【突撃のストレイトブースター1.5】

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ルール説明というか、ボス説明を兼ねたネタバレ 今後、そういう展開するんだろうなぁという前振り ----  望遠写真、衛星写真、派遣員記述、魂源力量計測値、対ラルヴァ観測装置諸々、神那岐システムデータetcetc。  いくつもの資料が広げられた卓上に、ぱさりと一枚の紙を投げ出して、語来灰児は嘆息した。 「やはり、これしか考えられないか」 「『時留蜉蝣』……これが例の沫波町を停滞閉塞させているラルヴァの正体かね?」  その紙を拾い上げ、スーツ姿の壮年の男が目を細める。  灰児は男の言葉に頷きつつ、しかし肩を竦める。 「そうでないはずなのだが、そうであるとしか言えない」  そんな灰児の物言いに、男はそっと息を吐きだす。 「……詳しい説明を」 「現在のところ、これだけ見事に運命の閉塞を実現させる能力を持ったラルヴァは、時留蜉蝣以外には観測されていない。もっとも、まったくの新種という可能性が無いわけではないが、こと『運命』などという特殊な能力を持つラルヴァは、そうそう存在しないはずだ」  仮説に対する仮説であることを承知で、灰児は断言する。それ以外に、思考する方法はない。 「では、そうでないはず、というのは?」 「時留蜉蝣の体長は数十センチ。そして停滞の効果範囲は一匹につき、十メートル以内だ」 「……町ひとつ停滞させる力など、持っていない?」 「その通り。そもそも、これだけの広範囲に運命干渉をかけるとなると、尋常ではない魂源力を浪費する」 「……大量発生という可能性は?」 「考えられなくはないな。だがそうだとしても、町中に蜉蝣が飛び回っていなければいけない。派遣員の報告によれば、それらしきラルヴァの姿は中央に建つ町庁舎にのみ確認されている。他に発見されたラルヴァはすべて運命系の能力を有してはいない」  それゆえ、そこにいるラルヴァたちも停滞に巻き込まれて動けずにいた。 「答えは見つからないな。実際に突入してみるまでは」 「危険は?」 「危険でないラルヴァ討伐など、あるのかな?」 「……それでも、危地へ子の背を押し出す我々には、少しでも余地がある限り努力する義務がある」  男の言葉に感銘を受けたのか……それともただの眼精疲労か、灰児は目頭を抑えてしばし黙った。 「……ひとつ、まったく関係が無いかもしれないが」 「なんだ?」 「この時留蜉蝣を専門的に研究していたラルヴァ学者が、三年前に失踪した事件がある」 「……」  無言で先を促し、男は手元の紙に目を向ける。そこには時留蜉蝣の詳細な情報が書かれていた。  ラルヴァとは、まだまだ未知の部分が多い存在だ。学園にも専門の研究機関を置いて、解明に努めているが、異能や魂源力同様、それは遅々として進まない。  そんなラルヴァの一種である『時留蜉蝣』には、「詳細なデータ」が揃っていた。もっとも、それにしてもとても全生態を把握しているとは言いがたいものだが。 「時留蜉蝣の能力は、自身を含めた周囲の運命の停滞。そうすることで、自らの寿命を先送りにし、周囲からの危険が到達するのを塞き止めている」 「賢い能力の使い方だな」 「だが、ここには一つの矛盾がある」 「矛盾?」 「自分の運命を停滞させていては、どんなに永い時間を生きようとも、まったくの無意味だ」  はっと驚きの表情を浮かべる男に、灰児は微笑を見せる。 「少し考えればわかることだ。時留蜉蝣はただ止まっているだけの存在。死にはしないが、実質生きてもいない」 「……バカな能力の使い方だな」 「ところが、それがまたそうではなかった」 「今度はなんだ?」  男のうんざりとした表情に、そろそろ灰児への苛立ちが浮かんでいた。  それと知りつつ灰児は微笑のまま語る。 「時留蜉蝣は『自らの運命を停滞させたまま行動できる』というのが、本来の能力だったんだ」 「……待て、言っている意味がわからない」 「そのままの意味だよ。時留蜉蝣は『停滞した運命』と『流れる運命』との二つを持ち、止まると同時に動くことが出来る」 「そんな……バカな。ルール違反も良い所だ」 「その通り。結局、時留蜉蝣は莫大な魂源力を消耗し、停滞した運命を維持できるのは限られた時間だけ。魂源力を使い果たせば、すぐに寿命を迎えて死んでしまう」  それでも、三日という寿命を一年にまで伸ばすことが出来る、と資料には記されていた。 「さて、そんな破格な能力を研究していた学者が失踪した。直前に、恋人だった異能者がラルヴァに殺されたと言う話だが、それについて詳しくは知らない」 「その学者が、今回の事件に関係があるのか?」 「最初に言ったけど、ないかもしれない。ただ……その学者の出身地は、沫波町らしい」 「……失礼する」  スーツの男はさっと踵を返すと、部屋を出て電話をかけ始めた。その学者の捜索、過去の資料などを集めさせるためだ。  失踪したラルヴァ学者の名前は、歌川賢治。  時留蜉蝣と中心とした運命系能力の研究者。  その恋人の名前は藍沢由美子。  運命干渉を可能とする装置を開発する、超科学系異能者。  歌川賢治の消息についてのデータが入手できたのは、『蜉蝣潰し作戦』開始後だった。  藍沢由美子は死んでおらず『運命の喪失』状態となっていた。  塞き止める力が失われれば再び動き出す『停滞』と違い、運命を『喪失』した人間は永遠に、止められた運命の牢獄に捕らわれ続ける。  時留蜉蝣の『運命停滞』と『二重運命』、そして『運命喪失』。  そこから予想される目的は……藍沢由美子の『第二運命の構築』。  人ひとりの運命を能力によって構成するためには、凄まじい量の魂源力が必要になる。  そのためにはラルヴァや異能者たちを集めて魂源力を奪うのが手っ取り早い。  『蜉蝣潰し作戦』の、行方やいかに。 ---- [[トップに戻る>トップページ]] [[作品保管庫に戻る>投稿作品のまとめ]]
ルール説明というか、ボス説明を兼ねたネタバレ 今後、そういう展開するんだろうなぁという前振り ----  望遠写真、衛星写真、派遣員記述、魂源力量計測値、対ラルヴァ観測装置諸々、神那岐システムデータetcetc。  いくつもの資料が広げられた卓上に、ぱさりと一枚の紙を投げ出して、語来灰児は嘆息した。 「やはり、これしか考えられないか」 「『時留蜉蝣』……これが例の沫波町を停滞閉塞させているラルヴァの正体かね?」  その紙を拾い上げ、スーツ姿の壮年の男が目を細める。  灰児は男の言葉に頷きつつ、しかし肩を竦める。 「そうでないはずなのだが、そうであるとしか言えない」  そんな灰児の物言いに、男はそっと息を吐きだす。 「……詳しい説明を」 「現在のところ、これだけ見事に運命の閉塞を実現させる能力を持ったラルヴァは、時留蜉蝣以外には観測されていない。もっとも、まったくの新種という可能性が無いわけではないが、こと『運命』などという特殊な能力を持つラルヴァは、そうそう存在しないはずだ」  仮説に対する仮説であることを承知で、灰児は断言する。それ以外に、思考する方法はない。 「では、そうでないはず、というのは?」 「時留蜉蝣の体長は数十センチ。そして停滞の効果範囲は一匹につき、十メートル以内だ」 「……町ひとつ停滞させる力など、持っていない?」 「その通り。そもそも、これだけの広範囲に運命干渉をかけるとなると、尋常ではない魂源力を浪費する」 「……大量発生という可能性は?」 「考えられなくはないな。だがそうだとしても、町中に蜉蝣が飛び回っていなければいけない。派遣員の報告によれば、それらしきラルヴァの姿は中央に建つ町庁舎にのみ確認されている。他に発見されたラルヴァはすべて運命系の能力を有してはいない」  それゆえ、そこにいるラルヴァたちも停滞に巻き込まれて動けずにいた。 「答えは見つからないな。実際に突入してみるまでは」 「危険は?」 「危険でないラルヴァ討伐など、あるのかな?」 「……それでも、危地へ子の背を押し出す我々には、少しでも余地がある限り努力する義務がある」  男の言葉に感銘を受けたのか……それともただの眼精疲労か、灰児は目頭を抑えてしばし黙った。 「……ひとつ、まったく関係が無いかもしれないが」 「なんだ?」 「この時留蜉蝣を専門的に研究していたラルヴァ学者が、三年前に失踪した事件がある」 「……」  無言で先を促し、男は手元の紙に目を向ける。そこには時留蜉蝣の詳細な情報が書かれていた。  ラルヴァとは、まだまだ未知の部分が多い存在だ。学園にも専門の研究機関を置いて、解明に努めているが、異能や魂源力同様、それは遅々として進まない。  そんなラルヴァの一種である『時留蜉蝣』には、「詳細なデータ」が揃っていた。もっとも、それにしてもとても全生態を把握しているとは言いがたいものだが。 「時留蜉蝣の能力は、自身を含めた周囲の運命の停滞。そうすることで、自らの寿命を先送りにし、周囲からの危険が到達するのを塞き止めている」 「賢い能力の使い方だな」 「だが、ここには一つの矛盾がある」 「矛盾?」 「自分の運命を停滞させていては、どんなに永い時間を生きようとも、まったくの無意味だ」  はっと驚きの表情を浮かべる男に、灰児は微笑を見せる。 「少し考えればわかることだ。時留蜉蝣はただ止まっているだけの存在。死にはしないが、実質生きてもいない」 「……バカな能力の使い方だな」 「ところが、それがまたそうではなかった」 「今度はなんだ?」  男のうんざりとした表情に、そろそろ灰児への苛立ちが浮かんでいた。  それと知りつつ灰児は微笑のまま語る。 「時留蜉蝣は『自らの運命を停滞させたまま行動できる』というのが、本来の能力だったんだ」 「……待て、言っている意味がわからない」 「そのままの意味だよ。時留蜉蝣は『停滞した運命』と『流れる運命』との二つを持ち、止まると同時に動くことが出来る」 「そんな……バカな。ルール違反も良い所だ」 「その通り。結局、時留蜉蝣は莫大な魂源力を消耗し、停滞した運命を維持できるのは限られた時間だけ。魂源力を使い果たせば、すぐに寿命を迎えて死んでしまう」  それでも、三日という寿命を一年にまで伸ばすことが出来る、と資料には記されていた。 「さて、そんな破格な能力を研究していた学者が失踪した。直前に、恋人だった異能者がラルヴァに殺されたと言う話だが、それについて詳しくは知らない」 「その学者が、今回の事件に関係があるのか?」 「最初に言ったけど、ないかもしれない。ただ……その学者の出身地は、沫波町らしい」 「……失礼する」  スーツの男はさっと踵を返すと、部屋を出て電話をかけ始めた。その学者の捜索、過去の資料などを集めさせるためだ。  失踪したラルヴァ学者の名前は、歌川賢治。  時留蜉蝣と中心とした運命系能力の研究者。  その恋人の名前は藍沢由美子。  運命干渉を可能とする装置を開発する、超科学系異能者。  歌川賢治の消息についてのデータが入手できたのは、『蜉蝣潰し作戦』開始後だった。  藍沢由美子は死んでおらず『運命の喪失』状態となっていた。  塞き止める力が失われれば再び動き出す『停滞』と違い、運命を『喪失』した人間は永遠に、止められた運命の牢獄に捕らわれ続ける。  時留蜉蝣の『運命停滞』と『二重運命』、そして『運命喪失』。  そこから予想される目的は……藍沢由美子の『第二運命の構築』。  人ひとりの運命を能力によって構成するためには、凄まじい量の魂源力が必要になる。  そのためにはラルヴァや異能者たちを集めて魂源力を奪うのが手っ取り早い。  『蜉蝣潰し作戦』の、行方やいかに。 ---- [[トップに戻る>トップページ]] [[作品保管庫に戻る>投稿作品のまとめ]]

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