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霧島無色は改造人間である

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霧島無色は改造人間である ◆dXhnNxERuo


――あの夜、俺は死んだ。

その日はボクシングジムで同期である琴浦周斗とのスパーリングを終えて一人で寮の部屋へ帰ろうとしていた。
スパーリングの内容は琴浦の勝利。こちらも牽制のジャブでかなりの有効打を当てたが所詮見せかけに過ぎず、
懐に潜り込まれて二、三発で終了した。彼はプロ入りが決定してると言われているエース。
手数だけではどうにもならない巧さを持っていようだ。
少々火照った頭を冷やす為寄り道でゲーセンへ行くことにした。人気のない夜道を歩いていたその時だ。
気の弱そうな少年が二、三人のチンピラじみた男に囲まれているのを目撃したのは。
何故自分があのような行動を取ったのか分からない。いつもなら無視していた筈だった。
だがあの時俺はチンピラに話しかけ、そのまま口論になり殴りかかってきた一人をカウンターで迎撃した直後、
激しい銃声とともに腹に強烈な痛みを受け、そのまま地面に倒れこんだ。何か驚いた顔をしたチンピラ共が
逃げていくのを霞んだ視界に捉えながら気を失い、目を覚ますと誰も居なくなっていた。
地面にはどす黒い血の海が広がっている。絡まれていた少年はどさくさに紛れて逃げたようで、
救急車や警察は呼んでくれなかったらしい。朝までには誰かに発見されるのだろうが、その頃には果たして。
やや自嘲気味に顔が歪む。結局はこれが事実。いくら格闘技を極めても拳銃を持った素人に負けるのが現実。
心と体を鍛える為?格闘技自体をスポーツとして楽しむ為?――違う。
自分はただ純粋に、強くなりたいからボクシングを始めた。だが、間違っていたのだ。
強くなって相手を壊す、相手を否定する、相手を蹂躙する。それこそが望みであり、それ以外は何も求めていなかった。
なら、自分はどうすればよかったのだ?一体どうすれば―――

「あら、ラッキーね。この子、実験に使えそう。」

朦朧とする意識の中、少女の声が聞こえた。ぼやけてよく見えないが、目を少し開けて確認する。
無表情で眼鏡をかけた色白のショートカットの女子高生が、俺を見下ろしていた。
天使、いや、死神が迎えに来たのかもしれないな。

「とても適確な表現ね。」

俺が思考能力を失う直前、少女はそう呟いていた。

◆ ◆ ◆

「あーあ、どうすっかなぁー。」

鹿狩瀬荻矢はライオンのような癖がついた髪をかき上げ途方に暮れていた。
せっかくの修学旅行をわけのわからない殺人ゲームに潰されたのだ。
この機会に有栖川桜との親睦を深める予定だったというのに最悪にも程がある。
だがじっとしている場合じゃない。こうしている今も友人が危険に晒され続けているのだ。
ディバックの中に入っていたサバイバルナイフを手に持ち、行動を開始する。

(有栖川、無事でいてくれよ!)

バチッ

突然、電気がショートしているような音を背後から聞いた。恐る恐る振り返える。
細身の少年が無表情で佇んでいた。両手には包帯が巻かれ何も持っていない。
この男とはあまり喋ったことがないが、確か昔は琴浦とよくつるんでいるのを見たことがある。

「よぉ、霧島無色か?なんか用か?」
「……いや、背後から襲いかかる予定だったんだが気付かれてしまったようだな。」
「はは、冗談きついぜ。もしかしてゲームに乗ってるの?」
「あぁ、こんな機会は滅多にない。路地裏ではどうしても殺人までは至れないからな。」
「…へ、へぇ…。でもさぁ、そんな素手でどうすんの?」

霧島はニヤリと笑い、腕を構えた。

「素手に、見えるのか?」

鹿狩瀬もナイフを相手に向ける。殺し合いに乗る気はないがここは切り抜けなければ。
ひょっとしたらスタンガンでも隠し持っているのかもしれない。
しかし相手と3メートルは離れている。すぐには仕掛けれないだろう。

「なぁ、やめようぜ。馬鹿馬鹿しいだろ、こんなの。」
「分かっているさ……だからどうした?」

突然、霧島の体がこちらに飛び出した。まるで体でも伸びているかのような間合いの詰め方だった。

(何!?)

だが伸ばしているように見えるのは前足と左腕である。
これがボクシングで最も早いパンチといわれる左ジャブ?
反応できず、右手のナイフを弾き落とされる。

(……しまっ!)

そのまま奴に拾われてしまった。気がつけば顔が眼前に近づいていた。

「……?」
「あ?どうした霧島?」
「いや、痛くないのか?」

そう言われ、足下を見る。奪われたナイフが太ももに深々と刺さっていた。

「うおぉ!?」
「……どうやら痛みを感じていないようだな。それも特異体質の一つ、か?」
「糞!」

太ももからナイフを抜く。血があふれ頭がふらついてきた。
理性が飛ぶと痛みを感じなくなるとはいえ、早く止血しないとまずい。
霧島は、再び構え始めた。

「なら、『痛み』を教えてやろう。」
「……うぉぉぉぉぉぉ!!」

もはや牽制などしている場合ではない。構わず、ナイフを喉元を狙って突き出した。
だが刃はむなしく空を切り。霧島の右手がカウンター気味に頭部にクリーンヒットした。

「うぉ!……あぁ?」

拳をそもそも握っていないのか、当たったジャブは拍子抜けするほど力が入っていなかった。
一体これでどうするつもり―――?

「命中。」

バチッ!

再び、電気がショートする音が聞こえた。微弱な電流を全身に流されているような妙な感覚を覚える。
そして電流がふとももまで到達した時。

「……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

激しい痛みが鹿狩瀬を襲った。転げ回り、のたうつ。

「……筋肉は、脳から発せられる命令が神経を通して伝えられた時に発生する微弱な電気的刺激によって
 収縮して人間は運動できる。痛みは傷を負った箇所や骨折時に神経を通して微弱な電気的信号を
 脳へ伝達することで感じられる。人間も機械のように、常に電気を全身に走らせて生きている。
 それを自在に操ることができればどうなると思う?そう、『感覚』を自由に操作できるようになる訳だ。
 ……と、あの女は言っていたな。」

痙攣する体を奮い立たせ、なんとか立ち上がる。
何故か頭に有栖川の顔がよぎった。あいつはバレてないと思っているようだが、俺は知っている。

「……貴様も……サイキッカーってヤツか!?」
「まぁ、似たようなものかな。しかし、なぜその単語を知っている?ひょっとするとお前の友達にも。」
「!!知るかよ!」

痛みに耐え、拳を振り上げた。だが、奴の腕が伸びるのを目撃し―――。
突然、痛みを感じなくなった。

「……あぁ?」

そしてそのまま、うつ伏せに倒れ込む。腹には、深々とナイフが突き刺さっていた。

「さて、先程は『激痛』、今回は逆に『無痛』の状態だな。体が健康なら自分に使った方が便利なんだろうが、
 今は逆効果らしいな。さっき、刺した事にも気付けないというのは。」

血が、地面に流れ続けていた。徐々に意識が薄れ始める。

(……畜生……有栖川……。)

鹿狩瀬は静かに目を閉じた。


◆ ◆ ◆


その少女――桐原重工付属非合法人体改造研究会なる怪しいアングラサイトの管理者と自称した女は
定期的な実験レポートの提出を条件に治療費をほぼ免除してくれた。

体が治すついでに埋め込まれたおかしな機械を使った、人間を対象にした実験。
殴った対象の感覚を操作するという擬似サイキッカーに俺はなったらしいのだが、
正直俺の願いがかなったのかどうかは正直微妙だ。
銃を持つ人間に勝てるほどの能力でもないと思うのだが……。

微動だにしなくなった鹿狩瀬の遺体を見下ろす。

(まぁ、使い道はまだまだ未知数、だな。)

自分を改造したあの娘ともう連絡は取れない。
高校生のクラス一つが丸ごと失踪する事件に巻き込まれたと聞いた。
今の自分の状況とよく似ているが……正直偶然とは思えないが。

(でも、まあ、あまり関係は無いか。)

機械の実験レポートは提出とか関係なくもう自分で趣味でやっている。
せっかくのチャンスだ。どこまで強くなれるか試してみようじゃないか。
それにここは路上と違って人間を殺し放題。この会場はまさに最適の実験場だ。

両手から火花を散らし、霧島無色は夜道を進む。


【男子五番:鹿狩瀬荻矢 死亡】

【残り36人】




【C-6/森林】
【男子十五番:霧島無色】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、サバイバルナイフ、不明支給品×1
[思考・状況]
 基本思考:人間の強さを超えてやる
 0:クラスメイトを使って装置の実験をする
 1:有栖川が本物のサイキッカーかどうか確認したい
[備考欄]
※霧島無色の能力で現在判明しているのは「触った相手と自分自身の感覚の操作」
 ですが実験中なのでゲームを進めると新たな使い道を思いつくかもしれません。



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