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AIPSによる処理(6) 帯域通過特性(BPASS)の較正


位相の時間変化の較正はFRINGによって片付きました。ひきつづき、帯域通過特性の較正を行いましょう。帯域通過特性の補正には、bpassというtaskを用います。
帯域通過特性B(ν)は振幅と位相の両方を持つ複素数です。平坦なスペクトルを持つ連続波電波源を観測したときのビジビリティを正規化してやれば、それを帯域通過特性B(ν)として扱うことができます。振幅項については自己相関を用いることができます。自己相関は相互相関よりSNRが高いしコヒーレンス損失の影響も受けませんので、自己相関を用いることに利点があります。自己相関の位相はつねに0ですから、位相項は相互相関を用いるしか方法がありません。そこで、振幅項は自己相関で、位相項は相互相関で、と手順を2段に分けてbpassを実行します。
よほどのことがない限り、観測時間中B(ν)は時間変化せず一定と見做してもよいでしょう。

1. 自己相関を用いて帯域通過特性の振幅項を求める

まずはbpassを自己相関に対して実行し、帯域通過特性の振幅項をBP extension tableに格納します。
task 'bpass'  BPASSの使用宣言
getn 2  カタログ番号2番のファイルを選択
AIPS 1: Got(1) disk= 1 user=3018 type=UV BK084.MSORT.1
docal 1  CLテーブルによる補正を行う
gainu 4  CL テーブル version 4を適用
timer 0 15 34 0 0 15 36 0  用いる時間範囲の指定(15h34m-15h36mの2分間)
solin -1  求まった帯域通過特性の有効な時間範囲(-1は全時間帯)
outv 1  書き出すBP extension tableのversion
bif 1;eif 0  全てのIF番号で求める
refan 9  基準局としてアンテナ9番(PT)を選択
soltyp 'L1R'  ノルムの計算方法の選択
smooth 1, 5, 7  スムージング窓関数に7 chの範囲で、first nullが5ch幅のSinc関数を使用
bpassprm 1, 0  自己相関を用いる
inp  パラメーターの一覧を表示して確認します。
(bpass (振幅項) のパラメーターの一覧はこちら)
goと打って実行します。終了したら、imhで BP extension tableのバージョン1が追加されたことを確認しましょう。

1.1 BPの振幅項を確認

BP extension tableを、possmというtaskで表示します。
tget possm  POSSMの使用宣言。tgetは前回POSSMを実行したときのパラメーターをロードします。
getn 2  カタログ番号2番のファイルを選択
AIPS 1: Got(1) disk= 1 user=3018 type=UV BK084.MSORT.1
doban 1  BP tableを使用します。
bpv 1  使用するBP tableのバージョンを1に指定
aparm 1, 1, 0, 1.5, -180, 180, 0, 2, 0  8番目のパラメーターでBP tableそのものを表示すると指定
timer 0  全時間帯を指定
inp  パラメーターの一覧を表示して確認します。
(possm (振幅項) のパラメーターの一覧はこちら)
goと打って実行すると、下図のようにTV画面に表示されます。帯域通過特性の振幅項は、主に観測装置のフィルターの特性を反映して、IFの両端で振幅が低下していることがわかります。また、自己相関を使っているため位相項は0です。位相項は次のステップで求めます。

2. 帯域通過特性の位相項を求める

位相項を求めるには、十分に強い連続波電波源のビジビリティをコヒーレンス時間内で積分して、そのビジビリティ位相を用います。ここでは、目的天体DA 193自身のビジビリティを2分間 (15h34m-15h36m) 積分してBPの位相項を求めましょう。
tget bpass  BPASSの使用宣言。tgetは前回POSSMを実行したときのパラメーターをロードします。
bpassprm 0  相互相関を用います。
bpassprm(4) 1  振幅項は変えずに、位相項だけを格納します。
inp  パラメーターの一覧を表示して確認します。
(bpass (位相項) のパラメーターの一覧はこちら)
goと打って実行します。BP extension tableのバージョン1に上書きしていますので、imhの結果は変わりません。

2.1 BPの位相項を確認

位相項が付加されたBP extension tableを、possmで確認しましょう。
tget possm  POSSMの使用宣言。tgetは前回POSSMを実行したときのパラメーターをロードします。
inp  パラメーターの一覧を表示して確認します。
(possm (位相項) のパラメーターの一覧はこちら)
goと打って実行すると、下図のようにTV画面に表示されます。振幅項は変化なく、位相項が付加されたことが分かりますでしょうか。びみょーですけど、位相は0ではありませんね。

3. 較正済みのビジビリティを確認

以上で一通りビジビリティの較正ができました。それでは、較正が正しく行われたことを確認してみましょう。

3.1 スペクトルを確認 (POSSM)

CLとBPを適用することで、スペクトルが較正されたものになることを確認しましょう。POSSMを用います。
tget possm  POSSMの使用宣言。tgetは前回POSSMを実行したときのパラメーターをロードします。
aparm (4) 5.0  振幅項の表示範囲を、最大5 Jyに設定
aparm(8) 0  ビジビリティを表示
timer 0 15 34 0 0 15 36 0  ビジビリティの時間範囲を指定
docal 1  CLテーブルを適用することを指定
gainu 4  使用するCLのバージョンは4
inp  パラメーターの一覧を表示して確認します。
(possmのパラメーターの一覧はこちら)
goと打って実行します。下図右のように、較正されたビジビリティが表示されます。比較のため、左に較正する前のビジビリティを示します。
拡大図(左)拡大図(右)
較正前には位相が周波数に対して傾いていたのが、較正後に平坦になったことがわかりますね。これは遅延残差の補正や帯域通過特性の補正を行ったからです。振幅の値が較正後には意味のあるJy単位になっていることも分かります。帯域内の位相変動も、ほぼ平坦になりました。較正後もIF帯域上端付近で振幅が低下しているのは、自己相関で作成したBPテーブルには折返し雑音が加わっているためで、自己相関で振幅を決定したことの限界です。この帯域は、あとで周波数方向の積分をする際に使用しないように設定しましょう。
以上で長かった較正の作業が完了しました。次に、ビジビリティを周波数方向に積分してサイズを小さくしましょう。