471 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/09(金) 03:24:03 ID:/qd+S4xO
ある日の放課後、私は部室で先輩たちを待ちながら机に突っ伏していた。
梓(はぁ、今日は体育疲れたな…先輩たちが来るまで少し休んでよっと)
5分ほどしてうとうとしていると、階段を昇る足音が聞こえた。
これは…唯先輩かな。どうやら一人みたいだ。
それにしても、足音だけで唯先輩だと分かるなんて…伊達に唯先輩との付き合いは短くない、ということかな。
ガチャ
唯「みんなおはよ…あり、あずにゃんだけ?」
どうしよう、起き上がろうか…いや、いい機会だ。このまま寝たふりして驚かせよう。
唯「あずにゃん…寝てるの?」
梓「……」
唯「寝てるのかぁ…」
私が何も反応しないでいると、唯先輩はカバンを置いて私の席の隣に座った。
顔は見えないが、どうやら私を見ているようだ。どのタイミングで驚かせようか…そう考えていると、唯先輩はポツリと呟いた。
唯「好きだよ、あずにゃん…」
え?こ、この人は一体何を言っているんだろう。好き?私を?それはどういう意味合いで?後輩として?それとも…
私が脳内を疑問符で埋め尽くしている間に、さらに唯先輩は続ける。
472 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/09(金) 03:28:33 ID:/qd+S4xO
唯「ホントはもっとちゃんと言いたいんだけど…私、あずにゃんの顔見るとどうしてもふざけたりしちゃうんだ」
私は何も言えない。身動き一つ取れない。ただ必死に耳を澄ませて、唯先輩の言葉を聞いていた。
唯「私、バカみたいだよね…でもあずにゃんにホントの気持ち聞くの怖いんだ…だから何も出来ないの」
梓「……」
唯「はぁ…恋って苦しいや…」
梓「……」
唯先輩は黙りこくってしまった。きっと色んなことを考えながら私のことを見ているんだろう。
私はどうしていいか分からなかった。起きて何事もなかったように振る舞おうか?それとも全部聞いてましたって言おうか?
わからない。わからないけど…どちらにしても、私が唯先輩に対しての気持ちを伝えなきゃ、先輩はこのまま苦しむことになる。
それは嫌だ。だって、だって私は――
梓「うーん…あれ、唯先輩」
唯「…あ、あずにゃん…」
梓「どうしたんですか?なにか元気ないですね」
唯「うん、な、なんでもないよ…じゃあ皆が来るまで練習でもしよっか」
梓「あの先輩…私、夢を見たんです」
唯「夢…?どんな?」
梓「はい、唯先輩に告白される夢です」
唯「……!」
473 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/09(金) 03:33:50 ID:/qd+S4xO
梓「私、結構嬉しくて…それでOKしたんです」
唯「え…?」
梓「だって私も…唯先輩のことが好きだから」
唯「……」
梓「でもあきらめます。残念ながら夢なので…」
唯「あずにゃん!」
その時の唯先輩は、まるでライブの時のように強く、そして真面目な顔つきだった。
そんな先輩に圧されて、私は静かに返事をした。
梓「…はい」
唯「あのね…私…うぅ…あーもう!ふん!」
顔を真っ赤にした唯先輩は、思いがけない行動に出た。なんと自分の顔を思い切り引っ張たいたのだ。
ただでさえ赤い顔をさらに赤くして、そして私の肩を掴んで――言った。
唯「あずにゃん!大好き!だからチューして!」
梓「はい、いいで…はぁ!?」
付き合って、と言うのかと思っていた私は思わず承諾してしまった。
時既に遅し。私が何かを言おうとした時には、唯先輩の柔らかい唇が私の唇に重なっていた。
唯「あずにゃん、ありがと♪」
梓「…あ、あなたという人は…」
こうして、『夢見たふりして気合いを入れて告白してもらおう作戦』は微妙に失敗してしまった。
でもまぁ…いいか。こうして先輩と気持ちが通じ合えたなら、それで。
すばらしい作品をありがとう
最終更新:2009年10月09日 19:45