顆粒からガッツリ系まで新種続々!勃発“みそ革命”
nikkei TRENDYnet 7月12日(火)11時3分配信
味噌のヒット商品として記憶に新しいのは、09年に発売された液状タイプのだし入り生味噌「液みそ」(マルコメ)。通常の生味噌に比べて溶かす手間がなく、ペットボトル入りなので冷蔵庫での保管がしやすいことなどが受け、すでにシリーズ合計で700万本以...
みそのヒット商品として記憶に新しいのは、09年に発売された液状タイプのだし入り生みそ「液みそ」(マルコメ)。通常の生みそに比べて溶かす手間がなく、ペットボトル入りなので冷蔵庫での保管がしやすいことなどが受け、すでにシリーズ合計で700万本以上が売れている。
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だが、みそ業界全体を見渡すと、市場ここ数年微減傾向にある。記録的な猛暑となった昨年は、市場全体でマイナス約3%という結果だった。外食を控えて家で食事をする“巣ごもり”生活が定着した半面、「家庭で作る料理が多様化したことで、みそ汁を飲むシーンが減っている」(業界関係者)という。
しかし、ここにきてみそに再び脚光が集まりつつある。塩やしょうゆのような定番調味料として使える顆粒タイプや、男性向けの“ガッツリ系“、パン食に合うコンソメ味のインスタントみそ汁など、新感覚のみそが次々に登場。まさに、液みそ以来の“みそ革命”が起きようとしている。東日本大震災以降、「癒やされたい」「ホッとしたい」という消費者のニーズが増え、“日本の味”に原点回帰する傾向が強まっていることが追い風となっている。
何でもみそ味に変える“魔法の粒”
ヒット候補の筆頭は、今年2月から北海道、東北地方で販売されている顆粒状のみそ調味料「パラミソ(合わせみそ、赤みそタイプ)」(かねさ)だ。すでに「北海道、東北エリアでは予想を上回る反響」(かねさ企画開発室の高田浄室長)で、これから全国展開に乗り出す。
パラミソは、みそ汁としても飲めるが、焼く、煮る、蒸すといったあらゆる料理に使えるみそ調味料として打ち出したところが斬新。だし入りみそをかねさ独自の製法でフリーズドライにしており、乾燥させるときに熱を加えずに真空凍結したことでみその味や香りを保っているという。これまでの生みそや即席みそ汁に比べて、(1)湯に溶けやすく、(2)手を汚さずに使え、(3)コンパクトに保管できるのがメリットだ。
パラミソを使った料理は、簡単、便利がキーワード。なかでも、かねさが薦めるのは人気のシリコン製のレンジ調理グッズを使った蒸し料理だ。生みそや液みそでは蒸し料理の仕上がりが水っぽくなることもあったが、パラミソならその心配はなく、野菜などの素材から出る水分だけで蒸し料理ができる。「これまではみそ=みそ汁というイメージで固定され、みそは他の家庭料理にはあまり使われなかった。だが実は、みそこそ“万能調味料”。パラミソはみその風味とだしの旨み、コクを加えられ、手軽にこれまでにない味を出せる」(高田氏)という。
かねさは店頭や販促パンフレットでも、みそを使った意外なレシピを提案している。目を引くのは、サンドイッチやパスタといった洋食メニューへの応用だ。実はパラミソは業務用としても展開されており、「隠し味として使う洋食店からの引き合いが多い」(高田氏)という。海外の展示会でも評価は高く、今年6月からは缶入りタイプがニューヨークの複数のスーパーなどで販売されている。
試しに「みそサンドイッチ」を自宅で作ってみた。ゆで卵を潰してパラミソ、マヨネーズ、コショウを入れて混ぜ、パンに挟むだけなのだが、実はみその風味は卵、マヨネーズとよく合う。勢いに乗って、チャーハンや焼きうどん、パスタにもパラミソを振りかけて食べたが、やはり新感覚の味に驚いた。みそとマヨネーズ、バター、ケチャップなど他の調味料との意外なコラボを試して、しばらく楽しめそうだ。
豚骨?コンソメ?仰天の新・みそ汁
「パラミソ」に力を入れるかねさに対し、大手のハナマルキはみそ汁の新しい方向性を提案する。9月に発売するのが、即席タイプのみそ汁「ご飯がすすむ1杯。スタミナみそ汁」「パンと一緒にあったかおみそ汁(しょうが、とうがらし)」だ。いずれも、これまでなかった新感覚のみそ汁として、「スーパーなどのバイヤーの反応が非常に良い」(ハナマルキのマーケティング部、仁科徹室長)という。
「ご飯がすすむ1杯。スタミナみそ汁」は、男性がターゲット。これまで即席タイプのみそ汁は薄味だったり、野菜を多く入れてヘルシー感を強めたりと女性を狙った商品が多かったが、あえて男性受けを狙うことで新市場を取ろうとしている。
中身は肉そぼろ、ニラ、キャベツ、モヤシがたっぷりと入り、こってりとした豚汁ベースのスープとみそが合わさった“挑戦的“な味。非常に食欲がそそられるガッツリ系みそ汁だ。ご飯の友としてだけではなく、例えばインスタントの麺を入れれば“豚骨みそラーメン”にもなる。
一方、「パンと一緒にあったかおみそ汁」は、カップで飲む粉末タイプのだし入りみそ汁。だしはコンソメベースで、それがみそと合わさった新感覚の味。みその風味はあまり主張しすぎず、むしろショウガや唐辛子が効いているため、すっきりと飲める。ハナマルキの狙い通り、パンやスクランブルエッグなどの洋風の朝食に合わせても違和感を憶えることはない。「本来のみそ汁文化を守るのは重要だが、消費者のライフスタイルの変化に合わせてみそも進化しないと市場は縮小するばかり。スタミナみそ汁とパンと一緒にあったかおみそ汁が受け入れられれば、バリエーション展開を含めて今後も新たなチャレンジをしていく」と、仁科氏は意気込む。
調味料として新市場を開拓するパラミソに、みそ汁の新たな飲用シーンを作り出すハナマルキの新インスタントみそ汁。他にもサラダなどにかけてマヨネーズ代わりに使える「みそチャップ」(かねさ)や、「野菜がおいしいディップソース」(マルコメ)など、今年は新感覚のみそが大増殖している。みそが再び食卓の定番になる日は近いだろう。
(文/勝俣 哲生=日経トレンディ)
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最終更新:7月12日(火)11時3分