【Mission XXX Mission-03 前編】

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【Mission XXX Mission-03】 Mission XXX Mission-03 Worst Day  ―ザ・スタンピード事件― 「あンた、背中が煤けてるぜ」 「……」  こういう時、どう答えてやるべきなのだろうか?皆槻直は朝っぱらから途方にくれていた。  時刻は朝8時50分。場所は学園の正門をくぐって少し歩いた辺り。  反対方向から歩いてきた少年がひょい、とこちらを見上げ呟いた台詞が「あンた、背中が煤けてるぜ」だった。 (大体、真正面にいる彼から私の背中が見えるはずがないよね)  そもそも『背中』が『煤けてる』というのがどういう状態なのかという疑問には目もくれず、直はそういぶかしむ。 「ああ、悪い。ちょっと言ってみたかっただけだ」 「そう」 「だがまあ、アンタちょっと覚悟決めた方がいいぜ」  一言で彼女の思考を御破算にした後、少年はこれが本題、と言いたげに一歩踏み込んで話を続けた。 「オレは醒徒会会計の成宮金太郎。アンタは…高等部2年の皆槻直、だろ?」 「そうだよ。それで…」 「アンタ、オレの異能は知ってるよな?」  鋭い眼光とそれ以上に鋭い舌鋒が常に直の先手を取り対話の場を支配していた。 (『最強のビジネスマン』と言われるわけだね)  そんな金太郎の異能、〈ザ・ハイロウズ〉。人の総資産と今後の金運を知る能力だ、という程度の知識は直も把握していた。  そう伝えると金太郎は頷き、 「一言で言うとそれで合ってる。単刀直入に言おう。アンタの今後の金運はかなり悪い」  いちいち言ってたらきりがないんで普通は言わないんだが、背の高いアンタの頭の上に下向きの矢印があるのが妙に悪目立ちしたからな、と続ける金太郎。 「ご忠告ありがとう。それで、回避する方法はあるのかな?」 「基本的にはかなり難しいな。だから覚悟決めた方がいい、と言った」 「ふむん」  確かにそういう出来事があると知っているのといないのとではいざその時の心の持ちように差がある、とは言える。  とはいえいつどんな形で起こるかわからない回避不能の未来となるとさほどありがたみもないというのが正直なところだ。 「まあ一つ忠告するなら、だ」 「?」 「アンタが悪運を押し流すほどの天運か悪運の流れに棹をさして我が道を行く力を持ってるんでなきゃ、流れには無理に抗わないことだ。立ち向かう力もなく流れに逆らうとそのまま流されるよりロクでもない目に遭う」  ま、オレの経験則だけどな、と言う金太郎の声には重い実感がこもっていた。 「分かった、心しておくよ…ありがとう」  そう言うと、直は金太郎に頭を下げた。直としてはわざわざ忠告してくれた彼に借りができたと思っていたのだが、同時にそれを言っても彼は喜ばないだろうとも感じていたのだ。 「気にすんな、徹夜明けの気まぐれだよ」  そう面倒くさそうに手を振ると金太郎はあくびをしながら学園の外に去っていった。  人の運勢を金運という視点でしか知る術のない金太郎にも、ましてや運の流れを知る力のない直にも知る由のないことだったが、金太郎の指摘は正確ではなかった。  金運どころではない、今日の直は全体としての運そのものが悪い――いわゆる『ついてない日』だったのだ。 「どうにも歯車が噛み合わないというか、なんというか…」  午後3時25分。直はそうぼやきながら正門をくぐり学園の外に出た。  忠告をくれた彼には悪いが、どうもあの時点で何かリズムが狂ってしまったような気がする。  まずは2限の地理の授業。地図を見てそこがどんな場所か想像するのが好きな直にとって今日最も楽しみとしていた時間だったのだが、教師が急病とのことで自習になった。監督役の教師の監視の下、机から顔を上げるのもままならない1時間。うんざりだった。  休み時間に愚痴と金太郎の忠告に対する相談のために宮子と話をしようとしたのだが、こういう時に限って電波の調子が悪いのか電話もメールもなしのつぶて、全く繋がらない。  昼休みは昼休みで今日はこれ、と決めた学生食堂のカツ丼(ちなみにカツ丼が好物なのは幼い頃にカツと勝つをかける風習を知り憧れめいた印象を受けたから、というのは宮子にすら話していない彼女の秘密である)が注文が集中したとのことで売り切れ。  授業が終わった先程は風紀委員に捕まってしまい服装のことで説教を受けた。そろそろ本気で服装については考えないといけないかもしれない。 「さて、どうするかな」  直は大きく伸びをして呟く。  今日は特に予定はない。こんなに良くないことが続く日は早く帰って部屋でじっとしておくべきなのだろうが。 (流れに無理に抗うな、か)  金太郎の言葉が気にかかる。部屋に帰って万が一失火で全焼となったら目も当てられない。 (やっぱりミヤに相談しよう)  思い立って携帯を取り出す。その当の宮子からメールが届いていた。 |LEFT:BGCOLOR(#E6E6FA):COLOR(#000000):&bold(){From  ミヤ}| |LEFT:BGCOLOR(#E6E6FA):COLOR(#000000):&bold(){Title ごめんね。}| |BGCOLOR(#E6E6FA):クラスの用事があって抜けられないの。&br()4時半くらいには終わるはずだからそれまで待ってて。&br() P.S. ナオのほうからメール送ってくるなんて珍しいね?何かあった?&br()| 「仕方がないね、そこらで適当に時間を潰そう」 直は携帯をポケットにしまってはあ、とため息をついた。  直は基本的に動物に嫌われる体質である。  人間と違いより強く本能に寄り添って生きる動物たちは、どうやらその本能で直の猛々しい本質を察知し避けているのだ。  直自身にもそれはよく分かっていたから、普段は動物にはあまり近づかないようにしている。  それでも。  それでも直は17歳、思春期の女性であり(滅多にそういう風に扱われることはなかったが)、そうである以上小さいもの、可愛いもの、そしてか弱いものに強く心動かされることがあるのも当然のことだった。 「…あ…」  今、直の目の前では小さな柴犬の仔が所在なげに歩いていた。  首輪はついていたが、見回しても飼い主の姿は見当たらない。どうやら迷子のようだ。 (どうしようか…)  これが猫ならなんら心配は要らない。この学園都市島では猫は異様に愛され――文字通り猫可愛がりというべきだ――守られていた。  たとえ野良であったとしても誰か物好きな人が保護してくれるか、最低でも餌は提供してくれる。  だが、その優遇は他の動物への待遇に歪となって押し寄せていた。下手に首輪がある分「どうせ飼い主が探してるだろう」と放置されてもおかしくない。 (私がやらなくちゃいけないようだね)  大きく深呼吸。心の海の漣を止めるイメージ。一番穏やかであれた思い出を思い起こす。  僅かな音すら拒むように足を進める。当然体はできるだけ小さくして。  ナメクジと競争するつもりで手を伸ばす。ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと…  ヒャン!  直に気づいた子犬はくしゃみのような鳴き声をあげるとバネに弾かれたかのようにジャンプし、そのまま勢いよく直と反対方向に走り出した。 「ちょ、ちょっと待って…」  慌てて追いかける直。捕まえること自体は簡単だったが、荒事に慣れすぎた手で強引に掴み取るには脆すぎるような気がしてどこか思い切れない。  そして今日の直は不幸だった。 「えっ!?」  子犬を追いかけ茂みをくぐった直が見たものは猫の溜まり場に突撃する子犬の姿だった。  ニャーニャーニャーニャー!  ヒャン!ヒャン!  猫の群れと子犬が一塊になって直を避けるように走り出す。 「ああ…」  頭を抱えたくなる心境だった。歩道に飛び出した猫の群れと子犬は周囲の人を驚かせながら疾走を続ける。 「うわっ!」  突如脇道から出てきた一団と動物の群れがニアミスした。驚いた一団はそれぞれ手に持っていた籠を取り落としてしまう。  衝撃で開いた蓋から出てきたのは鶏だった。何を思ったのか鶏の一団は犬猫を追いかけ駆け出す。  直は知る由のないことだったが、この一団は試合から帰る途中だった闘鶏同好会の面々だった。試合後で気が立っていた鶏たちは犬猫を新たな獲物と思ったらしい。  そう、今日の直はとても不幸だった。  コー!コー!  ニャーニャーニャーニャー!  ヒャン!ヒャン!  更に数を増した動物の一団は我が物顔に直進を続ける。 「あああ…」  正直どうすればいいかまったく見えてこない。それでもここで知らぬ振りを決め込む、という選択肢は直にはなかった。  だからただただ走り続ける。 「あれ?」  やや下りとなっている道の向こうには車が行きかう大きな交差点が立ちふさがっていた。 (まずい!)  思うと同時に限定飛翔で大きく跳躍する。動物たちを大きく飛び越し、車道ギリギリのところに着地した。  直の姿を見た動物たちはスイッチを切り替えたかのように次々と方向を転換していく。  まるで動物よけであるような自らの姿に寂しい思いを抱きつつもほっと一息をつく直。  だが、今日の直はとにかく不幸だった。  後ろで響くスリップ音。そして質量のあるもの同士がぶつかり合う重い音。  直が振り向くと、スピンしたトラックが歩道のビルに突っ込んでいた。  頭を振りながら車から降りてきた運転手の男が直を見るなり顔を背ける。  実は跳躍する直の脚、というより引き締まっていながらも筋肉の上にうっすらと乗った肉がどことなく柔らかさを醸し出す太腿に見とれいていてハンドル操作を誤り事故を起こしてしまったのだが、直が知ることでもないし、それ以上に面倒な問題が起こりつつあった。  ぶもー!  トラック――農業試験場に牛を搬入するためのものだった――の後部の扉を破って牛たちが飛び出していく。  牛たちはそのまま真っ直ぐに、偶然にも先を行く動物たちを追いかける形で走り去っていった。 「…どうしよう」 反射的に追いかけながらも口から漏れるのはそんな言葉ばかり。直の頭の中はほぼ真っ白だった。  結城宮子は形の無い不安に苛まれ続けていた。  原因は勿論、午前中の直のメールである。  あまり自分から過去を話したがる人間ではないし、こちらからも聞きにくかったのだが、どうやら直は昔から一人でいることが多かったらしい。  おそらくそのためだろう、直は何かある時にそのことと直接関係ある人以外に相談することはあまり無かった。 (特に私相手だと結構ずぼらだし)  日常生活が割といい加減な彼女を放っておけなくてこちらから赴いて手伝ったりしているうちに、すっかり何かにつけこちらが最初のアクションを起こす側という図式が成立してしまっていた。  裏を返せばそれだけ心を許してくれているということでありそれはとても嬉しいことなのだが、だからこそ「ちょっと相談したいことがあるんだ」とただ一文だけのこのメールが強い存在感を持ってのしかかってくる。  これだけでは何の用件なのか判断しようもなく、ただただ想像だけがブクブクと膨れ上がっていく。思い余って直接直に連絡を取ろうとしたのだが、こういう時に限って電波の状況が悪いのか全く繋がらない。  異論反論全てねじ伏せねじ切り論破して強引に会議を終わらせ、引きつった顔のクラスメートを後に宮子は走り出す。  時刻は午後4時20分。携帯を取り出しリダイヤル。暢気な呼び出し音が数度続いた後、今度は繋がった。 『ミヤぁ…助けて』 「ナオ!一体どうしたの!」  常の直からは想像もできない弱弱しい声だった。心臓が押し縮められるような痛みが襲いかかる。 『うん、今とても大変なことになっていて…あっ』 「何!何!?大丈夫なの!?」  せっかくナオと話ができたのに、どうして更に不安が募っていくばかりなのだろう?今自分がナオと同じ場に居ないことが、ナオの苦境に何もできないのがたまらなくもどかしかった。 『とりあえず大丈夫だから心配しないで。それでね、今動物が…』 「動物…?………ねえ、ナオ?返事してよ、ねえ!」  少し話しているうちに随分と落ち着きを取り戻した直の声。ほっとしたのもつかの間、すぐにその言葉は途切れてしまう。  しばらく何とも判断がつかないくぐもった音が聞こえた後、通話は突然途切れる。 「ナオ!ナオ!」  何度もリダイヤルするが反応はない。 (また何か厄介なことに巻き込まれて電話を取る余裕もないのね)  それ以外の可能性は考えたくもなかった。 「だったら…すぐ行くから」  決然と顔を上げる宮子。直から作戦担当として頼られる彼女の頭脳は既にフル回転を始めていた。  午後4時15分。逢洲等華の現在の機嫌はお世辞にも良いとは言えなかった。  朝昼夕の巡回とそのついでの猫参りは彼女の日課だったのだが、今日は昼の日課を果たすことができなかったのだ。  昼の巡回中、生徒の通報で来てみれば取っ組み合いをしている十数人の生徒たち。一喝で場を静め聞きだしてみれば猫好きグループと犬好きグループがひょんなことから「猫と犬どっちが可愛いのか」で言い争いになり、それが喧嘩に発展したのだとか。 (猫以上に可愛い生物なんていないだろう)  とごく自然な感想を抱いた等華であったが、議論の勝敗の判定と風紀委員としての職務とはまた別の話であり、結局全員連行することとなった。  真実を貫こうとしただけなのに、という猫好きたち――中には猫好きコミュニティの繋がりで顔見知りの生徒もいた――の哀しい目は等華の心をちくりちくりとえぐっていき、その上彼女と仕事を分かち合うはずの相方はさっさとエスケープすることで書類仕事をなすりつけ等華の胃をちくりちくりと痛めつけていった。  放課後。ささくれ立った心を癒そうと猫の溜まり場に向かった彼女だったが、彼女の異能〈確定予測〉は無常にもその行動が見事に空振りだと告げた。  そういうわけでやりきれない思いを抱えたまま巡回を続ける等華であったが、今日の等華はある意味ではそこまで不幸ではなかった。 「あれは…?!」  轟音と共に目の前を通り過ぎていく動物の群れ。等華はその中に確かに先程訪ねるはずだった猫たちの姿を確認した。  思考と同時に足が動き出す。たとえそれが勘違いだとしても、牛まで混ざっている集団の中に猫たちがいるのは間違いない。助けなければ。 (…何であいつがこんなところにいるんだ?)  動物を追いかけるように併走を始めた等華の視線の内に大柄な女性が飛び込んできた。  皆槻直。  風紀委員会ではややこしい存在として扱いを決めかねている女である。  任務として強大なラルヴァとの戦いに投入される風紀委員と、自らの意思で強大なラルヴァとの戦いに身を投じる彼女。この両者はその共通項ゆえに戦場で幾度となく遭遇していた。  「味方」――風紀委員たちと「敵」――ラルヴァ(もしくは敵対勢力)を峻別しそれ以外の存在を不確定要素の元となる夾雑物として排除する。この基本的な行動原則に従えば皆槻直は排除されるべき存在だ。事実両者が交戦状態になったことも一度や二度の話ではない。  しかも最近、結果的なことで正式な依頼の上での行為でもあるので彼女に全く非がないとは言え、ある事件で風紀委員会の横から手柄を掻っ攫った形になったことで積極的に何らかの制裁を下すべきだとの声が強まってもいる。  それに対し否や、と唱える声もある。戦闘能力の高さは実証されているし風紀委員会に対して悪感情を抱いているわけでもない(実際、ピンチに陥った風紀委員を助けた例も何度か報告されている)。常に人手不足の風紀委員会としては何らかの形でこちらに取り込むべきだ、というのが彼らの主張だった。  等華はどう考えているか。理屈の上では協力派の方に分があるとは思う。しかし、こちらの追求ものらりくらりと柳に風で受け流す彼女の姿はいい加減で不真面目に思えどこまで信が置けるか図りかねるというのもまた強い思いだった。それに、 (あの扇情的な姿!)  まるで自分の「女」を見せびらかすかのような姿が単純な好悪の意味で嫌いだった。  ともあれ、そのややこしい女が等華の前を走っていた。どうやら彼女も動物の集団を追いかけているらしい。 「!!」  突如、牛に踏まれそうになって集団の後ろから逃げ出してきてジャンプした猫を直が殴り飛ばした。等華の気迫が爆発するかのように膨れ上がる。  今日の直はどうにも不幸だった。宮子との電話に気を取られて猫の発見が一瞬遅れ、反射的に顔を庇うように腕を構えた。その行動が偶然殴ったかのように見えてしまった、それが真実だった。  だが等華には未来の姿を視る異能はあっても過去の姿を顧みる異能はない。それゆえに自らが認識した事実に従い許せぬ敵を全力で排除に向かう。 「貴様!万死に値する!」  二振りの刀、「月陰」と「黒陽」が死を呼ぶ牙となって直を引き裂かんと襲い掛かる。 「それでね、今動物が…!!!」  いきなり全開の殺意を叩きつけられた直としては当然のことながら困惑の一色だった。 「まずどういうことだか説明して欲しいものだね」  あえて後ろに倒れこむようにして回避、高圧空気の勢いを借り距離をとって立ち上がりながら尋ねる直。  通話を切る暇すらない、本能的な感覚が無意識の内に携帯を尻ポケットに滑り込ませる。 「あんな小さくて可愛い動物にあんな仕打ちをして良くもぬけぬけと!」  それに対する答えは更なるより鋭い攻撃だった。 (なんて物分りの悪い女だ!)  直は憤慨した。直としてはあまり馬の合わない人間だとは思っていたものの、その強さと割に合うとは思えない仕事にもかかわらず精力的に取り組むその姿勢には一目置いており、逢洲等華という強力な使い手と立ち会いたいという思いも抑え彼女なりに気を配ってきたつもりだった。  その結果がこれか、その思いが熱となって彼女の中の感情を沸き立たせる。 (もういいよね)  自分の中の何かに確認するように、そう心の中に問いかける。否定する声はない。ここまで待った。向こうから仕掛けてきた。こちらの言葉に聞く耳を持たない。もう十分だ。もう止めるものは何もない。  瞬時に両の拳にブラスナックルが収まる。直は吼えるように宣戦布告した。 「それが答えか…ならばその言葉、僥倖と受け止めさせてもらうよ!」 ---- [[後編>http://www39.atwiki.jp/mayshared/pages/455.html]] [[Mission-02>http://www39.atwiki.jp/mayshared/pages/346.html]] [[トップに戻る>トップページ]] [[作品保管庫に戻る>投稿作品のまとめ]]
【Mission XXX Mission-03】 Mission XXX Mission-03 Worst Day  ―ザ・スタンピード事件― 「あンた、背中が煤けてるぜ」 「……」  こういう時、どう答えてやるべきなのだろうか?皆槻直は朝っぱらから途方にくれていた。  時刻は朝8時50分。場所は学園の正門をくぐって少し歩いた辺り。  反対方向から歩いてきた少年がひょい、とこちらを見上げ呟いた台詞が「あンた、背中が煤けてるぜ」だった。 (大体、真正面にいる彼から私の背中が見えるはずがないよね)  そもそも『背中』が『煤けてる』というのがどういう状態なのかという疑問には目もくれず、直はそういぶかしむ。 「ああ、悪い。ちょっと言ってみたかっただけだ」 「そう」 「だがまあ、アンタちょっと覚悟決めた方がいいぜ」  一言で彼女の思考を御破算にした後、少年はこれが本題、と言いたげに一歩踏み込んで話を続けた。 「オレは醒徒会会計の成宮金太郎。アンタは…高等部2年の皆槻直、だろ?」 「そうだよ。それで…」 「アンタ、オレの異能は知ってるよな?」  鋭い眼光とそれ以上に鋭い舌鋒が常に直の先手を取り対話の場を支配していた。 (『最強のビジネスマン』と言われるわけだね)  そんな金太郎の異能、〈ザ・ハイロウズ〉。人の総資産と今後の金運を知る能力だ、という程度の知識は直も把握していた。  そう伝えると金太郎は頷き、 「一言で言うとそれで合ってる。単刀直入に言おう。アンタの今後の金運はかなり悪い」  いちいち言ってたらきりがないんで普通は言わないんだが、背の高いアンタの頭の上に下向きの矢印があるのが妙に悪目立ちしたからな、と続ける金太郎。 「ご忠告ありがとう。それで、回避する方法はあるのかな?」 「基本的にはかなり難しいな。だから覚悟決めた方がいい、と言った」 「ふむん」  確かにそういう出来事があると知っているのといないのとではいざその時の心の持ちように差がある、とは言える。  とはいえいつどんな形で起こるかわからない回避不能の未来となるとさほどありがたみもないというのが正直なところだ。 「まあ一つ忠告するなら、だ」 「?」 「アンタが悪運を押し流すほどの天運か悪運の流れに棹をさして我が道を行く力を持ってるんでなきゃ、流れには無理に抗わないことだ。立ち向かう力もなく流れに逆らうとそのまま流されるよりロクでもない目に遭う」  ま、オレの経験則だけどな、と言う金太郎の声には重い実感がこもっていた。 「分かった、心しておくよ…ありがとう」  そう言うと、直は金太郎に頭を下げた。直としてはわざわざ忠告してくれた彼に借りができたと思っていたのだが、同時にそれを言っても彼は喜ばないだろうとも感じていたのだ。 「気にすんな、徹夜明けの気まぐれだよ」  そう面倒くさそうに手を振ると金太郎はあくびをしながら学園の外に去っていった。  人の運勢を金運という視点でしか知る術のない金太郎にも、ましてや運の流れを知る力のない直にも知る由のないことだったが、金太郎の指摘は正確ではなかった。  金運どころではない、今日の直は全体としての運そのものが悪い――いわゆる『ついてない日』だったのだ。 「どうにも歯車が噛み合わないというか、なんというか…」  午後3時25分。直はそうぼやきながら正門をくぐり学園の外に出た。  忠告をくれた彼には悪いが、どうもあの時点で何かリズムが狂ってしまったような気がする。  まずは2限の地理の授業。地図を見てそこがどんな場所か想像するのが好きな直にとって今日最も楽しみとしていた時間だったのだが、教師が急病とのことで自習になった。監督役の教師の監視の下、机から顔を上げるのもままならない1時間。うんざりだった。  休み時間に愚痴と金太郎の忠告に対する相談のために宮子と話をしようとしたのだが、こういう時に限って電波の調子が悪いのか電話もメールもなしのつぶて、全く繋がらない。  昼休みは昼休みで今日はこれ、と決めた学生食堂のカツ丼(ちなみにカツ丼が好物なのは幼い頃にカツと勝つをかける風習を知り憧れめいた印象を受けたから、というのは宮子にすら話していない彼女の秘密である)が注文が集中したとのことで売り切れ。  授業が終わった先程は風紀委員に捕まってしまい服装のことで説教を受けた。そろそろ本気で服装については考えないといけないかもしれない。 「さて、どうするかな」  直は大きく伸びをして呟く。  今日は特に予定はない。こんなに良くないことが続く日は早く帰って部屋でじっとしておくべきなのだろうが。 (流れに無理に抗うな、か)  金太郎の言葉が気にかかる。部屋に帰って万が一失火で全焼となったら目も当てられない。 (やっぱりミヤに相談しよう)  思い立って携帯を取り出す。その当の宮子からメールが届いていた。 |LEFT:BGCOLOR(#E6E6FA):COLOR(#000000):&bold(){From  ミヤ}| |LEFT:BGCOLOR(#E6E6FA):COLOR(#000000):&bold(){Title ごめんね。}| |BGCOLOR(#E6E6FA):クラスの用事があって抜けられないの。&br()4時半くらいには終わるはずだからそれまで待ってて。&br() P.S. ナオのほうからメール送ってくるなんて珍しいね?何かあった?&br()| 「仕方がないね、そこらで適当に時間を潰そう」 直は携帯をポケットにしまってはあ、とため息をついた。  直は基本的に動物に嫌われる体質である。  人間と違いより強く本能に寄り添って生きる動物たちは、どうやらその本能で直の猛々しい本質を察知し避けているのだ。  直自身にもそれはよく分かっていたから、普段は動物にはあまり近づかないようにしている。  それでも。  それでも直は17歳、思春期の女性であり(滅多にそういう風に扱われることはなかったが)、そうである以上小さいもの、可愛いもの、そしてか弱いものに強く心動かされることがあるのも当然のことだった。 「…あ…」  今、直の目の前では小さな柴犬の仔が所在なげに歩いていた。  首輪はついていたが、見回しても飼い主の姿は見当たらない。どうやら迷子のようだ。 (どうしようか…)  これが猫ならなんら心配は要らない。この学園都市島では猫は異様に愛され――文字通り猫可愛がりというべきだ――守られていた。  たとえ野良であったとしても誰か物好きな人が保護してくれるか、最低でも餌は提供してくれる。  だが、その優遇は他の動物への待遇に歪となって押し寄せていた。下手に首輪がある分「どうせ飼い主が探してるだろう」と放置されてもおかしくない。 (私がやらなくちゃいけないようだね)  大きく深呼吸。心の海の漣を止めるイメージ。一番穏やかであれた思い出を思い起こす。  僅かな音すら拒むように足を進める。当然体はできるだけ小さくして。  ナメクジと競争するつもりで手を伸ばす。ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと…  ヒャン!  直に気づいた子犬はくしゃみのような鳴き声をあげるとバネに弾かれたかのようにジャンプし、そのまま勢いよく直と反対方向に走り出した。 「ちょ、ちょっと待って…」  慌てて追いかける直。捕まえること自体は簡単だったが、荒事に慣れすぎた手で強引に掴み取るには脆すぎるような気がしてどこか思い切れない。  そして今日の直は不幸だった。 「えっ!?」  子犬を追いかけ茂みをくぐった直が見たものは猫の溜まり場に突撃する子犬の姿だった。  ニャーニャーニャーニャー!  ヒャン!ヒャン!  猫の群れと子犬が一塊になって直を避けるように走り出す。 「ああ…」  頭を抱えたくなる心境だった。歩道に飛び出した猫の群れと子犬は周囲の人を驚かせながら疾走を続ける。 「うわっ!」  突如脇道から出てきた一団と動物の群れがニアミスした。驚いた一団はそれぞれ手に持っていた籠を取り落としてしまう。  衝撃で開いた蓋から出てきたのは鶏だった。何を思ったのか鶏の一団は犬猫を追いかけ駆け出す。  直は知る由のないことだったが、この一団は試合から帰る途中だった闘鶏同好会の面々だった。試合後で気が立っていた鶏たちは犬猫を新たな獲物と思ったらしい。  そう、今日の直はとても不幸だった。  コー!コー!  ニャーニャーニャーニャー!  ヒャン!ヒャン!  更に数を増した動物の一団は我が物顔に直進を続ける。 「あああ…」  正直どうすればいいかまったく見えてこない。それでもここで知らぬ振りを決め込む、という選択肢は直にはなかった。  だからただただ走り続ける。 「あれ?」  やや下りとなっている道の向こうには車が行きかう大きな交差点が立ちふさがっていた。 (まずい!)  思うと同時に限定飛翔で大きく跳躍する。動物たちを大きく飛び越し、車道ギリギリのところに着地した。  直の姿を見た動物たちはスイッチを切り替えたかのように次々と方向を転換していく。  まるで動物よけであるような自らの姿に寂しい思いを抱きつつもほっと一息をつく直。  だが、今日の直はとにかく不幸だった。  後ろで響くスリップ音。そして質量のあるもの同士がぶつかり合う重い音。  直が振り向くと、スピンしたトラックが歩道のビルに突っ込んでいた。  頭を振りながら車から降りてきた運転手の男が直を見るなり顔を背ける。  実は跳躍する直の脚、というより引き締まっていながらも筋肉の上にうっすらと乗った肉がどことなく柔らかさを醸し出す太腿に見とれいていてハンドル操作を誤り事故を起こしてしまったのだが、直が知ることでもないし、それ以上に面倒な問題が起こりつつあった。  ぶもー!  トラック――農業試験場に牛を搬入するためのものだった――の後部の扉を破って牛たちが飛び出していく。  牛たちはそのまま真っ直ぐに、偶然にも先を行く動物たちを追いかける形で走り去っていった。 「…どうしよう」 反射的に追いかけながらも口から漏れるのはそんな言葉ばかり。直の頭の中はほぼ真っ白だった。  結城宮子は形の無い不安に苛まれ続けていた。  原因は勿論、午前中の直のメールである。  あまり自分から過去を話したがる人間ではないし、こちらからも聞きにくかったのだが、どうやら直は昔から一人でいることが多かったらしい。  おそらくそのためだろう、直は何かある時にそのことと直接関係ある人以外に相談することはあまり無かった。 (特に私相手だと結構ずぼらだし)  日常生活が割といい加減な彼女を放っておけなくてこちらから赴いて手伝ったりしているうちに、すっかり何かにつけこちらが最初のアクションを起こす側という図式が成立してしまっていた。  裏を返せばそれだけ心を許してくれているということでありそれはとても嬉しいことなのだが、だからこそ「ちょっと相談したいことがあるんだ」とただ一文だけのこのメールが強い存在感を持ってのしかかってくる。  これだけでは何の用件なのか判断しようもなく、ただただ想像だけがブクブクと膨れ上がっていく。思い余って直接直に連絡を取ろうとしたのだが、こういう時に限って電波の状況が悪いのか全く繋がらない。  異論反論全てねじ伏せねじ切り論破して強引に会議を終わらせ、引きつった顔のクラスメートを後に宮子は走り出す。  時刻は午後4時20分。携帯を取り出しリダイヤル。暢気な呼び出し音が数度続いた後、今度は繋がった。 『ミヤぁ…助けて』 「ナオ!一体どうしたの!」  常の直からは想像もできない弱弱しい声だった。心臓が押し縮められるような痛みが襲いかかる。 『うん、今とても大変なことになっていて…あっ』 「何!何!?大丈夫なの!?」  せっかくナオと話ができたのに、どうして更に不安が募っていくばかりなのだろう?今自分がナオと同じ場に居ないことが、ナオの苦境に何もできないのがたまらなくもどかしかった。 『とりあえず大丈夫だから心配しないで。それでね、今動物が…』 「動物…?………ねえ、ナオ?返事してよ、ねえ!」  少し話しているうちに随分と落ち着きを取り戻した直の声。ほっとしたのもつかの間、すぐにその言葉は途切れてしまう。  しばらく何とも判断がつかないくぐもった音が聞こえた後、通話は突然途切れる。 「ナオ!ナオ!」  何度もリダイヤルするが反応はない。 (また何か厄介なことに巻き込まれて電話を取る余裕もないのね)  それ以外の可能性は考えたくもなかった。 「だったら…すぐ行くから」  決然と顔を上げる宮子。直から作戦担当として頼られる彼女の頭脳は既にフル回転を始めていた。  午後4時15分。逢洲等華の現在の機嫌はお世辞にも良いとは言えなかった。  朝昼夕の巡回とそのついでの猫参りは彼女の日課だったのだが、今日は昼の日課を果たすことができなかったのだ。  昼の巡回中、生徒の通報で来てみれば取っ組み合いをしている十数人の生徒たち。一喝で場を静め聞きだしてみれば猫好きグループと犬好きグループがひょんなことから「猫と犬どっちが可愛いのか」で言い争いになり、それが喧嘩に発展したのだとか。 (猫以上に可愛い生物なんていないだろう)  とごく自然な感想を抱いた等華であったが、議論の勝敗の判定と風紀委員としての職務とはまた別の話であり、結局全員連行することとなった。  真実を貫こうとしただけなのに、という猫好きたち――中には猫好きコミュニティの繋がりで顔見知りの生徒もいた――の哀しい目は等華の心をちくりちくりとえぐっていき、その上彼女と仕事を分かち合うはずの相方はさっさとエスケープすることで書類仕事をなすりつけ等華の胃をちくりちくりと痛めつけていった。  放課後。ささくれ立った心を癒そうと猫の溜まり場に向かった彼女だったが、彼女の異能〈確定予測〉は無常にもその行動が見事に空振りだと告げた。  そういうわけでやりきれない思いを抱えたまま巡回を続ける等華であったが、今日の等華はある意味ではそこまで不幸ではなかった。 「あれは…?!」  轟音と共に目の前を通り過ぎていく動物の群れ。等華はその中に確かに先程訪ねるはずだった猫たちの姿を確認した。  思考と同時に足が動き出す。たとえそれが勘違いだとしても、牛まで混ざっている集団の中に猫たちがいるのは間違いない。助けなければ。 (…何であいつがこんなところにいるんだ?)  動物を追いかけるように併走を始めた等華の視線の内に大柄な女性が飛び込んできた。  皆槻直。  風紀委員会ではややこしい存在として扱いを決めかねている女である。  任務として強大なラルヴァとの戦いに投入される風紀委員と、自らの意思で強大なラルヴァとの戦いに身を投じる彼女。この両者はその共通項ゆえに戦場で幾度となく遭遇していた。  「味方」――風紀委員たちと「敵」――ラルヴァ(もしくは敵対勢力)を峻別しそれ以外の存在を不確定要素の元となる夾雑物として排除する。この基本的な行動原則に従えば皆槻直は排除されるべき存在だ。事実両者が交戦状態になったことも一度や二度の話ではない。  しかも最近、結果的なことで正式な依頼の上での行為でもあるので彼女に全く非がないとは言え、ある事件で風紀委員会の横から手柄を掻っ攫った形になったことで積極的に何らかの制裁を下すべきだとの声が強まってもいる。  それに対し否や、と唱える声もある。戦闘能力の高さは実証されているし風紀委員会に対して悪感情を抱いているわけでもない(実際、ピンチに陥った風紀委員を助けた例も何度か報告されている)。常に人手不足の風紀委員会としては何らかの形でこちらに取り込むべきだ、というのが彼らの主張だった。  等華はどう考えているか。理屈の上では協力派の方に分があるとは思う。しかし、こちらの追求ものらりくらりと柳に風で受け流す彼女の姿はいい加減で不真面目に思えどこまで信が置けるか図りかねるというのもまた強い思いだった。それに、 (あの扇情的な姿!)  まるで自分の「女」を見せびらかすかのような姿が単純な好悪の意味で嫌いだった。  ともあれ、そのややこしい女が等華の前を走っていた。どうやら彼女も動物の集団を追いかけているらしい。 「!!」  突如、牛に踏まれそうになって集団の後ろから逃げ出してきてジャンプした猫を直が殴り飛ばした。等華の気迫が爆発するかのように膨れ上がる。  今日の直はどうにも不幸だった。宮子との電話に気を取られて猫の発見が一瞬遅れ、反射的に顔を庇うように腕を構えた。その行動が偶然殴ったかのように見えてしまった、それが真実だった。  だが等華には未来の姿を視る異能はあっても過去の姿を顧みる異能はない。それゆえに自らが認識した事実をそのまま信じたのも無理からぬことであった。 「ね…いや動物たちに狼藉を働いたのは貴様か…!」 「それでね、今動物が…!!!」  反射的に携帯を尻ポケットに滑り込ませていた。それほどまでに強烈な殺気だった。 「もう一度だけ聞くぞ。動物たちに狼藉を働いたのは貴様か?」 「…」  一瞬、直は言いよどんでいた。自分の行動がこの動物たちの暴走の発端であり結果的に助長もしたという負い目があったのだ。  だがその一瞬の間は今の等華には開き直りとしか認識できなかった。 「沈黙は肯定とみなす!」  二振りの刀、「月陰」と「黒陽」が死を呼ぶ牙となって直を引き裂かんと襲い掛かる。 「まあ待ってくれ、話を聞いてはもらえないか」  あえて後ろに倒れこむようにして回避、高圧空気の勢いを借り距離をとって立ち上がりながら尋ねる直。  責任があるといわれれば(不本意ではあるが)受け入れもしよう。だが、ここまでされる謂れはないはずだ。 「今更言い訳無用、貴様の行為は万死に値する!」  それに対する答えは更なるより鋭い攻撃だった。 (なんて物分りの悪い女だ!)  直は憤慨した。直としてはあまり馬の合わない人間だとは思っていたものの、その強さと割に合うとは思えない仕事にもかかわらず精力的に取り組むその姿勢には一目置いており、逢洲等華という強力な使い手と立ち会いたいという思いも抑え彼女なりに気を配ってきたつもりだった。  その結果がこれか、その思いが熱となって彼女の中の感情を沸き立たせる。 (もういいよね)  自分の中の何かに確認するように、そう心の中に問いかける。否定する声はない。ここまで待った。向こうから仕掛けてきた。こちらの言葉に聞く耳を持たない。もう十分だ。もう止めるものは何もない。  瞬時に両の拳にブラスナックルが収まる。直は吼えるように宣戦布告した。 「それが答えか…ならばその言葉、僥倖と受け止めさせてもらうよ!」 ---- [[後編>http://www39.atwiki.jp/mayshared/pages/455.html]] [[Mission-02>http://www39.atwiki.jp/mayshared/pages/346.html]] [[Mission XXXシリーズページに戻る>Mission XXXシリーズ]] [[トップに戻る>トップページ]] [[作品保管庫に戻る>投稿作品のまとめ]]

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