410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 18:00:07.42 ID:hRY/T06g0
紬「りっちゃんから時計回りでお願い」
律「はいよ」
私も手元のカードを取る。
ふむ。
ダイヤの4、ハートの4のワンペアに、
あとはクローバーの9、スペードの2、ダイヤの6と、バラバラ、か。
ふと正面に目をやると、唯先輩が、ぷるぷると肩を震わせていた。
どうしたんだろうか。まさか、トランプに何か仕掛けが……?
唯「……ふ、くくく……」
紬「唯ちゃん、アウト」
唯「あははははははは!!」
アウトという声に、我慢する必要がなくなったのか、普通に爆笑しだす唯先輩。
411 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 18:04:59.53 ID:hRY/T06g0
憂「お、お姉ちゃん?」
唯「ふふ、だってこれは、ふはは、ずるいもん」
そういって、唯先輩はカードを見られないように伏せて、
おとなしくエージェントに連行された。
さわさわ。
一人だけ四回とか。頑張りすぎです唯先輩。
だけど……。だからこそ、これは、絶対に負けられない。
そういえば。
心なしか澪先輩と憂、それに和先輩も笑いを堪えているような……。
やっぱり、カードに何か仕掛けがあるのかな?
413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 18:10:07.10 ID:hRY/T06g0
一順目の私の番。
当初の予定通り、揃っていない三枚を切り、新たに三枚を取る。
クローバーの2、ダイヤの8、スペードの8。
これでツーペア。二順目は2を捨ててフルハウス狙いかな。
最後に順番の回る唯先輩は、一枚だけを捨てた。
私と同じツーペアでのフルハウス狙いか、あるいはストレートやフラッシュだろうか。
二順目でカードを拾った律先輩が、ちょっと笑いそうになっていた。
やはりか。
カードに何か仕掛けてあるのは間違いない。
二順目で8か4を期待したが、アタリは来ず。
結局私はツーペアで上がりとなった。
435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 19:56:27.58 ID:hRY/T06g0
紬「全員終わったかしら。それじゃあ、りっちゃんからカードを見せてもらえる?」
律「分かった」
律先輩がカードをオープンして、皆に見せる。
律「私は、3のワンペアだ」
開かれたカードの中に、私の手には一度も渡らなかった『絵札』が存在した。
絵札は、「ジャック」、「クイーン」、「キング」の三枚x四種の計十二枚。
これらには、通常その名のとおり「王子」「女王」「王様」が描かれているものだが。
436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 19:58:24.42 ID:hRY/T06g0
律先輩の手持ちカード「クイーン」には
『ナガレワ・ロス』という歴史上の偉人(或いは異人)が描かれていた。
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ナガレワ・ロス [Nagarewa Ross]
(1968~ アメリカ)
437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 19:59:19.18 ID:hRY/T06g0
澪「……」
憂「……」
和「……」
唯「……」
梓「……ふふ」
紬「梓ちゃん、アウト」
梓「いや、これ誰ですか!! 何やった人なんですか!? 知らないですよ、こんなファニーな名前の偉人!!」
連行される私。
なるほど。だから皆笑いを堪えていたのか。
私の手には絵札が無かったから、他の人に高確率で絵札が渡っていたのは頷ける。
ていうか、耐性もてなかった分、私だけ不利だ。
でも、クイーンはもう大丈夫。残る絵札はジャックとキング。
気を引き締めな「ひゃん!」……いと。
お尻をなでなでされた。
今更だけどこの罰ゲームどこかおかしいと思う。
440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:05:17.93 ID:hRY/T06g0
紬「じゃあ、次は澪ちゃんね」
澪「私は……クローバーのフラッシュ」
律「なっ!?」
憂「澪さんすごーい」
手札を公開した澪先輩。
言葉通り、クローバーが五枚揃っていた。
むぅ。この時点で私の勝ちは無しか。
しかし、澪先輩のカードの中には、
またしても『ナガレワ・ロス』が混入されていた。
441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:09:14.54 ID:hRY/T06g0
梓「……」
澪「……」
憂「……」
和「……」
律「……ふふっ、お前……こいつでフラッシュ作るなよ……」
唯「……ふ」
紬「唯ちゃん、りっちゃん、アウトぉ♪」
唯「ああああっ!!」
律「ちくしょおおおおっ!!」
和「唯、本当弱いわね……」
それは私も思ってたこと。
だけど、そんなことより。
憂、強え!!
未だに0回とか。いや、ちょくちょく笑いそうにはなってるみたいなんだけど。
憂をここまでさせるのは、やはり勝利への執念か。
憂「お姉ちゃん……」
否。姉への執念だ。
444 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:14:03.94 ID:hRY/T06g0
前方ではおしおきされる唯先輩と律先輩。
唯先輩に至っては、すでに慣れてきている感じさえする。
紬「……唯ちゃん」
唯「ふぇ?」
紬「十回超えたら、おしおきもパワーアップするから」
唯「まじですか」
紬「大まじです♪」
嬉しそうだなぁ、ムギ先輩。
445 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:17:46.92 ID:hRY/T06g0
紬「次は、和さんよ」
和「私も律と同じ。ワンペアよ」
カードがオープンされる。
確率的に見て、ジャックかキングのいずれかが紛れ込んでいてもおかしくない。
私は、ゆっくりとオープンされたカードに目をやった。
揃っているのは5。この段階で最下位は律先輩となる。
446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:21:30.59 ID:hRY/T06g0
そして私は、そこに混入されている絵札を見つけてしまった。
,.-─ ─-、─-、
, イ)ィ -─ ──- 、ミヽ
ノ /,.-‐'"´ `ヾj ii / Λ
,イ// ^ヽj(二フ'"´ ̄`ヾ、ノイ{
ノ/,/ミ三ニヲ´ ゙、ノi!
{V /ミ三二,イ , -─ Yソ
レ'/三二彡イ .:ィこラ ;:こラ j{
V;;;::. ;ヲヾ!V ー '′ i ー ' ソ
Vニミ( 入 、 r j ,′
ヾミ、`ゝ ` ー--‐'ゞニ<‐-イ
ヽ ヽ -''ニニ‐ /
| `、 ⌒ ,/
| > ---- r‐'´
ヽ_ |
ヽ _ _ 」
ググレカス [ gugurecus ]
(西暦一世紀前半~没年不明)
448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:25:44.37 ID:hRY/T06g0
律「……」
唯「……」
梓「……」
澪「……」
憂「……」
和「……」
どっちだよ!?
ジャックなのかキングなのかどっちだよ!?
わかんないよ!!
だけど、クイーンの時とは違う。
覚悟していた分だけ、ダメージは低い。
奇しくも全員セーフとなった。
449 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:30:46.36 ID:hRY/T06g0
紬「じゃあ次、憂ちゃんね」
憂「はい。ええと、私も一緒で、7のワンペアです」
憂のカードは、7のワンペア。
『ググレカス』と『ナガレワ・ロス』が一枚ずつ混入していたが、
そこにキングの姿は無かった。
いや、『ググレカス』がキングなのかもしれないけど。
……となると、残り一種の絵札を所持するのは唯先輩か。
450 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:35:58.17 ID:hRY/T06g0
紬「次は、梓ちゃんね」
梓「はい」
私はゆっくりとカードをオープン。
絵札もないし、数字だけのツーペアだ。
これほどこのゲームに優しい上がり方はあるまい。
和「ツーペア。ということは、唯か律のどちらかが最下位になるわね」
律「唯、私はお前を信じてる」
唯「任せて、りっちゃん」
紬「では、最後。唯ちゃんお願い」
唯「私はねー」
唯先輩は、自分の手札を裏返す。
大丈夫。覚悟は十分できてる。
たとえどんな偉人が来ても、私は耐え切れる!
451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:39:57.08 ID:hRY/T06g0
唯「ポーション高杉のフォーカード」
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ヽ、 _,/ λ、 ヽ、 _,/ λ、 ヽ、 _,/ λ、 ヽ、 _,/ λ、
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ポーション高杉【P.Takasugi】
(2006~ 日本)
アッサムティー吹いた。
456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 20:45:42.08 ID:hRY/T06g0
紬「全員、アウトね」
ああ、唯先輩は、一発目からこれに出くわしていたのか。
カードを開けば、おんなじ顔した東洋のおっさんが四人で腕組んでコンニチワ。
そりゃ笑うよ。ずるいもん。
フォーカードって何気に凄いけど、
四人の英雄(ポーション高杉)のインパクトが強すぎてそれについて誰も触れない不思議。
お尻をさわさわされたり、耳たぶを甘噛みされたり、
息を吹きかけられたり、ハリセンでしばかれたりして、
各々が自分の席へと戻る。
461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:02:19.55 ID:hRY/T06g0
私も席に戻ろうとしたところで、
隣の席(唯先輩)のテーブルにおおっぴろげにされている四人の勇者と目が合った。
やべえ。
梓「あの、唯先輩」
唯「なんだい、あずにゃん?」
梓「それ」
唯「……どれ?」
梓「その、……四人の高杉さん」
唯「…………」
467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:06:36.86 ID:hRY/T06g0
梓「そ……れ、片付けて……もらえませ……っく……ふふ」
唯「……ふふ」
紬「唯ちゃん、梓ちゃん、アウト」
梓「だああああ、もう、なんですぐ伏せてくれなかったんですかあぁぁ!!」
唯「だ、誰か笑うと思って……」
梓「自爆してるじゃないですか! もう、馬鹿!唯先輩の馬鹿ぁぁぁ!!大好き!!」
澪「……ふふっ」
紬「澪ちゃん、アウト」
澪「梓、爽やかに告白しないでくれ」
もはや泥試合だった。
476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:14:55.01 ID:hRY/T06g0
ここまでの成績
律 3
澪 3
唯 7
憂 1
梓 4
和 2
紬「ポーカーの最下位はりっちゃんだから……ペナルティはこうなるわね」
律 6
澪 3
唯 7
憂 1
梓 4
和 2
唯「りっちゃん!! りっちゃんなら追いついてくれるって信じてた!」
律「うわあああ、最下位は嫌だぁぁっ!!」
澪「(律が最下位なら、私が頑張れば……)」
ていうか。
ていうか、地味にやばい。
唯先輩が最下位独走なのは願ってもない展開だけれど、
憂と和先輩が強すぎる。
二人の笑いのツボを見つけ出して、ピンポイントで攻撃でもしない限り、私に勝ち目がない。
479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:19:57.18 ID:hRY/T06g0
紬「次は、大貧民をしましょう」
澪「トランプは……そのままなの?」
紬「ええ」
律「キツいなー」
紬「それに加えて、この大貧民では、日本語を禁止するわ」
唯「え?」
紬「会話は英語のみ。日本語を喋ったら、その時点で笑い数+1のペナルティを科すわ」
和「なるほど。遊び感覚で英語を勉強するのね。ステキな案だわ」
憂「絶対違うと思いますよ」
483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:23:14.96 ID:hRY/T06g0
英語のみというのはなかなかきつい。
それ以前に。ひとつ聞いておかなくてはならないことがある。
笑いそうになるかもしれないけど、誰かが聞かなきゃゲームにならないのだ。
梓「質問、いいですか?」
紬「どうぞ、梓ちゃん」
梓「……絵札、の強さの順位がわかりません」
ナガレワ・ロス、ググレカス、ポーション高杉。
寧ろ、分かる方がおかしいと思う。
紬「ナガレワ・ロス<ポーション高杉<ググレカスよ」
梓「なるほど」
488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:26:47.91 ID:hRY/T06g0
ナガレワ・ロスがジャックで、
ググレカスがキングだったか。
……あれ?
律「え?」
澪「……」
憂「……」
唯「……」
和「……」
梓「……」
誰も突っ込まないのなら、私がいきますよ?
そう考えたところで、澪先輩が口を開く。
澪「ムギ」
紬「なにかしら、澪ちゃん」
492 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:32:28.64 ID:hRY/T06g0
澪「ポーション高杉さんは、その……クイーンなのか?」
律先輩が、おい、やめろ!という目つきで澪先輩を睨む。
紬「Yes」
澪「いや、これ普通のおっさんだろ!!ていうか、僅か三年で老けすぎだろ!!」
憂「……」
唯「……」
和「……」
梓「……」
律「……くっ」
紬「りっちゃん、アウトー♪」
律「バカ澪ぉぉぉぉ!!言わなくていいのにッ!!」
スパーン!!
律「ってえええぇぇぇ!!」
律先輩、実質笑った回数は4回なのに、最下位タイ。
一人だけハリセン。
なんだか可哀想になってきた。
495 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:39:48.93 ID:hRY/T06g0
紬「他に質問がなければ、カード配るわね」
そして、偉人トランプ第二回戦『日本語禁止の大貧民』が開始された。
六人だから、一人当たり手持ちカード八枚か九枚ということになる。
短期決戦になるだろう。
紬「それでは開始します。 今度は、澪ちゃんから、反時計回りにお願いね」
澪「わかった」
紬「澪ちゃん、アウトー」
澪「あっ!!」
和「……ふふっ」
不覚にも。
かわいいなぁ、澪先輩。
日本語禁止って言われたばっかりなのに。
紬「和さんも、アウトね」
和「日本語ダメって言われたばかりじゃないの」
澪「そうだっ――ひゃっ!?」
さわさわ。
501 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:48:29.21 ID:hRY/T06g0
ゲーム終わんないで、皆さんもうちょっと頑張ってください。
英語で言おうとしたけど、間違えたくないので心の中だけにとどめた。
おしおきされた澪先輩と和先輩が戻り、大貧民再開。
澪先輩が最初に捨てたカードは、『3』を二枚。
和先輩は、『4』を飛ばして『5』を二枚。
憂は『9』を二枚。
ちくしょう。8出そうと思ったのに。
梓「pass」
唯「pass too !! I don't ...card」
梓「……」
澪「……」
和「……」
憂「……」
505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:55:04.24 ID:hRY/T06g0
唯「りっちゃん's turn!」
律「……」
憂「ふふっ」
梓「……ふ」
紬「憂ちゃん、梓ちゃん、アウトー」
梓「うわああああ!!もう、やめてくださいよ唯先輩!!」
憂「お姉ちゃん、haveくらい分かるでしょ……」
せっかく憂が笑ったのに、私まで笑ってしまった。
隣で自信満々に『私は使わない』とか言い出すんだもん。
はむっ。
憂「きゃん!?」
さわさわ。
梓「ひっ!?……、あ、ちょっと慣れてきた」
507 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:58:03.07 ID:hRY/T06g0
しかし、マズイ。
こういう種目では、逆に唯先輩の英語力が脅威だ。
再開された直後。
律先輩が無言で『ポーション高杉』を二枚出し、即座に唯先輩が撃沈した。
ここまでの成績
律 7
澪 4
唯 8
憂 2
梓 5
和 3
508 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 21:59:40.42 ID:hRY/T06g0
律「All members pass?(全員パスでいいのか?)」
カタコトだなー。
澪「yes」
和「yes」
憂「yes」
唯「yeah」
梓「yes」
511 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:05:53.35 ID:hRY/T06g0
律「Please turn me for a long time!(長い間私を回してください)」
澪「ぶふぉっ!」
和「く、ふふ」
憂「……ふふ」
梓「……」
唯「?」
ずっと私のターン!と言おうとしたんだろうか。
紬「澪ちゃん、和ちゃん、憂ちゃん、アウトー」
なんてことだ。
このゲームは、頭が悪い方が有利ではないか。
唯先輩に至っては、多分律先輩が何を言ったのかすらわかってないし。
513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:09:19.15 ID:hRY/T06g0
おしおきされた三人が戻り、ゲーム再開。
律先輩の出したカードは、『2』。
『2』……だと?
律「……」
ニヤリ、と笑みを浮かべる律先輩。
紬「りっちゃん、アウトー」
律「えええええ!?」
律「今のはそういう笑いじゃなくて、ほら、勝ちを確信してほくそ笑んだだけ……いってええええっ!」
見事な自爆です、律先輩。
澪「……く、ふふ」
紬「澪ちゃんアウトー」
澪「いや、今のは仕方ない」
さわさわ
澪「ひっ!……もう、なんなんだよこの罰ゲーム!」
517 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:14:51.94 ID:hRY/T06g0
律先輩が『2』を出したところから再開。
律「All members pass?(全員パスでいいんだよな?)」
唯「fuck」
梓「……」
澪「……」
憂「……」
和「……」
521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:17:26.05 ID:hRY/T06g0
律「Is there someone?(誰かいるかー?)」
唯「shit」
梓「……ふふっ」
澪「……く、ふふ」
憂「……っ!!」
和「……ふふ」
紬「梓ちゃん、澪ちゃん、憂ちゃん、和ちゃん、アウトー」
澪「唯!お前意味わかって言ってんのか!?」
憂「わ、私耐えましたよ、今!?」
紬「だーめ♪」
さわさわ。
木霊する少女達の悲鳴。
526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:21:59.51 ID:hRY/T06g0
再び再開。
律先輩が出したカードは、『A』
澪「(律の手持ちは残り五枚……強いカードから捨てて革命上がりか……?)」
ていうか、律先輩手持ちカード強すぎませんか?
『ポーション高杉』二枚に、『2』を一枚、『A』が一枚って。
『A』の後出せるのは『2』か、『ジョーカー』のみだが……。
あれ? そういえば、このトランプ、ジョーカーないのかな?
和「(Aから捨てるということは、2で追撃されてもそれを返せるカードを所持しているということ、かしら?)」
憂「(律さんが革命狙いなら、ジョーカー出されることを承知で、弱くなる『2』を捨てておいた方が得策……)」
澪「……」
和「……」
憂「……」
532 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:27:13.62 ID:hRY/T06g0
沈黙する三人。
私はそもそも、2もジョーカーも持っていないので、出しようが無い。
唯「(誰も出さないのかな?)」
ここで、憂が『2』を出した。
律「(勝ったな)」
律「It's your defeat(お前らの負けだぜ)」
バシィッ!
律先輩は、その上に一枚のカードを叩きつける。
538 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:30:57.01 ID:hRY/T06g0
_,, 、 --- 、_
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,i'´ ̄ ヽ:. :. :. :.ヽ: : : ヽ
/、´ ` \:. :. :. :.ヽ: : :',
y_、 ! -- 、 ヽ:. :. :. :. \:}
/=‐' y_、、 ヽ ヽ:. :. :. :./ハ!
i´ / ´ ‐ヾ‐ ゞ:. :./:./:::}
Vゝ、_ 、 シ -‐=く::::ノ
}rュェ、 l 〃 ,__ソ ノミ
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{丶 ノ / /ミ
ゝ=z‐ '_ , /´
/´ー - __, イ
スッテーン・コ・ロリーン[Steen kou rorin]
(1872~1962 インド)
梓「……」
澪「……」
和「……」
憂「……」
唯「……」
え?これジョーカー?
541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:34:24.45 ID:hRY/T06g0
律「……」
唯「……ふふっ」
紬「唯ちゃん、アウト~♪」
唯「いや、あの……絵札と一緒の柄だし。さっきのポーカーでこの人いなかったし」
必死に突っ込みにまわる唯先輩。
正直、かわいい。
澪「く……ふふ」
紬「澪ちゃんも、アウトー」
澪「ああ、もう!唯!ポーカーで居なかったとか言わなくていいだろ!?」
ここまでの成績
律 8
澪 8
唯 9
憂 4
梓 6
和 5
紬「唯ちゃん、リーチよ?」
唯「もう笑わないもん」
545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:39:48.72 ID:hRY/T06g0
三度、再開。
ジョーカーを出した律先輩の手持ちカードは四枚。
これはおそらく、革命だろうと思う。
微妙なカードばかりの私にとっては、結構助かる。
思ったとおり、律先輩は、四枚のカードを突きつけた。
律「Revolution!!YEAH!!」
出されたカードは、『4』が四枚。
律先輩はこれで一位抜けし、強弱が反転する。
澪「(上がったのが律で助かったな)」
澪先輩の出したカードは、A。
和「……」
553 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:44:17.86 ID:hRY/T06g0
和先輩の出したカードは、ググレカス。
分かってはいても、この絵札を不意に出されると結構来るものがある。
憂「……」
続いて、憂がポーション高杉を出したので、
梓「……」
私がナガレワ・ロスをそっと重ねた。
558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:48:20.67 ID:hRY/T06g0
唯「……!」
さあ、ムリせずに笑ってください、唯先輩。
梓「your turn, Ms. Yui」
そう言って、私は優雅にレモンティーを口に含み、余裕を見せつける。
唯「I am stupid」
梓「ぶふぉっ!」
思わぬカウンターパンチが返ってきてレモンティー吹いた。
澪「……ふふ」
和「……くっ」
律「……ふ、あははは!」
紬「梓ちゃん、澪ちゃん、和ちゃん、りっちゃん、アウトー」
梓「あの、唯先輩。そういうのやめてもらっていいですかね?」
I'mを丁寧にI amって言ってるところがまた手ごわい。
559 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:51:43.28 ID:hRY/T06g0
唯「ほえ?」
律「お前なー、意味わかってないのか?」
唯「ほら、なんとなく知ってる単語を」
澪「知ってるだけで意味はわかってないのな……」
さらに木霊する少女達の声にならない叫び。
ここまでの成績
律 9
澪 9
唯 9
憂 4
梓 7
和 6
唯先輩独走かと思いきや、肉薄してきた。
何気に私もやばい。
562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:54:16.45 ID:hRY/T06g0
なかなか進まないカードゲームが、再開される。
唯先輩がナガレワ・ロスを覆い隠すように10を捨てる。
よくやったと言わざるを得ない。
……いや、ナガレワ・ロス捨てたの私だけど。
澪先輩が9、和先輩が8、憂が7と順当に捨てていき、私も6を重ねる。
続いて、唯先輩が5と4を飛ばして3を捨てた。
564 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:56:23.84 ID:hRY/T06g0
強さが逆転しているので、ジョー……スッテーン・コ・ロリーンを除けば最強カー……ド。
スッテーン・コ・ロリーン……。
梓「……く、ふふっ」
紬「梓ちゃん、アウトー」
澪「どうした梓、思い出し笑いか?」
梓「すみません、ちょっとジョーカーの名前がツボりました」
唯「ふはは……」
紬「唯ちゃん、アウト♪」
唯「あ。……笑っちゃいけないの忘れてた」
紛れも無くステューピッドだよあんた。
566 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 22:58:10.94 ID:hRY/T06g0
連行される私と唯先輩。
紬「梓ちゃんも夢の十回が見えてきたわね」
さわさわ。
梓「にゃぁっ!?」
冷静に考えると、これ普通に訴えていいレベルのセクハラですよね?
紬「唯ちゃんは10回目なので、おしおきレベルパワーアップよ」
唯「えー、なんか嫌だな……」
568 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:01:54.95 ID:hRY/T06g0
一足先に開放された私は、その場にとどまり、唯先輩の罰を見届ける。
ムギ先輩は、唯先輩のスカートの裾を摘むと、その素敵な花園に顔面を突っ込んだ。
唯「ちょ、ちょっとムギちゃ――」
憂「アァイ ディドゥ ストップゥ スタァァティングッ!!」
その刹那。
カタコトで『私は止まり始めました』と行動に矛盾する言葉を発しながら電光石火の如く飛来する一陣の風。
琴吹家所有図書館より発生したハリケーン『ウイ』が私の正面を掠め、
三人のエージェントを薙倒し、ムギ先輩を押しのけて、
唯先輩のスカートの中の楽園へまっしぐら。
憂「ふああああんっ!!」
もうだめだこの子。
573 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:06:16.91 ID:hRY/T06g0
唯「え、ええええ!?憂!?」
憂「ハッ!? いや、クンカクンカあの、これは……」
とりあえずスカートの中から顔を出してから喋れ。
律「……」
澪「……」
和「……」
ぽかーん、と口をあけて見ているギャラリー達。
横たわるエージェント。
本棚に頭からめり込むムギ先輩。
三文字で表現するならカオス。時空を超えたのはダオス。
梓「……」
私も動揺しているらしかった。
578 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:10:48.14 ID:hRY/T06g0
憂「違うの、ハグハグ。お姉ちゃん」
唯「いや、あの……、うい~……」
憂「お姉ちゃんがクンカクンカひどいことされるって思ったら、ハァハァ体が勝手に……その」
唯「う、うい、あのね。……恥ずかしいから、まずは……離れて欲しいんだけど」
頬を赤らめながら、弱々しくスカートを押さえて抵抗する唯先輩。
それでもスカートの中から顔を出さない憂選手。
転んでもただでは起きない淑女っぷりは賞賛に値する。
そしてなにより、その体勢で会話を続けてる二人はとてもシュールだった。
581 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:13:33.26 ID:hRY/T06g0
梓「く、……ふふ」
紬「梓ちゃん、アウト!」
復活はええ!?
ていうか、これだけ収拾つかなくなってるのに、続けるんスか!?
まじっスか!?
ようやく、意識を取り戻したギャラリーにより、憂は楽園から現実へと引き戻され、
ムギ先輩が、事態を収めるべく、マイクを手に取った。
この至近距離でマイクいらねえだろ。
紬「ごめんなさい、やりすぎました」
584 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:17:33.60 ID:hRY/T06g0
気まずくなるかと思っていた平沢姉妹は、特に何事も無かったかのように会話をしていた。
以下、仲直りの軌跡。
憂「ほっんとうに、ごめんなさいお姉ちゃん!」
唯「いいよ~ういー。 憂は私を助けようとしてくれたんだもんね」
違うと思います。
結局。
また憂に暴走されても困るので、
以後の罰ゲームはセクハラ以外で行うという条約がムギ先輩と私の間で密に結ばれた。
585 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:21:34.20 ID:hRY/T06g0
そんなワケで。
私がハリセンでしばかれるところから、ゲーム再開となった。
あ、しまった。墓穴を掘ったかもしれnスパーーーン!!
梓「うにゃああっ!?」
いてえ!
ここまでの成績
律 9
澪 9
唯 10
憂 4
梓 9 ←
和 6
優勝どころかブービー賞タイじゃねえかよ。
梓「……なんかもう、大貧民どこまでやったか記憶にないんですけど」
澪「……ああ、うん。私もだ」
和「唯が3を出したところよ」
律「おおー」
唯「おおー」
梓「おおー」
冷静だなぁ、鼻眼鏡。
588 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:26:26.39 ID:hRY/T06g0
もう何度目かわからないけれど、再開。
唯「ええと、じゃあ出せる人いないなら私からだよね?」
そうですね。
紬「唯ちゃん」
唯「ほい?」
紬「アウト♪」
唯「わ、笑ってないよ!?」
紬「ノンノンノン」
唯「Oh...」
紬「No No No No No No No No No No」
唯「カレー CHOPPiLi ライス」
律・紬・梓「TAPPULi!!」
あんだけ収拾つかなくなった後なのに、ノリいいなぁ、みんな。
澪「……(乗り遅れた)」
589 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:31:57.03 ID:hRY/T06g0
紬「唯ちゃん、English Pleaseよ♪」
心なしかムギ先輩のキャラが変わってきた気がする。
唯「そうでしたっ!!」
ぶっちゃけ私も忘れてた。
連行される唯先輩。今度はハリセンの刑に処されるのだ。
紬「いくわよー」
唯「こ、こいっ!」
紬「せーの!」
スパーーン!
唯「い゛でっ!!」
591 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:35:12.64 ID:hRY/T06g0
爽やかな罰ゲームに変わった、『笑ってはいけない勉強会』は
もはや何一つ勉強なんかしていなかったが、
この後も更なる盛り上がりを見せ、私も憂も、ムギ先輩を含めた先輩達も
思い思いに、この馬鹿らしいゲームを満喫しているようだった。
終始最下位を直走った唯先輩と、ブービーが定位置になった私による激戦が繰り広げられたかと思えば、
食事時についに笑いの限界を向かえた律先輩が、華麗な追い上げを見せ、澪先輩が巻き込まれて、じゃれあっていた。
トップ争いは冷静な和先輩と、姉の為にがんばる健気な憂の二人に絞られ、
私は18時くらいに勝負を投げた。
そして22時前、いよいよゲームはエピローグを迎える。
596 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:40:59.82 ID:hRY/T06g0
紬「みんな、お疲れ様。勉強会はこれでおしまいよ」
律「な、長かったぁ~」
和「勉強、殆どしてなかったけれどね」
澪「まぁ、たまにはいいんじゃない? それなりに楽しめたし」
和「……そうね。唯も楽しそうだったし」
唯「りっちゃん、お尻痛い」
律「ああ、私もだ……」
澪「唯と律は笑いすぎなんだよ」
唯「でもでも、あずにゃんも同じくらい笑ってたよ?」
澪「梓は殆どお前が笑わせてただろ」
597 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:49:27.72 ID:hRY/T06g0
唯「だってぇ~。あずにゃんかわいくてさぁ」
梓「もう、反論する気力もないです」
唯「あ~ず~にゃぁぁん♪」
ぎゅっ。
これが、戦いを終えた後の達成感というやつだろうか。
ずっと気を張っていた為か、
一ヶ月ぶりくらいに思える唯先輩のスキンシップがとても心地よく感じる。
私にとっては、このスキンシップこそがご褒美なのかもしれない。
梓「にゃぁ……」
思わず声が漏れた。
599 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:55:10.84 ID:hRY/T06g0
紬「さて、それじゃあ最終的な順位を発表するわね」
紬「各自思うところがあるとは思うけど、勝負は勝負。 罰ゲームは罰ゲームよ」
ムギ先輩はそう言って、成績表をホワイトボードに貼り付けた。
最終成績
1位 憂 15
2位 和 19
3位 澪 27
4位 律 43
5位 梓 44
6位 唯 47
憂「やったよ、お姉ちゃんっ!!」
唯「がんばったね、ういっ!!」
がしっ!
キラキラエフェクトを周囲に撒き散らして、抱き合う姉妹。
ついさっきまで姉のスカートに顔をつっこんでいた妹の所業とは思えない。
澪「結局、ご褒美も罰ゲームも、平沢家で行われるんだな」
律「まぁ、いいんじゃないか? あの二人、幸せそうだし」
なんで爽やかに締めようとしてんだこの人たち。
600 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2009/08/29(土) 23:56:14.50 ID:hRY/T06g0
律「梓も惜しかったな」
梓「嫌な言い方しないでくださいよ。私も律先輩も、最下位じゃなかったことを喜ぶべきなんです」
そして心の中で唯先輩にごめんなさい。
和「でも単純に、お尻叩かれた回数は、律が一番多いのよね」
律「んぁ!? そういわれてみればそうだな……。なんだろう、この釈然としない――」
律・梓「お尻の痛み」
澪「ハモるなよ」
そう、この類稀に見る名勝負が私たちに残した大切なモノ。
――それは、お尻の痛みに他ならなかった。
梓「もう二度とやりませんからね!?」
おわり。
すばらしい作品をありがとう
最終更新:2009年08月30日 11:59