上家を出た眞一郎と比呂美は、ゆっくりとした足取りで比呂美のアパートへ向かって
いた。車道に出てしばらくすると下り坂になり、正面には夜の海が広がっている。その手
前で、赤く光るものがある。三叉路の信号機。
比呂美は、自分が今のアパートに引っ越すときに、眞一郎が自転車で追いかけて来てく
れたことを思い出していた。
比呂美に追いつく前に滑って、自転車から転げ落ちる眞一郎。
眞一郎の元へ辿り着く前に滑って転び、眞一郎に体当たりする比呂美。
傍目からではとても感動的なシーンには映らないな、と比呂美は心の中で噴き出したが、
ふたりの関係は、あの日、あの場所、あの台詞から変わっていったのは間違いなかった。
「眞一郎くん、ごめんね、私……」
「いや、俺の方こそ…そのぉ……」
眞一郎は、比呂美が何のことで謝っているのかすぐに分からず曖昧に返した。
「うぅん。私、ちょっと浮かれてた。もちろん、その……いやらしい気持ちで……渡した
んじゃないけど、鍵……その……少し期待はしていたかも……」
ごめんねの意味は、合鍵を渡して困らせてしまったことらしい。
比呂美は少し肩をすぼめた。
そんな比呂美の様子に、比呂美は今、自分の正直な気持ちを話しているのだろうと眞一
郎は感じた。
……浮かれていた……少し期待をしていた……それは俺も同じだ
「比呂美……」
眞一郎は、自分も同じ思いだったことを伝えようとした時、比呂美は立ち止まり、両腕
を組んだまま頭の上へ持っていって背伸びをした。そして、星を見上げたまま、話はじめ
た。
「今でもね……たまに……考えるときがあるの……。眞一郎くんいなかったら……私どう
なってたんだろうって……。それ考えると、急に目の前が真っ暗になって……深い深い闇
に沈んでいく感じがして……」
眞一郎が初めて耳にする比呂美の心の闇の話だった……。
私は、暗闇の中に立っている。いや、浮かんでいるという感じ。
遠くで、潮騒が聞こえる。
ここは何処だろう? 麦端の海岸? それとも……
お母さんのおなかの中?
潮騒はだんだん、大きくなってくる。
すると、今度は、遠くで男の子の声が聞こえた。
無邪気に笑う声、痛がって泣く声。その声もだん
2009-11-22T22:27:46+09:00
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春雷-4
https://w.atwiki.jp/true_tears/pages/544.html
――第四幕『こっちを向きなさい』――
「今の仲上家と比呂美の間に何か問題があるだろうか?」
眞一郎は自室のベッドの上で現状を整理していた。
……比呂美はしっかりしている。料理は出来るし、掃除や洗濯もまめにしている。
だらしないところは何もない。
ただ16歳の少女の一人暮らしは、とにかく物騒なのは変わらない。
幸い比呂美のアパートは、近い。走って10分もかからない。
何かあったときの合鍵も預っている。
経済的にも問題はないはず。
……比呂美の気持ちは?
比呂美にとっても『ひとりの空間』は、一番安らげる場所であろう。
母と打ち解けている今でも、
仲上家より断然、羽が伸ばせるのは間違いない。
比呂美の友達も気兼ねなくアパートに呼べる。
比呂美を支えてくれるの何も俺だけじゃない。
……俺の存在は?
相思相愛とはいえ、
同い年の男に見られたくない、知られたくないことは幾らでもあるだろう。
例えそれが相手に嫌われることではないと分かっていても。
そういう障壁がなくなるのは、結婚してからの話。
だが、俺らは若い、未熟だ。
自分を抑えきれずに淫らな行為に走るかもしれない。比呂美も同じはず。
でも俺らは抑えきれている。
離れている分、恋しくなることはあるが、
逆にこの距離が理性の介在をしやすくしている。
何も問題無いではないか。
……でも何か、引っかかる……
……じゃあ、なぜ比呂美は最初から一人暮らしをしない? 仲上家に来ないで。
親父とお袋は何故何も言わない。
比呂美の精神の安定を最優先に考えている?
親父達は、俺にはまだ分からない『何か』を理解しているというのか?
もしそれが分かったとしても、今の俺にはどうすることも出来ない気がする。
そんな気がする。
今の俺には、今の俺に出来ることで、比呂美を守ってやるしかないんだ。
俺に出来ることで、比呂美を……
嵐の次の日、学校での比呂美は特に変わった様子はなかった。眞一郎も落ち着いていた。
それぞれの心に、いろいろな思いが渦巻いていても、現状を壊してまで解決への糸口を
探すという結論には至らなかったのだ。
このように、ふた
2009-11-22T22:26:49+09:00
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