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20 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 05:50:56.56 ID:TD2ZHm8/O
父との約束でした。
高校の間だけは、好きに音楽をさせてもらうこと

今まで触ったことのない音はとても刺激的で、それでいて心地良い居場所を与えてくれました。
あのとき、あの二人に出会って本当に良かった。

「お嬢様、お時間です」

「……分かっています」

今にして思えば、斎藤は全て見透かしていたのですね。

私の気持ちも


21 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 05:58:30.42 ID:TD2ZHm8/O
男は急いでいた。
普段、焦りを顔に浮かべる事は無いのだが、今日だけは違っていた。
(今のお嬢様に必要なのは、あの方々です)
執事である彼が、主から離れ車を飛ばし向かっている先には少女達がいる。

主の心を支え、救い、癒してくれる少女達が


22 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:07:20.79 ID:TD2ZHm8/O
初雪のように白いドレスを身に纏い
初雪のようにひらひらと踊る

誰が見ても美しいと形容するであろう少女の表情は、明らかに嫌々なのが滲み出ていた。

「紬さんと踊れるなんて光栄です」

「お上手ですのね」

完全に棒読みなのだが、相手の男は鈍感なのか気にするそぶりもみせなかった。
(……いっそ嫌ってくれればいいのだけど)
流石にそれは口に出せずにいた。


23 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:15:00.17 ID:TD2ZHm8/O
父親が手広く事業をしているせいで、政財界とのお付き合いに少女が駆り出されることは多々ある。
今、手をイヤらしく握っている男は何を勘違いしているのか、少女と良い仲になれることを疑って止まなかった。
お互いの父親は、事業基盤拡張の為手を取り合っていた。今度は、自分たちがとでも思っているようだ。


25 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:23:01.05 ID:TD2ZHm8/O
(……早く終わってくれないかしら)
ここで奏でられてる音は、嫌いではない。
今までの自分を育ててくれた音だから
しかし、高校で新しい音を知ってしまった少女には、何かが足りなかった。

曲も佳境に差し迫ったとき、木製の重厚な扉が開いた。

そこには


26 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:33:53.00 ID:TD2ZHm8/O
「紬」

「むぎちゃ~ん」

この場に似つかわしく無い空気を振り撒きながら、ドレスを身に纏った少女達がそわそわしながら入ってくる。
キョロキョロ周りを見渡しながら一塊になって紬の周りに集まってきた。

「!?皆さんどうしてここに」

「斎藤さんに紬がピンチだからって」

「紬先輩綺麗ですね!」

いつのまにか退かされてしまった男は目を丸くした。

少女達が入ってきた扉から、スタッフらしき風貌の男達が、ドラムやギターを運び入れる。

「これは……どういう?」

いつの間にか側に立っていた斎藤が口を開く

「余興です。お嬢様もお手伝い願えますか」

「父は?」

「旦那様の許可は戴いております。……先ほど」

いつも優しい笑みを絶やさない斎藤が、ニヤリとイヤらしい笑みを零した。

「ふふ」


27 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:40:12.62 ID:TD2ZHm8/O
「しっかし、ドレスってひらひらしたスカートが邪魔なんだけど」

「律ちゃん、このドレスはウエストにあるこれを」

紬は律のドレスに手を伸ばし、すっとスカートを外した。

「おおっ!ミニになるんだ」

「ええ」

斎藤のチョイスは皆にピッタリで、演奏にも差し支え無いデザインになっていた。


28 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:48:24.93 ID:TD2ZHm8/O
「さてと、いつもと雰囲気が違うけどいきますか」

カツカツとスティックでリズムが刻まれる。


ああ、私は幸せだ。
このメンバーに囲まれ
この音に囲まれ

ポロポロと涙が零れだす。
皆がこちらを優しい目で見ている。演奏は止めない、今から奏でる音が私を包んでくれるから


30 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:54:40.52 ID:TD2ZHm8/O
「野蛮な音楽だ」

紬から退かされた男はホールの隅で悪態をついていた。

「ほう」

「貴方もそう思いま……ああ、お父さんじゃないですか!今すぐ止めさせてくださいよ」

「お前は、俺の商売を知らないのか?」

「しかし」

「後、お父さんと呼ばれる筋合いは無い」

「ぐっ」

聞こえよがしな舌打ちを残して男はホールをそそくさと後にした。

「斎藤」

「はい」

「紬のあんなに楽しそうに演奏している姿を俺は初めて見た」


31 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 06:57:59.52 ID:TD2ZHm8/O
「はい」

「感謝する。他の客人にも概ね好評のようだしな」

「はい」

「しかし、フォローしなきゃいけない相手もいるようだ」

「そちらには私が」

「任せた。俺は紬たちの演奏を聴いていたいからな」

「お任せを」


32 :クパァ ◆7isWNEyEBQ :2009/09/02(水) 07:04:30.80 ID:TD2ZHm8/O
「お父様!」

「ああ、いい続けてくれ」

「皆さん、これからも娘をよろしくお願いします」

深々と頭を下げる。
少女達は照れ臭さそうにしていた。

「紬、いい音いい仲間に出会ったな」

「ええ!」

満面の笑みで元気よく応える娘に目を細めた。

「むぎちゃ~ん、次の曲いこー」

「はーい」






おわり