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 ある日の平沢邸。
「のどかちゃん、ここどうするの?」
「また? そこはさっきも教えたじゃない」
 部屋には、この部屋の主と、その友人である真鍋和がいた。
 二人は向かい合って座り、勉強をしている。……いや、正確には唯の宿題を和が教えてあげているといったところか。
 いつもなら、この手の頼みは一蹴する和だが、今日は唯の頼み方が必死だったので、仕方なく教えているのだ。
 決して、唯と一緒に過ごせるからなどとそういう訳では無い、断じて。
「ここは、こうやって……」
「ふむふむ」
「それで、最後にこうして、終わりよ」
「なるほど! やっぱり和ちゃんは凄いや~っ!」
「ちょ、ちょっと……」
 突然、抱きつかれて叱ろうかと思ったが、唯のとても素直な喜び方を見て、言葉を飲み込んだ。
 ――なんだかんだいって、やっぱりこの顔には弱いなぁ……。そう思ってしまう和だった。
「これが終わったら、一旦休憩しましょ」
「うんっ」
 和がそう言うと、唯はこれまた笑顔でそう頷いた。
 本当に、笑顔が多い子だわ……。
 こうして、和が時々教えてあげたりして、唯の宿題がひとつ終了したのだった。
「う~ん、やっぱりあいすはおいしい~」
「あいすばっかり食べてるとおなか壊すわよ?」
「大丈夫だよぉ」
 和の注意を気にした様子も無く、唯はこれまた笑顔でそう言葉を返した。
 和はこの態度に怒るかと思ったが、意外や意外、なんと頬を綻ばせてにこにこしていた。
 やはり、彼女の笑顔には、人を優しい気持ちにさせる何かがあるのかもしれない。
「和ちゃんも食べる?」
「そうね、貰うわ」
 つい先程まで唯が舐めていたあいすを、和は躊躇いなく自分の口に運んだ。
 唯と間接キスだということをちっとも気にしていない様子だ。これが幼なじみの付き合いの長さだということだろうか。
 今更間接キスだなんてお互いなんとも思っていないようだ。
「ちゅぱちゅぱ……うん、おいしいわね」
「でしょでしょ~? これ、お気に入りなんだ~」
 何やら卑猥な擬音が聞こえてきたが、気にしてはいけない。そんなことを口にした途端、彼女たちのまったりほのぼのとした時間を潰してしまいかねない。
 下手をしたらそのまま二人の逆鱗に触れてしまい、真っ昼間から鞭なり蝋燭なり持ち出されることになるかもしれない。それは困る。
 踏まれたり罵られたりするぐらいならまだしも、蝋燭だなんて……そんな。
 私はハードなのは無理なのだ、ソフトにお願いしたい。
「和ちゃんのはどんな味なの~?」
 私が何やらイケナイことを考えている間にも彼女たちの会話は進んでいる。
 唯は、和が食べていたあいすに興味を持ったようだ。その証拠に、開いた口から涎がだら~、と垂れている。
 私がそれを飲もうか否かと考えている間に、和がテーブルの上からティッシュを持ってきて、それで唯の口元を拭いてあげていた。
 ……うむ、やはりこのふたりはこうでないといけない。私が出しゃばるのはよくないと反省する。
 唯は、和に拭いて貰った口元を何度も撫でて、えへへと笑っている。そして満面の笑みでありがとう、と一言。
 その笑顔だけでご飯3杯はイケるのだが、更に私の意識を削る攻撃が待っていた。
「べ、別にあんたのためじゃなくて……、床が汚れたら困るかなっておもっただけよ」
 ――ぶはっ。
 頬をほんのりと染めて、目を逸らしながらそういう和。これぞツンデレ! やはり彼女はツンデレだったのですね!?
 いや~、やはり幼なじみで眼鏡ッ娘ならやはりツンデレでしょう、うむ。本編ではあまり見られませんでしたが、まさかこんなところで見られるとは。もう私はこのまま天に召されても構いません。
 視線の先では相変わらず、ツンデレな和と天然デレな唯がいちゃいちゃしている。もうこの光景が見られただけで満足です。神様ありがとう!
「和ちゃん!」
「何よ!?」
「むちゅ~っ」
「――な、な、な、な……っ!」
 見ましたか今の出来事! 唯が不意打ち気味に和ちゃんの唇を奪ったのです!
 和さんは顔を真っ赤にして何かを言おうとしていますが、うまく舌が回っておりません。
 当然です、大好きな子にキスをされたのですから。
 私ならすぐさま唇を奪い返しますが、そこはツンデレの鏡の和さん。やはり踏ん切りがつかずに行動できないみたいですね。
 やはりここは私が助け舟を――む?
「……この、ばか……」
「――ふぇ?」
 ななな何と! 私が助け舟を出すまでもなく、和さんは自らの意思で唯さんの唇を奪ったのです!
 これにはさしもの唯さんもびっくり。私にいたっては、あまりの光景に鼻血が止まらなくなって、意識が……。
「大好きよ、唯」
「うんっ」
 ――朦朧とする意識の中、私は確かにそんなやり取りを耳にした。



Fin