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「機関」の性の玩具としての立場から開放され、僕は心から安堵した。
けれどその安息は束の間だった。
暫くすると恐ろしい事実と対面する事になったのだ。

最も多感な中学時代を「機関」の人形として扱われ、ありとあらゆる異常な体験をさせられていた僕は
自分で自分の性欲を消化出来なくなっていた。
そもそも今まで自慰など必要なかった。
欲が堪る前に舞台に引き出され無理矢理に強すぎる異常な刺激ばかりを与えられていたのだ。
普通の自慰で満足など出来ないのは当然といえば当然だろう。
女性とのセックスを試してみたけれど飢餓感はまるで消えない。
それも当然だ。
僕はアナルにバイブを入れて放置されて達するような体なのだから。
体の奥でくすぶるようなもどかしさを抱えて、どうしようもなくて、僕は相手を探して街角だとか、公園に立った。
より深い興奮を求めて自分で体の中にバイブやローターを入れて繁華街を歩いてみたりもした。
今度は、まぁ、少しはマシだった。肉体的には。
その分精神的には酷く落ち込んだ。

僕は一生このままなのか。
男が好きだなんて思ったことなど1度も無いのに。
女性の方が可愛くて優しくて温かくて柔らかくて良いに決まっている。
ペニスなんて咥えたくも無い。
けれど僕の体の飢えを満足させるにはそういった男性器、もしくはそれに類似したものが必要なのだ。
そして僕を振り回すような圧倒的な何かを与えてくれるという条件を満たすには男性でなければならない、このジレンマ。
僕は自分に絶望しそうになった。
多分、あの部室が存在しなかったら僕はとうの昔に壊れていた。
涼宮さんの明るい笑い声が、朝比奈さんのお茶が、長門さんの静かな眼差しが、キョン君とのゲームの時間が僕の正気を繋ぎとめているのだ。
僕は時折、そうした場所で行きずりの男とセックスし、何とか欲望を飼い慣らして日々を過ごしていた。

けれどそれは長くは続かなかった。
僕が見ず知らずの男と寝ている事実をキョン君に知られてしまったのだ。
適当な男と適当なホテルに入ろうとした所を、何と偶然にも丁度家族で外食に出かけていたらしい彼に目撃されてしまったのだ。
彼は恐ろしい勢いで僕の所へ来ると、相手の男を睨みつけ「これはうちの団員だ。返してもらう」と言い放ち
僕の手首をきつく握ってその場から連れ去られた。

「お前、一体何やってんだ馬鹿!」
人気の無い裏通りに引っ張り込まれると開口一番、キョン君は僕の頬を平手で叩きそう怒鳴った。
「僕が誰とお付き合いしようと…」
「下手な嘘ついてんじゃない!お前もしかして自分が嘘が上手だと思ってんじゃないだろうな!」
もう駄目だと思った。決定的な場面を見られた。
「機関」に弄ばれていた時は無理矢理だったけれど、今の僕は自分の意思で強い刺激を求めて街を徘徊しているのだ。
いくら寛大な彼でも僕を見限るだろう。
「これが、僕です。僕は普通のセックスじゃ満足できない。『機関』が僕をそうした。あなたもあの時気がついたでしょう」
「止めろ」
「僕はお尻にバイブを入れたりとか、他人に見られたりとか、ひどい事をされないと感じない。そういう…」
「もう止めろ!」
彼に抱きしめられる。
頭を抱えられて僕より少し低いキョン君の肩に顔を押し付けるようにさせられて、どうして彼の傍はこんなに安心するんだろう、とぼんやり考える。
「お前はな、SOS団の中で一番幸せにならなきゃいけない奴なんだよ!一番ハルヒに振り回されてんだから!なのに…なんでこんな…!」
「あなたがそんなに辛く感じる事は無いんです。出来れば見なかった事にして頂けるとうれしいんですが。
軽蔑して頂いて構いませんので、一応上辺だけは普通に振舞って頂ければ有難いです」
「ふざけんな!このやろう、お前俺を馬鹿にしてやがるのか?!」
彼は泣いていた。
ほんの少しだけ声がかすれて震えてて、けれどそれを僕に知られるのは嫌だったのだろう、
僕に隠れて袖でそれを拭い、僕を正面から見据える。
「こんな事、2度とするな。ハルヒ達だって悲しむ。今日だって俺だったから良いようなものの、あいつだったら大事だぞ」
「それは確かに仰る通りですが、ならどうしろと?男の生理ですからね。出さないわけには行かない。けれど僕は普通の性行為じゃ駄目だ」
彼は酷く困った顔をした。
当たり前だろう。
彼は、本当に普通のごく健全な高校生なのだ。僕とは違う。
性欲の旺盛な年代ではあるけれど、基本的に性と恋や愛はとても近い、神聖な場所にある筈で
僕のような異常な性癖など理解できないだろうし、何より僕が係わり合いにさせたくない。
「いいんです。こんな事であなたが頭を悩ませる必要は無い。今日見た事は忘れてください。
僕も間違って誰かに目撃されたりしないようにこれからもっと気をつけますので」
「忘れられるわけないだろうが!お前俺がそんな事出来ると本気で思ってんのかこの野郎、本気で怒るぞ!」
彼が僕の胸倉を掴んで正面から睨みつけてくる。
彼のこんな表情は初めてだ。自分の為にこんな風に怒ってもらえるなんて、僕は幸せだ。
軽蔑されなかっただけで充分ですから、だから、今日の事は見なかった事にして下さい。
「無理だ。そんな事は出来ない」
ああ、そうだ。
彼は頑固な人なのだった。
「おい、古泉」
「はい」
「どうすりゃいいんだ。言え」
「…え?」

「俺は憎からず思ってる相手に苦痛を与えて喜ぶ趣味は無い。だからお前を傷付けるような真似はできんが
そうでないならある程度お前が望む事をしてやれるかもしれん。…それじゃ駄目か」
狭いトイレの個室の中で屈み、彼のズボンのベルトを外してチャックを降ろして下着をずらす。
まだ萎えたままのそれを取り出して両手で支えると舌を這わせる。
根元から付け根までを何度も往復し、それから先端を咥えるとカリの部分を舌や唇で刺激する。
キョン君が小さく呻くのが聞こえて、僕は彼にお願いするように彼の性器を口に入れたまま見上げると、
彼は僕の髪を撫でてから僕の股間に足を伸ばす。
靴のままで僕の股間に足を押し付け、それから細かく震わせるから僕は「もっと強く」とお願いする。
彼は僕の望むままに足の力を強めてくれるから、僕は気持いいという意思表示の為に
口の中の彼の性器を更に深くまで咥えて喉や頬で刺激する。
彼の性器がどんどん硬度を増していくのが嬉しい。
「痛くないか」
そう小さな声で聞かれて、もっと強くてもいいくらいだったから「もっと」と呟くと彼が少しずつ僕の股間を踏みつける力を強くしてゆく。
「…ン、あぁっ、ぁ…」
バイブの動きと彼の靴が小刻みに揺れる刺激が相まって僕の腰がいやらしく揺れてるのが彼にもよく見えるだろう。
彼は僕を軽蔑して当然なのに、その手は優しく僕の髪を撫でてくれるから泣きそうになる。
彼のペニスはしっかりと上を向いているから奥まで咥えては唇で上下に動かしたりくびれの部分を舐めて、精一杯奉仕する。
「きもち、いい、ですか」
そう問うと、彼は僕の耳をきゅっと握り「ああ、いい」と掠れた声で答えて僕の股間に置いた足を強く震わせてくれるから僕も喘ぎが漏れる。

僕も彼もノーマルで、どうする事も出来なくて、2人で困り迷った挙句に僕達はこうして時折奇妙な行為を繰り返す。
僕は彼を好きだけれどセックスは出来ないし、そもそも好きの意味が違う。彼だって同じだろう。
結果、異常で滑稽な言い合いや相談の果てに見つけた妥協点がこれだ。
僕がアナルにバイブを入れてフェラチオをしながら性器を踏まれて達するような異常者でも、僕への態度をまるで変えない彼の存在は僕には奇跡だ。

彼が僕の股間を刺激する足に力を込めて、小刻みに揺らす。
僕は「もうだめです」と漏らし、自分の快楽に負けそうになりながらも必死で彼のペニスを舐める。
彼のペニスの先からもひっきりなしにカウパーが滲んでいて、彼ももう限界なのが解る。
ああ、もっと、強く。
僕の願いが通じたのか、彼はぐっと足を強く押し付けてくれて僕はその瞬間下着の中に射精し、
少し遅れて僕の口の中に彼が精液を吐き出した。
新川さんの迎えで僕とキョン君は僕のマンションに送られる。
殆んど足腰の立たない僕をキョン君は半分抱えるように部屋に運び、そうして風呂に入れてくれる。
あの時のように髪を洗い体を洗い、湯を拭ってパジャマを着せてくれてベットに運んでくれる。
「とりあえず介護の仕事なら出来そうな気がしてきたな」
そんな事を冗談ぽく言って笑い、彼も僕のパジャマを勝手に着こんで僕の隣に潜り込む。
「満足したか」
「はい、とても。…あなたは?」
「お前上手すぎ」
…はぁ、それは光栄と言っていいんでしょうか。
「何事も下手より上手い方がいいんじゃないのか?…それよか少し寝たら何か買いにコンビニ行くか」
「はい」
新製品でチキンおろしカツが出てた、なんて事を言いながら彼が僕を抱きしめる。
僕は安心しきって目を閉じる。
ああ、彼が居ればきっと何も心配する事など無いのだ。
「古泉」
「はい」
「お前はさ、将来キレイな嫁さんを貰うんだよ」
「何です、やぶからぼうに」
「未来予想図って奴だ。…お前は白いタキシードなんぞ着て俺に『上手い事やりやがって』とかド突かれる」
「そのあなたの隣には薬指に指輪をした涼宮さんがいらっしゃる訳ですね」
「そういう恐ろしい予想図は止めろ、で、お前には可愛い娘なんぞが生まれる」
「…はぁ」
「お前は娘にメロメロで、奥さんと幸せに暮らす。それがお前の未来だ。…解ったか」
彼が僕の頭をまるで子供を寝かしつけるみたいに優しく叩く。
僕はそんな事を言う彼の子供に生まれたかった、なんて思ってそれを口にしようと思うのだけれど
安らかな眠りに引き込まれてしまう。
彼が小さく囁いた。
「お休み、古泉」

おやすみなさい。