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352 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/14(月) 00:56:25.84 ID:LzbmzHWyO
ちょっぴり違う日常


 はぁ……はぁ……やばいやばい! 遅刻ギリギリだよ! 間に合うかな?
 靴箱が目の前に見える。はやくはやく……あれ? 澪ちゃんかな?
「澪ちゃーん。おはよ」
「あ、あぁ。唯おはよう」
 澪ちゃんは驚いたように振り返って挨拶をくれた。澪ちゃんってこんな遅刻ギリギリに靴箱にいるような子じゃないのにどうしたのかな?
「あれ? それなにー?」
 澪ちゃんの左手には封筒みたいなのが握られてた。お手紙かな?
「いや! こ、これはなんでもな……」
「はぁ……はぁ……ラブレターじゃないのかね? 澪ちゃーん?」
 後ろから聞こえてくるりっちゃんの声。やっぱり遅刻ギリギリで走ってきた後みたい。
「り、律……」
 澪ちゃんの顔から血の気が引いてく。嫌な予感でもするのかな? あっ……りっちゃん。
「これは預かーる! 休み時間にあたしの教室まで取りに来いっ! 行くぞ唯!」
「ラジャー! 隊長!」
「あっ! お前……ら……」
 りっちゃんの手に引かれて澪ちゃんの声が遠ざかってく。ごめんね澪ちゃん。りっちゃんが全部悪いんだよー。


「さて。問題のこの手紙だが……」
353 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/14(月) 00:57:12.12 ID:LzbmzHWyO
 ムギちゃんの机の上にさっきの手紙が広げられる。整った字だなぁ。ボールペンかぁ。筆ペンはおやすみ中なのかな。
『いきなりこんな手紙を……中略……よかったら今日の放課後、駅前の……にきてください』
 すごいまっすぐな気持ちが綴られてるなぁ。澪ちゃんかわいいからかな。
 わたしが余韻に浸っているとりっちゃんが最後の文を口に出して読んだ。
「……高校2年2組……」
 そこにはこの手紙の彼の名前があった。えと……ここで読むのはまずい気がする……。
「りっちゃん。とりあえず手紙隠しましょう?」
「そ、そうだなムギ」
 二人もその雰囲気を察知したみたい。だって手紙の彼は2つ前の席で本を読んでる子と同じ中学校だもん。たぶん頼まれてその子は手紙を入れたんだと考えるのが普通だよね。
「な、なぁ唯……澪をこのクラスに呼ぶのはちょっとまずい……よな?」
「そうだよりっちゃん! 次の休み時間に返しに行こう?」
「もう来たけどな」
 あ……りっちゃんの頭を鷲掴みにしてる澪ちゃんだ。改めておはよー。……なんちて。
「お前らちょっと来い」

354 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/14(月) 00:57:52.30 ID:LzbmzHWyO
 あーうー。行くから引っ張らないでー。


 えっと……もう授業始まってるんだけどな。澪ちゃんに部室で正座しとけって言われて10分。怒ってるなぁ。
「……読んだのか」
 澪ちゃんが背中を向けたまま聞いてくる。ごまかす雰囲気じゃ……ないよね。
「う、うん。ごめんね?」
「澪がいつまでも読まないから読んでやろーとな……怒った?」
 わたしたちが返事すると澪ちゃんはゆっくり振り向く。やっぱり鬼のような表情かな。叩かれるのには慣れたんだけどやっぱりやだなぁ。
「どうじよ~!」
 おっと予想外だよっ!? 顔は真っ赤で目は半泣き。恥ずかしさが極限の時の澪ちゃんだ。
「ははは初めてだっ! あんな……あーっ!」
「澪。とりあえず落ち着け」
「だってだって! 頼む律! 代わってく……」
「こら」
 あー。いっぱいいっぱいの澪ちゃんかわいーなー。このやりとりも和むなぁ。
 てゆーかやっぱり澪ちゃんも手紙見たんだね。だから靴箱で固まってたんだ。
 澪ちゃんとりっちゃんはそれから5分くらいコントみたいなやり取りを続けてた。ほんとに仲良いなぁ。
「澪! 答えがどうであれちゃんと返事するのが筋だぞ!」
「うぅっ!」
 うぁ……りっちゃんが珍しく澪ちゃんを言い負かした!
「そ、そうだよな……じゃあ律。一緒に……」
「行けるかぁ! 相手はちゃんと考えて手紙を出してるんだぞ!」
「で、でも……一人でなんて……」
 そのとき、わたしはすごい視線を感じた。あ、あのー澪ちゃん。どしたのかな?
「わかった。バカ律には頼まない。唯。一緒にきてくれるよな?」
 うわー。行っちゃダメなんだろうけど行かないと澪ちゃんになんかされる。断りたい……無理?
「無理」
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/14(月) 00:59:15.92 ID:LzbmzHWyO
「ですよねー。はぁ……」
 そんなこんなでわたしも一緒に行くことになっちゃった。りっちゃんは最後まで反対してたけど。


 駅前。もう10分くらい待ったかな。なかなか澪ちゃんに話をしたい子は現れない。
「んー。帰ろっか、唯!」
「ほえ? でもぉ……」
「いいんだ。練習しよう」
 澪ちゃんが歩き出そうとしたとき、なんか呼び止められた。誰?
「あの……秋山さんですよね?」
「あ、えと……」
 顔真っ赤にしてその人と二人でしゃべってる澪ちゃん。かっこいい人とかわいい澪ちゃん。なんかすごい二人見てるみたい。
 おひょ? 澪ちゃんわたし見てる? あ、かっこいい人も。笑ってる? 寝ぐせでもついてるかな?
 自分の頭や体をパタパタしてると二人はまた声をあげて笑い出した。もう何がなんだかわかんないよ。
 あ、澪ちゃん帰ってきた。顔真っ赤なまま。
「付き合わせてごめんな、唯。さあ帰ろっか」
「えっと……うん」
 聞きたいのはそんな言葉じゃないよ。どうなったのか気になるなぁ。
「今日はゆっくりしてから練習しような。唯!」
 はぁ! 澪ちゃんらしくない! これはまさかまさか世に聞く彼氏とやらが出来た解放感なのだろうか?
 りっちゃんがいればずばっと聞いてるはずなのにっ!
「……唯」
「はははひっ! なんでありましょう澪隊長!」
「どうなったのか聞きたいって顔に出てるぞ」
 あちゃ。ばればれだよ。ばればれゆかいだよ。澪ちゃん笑ってるよ。すごく余裕が出た感じで雰囲気が変わった気がする。やはりこれは……。
「やっぱり彼氏が出来たのでありましょーか!?」
「あははは。せっかくの告白だけど断ったよ」
「ふぇ?」
356 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/14(月) 01:00:53.16 ID:LzbmzHWyO
「学園祭で見て好きになってくれたんだと。だけどさ、やっぱりわたしはみんなと一緒にいたいんだ。いろいろ考えてはみたけど……少しでも長く唯や律たちと一緒の空間にいたいなって」
 なんだか不思議とわたしも同じことを思った。たぶんどんなにかっこいい人が来てもわたしでも断っちゃいそう。
「だってさ。わたしたちは武道館まで行くんだもん。だよな、唯?」
 それでも澪ちゃんがわたしたちといることを選んだことがうれしくてついつい大声出しちゃった。
「そうだよ! うおおー目指せ武道館!」
「ちょっ……唯! 声がでかい!」
 少しだけ変わったと思った澪ちゃんはすぐにいつもの恥ずかしがり屋さんに戻っちゃった。
「えへへー。ごめんね澪ちゃん」
「やれやれ」
 駅前まで行ったその足でわたしたちはしゃべりながら学校に、音楽室に帰っていった。


「おー。澪、唯、お帰り。どーだった?」
 澪ちゃんはなんだか柔らかい笑顔を浮かべてこたえた。
「うん。よかったよ」
「は!? ってことはまさか……」
 りっちゃんはすぐに澪ちゃんに駆け寄って手を捕まえた。驚きなのかな、喜びなのかな。
「へへへ、フっちゃった」
「なっ!? 付き合ったかと思ったじゃん!」
「律。ありがと」
「は?」
 澪ちゃんはうれしそうに笑うとティーカップに口をつけた。今日はちょっとわたしの頭じゃ理解出来ないことが多すぎるよ。ありがとって?
「さ、練習しよう!」
 澪ちゃんは立ち上がってベースを取った。やっぱりベースを持つ澪ちゃんはかっこいい。今日はいつもよりさらにかっこよく見えるなぁ。
 わたしも立ち上がってギー太を持つ。今日もよろしく、ギー太!
 いつもよりちょっぴり違った1日はもうすぐおわり。帰って憂のごはん食べて寝よう!


おわり