Difmapによる処理(8) 最終的なマップ作成
CLEAN Mapを表示
「もうCLEANもSelf Calibrationも十分やりました」と思ったら、最終的なCLEAN Mapを表示しましょう。
mapplotコマンドに cln オプションを付けると、CLEAN componentsによる輝度を残差マップに付加したCLEAN Mapを表示します。
CLEAN componentsによる輝度は、CLEAN componentsにRestoring beamを畳み込んだものです。CLEAN componentsは通常δ 関数ですので、そのままだと「とげとげ」した輝度分布になってしまい不自然ですから、適度なsmoothingを行うのです。このsmoothingのために畳み込まれる関数を Restoring beamといいます。デフォルトでは、Restoring beamには
合成ビームの長軸・短軸を用いた楕円ガウシアンが使用されます。
最初にmapplotしたときに合成ビームの長軸が1.0 mas, 短軸が0.4 masとなっていましたから、何も指定しなければこの値が用いられます。デフォルト値以外のRestoring beamにしたいときはrestoreコマンドを使うのですが、ここでは触れません。
mappl cln 引数のclnで、CLEAN Mapを描くことを指定します。
! Inverting map
! restore: Substituting estimate of restoring beam from last 'invert'.
! Restoring with beam: 0.4186 x 1.03 at -4.021 degrees (North through East)
! Clean map min=-0.011036 max=3.349 Jy/beam
!
このマップで満足なら、残るは表示を工夫することと、結果を保存することです。
等高線レベルを調整
CLEAN Mapは、デフォルトでは等高線レベルを輝度ピークの1%, 2%, …, と、1%×2nで設定されています。この等高線レベルは、loglevsコマンドで調整できます。
ここでは、最小等高線レベルを±3σにして、以後6σ, 12σ, … と 3σ ×2nにしてみましょう。最後にCLEANをしたときのメッセージから、image r.m.s.を読み取ると、σ = 0.0036 Jy/beamでした。一方、 mappl clnしたときのメッセージから輝度のピークは3.349 Jy/beamです。したがって3σはピーク輝度の0.3224843236787100627%だと計算できます(0.003600*3/3.349*100 = 0.3224843236787100627)。そこで、以下のようにloglevsコマンドを打ちます。
loglevs 0.32248432367871006270, 100, 2 等高線を、最大輝度の0.322…%から100%まで、2nの間隔で引くよう指定
! The new contour levels are:
! -0.322484 0.322484 0.644969 1.28994 2.57987 5.15975 10.3195 20.639 41.278 82.556
これで
mappl clnで表示すると、下図のように所定の等高線レベルになりました。
結果を保存
イメージングの結果を保存します。ここでは用途別に3つの保存方法を挙げます。
Difmap用に保存
saveコマンドは、 ビジビリティ, CLEAN components, マップ, パラメーター, BOXの全てを保存してくれます。
save BK084.DA193.FINAL.IMAGE 引数で出力ファイル名を指定
! Writing UV FITS file: BK084.DA193.FINAL.IMAGE.uvf
! Writing 112 model components to file: BK084.DA193.FINAL.IMAGE.mod
! Writing clean map to FITS file: BK084.DA193.FINAL.IMAGE.fits
! Writing difmap environment to: BK084.DA193.FINAL.IMAGE.par
saveコマンドだけは忘れないようにしましょう。作業の途中で保存するのもOKです。次回にDifmapを起動したら、getコマンドで保存した状態に戻れます。さらに、@コマンドでパラメーターファイルを指定すれば、mapsizeやuvweightなどの設定も読み込めます。
get BK084.DA193.FINAL.IMAGE
@ BK084.DA193.FINAL.IMAGE.par
マップを画像ファイルに保存
mapplコマンドは、デフォルトではPGPLOT Windowにマップを表示しますが、表示デバイスをあらかじめ指定しておけば、PostScriptファイルやGIFファイルに描きだすこともできます。それにはdeviceコマンドを用います。
device /vps 出力を縦長のPostScriptファイルに指定
! Attempting to open device: '/vps'
mappl cln
こうすることで、Difmapを起動したディレクトリにpgplot.psというファイルが作成されます。deviceコマンドの引数と出力の関係を、下記の表にまとめました。
引数 |
出力 |
備考 |
/xw |
X-Window |
ファイルでなく画面にPGPLOT Windowを表示 |
/xserv |
X-Window |
PGPLOT Windowとして残す |
/ps |
pgplot.ps |
横長 (landscape) のPostScriptファイル |
/vps |
pgplot.ps |
縦長 (portrait) のPostScriptファイル |
/gif |
pgplot.gif |
横長 (landscape) のGIFファイル |
/vgif |
pgplot.gif |
縦長 (portrait) のGIFファイル |
/null |
何も出力しない |
ファイルを正常にcloseするために使います |
マップをimage FITSファイルに保存
wmap BK084.DA193.FINAL.MAP.FITS 引数で出力ファイル名を指定
! Writing clean map to FITS file: BK084.DA193.FINAL.MAP.FITS
AIPSで読み込む都合を考えると、ファイル名は全部大文字にしておくとよいでしょう。
以上で初心者コース:ほぼ点源の連続波電波源のマッピングは終了です。お疲れさまでした。Difmapを終了するには、quitコマンドを用います。
quit
! Quitting program
! Log file difmap.log closed on Mon Sep 11 22:35:00 2006
これまで作業してきた一連のログが、difmap.logという名前のファイルに保存されたことが分かります。このログファイル名を識別しやすい名前にしておきましょう。ついでに、pgplot.psなどのファイル名も変更しておきましょう。
mv difmap.log BK084.DA193.FINAL.IMAGE.log
mv pgplot.ps BK084.DA193.FINAL.IMAGE.ps
最後に、出来上がりのファイル(私が作成したもの)にリンクを張っておきます。
最終更新:2007年10月04日 20:54