古代ワニ、史上最大のヘビとの戦い
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 9月19日(月)16時26分配信
巨大ヘビ、ティタノボアが泳ぎ回る川底で獲物を追う新発見の古代ワニ(想像図)。
(Illustration by Danielle Byerley Florida Museum of Natural History)
史上最大のヘビが発見されているコロンビアの炭田で、また貴重な発見があった。体長6メートルに及ぶ新種の古代ワニだ。
アケロンティスクス・グアヒラエンシス(Acherontisuchus guajiraensis)と名付けられたこのワニは6000万年前、史上最大のヘビ、ティタノボア・セレホネンシス(Titanoboa cerrejonensis)など多くの爬虫類とともに、地球上に出現したばかりの熱帯雨林を流れる川の中で生きていた。現代のアマゾン水系に似たこの川は、複雑に蛇行しながら現在のカリブ海に流れ込んでいた。
アケロンティスクス・グアヒラエンシスは、この広大な川の中で、長い鼻先を使って魚を補食していたと考えられる。しかし、魚はティタノボアの好物でもあった。つまり、この2つの巨大生物が獲物をめぐり命を賭けた争いを繰り広げていた可能性は高く、若いワニがヘビの餌になったこともあっただろうと専門家は話す。
研究を率いたアレックス・ヘイスティングス氏は、成長中のワニにとっては実際、「魚を捕まえようとする時に、ティタノボアを刺激して自分が狙われないようにすることが、対処すべき」問題の1つだったのではないかと、軽妙な表現で説明する。フロリダ大学の大学院に在籍するヘイスティングス氏は、同大学にあるフロリダ自然史博物館で古脊椎動物を研究している。
◆化石から見えてくるワニの進化
古代ワニの化石は、世界最大級の露天掘りの炭田、コロンビアのセレホン炭田で1994年にはじめて発掘された。2004~2007年に現地探査が行われた際にこの場所から多数の骨が発掘され、それらをつなぎ合わせて、成体の標本を作ることができたという。
化石の分析からアケロンティスクス・グアヒラエンシスは、海岸や海洋に生息していたクロコダイル型類(Crocodyliform)であるディロサウルス科に属する種であることが判明した。クロコダイル型類はワニ目に属する爬虫類だ。ワニ目にはクロコダイルのほか、アリゲーター、カイマン、ガビアルなどが含まれる。
アイオワ大学の古生物学者クリストファー・ブロシュ氏は、この新種の発見から、今なお来歴があまりはっきりしないディロサウルス類の進化と最終的な運命について、いくつか洞察が得られるかもしれないと述べている。
例えば、頑強なディロサウルス類は、約7500万年前にアフリカ大陸から大西洋を文字通り泳ぎ渡って南アメリカ大陸に到来したことが知られている。そして彼らは、6550万年前に恐竜の大半を死に追いやった大量絶滅の時期を生き延びた少数の大型動物の中に含まれていたのだ。ディロサウルス科のワニはその後、さまざまな大きさや形に進化し、繁栄していったのだとブロシュ氏は話す。同氏は今回の研究には参加していない。
しかしブロシュ氏は、気候など環境要因が最終的にディロサウルス類を弱らせたと推測する。化石記録から見るかぎり、始新世に地球が寒冷化した時期に、ディロサウルス類は衰退していった。
◆生存のため生息域を川に移す
ディロサウルス科のワニについては、若い間だけ内陸で過ごし、成熟した後は繁殖のため海に戻っていくという説があったが、今回の発見で、その説は捨てられることになりそうだ。
新種のワニからは、この種が一生を川で過ごしていたとする考えを支持する特徴が2つ見つかっている。1つは成体標本の巨大さであり、もう1つは細長い骨盤だと、ヘイスティングス氏は説明する。このような骨格が示唆するのは、このワニが、大きな骨盤を必要としない穏やかな水域に、時間をかけて適応していたということだ。海洋の激しい潮流に対応して生きていた海生のクロコダイル型類では、広がった大きな骨盤が特徴となっている。
ヘイスティングス氏はまた、この古代ワニが最初に生息域を川に移したのは、地上の大半の生物を絶滅させた環境を生き延びる戦略だったのではないかと推測する。「全長13メートルもあるヘビが近くにいるにもかかわらず、この新しい生息環境に移り住んで適応できたというのは、見事なことだ」。
この研究は「Palaeontology」誌の9月号に掲載された。
Christine Dell'Amore for National Geographic News
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最終更新:9月19日(月)16時26分