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俺に年上の兄がいる。
誰がどうお世辞を言おうと俺とは全く似ていない。えらく顔が整った兄だ。
というのも、血が繋がっていない義兄弟だから当然の事ある。
なにせモデルも顔負けの美形だ。
振る舞いも上品でそつがないし、
家族にまで敬語を使うというちょっと変な所を除けば、大モテ間違いなし。
女には苦労することなんて無いだろう。
彼女の一人二人いてもおかしくはない。…が。

俺は時々こっそりと兄の部屋に入る。
兄も年頃の男なわけだから女に興味だって持つだろう、
そう思って彼女のものらしきものを探す。

…無い。全く無い。

殺風景な部屋は俺の部屋と違ってあまり生活感が無い。
ベッドの上に上着が脱ぎ捨てられていることくらいしか、
その部屋に一般的な男子校生らしさを見出だすことは出来ない。

そして俺は驚くべき事実に気付いた。

彼女がいないのなら…と俺はあるものを探す。
ベッドの下。クローゼットの中。引き出しの中に机の下。
ありとあらゆる場所を探す。絨毯のしたまでくまなく。…無い。全く無い。

そう、俺の気付いた驚くべき事実とは……
健全な男子高生なら誰でも持っているはずの、
エロ本が、この部屋には存在しないのだ。

一体どうなっているのだろう。
隠れてどこかで色々していたりするのだろうか。
それなら是非とも弟を誘ってほしいものだ。
俺は気になって、単刀直入に聞いてみることにした。
うだうだ考えてたってしかたないしな。

「え。え、エロ、本…が無い、理由…?」
明らかに動揺した様子で俺が言った言葉を繰り返している。
少しだけ赤みを増した顔で困った様に何度か瞬きをした。
そりゃ、弟からこんなこと言われたら焦るよな。
そして兄は、意を決した様にキッとこちらを見た。

「それはもちろん…僕がまだ十八歳じゃないからです。」

……………………は?
拍子抜けするようなあっさりとした解答に、今度はこっちが動揺する。
なんだって?十八歳未満が…何だよ?
まさか、このくそ真面目な兄貴は…
そんなほぼ自分ルールを律儀に守っていたのかよ…?
…どこの妖精さんですか。

「これでいいですか?」

いや、よくないよくない。ちょっと待て、
じゃあ一体この人はどうしてるんだ。

「え、…じ、い、です…か」

俺の言葉を反芻する兄に俺は頷く。
先程よりも明らかに顔が赤い。しかし未だ赤いままの顔で、

「その質問に答える義務は僕にはありませんね。
もう少し大人になってから、自分で想像してください、ね。」

と、人差し指を唇にあてて言い聞かせるように言った。
……むかつく。兄に子供扱いされる事は酷く屈辱的だ。

「兄貴。ちょっとベッド座って」

「はい…?座りましたけど…、って、ちょ!何してるんですか!?」

兄の上に跨がって俺はベルトに手をかけた。

「俺がガキなんかじゃねーってこと、教えてやるよ。」



「あの、これ以上は本当、洒落になりませんので…っ」

上擦った声を上げる兄は、青ざめつつも赤くなるという
ややこしい表情をしている。器用だな。

子供扱いにいらついて、感情のまま勢いで兄の上に跨がった俺だが、
実はかなり動揺していた。

本当はからかいで済ませるはずだった。
一応俺にも良識というものはある。
だからまあ、やんちゃな弟のイタズラ紛いのセクハラ
(いや、セクハラ紛いのイタズラか)程度で終わらせようと思っていた、のに。

いつもは余裕たっぷりで、爽やかで、完璧な兄の、古泉一樹が。

こんな風に頬を染め、こんな風に眉を下げ、気のせいだろうか、
心なしか瞳も潤んでいるように見える…こんな表情をするなんて。

「なぁ、どこまでしたことある?」

「どこまで、って…」

困惑した表情で俺を見つめる瞳は揺らいでいた。
ああ、何言ってるんだろう俺。もう取り返しがつかない。
おかしいよな…義理の兄貴にこんなに欲情しているなんて、
どう考えてもやんちゃな弟じゃすまない。

「これくらいならある?」

「…!待っ……」

元々細身だが、見かけよりもまだ細い兄の腕を
ぐっと押さえ付けて顔を近づける。

唇が触れ合うと容赦無く舌を差し入れた。
油断していたのか薄く開いた口に侵入するのは簡単だった。

こんなことするのは初めてだ。
想像でなら何度だってあるし、それ以上の事ももちろん、
脳内でならスムーズに出来るのに。
とりあえずぐるりと舌先を兄の歯列をなぞるように回すと、
驚くことに兄からはそれだけで反応があった。

「んぅ、ふぅ…ん、っ」

鼻から抜けるような、吐息のような声。
それも苦しげでは無く、甘味すら帯びたような声だった。

ぶっちゃけ、ぐらりときた。これはやばい。
かなり腰にきた。兄の様子を窺うと頬は先程よりも明らかにあかいし、
どうやら持て余し気味の快感に戸惑っている様子で、
自分の声に驚いたのか形の良い眉は下がる一方だ。

雑誌で読んだ限りでは感度には個人差があるらしいけど、
女性の方がずっと感度が良いって書いてたよな。
……普通こんな簡単に、まして男が、声漏らす程感じたりしなくね?

もしかして。兄貴って…かなり敏感…?

どうやら経験値0でも人間ってやつは結構その場に順応するらしい。
さっぱりやり方がわからなかったディープキスも
勢いがつけばあとはその場任せで、
うまいとは言えないが拙い動きでもどうやら兄は
ばっちり感じてくれてる様子だった。

俺がすっかりキスに夢中になっている頃には、
兄のガチガチにこめられていた腕からすっかり力が抜けていた。
ようやく唇を解放し顔を離すと、
今度こそ気のせいなどではなく確実に瞳が潤んでいる。

「なに、す…、はぁ、頭を、冷やして、下さい…」

息も絶え絶えといった様子で力無く呟いた兄は俺を睨むように見た。
そういえば、兄貴に怒られたことは一度もないな。
家族の前でもいつも笑顔だったし、
穏やかでケンカなんかしたことがないような人種だ。

その兄が、今初めて怒っている。
美形が怒った顔は怖いとよく聞くが、しかし。
今の兄の表情に恐怖は全く感じなかった。

何故なら、切れ長の目を縁取る男にしては長い睫毛に
涙が引っ掛かっていて、上気した頬はすっかり桃色に染まり、
半開きの口は喘ぐ様な呼吸を繰り返している。
どんなに眉を吊り上げても挑戦的に見えるだけで、むしろ扇情的だ。

ああ、もう後戻りは出来ないのだと、兄の表情を見て思った。