このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 3』というスレに投下されたものです
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917 名前:私たちの帰り道1[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 07:37:42 ID:AW5TkijA
今日は本当に寒いね。はい、凍えちゃいます――そんなことを話しながら手を繋いで帰る。

今はふたりきりになったけど、唯先輩は皆さんの前でも構わずくっついてくるから困る。
いや、本当はとっても嬉しいんだけど。
だけどもやっぱり恥ずかしくて。全身が熱くなってしまう。

律先輩にもからかわれたけど、自分の顔がリンゴみたいになってたことは、
誰より私本人が一番わかってたんだ。

(でも律先輩だって十分恥ずかしい人でしたよ)

私と唯先輩がくっついてると律先輩は決まって冷やかすけど、あの人、自覚はないんだろうか。
24時間澪先輩に付きっきりで、隙あらば「りつー」「みおー」「キマシタワー」してるのに。
律先輩と澪先輩のほうがよっぽど恥ずかしい人だ(それにムギ先輩も人間としてかなり恥ずかしいです)。

それに比べたら私たちは可愛いものだと思う。
手を繋いで帰る――ただそれだけで心が満たされて、ほんのり温くなれる。
唯先輩が側にいてくれると感じられて、世界で一番幸せになれるんだ。
918 名前:私たちの帰り道2[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 07:39:24 ID:AW5TkijA
――うん、私は世界一幸せな娘かもしれない。

今夜は家族がみんな外出していて家に一人だって話したら、

「じゃあ、私ん家に泊まりなよ~♪」

…間髪入れずにそう言ってくれた。
お邪魔しますって答えた瞬間に見せてくれた、極上の笑顔。
全身で喜びを表現するかのようにハグまでして貰った。

私は本当に大事にされてるんだな――しみじみ噛み締めるように唯先輩の体温を、
もっと言えば愛情の深さを感じたら、冬の日の寒さなんてどこかに飛んでいっちゃった。

ほんの少し冷たさが残って赤くなってた鼻先も、寒いの寒いの飛んでけって唯先輩に撫でられたら、それだけで温くなる。
代わりに別の意味で赤くなっちゃったんだけどね。

「あっ、お姉ちゃん、梓ちゃん」

ふたりで歩く帰り道――その途中で憂と落ち合った。
こう言う場合、ムギ先輩だったらまた「(三角関係)キマシタワー」してワクワクするんだろうけど、
現実は妄想のようには行かないものですよ。

私たちが手を繋いでいたって、……お付き合いをしていたって憂は憂だ。
唯先輩と私の幸せを心から喜んでくれて、とろけるような笑顔を見せてくれる。
919 名前:私たちの帰り道3[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 07:41:17 ID:AW5TkijA
そんな憂の優しさが本当に嬉しくて――私はほらってもう片方の手を憂に差し出した。

「え、私もいいの?」
「悪い理由なんかどこにもないよ。ね、唯先輩」
「もちろんっ。憂も一緒にあったかあったかしよ~」
「えへへ…じゃあ、お言葉に甘えて」

嬉しそうにはにかみながら憂は私の手を握り返してくれた。
右手に恋人の温もりを、左手に親友の温もりを同時に感じられて――私は宇宙一幸せな娘なのかもしれない。

ううん、私は間違いなく宇宙一の幸せ者だよ。

…だから、「あずにゃん、捕まった宇宙人みたいだね」ってのはいらなかったです、唯先輩…。

「あ、そ~だ。ねぇ、憂。今晩なんだけど、あずにゃんのこと――」
「うん。梓ちゃん、今夜一人なんだよね。だから泊まってって誘いたかったんだ」

一歩遅かったみたいだねって唯先輩と笑い合う憂の手には、ちょっと大きめの買い物袋。
中には色々な食材が詰め込まれてるみたいで、唯先輩と憂ふたりで食べるには明らかに量が多かった。
それは三人目を――私の分を計算に入れた買い物なんだって考えるのは自惚れ過ぎ?

ほら、平沢家のご両親ってばいつも家にいないしさ。

「今日は冷えるし、お鍋にしようね。梓ちゃんもいっぱい食べてね?」
「…うん、ありがと、憂」

きっと自惚れだって決め付けてた予想は、憂のその一言で幸せ色に塗り替えられた。

ふたりきりの帰り道から、三人の帰り道へ。
大好きな人たちとの帰り道は、こんなに幸せでいいのだろうかって驚くくらい。

温もりに包まれた今夜は、きっと最高に素敵な夢が見られるはずだ。




すばらしい作品をありがとう

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最終更新:2009年11月09日 00:50