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300:なめたん ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:19:32.27 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
『不協16和音』
きっと蒸し暑い日だったから、こんな不協和音が生まれたんだ…。
休日ティータイムも終わり私たち軽音楽部は練習準備に取りかかる。しかしメンバーが一人足りない。
「遅いわねぇ唯ちゃん…」
ムギは眉毛を八の字型にし不安な眼差しを律に向けた。
「メールもこないしなー。何してんだ唯はー」
珍しく「今日はガッツリ練習しようぜー」なんてやる気を見せていた律が出鼻を挫かれフラストレーションを溜め込んでいる。
梓は梓でいつもそのやる気を出してくださいと言わんばかりの表情で
「せっかく律先輩もやる気あるのに…唯先輩は何してるんですかね…」
等とぼやいていた。こうなると誰も動かない部活なので私は渋々指揮を取り唯抜きで合わせることにした。

305: ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:26:03.55 ID:rQxRso9IO (20) ID AA

―――ジャーン!…ツインギターに慣れたためか唯抜きの演奏はどことなく厚みのない演奏となった。
「うん…まあまあだな」
特段言うべきこともなかったので私は当たり障りない感想を口にする。
各々気になった所を修正し、もう一度合わせ練習を始めようと持ち場についた。

ガチャ

楽器以外の音が室内に響く。その音と共に遅刻者がケーキケーキなどとへらへら入室してきたことがしゃくに障ったのか梓が語気を荒げる。
「遅すぎです!しかも悪怯れもせず…皆さん一生懸命練習していたときに何してたんですか!」

307: ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:31:04.26 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
梓の怒りように驚いたのか
「えっ?えっ?あずにゃんどうして怒ってるの?澪ちゃんどうして!?」
と私の名前を呟きながら唯はすがりついてきた。

あまりの天然ぶりにさすがのムギも梓の肩を持つ。
「梓ちゃんが怒るのも無理ないわ…。」
部長という立場もあるからか、いつもなら笑って済ます律も
「遅れてきた上にその態度じゃ誰だって怒るわ…」
なんて呆れてものが言えんとばかりに吐き捨てた。

309: ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:37:44.67 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
「え…なんで…みんなどうしたの…?うぅ…えぐ…えぐっ…」
そうしてたちまち四面楚歌にさらされた唯は周りの反応が予想外にキツかったからか涙ぐんでいる。
自業自得とは言え袋叩きにしてはさすがに可哀想だと感じた私は普段通りを心がけて唯に話し掛けた。

「唯、みんな遅刻をしたことに怒っているわけじゃないんだぞ?唯が遅刻するって連絡を入れてくれなかったから」
…とここまで話すと「ほえ?」なんて間の抜けた声を出した唯が梓に振り返る。
「あずにゃん!今日は急に補習が入ったってメール送ったじゃん!」
梓はそんなはずありませんと否定しながら確認を取り
「メールはきてません。嘘の言い訳なんてやめてくださいよ…最低ですっ…」
それっきり信じていた弟に裏切られ島流しされた魔術士のように黙りきってしまった。

311: ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:42:05.45 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
「だいたいよー、私の送ったメールに返信ぐらいできたろー?」
沈黙に堪えかねた律の台詞だ。
「ええ!?りっちゃんメールなんてもらってないよ!…ほら!」
自分のケータイを見せてまわる。
「そんなはずないだろー?」


ここにきて不協和音の原因が現代科学に浸かり切った私たちの感性にあるのではないかと疑い
「唯、ちょっと電話見せて。」
私は唯のケータイを手にした。味方が私だけだと思ってか、唯は私にしがみついて離れない。ギュッと抱きつく彼女は赤ん坊のようだ。
そんな唯の体温を感じながら私は仮説が確信に変わったと一人納得し
「唯、律からのメールはきてるぞ。」
事実を端的に伝えた。
「あと、梓にもちゃんとメール出してるな。」
唯の頭を撫で
「みんな、唯は嘘をついてない。悪いのはこいつだ。」
そう言って唯の携帯電話をかかげた。

313:なめたん ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:45:30.68 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
「どういうこと?」
ムギが口を開く。他の人間も同じことを聞きたかったのだろうがあまりの新説に開いた口がふさがらないといったところだった。
「簡単なこと。ケータイが壊れてるんだ。さっきから私の電話に何度メールを飛ばしても届かないし、送られてきたメールもなぜかサーバーに蓄まって自動受信が出来ない。」
唯はわかってなさそうだが他のメンバーには伝わったようだし誤解も晴れた…。よかったよかった。みんなで唯に謝って万事解決だな…。


梓が半泣きで「先輩を信じなかった私のこと…許してくれますか…?」と言ったり、そんな梓に「ぎゅっ☆」っと抱きついてなでなでしていた唯をアレな視線でムギが見ていたり…
とりあえず私たちは結局何事もなくいつも通りに部活を終えることができた。


316: ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:50:51.13 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
電話についてもうっかり落とす、誤って洗濯機に突っ込んだところを間一髪憂ちゃんが助けた…
のに珍しく手伝った皿洗いで水浸しの洗面器にゴーしちゃったのが故障の一因だと判明した。
というかそれだけ存外に扱ってよく動くな…。

唯のケータイは他にも
音がでない
勝手に電源が切れる
通話ボタンが取れかけている上に反応が悪い
等々、その不良っぷりを披露してくれた。


部活の帰り道、それにしてもと前置きした唯が
「澪ちゃんよくわかったよねー」
と声を掛けてきた。私はこれでも電子機器に強かったりする。部活メンバーでは一番いろいろ知っていると自負してるぐらいだ。
ヘッドホンもこだわりを持って今のを選んだしケータイも気に入っているため長く使っている。
「澪ちゃんが電気関係に強くて助かったよ~!まさか私のパカリンが調子悪いなんて思わなかった~」
パカリンとはおそらく携帯電話の名前だろう。本当に何にでも名前を付けている唯であった。

318:なめたん ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:53:42.60 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
「うん、でもさ」
ただ、唯は少し勘違いしているようだったので
「私は唯の反応見て嘘はついてないって思ったよ。」
訂正しておいた。
「澪ちゃん…」
「そもそも唯が嘘つくわけな」
「澪ちゃ~ん!!」
左から音速を越える物体が体当たりしてきた。
「ありがとう!私は一生澪ちゃんに付いて行くよ!!」
いつも梓にやってることと同じことを私にしている唯はニコニコ顔で私の胸元にうずくまっている。

325:なめたん ◆k05EaQk1Yg :sage:07/18(土) 21:58:51.89 ID:rQxRso9IO (20) ID AA
「ゆっ唯!恥ずかしいから…その…」

ムギや律の視線が痛い…。ムギははぁはぁ言ってる気がするし律は「私がやったら殴られるのに…」と複雑な表情を浮かべているような…。

梓も唯に寂しい…なんてオーラを醸し出しているし…やれやれ、どんな関係なんだ私たちは。
でもまあいいか。唯のぬくもりを感じながら今度は意識して唯の頭を撫でてやった。


終わり…続くけど