Difmapによる処理(7) 振幅のSelf Calibration


gscaleによるアンテナゲイン振幅項の補正

十分にCLEANされているものとして、アンテナゲインの振幅項をSelf Calibrationで補正しましょう。gscaleselfcalという二つのコマンドが用意されています。まずはgscaleを使います。
gscaleによるSelf Calibrationは、
  1. 位相については何もしません。
  2. 全時間帯で共通な解を求めます。
  3. アンテナ間の相対的な振幅項のデコボコのみを補正します。
という制約を課しています。2. はつまり振幅の時間変化については考慮しないということで、有効開口面積のカタログ値と観測時の実際の値との違いや、システム雑音が系統に高め(あるいは低め)に測定される、などといったアンテナ毎のクセを補正するためにこのコマンドがある、ということです。3. は振幅項が正規化されるということで、これによって全フラックス密度が保存されます。gscaleは未知パラメーター数を少なく押さえているので、比較的安全な振幅Self Calibrationなのです。
それではgscaleを実行してみましょう。
gscale  引数なしで実行すると、振幅項が正規化されます。
! Performing overall amplitude self-cal
!
! Correcting IF 1.
! Amplitude normalization factor in sub-array 1: 1.00565
! Telescope amplitude corrections in sub-array 1:
! BR 1.05 FD 0.97 HN 0.96 KP 0.93
! LA 0.99 MK 1.03 NL 1.01 OV 0.97
! PT 1.05 SC 0.99
!
!
! Correcting IF 2.
! Amplitude normalization factor in sub-array 1: 1.00874
! Telescope amplitude corrections in sub-array 1:
! BR 1.06 FD 0.97 HN 0.95 KP 0.94
! LA 0.99 MK 1.03 NL 1.00 OV 0.97
! PT 1.03 SC 0.97
!
!
! Correcting IF 3.
! Amplitude normalization factor in sub-array 1: 1.01128
! Telescope amplitude corrections in sub-array 1:
! BR 1.07 FD 0.98 HN 0.94 KP 0.95
! LA 0.99 MK 1.01 NL 1.00 OV 0.98
! PT 1.04 SC 0.93
!
!
! Correcting IF 4.
! Amplitude normalization factor in sub-array 1: 1.00202
! Telescope amplitude corrections in sub-array 1:
! BR 1.06 FD 0.97 HN 0.94 KP 0.99
! LA 0.97 MK 1.04 NL 1.03 OV 1.03
! PT 1.01 SC 0.93
!
!
! Fit before self-cal, rms=0.285136Jy sigma=2.327047
! Fit after self-cal, rms=0.209040Jy sigma=1.621514
アンテナ毎の振幅補正係数がメッセージに出力されます。1.0なら補正不要だったということですね。このデータについては、最大が1.07, 最小が0.93ですから、±7%の範囲に収まっていることが分かります。振幅のアプリオリ較正が比較的精度が高かったようですね。アンテナゲインの確認は corplコマンドでもできます。

gscaleで補正したビジビリティ振幅がどのようになったかを、 radplで確認してみましょう。ゲインの振幅項が1からずれていることが分かります。

上記の図がgscale後のradpl, こちらがgscale前のradplです。比べてみると、gscale後の方が振幅のバラつきが小さくなっていることがわかりますね。

さらにCLEAN

gscaleによって、輝度残差rmsがだいぶ小さくなり、reducedX^{2}(の平方根)も1.621514と小さくなりました。このビジビリティでCLEANを進めましょう。場合によっては、これまでのCLEAN componentsを全部捨ててゼロからCLEANしなおしてもいいでしょう。

振幅項を含むSelf Calibration

さらにCLEANを進めても行き詰まったら、振幅項のSelf Calibrationをしても良いでしょう。注意すべきはこの時点で、total flux cleaned が全フラックス密度にほぼ達している必要があることです。全フラックス密度はradplprojplコマンドで確認できます。
それでは実行してみましょう。まずは振幅時間変動のタイムスケールを60分と長時間にとって、安定な解が得られるようにします。
selfcal true, true, 60  第1引数をtrueにして振幅補正アリ, 第2引数は振幅の変化OK, 第3引数は時間スケール(分単位)
! Performing amp+phase self-cal over 60 minute time intervals
!
! Correcting IF 1.
!
! Correcting IF 2.
!
! Correcting IF 3.
!
! Correcting IF 4.
!
! Fit before self-cal, rms=0.187854Jy sigma=1.442203
! Fit after self-cal, rms=0.161802Jy sigma=1.144859
かなりreducedX^{2}の平方根がゴールの1に近づいてきました。解はこれまでと同様にcorplコマンドで確認できます。

60分のタイムスケールで解を求めたので、5分毎の時間スロット内では振幅が一定ですが、スロット間は1時間以上離れていますのでゲインの振幅項が変化していることがわかりますね。
あとは、さらにCLEANを進め、行き詰まったら振幅項を含むSelf Calibrationをより時間スケールを短くして行きましょう。reducedX^{2}がほぼ1になったらCLEANは終了です。
最後に、最終マップを描いて保存しましょう。

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最終更新:2007年10月04日 20:54