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さて、今日は十月末日。世に言うハロウィンである。

昨日の帰り、この話題が出た時はどうなる事かと思ったもんだが、幸いにも(?)我らが団長の発想は人並みではなかった。
前方のかしまし特急はそこから脱線に脱線を重ね、映画の話になったと思ったら次はイギリスからギリシャ、秋葉原から大阪日本橋を次々と経由し、そして何故か街のフルーツパーラーの話で終点を迎えた。
「明日は女子だけで特別活動を行うわ!男子は各自、自主練に励んでおくこと!いいわね!」

やれやれ、土日いっぱい地獄の釜のフタ探しでもされたらたまったもんじゃないからな。
ここは「特別活動」とやらに付き合われる(が何故か楽しそうな)朝比奈さんと長門に手を合わせつつ、「自主練」の共同計画でも練っておくとしよう。
お菓子くれなきゃイタズラするぞ!な、イベント日に双方予定なし…となれば、やることはひとつ。だろう?

「ピーンポーン」
こいつの家の、間抜けなチャイムの音も、今は高揚感を煽られるだけだ。
俺は明日の朝までの馬鹿げた、そして鳥肌が立つ程甘ったるいフルコースを描きながら、その常套句を用意してドアを開けた。

「Trick or Treat ! 」

……さて、今のセリフは俺のじゃない。
このムダに良い発音、ムダに良い声は、古泉一樹に他ならない。
他ならないのだが……はて、目の前にいる黒猫男に、俺はどんな反応を示してやるべきだろうね。

「今日はハロウィンですからね、」
黒ジャージに身を包んだ男は、そんな格好のくせに優雅にお茶を差し出した。しかしその、組んだ長い足の脇には、作り物の黒いしっぽが垂れているのだからやはりお笑いである。
「イタズラかお菓子か?なんて、いかにもあなたが言い出しそうなことじゃありませんか。」
どこの団長様だそれは。反射で言い返すも、ドアを開けるまでの脳内を考えれば、そこは否定できないところである。というより、俺がそんなアホを言い出すと察したお前も、随分と面の皮が厚くなったもんだ。
「まあそこで、僕が逆の立場になってみようかと―――」
その流し目はいいから続けろ。
「いえ、つまり、『ヒト』側としてお菓子をねだられる前に、もらう側である『オバケ』役を演じようと思ってみたわけです。」
あげる側ともらう側、ねえ。どこかの世界のお前も、似たようなことを言っていたような気がするぜ。
「本当は狼男あたりを考えていたのですが、流石に準備が整わなくて。結局これくらいしか用意できませんでした」
今の時期、街に出ればドラキュラマントだろうがフランケンマスクだろうが、いくらでも用意できそうな気がするが。
「あなたなら、休日の朝にわざわざ顔を青白く塗ったり、スーツを着込んだりしたいと思いますか?」
どんだけ徹底主義なんだ。
「ともかく、それでその格好で俺を待っていた、と?」
ここで改めてこいつを眺めてみれば、頭には猫耳、腰には猫シッポ、上下真っ黒な部屋着……とまあ、なんともはやな格好である。
普段なら家にいる時も、ラフながら小洒落た私服を着こなすのが「古泉一樹」だ。ちなみに寝る時はパジャマ派らしいので、学校以外でジャージなんぞ見るのも初めてである。
猫……猫ねえ。なあ、お前、それって「オバケ」じゃなくて。
「ええ、魔物になって、待っていましたよ?」
黒猫は笑う。

「Trick or Treat ?」

「そんな顔をしないで下さい」
猫に舌なめずりされて、いったいどんな顔をしろって言うんだ。
「お菓子なら……ほら、用意してありますよ」
指さした紙袋に散らばっているのは、色とりどりのちいさな飴玉だった。
「いつ涼宮さんの気分が変わって、ハロウィンパーティーになるかも知れませんので……一応、ね。用意はしていたんですよ」
ふうん、それで。
「これを食わせてやれば、満足して悪さはしない、と?」
セロファンをほどけば、ペリペリと剥がれる音がした。
こんな飴玉ひとつぽっちで、おとなしく地獄の底に帰るとは、魔物も随分無欲なもんだ。
「あなたが満足させてくれれば、」
俺は飴をつまんで自分の唇に挟む。
「ね?」
意図を察したつもりで頬を染めた相手に気分を良くして、甘ったるい塊に歯を立てた。

そのままガリガリとかみ砕いていると猫が口を挟んでくる。
「なっ……あなたが食べてどうするんです」
「ほしいのか?」
二個目の飴玉を取り出す。
「くださいよ」
「やらん」
赤……イチゴ味か?また自分の口に放り込んで見せれば、猫のわずかに開いた唇の隙間から、あかい舌が覗いて見えた。
その物欲しげな口が、こんな飴で満足するなんて、とんだ冗談だ。

→Trick
「トリック『オア』トリート、なんだろ?お菓子あげなきゃ何してくれるって?」
さて英語が苦手な俺にも分かるよう説明してもらおうか、「オバケ」役。
「イタズラ…してほしいんですか?」
「『猫』の悪さなんて、俺は慣れてるぜ」
そんな格好で、こんな近くで、二人っきりで、お前が何をしでかすのか見たいって言ってるんだよ。
なあ、古泉一樹。
「じゃあ目を閉じて」
目の前に回り込んだ黒猫が、中途半端に袖口を摘んでくる。肩を掴むとか抱きつくとか、なんかもっとあるだろうよ。
「閉じてください」
「はいはい」
目と反対に開けた口は塞がれ、歯裏のイチゴだけ掠め取られる。
カリッ
「かわいいイタズラでしょう?」
舌先の飴を見せつけて、黒猫は片目を閉じた。
「……っ」
こんな馬鹿みたいな仕草をぐちゃぐちゃにして押し倒してやりたくなるのは、あれだ。
この無駄に顔のいい優等生が、頭に猫耳乗せたふざけた格好でふざけた事を抜かすのがあまりにも嘆かわしいからであって、他意はない。
ソファに乗り上げて唇に噛みつけば、猫はうっとりと舌を絡めてくる。
「っ…ふぅ…んっ…」
口の中の飴を奪うようにして唾液を啜りあう。唇だけでは足りなくて、腕に、背に、さらには服の中までたどる滑らかな手が、ほしいほしいと訴えてくる。唇を離した時にはすっかり、キスの意味は変わってた。
「……ねえ、もっと」
息が上がったこいつの目は溶けそうに潤んでて、
「イタズラしてもいいですか」
ぞくっとするほど欲情してた。

服に潜り込んだ手が悪戯よりも明確な意図を持って肌を探ってくる。
先ほどまでベッドで向かい合って舌を啜っていたのが、今では完全に猫男こと古泉に乗り上げられて好きにされている状況だ。
ベルトも外され、前立てからそれを引きずり出されて。
さて、このご褒美みたいな悪戯をどうしてくれようと上半身を起こすと、ぱちりと目が合った。
まるい鳶色の瞳が、すっと細められる。その切れ長の目尻に匂い立つ色気がなければ、まるで童話の中のチェシャ猫みたいだ。
猫はそのまま、まだ下を向いている先端にくちづけてきた。
「っ、『かわいいイタズラ』、がそれか?」
「猫ですから、」
「理由になっとらん、……う、」
舌を這わされて声が出る。そのまま全部を口に含まれた。
長い睫毛と濡れた唇、きれいな顔のまま目を伏せてあれをくわえる様はあまりにも強烈だ。
いつもは小難しいことばかり並べる舌が、その器用さと丁寧さを今度は物理的に発揮してあらゆる快楽を与えてくるのだからたまらない。
寄せられた眉根に、裏筋を辿る舌に、鼻に抜ける甘えたような吐息に、五感全てを掻き乱されて、体中の熱が集まるのを感じる。
「……ふっ…う…」
「おい、もう、いいから」
髪を軽く引っ張って声をかけると、古泉はいったん口を離したが、またすぐに血管の浮くそこに舌を這わす。
「おかし、くれるまで、…はぁッ…イタズラ……しますよ?」
水音とともに聞こえる声は、こちらが恥ずかしくなるほど情欲に塗れていた。
あとでたっぷりくれてやるから、離せって。出ちまうだろ。
古泉は聞こえないふりで陰嚢を揉み、くびれをくすぐる。もう知らねえぞ。
「……、出る…っ」
その瞬間に肩を押しやったのに、性悪な猫は頑として動かなかった。
「……ん、っく」
「ばか!飲むなって!」
放った精を律儀に飲み干した猫は、それでも足りないというように先端をさらにちゅるっと吸い上げてきた。
掌についた白濁にも舌を這わせ、熱に浮かされたような目でこちらを見る。
ついさっき出したばかりのそこが、再び疼くのを感じた。
「下、脱げよ」
古泉を膝の上に引き上げながら、ジャージのウエストに手を掛ける。真っ黒の裾から顕になる白い肌のコントラストにくらくらしそうだ。
下を全部脱がして、シャツもまくり上げる。白い脚に鳶色の尾が絡みついた。
「あれ、この尻尾どうなってるんだ?」
「どうって、服につけているだけですよ」
「何言ってるんだ、もう脱がしただろ?」
するりと手触りのいい尾を撫でる。古泉はむずがゆそうに顔をしかめたあと、目を見開いた。
「え、」
そのまま毛流れに逆らって撫で上げていくと、滑らかな肌にたどり着く。
尾てい骨の上は相変わらず白い肌で、そこから飛び出た尾だけが艶やかな毛に覆われていた。
「なん、で」
「おい、これが、お前のイタズラだったりするのか?」
「違います、こんな……服にホチキスで留めただけだったのに」
ホチキスって、無精すぎだろう。
古泉がはっとしたように頭に触る。
猫を模した耳を乗せていたそこは、さきほどまで覗いていた黒いカチューシャが消え失せ、柔らかそうな耳が直接生えていた。

「そんな、どうして」
「……俺は、こんなことをやりそうで、しかも、実際にできちまう奴なんて、一人しか知らない」
目を合わせると、古泉はみるみるうちに顔色を失う。
「おい、落ち着けよ」
震える頭に手を伸ばすと、そこから生える耳にも触れてしまった。
「や、め、」
その耳の拾う感覚にも怯え、庇うように自分の手を伸ばし、触れた毛並みにますます恐慌を深める。悪循環だ。
「古泉、」
「もしこのまま、『ひと』でなくなってしまったら、」
「大丈夫だろ、ハロウィンは一日、地獄の蓋は一晩で閉じる。明日にはもとに戻るさ、お前も」
十分説得力のある言葉の筈だった。
「あなたは、彼女の力を知らないから」
それなのに伏せたその目にはまた、何度も俺に無力と無知を突きつける諦観の色が宿っていた。
ほら、馬鹿、そんな目をさせないために、こんな阿呆なイベントに気恥ずかしさを全部封印してそわそわと準備し家を訪ねるような、……名言はしないがそんな関係になったんじゃないのか。俺は。
「俺は、あいつの常識と良心を一番信用しているのはお前だと思うがな」
いつのまにかたぐり寄せていたシーツを供に膝を抱えてしまった相手にもう一歩いざりよる。
「確かに彼女は常識的ですが、覚えているでしょう?朝比奈さんの目は長門さんの力なしには戻らなかった。僕だってもう三年も、『普通ではない』ままです。 彼女の力は、彼女の意思とは関係なく働くんです」
振り払う手は手負いの獣のようだ。その「傷」は、たぶんあらゆる可能性のうち一番最悪なものまで予想し尽くす自分がつけたものだろうに。
そのくせ、ここまできて、隣にいる俺にはちらとも縋ろうとせずに線を引く。
本当にどうしようもない根暗野郎だよ、お前は。構わず獣の耳にキスをする。
「判ってるだろ?あいつはお前の不幸を望まない」
「あなたには解りません」
おかしな格好で、しかし卒倒しそうなほど動揺しているんだろう、まだ震えを誤魔化している古泉をシーツの上から抱きしめる。
「判るよ」
状況が状況なら、一緒に思い悩み代わりに走り回っていたと思うのだが、こいつがあまりにハルヒがと言い募るものだから、逆に落ち着いて、団長様の肩をもってやりたくなる。
「深刻がることないだろ。ただクオリティが尋常じゃないだけで、お前がやろうとしていたのと大差ない、ただのお遊びだ」
古泉の耳はすっかり垂れ、尻尾は所在なげに隠されている。うちのシャミじゃめったにしない、怯えの仕草だ。髪の毛に同化するように伏せられた耳はかすかに震えている。
「ここ、どうなってるんだ?感覚ある?」
ぴるぴると戦慄く耳に手を伸ばす。偽物の猫だったときはあんなにふてぶてしくエロかったのに、まったくこいつのネガティブ思考に付ける薬はないのかね。
「……わかりません」
検分するように、しっとりとした毛並みの耳の付け根に触ると、やや非難の混じったむずがゆそうな声をあげた。
たぶんこいつの想定の中では手術で切り落とされたりナノマシンで細胞を破壊されたりしたんだろうと考えると、この耳も尾も不憫になってくる。
こうなった理由はわからんが、映画のフィクション性も重々自覚した今、ハルヒだって古泉を化物にしたくてこんなオプションを付けたんじゃあるまい。
「こっちは?」
滑らかな肌とふっさりとした尻尾の境目に指を這わすと、息を詰めて震えるのがわかる。
「あっだめ、だめです、触らないで」
ホチキス止めの時は黒い化繊だった毛が、今ではこいつの茶がかった髪と同じ色艶に変わっている。
もともときらきらのキューティクルに覆われた髪ではあるが、毛並みのみっしりと揃ったビロードのような尻尾の手触りは極上だ。
宥めるための手が次第に異なる感触に魅了されてしまい、味わうように付け根を撫でていると、腕の中の古泉がいきなり腰を抜かしたように倒れ込んでくる。
「え、おい、どうした?」
「あ、あ、そこ、だめです……ぁんっ」
震える手で腕にしがみつかれ、その肩を支えてやると、上げられた顔は真っ赤に染まっていた。
「悪い、そんなに、その……そういう所だと思わずに、だな」
「わかっています、すみません、ただ、そういう所だったんです」
気まずげに手を離すと、古泉は思わぬ性感帯に感じてしまったのを恥じるように、膝を立てて中心を隠す。その仕草にたまらなくなる。
「やっぱり続きがしたいって言ったら呆れるか?」
はっとして卑屈な台詞を吐こうとする古泉の、その口を塞いでキスをする。困惑する目の中で叫んでいる自己嫌悪を宥めて黙らせる。
「そんなにオバケになるのが怖いなら、おとなしく悪戯される側に回れよ、古泉」
「だからって、こんな」
拒む唇に無理やりくちづける。流されろと心のなかで何度も唱えながら、性感を煽るようなキスばかり繰り返す。
籠城してたシーツに潜り込んで肌に噛み付き、全身で押さえ込んで乗り上げる。
首筋から舐め下ろした舌で乳首をねぶって、脇腹に手を這わせると、古泉の胸がひくりと痙攣した。
「気持ちいいことだけ、追ってろよ」
「んん、くぅ、」
噛み締めた音に、唇を離して顔を見下ろせば、その目には涙が滲んでいた。
「声抑えるな」
親指で乳首を押しつぶすと、途方にくれたような甘い声が漏れた。
唇と舌で腫れ上がるほど乳首を愛撫して、腹に当たるそこにはわざと触れず、内腿を撫で上げる。
「ん、んん、ふぅ、」
ねだるような色を混ぜ始めた声を無視して、腰からそっと後ろに手を伸ばす。
「…やあっ」
下敷きになったまま忘れられていた「猫」の象徴が、突然の接触にうねりだす。
しっとりとした尾を柔らかく握りこんで、撫で上げる。
「―――っ!」
古泉は、反則だろうというくらい切ない悲鳴を上げて身悶えた。
「猫が、……っ、尻尾を触らせない理由が、わかりますよ」
上気した頬が、それでも本当に嫌そうな顔をしてねめつけてきた。
「あなたでなければ、振り払って蹴り倒したって足りないくらいだ」
ああ、このろくに触らせてもくれない猫にこんなに構っちまうのは、この言葉があるからだ。
器用すぎる口が空回って不器用な態度がそれに重なってどんなにかわいくないと思っても、結局その奥にある気持ちを示されるたび毎回やられちまう。
「余計触りたくなるからやめろ」
古泉は尻尾の余韻に目元を赤くしながら囁く。
「そっちじゃなくて、……早く、」
まるで会話になっていないのに意図することはわかってしまい、床に打ち捨てていた鞄に手を伸ばしてボトルを取り出す。
そうだ、今日はハロウィンだった。

ここまでことを進めたあとに主張しても言い訳がましいが、このトンデモ変身も今日限りだと、俺の勘が告げている。もうすっかりこの非日常を満喫することに決めた俺は、今日のために用意したそれを手に、欲情に溶けた猫に問いかける。
「トリック・オア・トリート、悪戯されないためにはどうすればいいんだっけ?」
「まだ、続けるんですか……?」
「頭の沸いたイベント用意をしてたのはお前だけじゃなかったことだ」
新品のローションを指先に掬いとって、古泉の口に運ぶ。ちろりと舌を触れさせた古泉が呆れたように苦笑して、今度は指ごと含んで舐めとった。蜂蜜色のそれは、匂いも味も蜜のように甘い。
「ん、……もう、いいですよ。『Happy Halloween』、持て成しになるのは僕だったんですね」

ローションボトルを逆さまにして胸に垂らす。色白なせいですぐ赤くなる古泉の肌は、頬だけでなく耳や首筋、胸元までピンク色に染まっている。
「やっ…は、ん」
琥珀色の蜜を乳首に塗り広げる。赤く色づいた粒が甘く濡れているのは想像以上にいやらしく、辛抱ならず吸い付けば抗議するように声が漏れた。
尻尾の付け根を弄っていた手をさらに下に伸ばす。ローションで滴るほどべたべたにした指は、少しの愛撫でたやすく飲み込まれていく。
「すげえ、熱い……ずいぶん我慢してたんだな」
ここで文句の一つでも出そうなものだが、待ちかねたようにひくつくそこの感覚に翻弄されてか、古泉は片手で口を覆って熱い吐息を漏らすばかりだ。
ゆっくりと侵入させた指が付け根まで入りきっても、奥へ奥へと誘ってくる。そのまま粘膜をさすると今度は少しずつ弛緩した。
何度か、ごくゆっくりと往復を繰り返す。柔らかくなった内壁を指先で辿り、慎重に一番感じるところを探す。
ざらりと感触の違うそこをそっと押すと、古泉は耐えきれなかったように甘い声を上げた。その声にずくりと腰が熱く重たくなるのを感じながら、指を増やして緩やかに前立腺を撫でる。
いつの間にか涙と唾液でぐっしょりと濡れたシーツに顔を埋める古泉は、善がっていることは明らかだがどこか辛そうだ。一回達かせるかとローションを手に取り中心へ垂らすと、涙目で睨みつけてきた。
「なんだよ、辛いだろ…っ」
声が上ずったのは俺だってもう限界が近いからだ。それなのに人の気も知らず、意思を持ったような尾がするすると腰に絡みつく。
「……っ、ここまで、焦らしたん、ですから、」
今度は腕が背に回された。
「…ぁっ、もう……っ」
いれて、と耳元で囁かれて、本当に限界だった。
少し乱暴に指を引きぬいて、足を担ぎ上げる。先走りでどろどろの先端を入り口にあてがい、ぐっと押し込む。途端に包み込まれた熱さと柔らかさに眩暈がして、一気に奥まで突き刺した。
「んああぁっ!」
悲鳴のような、それでいて滴るように甘く濡れた嬌声があがる。
「あっ、あ…っ、んんっ」
古泉は快楽の余韻に声を震わせている。それに合わせて中も波打ってうごめく。持っていかれそうで少し腰を引けば、内壁も逃すまいとするように収縮した。
「動く、ぞ」
ぎりぎりまで抜いて、深く押し入る。また少し引くと、一番張ったところを前立腺に押し当てて、追い詰めるように、宥めるように、動かす。
「ん、んん、ふぁっ…んっ」
古泉はほとんどすすり泣きに近い声を漏らした。繋がっているところから零れる水音と蜜の匂いに酔ってしまいそうだ。
顎に滴る唾液を舐めとって、そのまま唇に噛み付く。さっきのローションの甘みが残る口内を蹂躙する。
唇を離すと目が合った。甘くかすれた声に名前を呼ばれる。快楽に溶けてもなお理性を持ったその目が、今は俺だけのものだということに、体を駆け巡る熱がいっそう上がるのを感じる。
「古泉……っ」
絶頂まで昇りつめようと腰を動かし、今日は一度もまともな愛撫を与えていない古泉の中心を握る。
「―――っ」
さんざん焦らされて限界まで張り詰めたそこは、先走りとローションで、すでに一度達したかのように濡れそぼっていた。
てらてらと光るそこを手全体でしごき上げると、連動するように胎内がきゅうきゅうと熱く締めつけてくる。
「あっあっふぅ…ん…」
せり上がる快楽を散らすように、熱い吐息を漏らす唇。色づいた頬、震える睫毛、潤んで細められた蜜色の瞳。
すべてがおそろしく扇情的で、同じくらいに愛おしく、こんな局所でしか繋がれないのがひどく惜しくなってくる。
煮詰めたシロップのような匂いに酔わされながら、頭から食べてしまいたくなる欲求を少しでも満たそうと赤く濡れた唇に吸い付く。
上と下の粘膜を同じ水音をさせて擦りつけあい、果てたのはほとんど同時だった。
達する瞬間、唇の隙間から、古泉の溶けてしまいそうなほど甘い喘ぎ声が聞こえた。


「まったく、こんな物を用意していたなんて」
あれから体位を変え、全身べたべたになっては舐めとって同じ行為を繰り返した俺たちは、相手の体液とローションに塗れた体をシャワーで流し合い(結局そこでも触り合ったのだが)、
数時間ぶりに人心地ついて相手の体液でも(略)でもないまっとうな水分補給をしていた。
そこで、さんざん喘いでかすれ声になった古泉が例のボトルを掴み上げて苦言する。
「ばかですか、あなた」
「性悪の化け物に甘いものねだられると思ったから、わざわざ準備したんじゃないか」
俺だってそれを通販し万一にも家族に開けられないようコンビニで受け取ってここまで運ぶ間にさんざん「それはないだろう」と自問したんだからもう開き直らせてくれ。
そしてあろうことかわざわざ猫耳尻尾まで調達して出迎えたお前に馬鹿と言われる筋合いはない。というようなことを言えば、古泉は気が抜けたように眉を下げる。
「化繊に戻ってくれて一安心ですけどね」
あの時、古泉を一瞬にして恐慌状態に陥れた猫化現象は、俺たちが若さに飽かせてあれこれしている間に魔法が解けたらしく、気づいた時には、あの鳶色の毛の一本も残さず作り物へと戻っていた。
古泉は安堵だけではない溜め息をつく。なんだ、不満気だな。もっと悪戯でもしたかったのか?
「もう少しまともなハロウィンになると思っていました」
お前の見通しは相変わらず甘いな。イベントごとを張り切るあまり発想がトンチキになるのはお前だけじゃなかったって、思い知っただろ。
「甘いなんて、あなたに言われる日が来るなんて想像もしませんでしたよ」
まあいいよ、お前は甘いままで。
その甘さを捨てなくていい。子どもにやるような小さな飴も、他の誰にも見せられない通販ものの淫靡な蜜も、trick・treat、何だって。何でも好きなだけやるからそのままでいろよ。