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<p>    「銀の静謐(せいひつ)」</p> <p>春の林檎畑は酣(たけなわ)に</p> <p>林の奥に一陣の風が吹けば</p> <p>ユニコーンは歩み寄りて</p> <p>乙女の墓に跪(ひざまず)く</p> <p>夏は濃緑(のうりょく)が被さり</p> <p>秋はオークの木々凋落(ちょうらく)するに</p> <p>ユニコーンは水面を歩みて この静寂をひた守る</p> <p>やがて冬が訪れ 水面凍り </p> <p>樹氷成るに及びて</p> <p>ユニコーンは年老い</p> <p>冬の寒風が嘯々(しょうしょう)と吹く</p> <p>しかし猶墓の前に跪きて</p> <p>ふと鬣(たてがみ)を振り仰げば</p> <p>銀色益々栄え しじまの森に照り映える</p> <p>その銀研ぎ澄まして 歳月を送れば</p> <p>冬の泉でユニコーン 最期の嘶(いなな)きを挙げ</p> <p>汀(みぎわ)に倒れぬ</p> <p>束の間 一条の彗星の如く</p> <p>銀魂(ぎんこん)打ち上ぐれば</p> <p>その銀 空のスピカとなりて</p> <p>今も光りぬ</p> <p>眠れる墓の森の上にて</p> <p> </p>
<p>     </p>

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