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このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 3』というスレに投下されたものです
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253346269/l50

361 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/04(日) 02:02:42 ID:SRIgdHWx
目の前に広がるは、真っ白な風景。
そこにいる、真っ白な、可愛らしいドレスに身を包んだ梓。
彼女の黒髪が、その白だけの世界によく映えている。
―――ああ、そうか。これは。
「唯、結婚おめでとう」
 りっちゃんは、その性格とは正反対の、やや落ち着いたドレスで祝福してくれた。
「にしても、新婦が2人か。ややこしいな。嬉しいけど」
 りっちゃんの隣で、おとなしめのドレスを着た澪ちゃんは苦笑い。
「本当、招待してもらえて、嬉しい限りだわ」
 ムギちゃんは、右手になぜかずっとビデオカメラを持って撮影している。
後ろでムギちゃんの執事っぽい人が、「私がやります」とおろおろしているのに、気にも留めない。
「それより、私のショーはどうだった?良い感じだったでしょう?」
 さわちゃん先生、確かにショーは盛り上がったけど、歯ギター披露は余計だったよ。
「お姉ちゃんは、『お姉ちゃん』のままだけど、梓ちゃんはなんて呼べばいいんだろう?『奥さん』じゃ、他人行儀すぎだよねぇ」
 憂は、よく分からない心配をしている。呼び方なんて、どうでも良いよ。
「そうね。今まで通りで、いいんじゃないかしら、呼び方なんて」
 和ちゃんが、最善の答えを出してくれた。いくつになっても頼りになる。
「あの~、私ホントに、来てよかったんでしょうか……?」
 梓のもう一人の友達、確か……、純ちゃんだったかな。が、申し訳なさそうに質問してくる。
もちろん。なんだって、梓の友達だもの。そう答えると、ようやく可愛らしい笑顔を見せてくれた。
「唯先ぱ……、唯」
 梓が、呼び慣れていない、呼び捨てで私の名前を呼ぶ。
気づくと、私は手に愛しのギー太を持っていた。あ、愛しいって言っても、梓ほどじゃないよ?もちろん。
「こんなところに呼び出して、どうしたの?皆、向こうでパーティやってるのに……」
 そうだ。今は、披露宴のパーティの途中。そこで、私は梓だけを連れて抜け出したんだ。
きっと、主役のいないパーティで、ほとんどの人はどうしたんだ?と思うだろうが、その辺は、どうしてもらうか軽音部の人たちにはちゃんと説明済みだ。
 ―――と、隣の部屋で、聞き慣れた軽音部による演奏が始まった。
どうやら、こちらも始める番らしい。
「あのね、梓。梓には、とっておきの―――」
362 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/04(日) 02:06:23 ID:SRIgdHWx
「唯。起きてよ。もうお昼だよ。唯!」
 ゆさゆさ。体を揺すられる。
重い瞼を開けると、高校の時とは違い、髪を下ろして大人っぽくなった梓が、眉を吊り上げている。
「もうっ、折角の結婚記念日、寝て終わらせる気?」
 結婚。そうか、したんだっけ、結婚。じゃあ、あれは?さっきの、出来事は?
寝ぼけている顔をぴしゃりと叩くと、同時に寝ぼけていた頭も、目が覚めたらしい。
 そっか。あれは―――夢か。それも、結婚式のときの。
「今日は一緒にごちそう作るって、約束したのに……、もうっ」
 ぷいっ、と梓がそっぽを向ける。ああ、どうやら本気で怒っているらしい。無理もない。今日は結婚してから最初の記念日なのだ。
どうしたものかと、ベッドから周りを見渡すと、ふとギー太が目に入った。
 そういえば、去年の今日も、君で演奏したね、ギー太。
思って、ひとつの考えが、覚めたばかりの脳で思い出される。
「唯は、どうでもいいの?私たちの記念日……。恥ずかしいけど、私は、楽しみにしてたんだよ、今日を」
 そんなことないよ、梓。私だって、楽しみにしてた。
「嘘。じゃあ、なんで今まで寝てたのよ」
「昨日、がんばって考えてたんだ。それこそ、夜中まで」
「考えてたって、何を?私とどうやって別れようとか?」
「まさか」
 そんなことしたら、私は死んでしまうよ。
「じゃあ、なに?」
 見るからに不機嫌な梓を、私は笑って「ちょっと待ってて」と促す。
不機嫌そうに腕組している梓を背に、私は、部屋の壁で私たちを見守っているギー太に手を伸ばす。
 そう、あの日も、梓が不思議そうに、私とギー太を見ていたね。
そして、私は言うんだ。
「あのね、梓。梓には、とっておきのラブソングを送るよ」
 去年、一生懸命考えた曲の、アレンジ版だけど。
でも、こもってる心は、あの時以上だよ。
「だから、聴いてくれたら嬉しいな」
 ふと、去年の曲を送った後の、梓の表情が思い浮かぶ。
あの日は泣きながら、「ばか」って言ってくれたけど、すっごくかわいい笑顔だったね。
今日は、どんな顔をしてくれるのかな。
明日は、どんな顔をしてくれるのかな。
 梓の“新しい”を見つけるたびに、私は嬉しくなるんだよ。
大好きになるんだよ。
 だから、そばにいてね。
おばさんになっても、おばあさんになっても。
ずっと、ずっと。
 ―――観客は1人だけの、リサイタルが始まった。

おわり




すばらしい作品をありがとう