※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

奇跡の価値は(前編) ◆CMd1jz6iP2




龍が、現れた。
鋭利な葉で攻撃してきた生物から、同志キバの力もあり逃げることができた。
同志レナばかりか、同志キバもなんと頼もしいことか。
一番頼りないのは私ではないか。
同志レナと違い、そこまで頼りにはしていなかったことを恥じる。
あの生物が追ってこないことを確かめ、合流地点の民家へ向かおうと思った矢先
塔の方角に、大きな龍の姿が見えたのだ。

あんな生物までいるとは、慣れ始めたとはいえ信じがたい。
そして、すぐにもう一体同じ龍が出現した。
遠くて良くわからないが、龍同志が向き合って、敵対しているように見える。
同志キバによると、同種でいい奴と悪い奴がいるのはゲームでは良くあることらしい。
人間と同じか……それはともかく、つまりは戦いが起きているということだ。

ほどなくして、龍が二体とも消えてしまう。
もしかしたら、戦っていた片方が宇宙人への反逆の意志を持っているかもしれない。
私は、同志キバに同志妹を任せて、塔へと向かうことにしたのだ。
三人で行くのは危険であったし、同志妹が塔に行くのを拒んだ。
あんな龍を見た後ならば当然だろうと思い、私は塔へと足を進めたのだ。

そして、塔の前まで来て、物陰で様子を伺う。
塔の入り口らしきところに、なにやらイタチのような生き物がいる。
あの草を飛ばす生物同様、危険な存在である可能性が高い。
空のペットボトルに砂利などをつめて、イタチのいる方角に全力で投げてみる。
イタチはすぐに気付き、ペットボトル目掛けて襲い掛かった。
イタチのパンチで、ペットボトルが凍りついた。
やはり危険な生物だったか……場所を知られた可能性もあるので、移動する。
そこで、私はなにやら鼻につんと来る刺激臭を嗅いだ。
その方向へと進んでみて……彼と出会ったのだった。

水銀燈の腕を、すぐに見つけることが出来た。
見つけたまでは良かったが、あのイタチが前で番をしている。
塔の出入り口を固めている……つまりは、あの中に銃持った奴がいるに違いない。
そしておそらくはジーコとティアナも。

「ヤバイな、あのイタチを置いてったってことは……詰んでるんか?」
なんとか助けたいが、あのイタチに金属バットで勝てるとは思わない。
しかも、刺激臭を嗅ぎ分けてるのか警戒してる。
最悪だ、と思っていると突然ペットボトルがイタチに飛んできた。
すぐ迎撃されたが、一体誰が投げたのか。
そう思ってると、目の前に外山恒一が現れた。

「いや、流石にこれはないと思ったわ」
「意外と知ってる人がいて、私もビビッている」
新たな同志、博之に事情を聞く。
殺し合いに乗っていない4人で行動していたが、多数派に襲われ二手に。
そして、片方の襲撃者は撃退したが、あの塔に兄とその仲間がいるという。
良く見れば、かなりの怪我を負っている。
ここに来たばかりで、龍についてはわからないらしい。
なんにせよあの塔の中へ進入しなければ、彼らが危ない。

「それに、水銀燈の腕も持って帰ってやらんと」
驚いたことに、仲間の一人は人形だという。
ロボットでもなく、西洋人形のような姿なのだと。
もはや驚くまい。むしろ他の星の宇宙人が攫われてきている可能性が高くなった。
「だが、あのイタチを倒すのは難しいだろう。同様の生物に襲われたから判る」
「そんなんがいるんか。はよう終わらせて戻らんと、水銀燈が危ないな」
なにやら、同志博之がごそごそとディパックをいじっている。
何か方法でもあるのだろうか?
「外山さん、ちょっとだけ協力してくれます?」

「オラ!隠れてないで出てきやがれ!」
塔の部屋のドアを撃ちまくり、中に入って隠れてそうな場所を撃ちまくる。
順々に繰り返すが、見つかる気配がなかった。
「早く出てくれば、脳天一発で終わらせてやるぜー!」
逆に出てこなくなると思うことばかりを口にするサトシ。
「ま、嘘だがな!!女はまた痛めつけて殺してやるよ!!!」
邪悪な顔で笑うサトシが次の部屋を打ち抜く。
そして部屋に入ろうとするとしたサトシの耳に、ドアが開く音が聞こえる。
振り向くと、そこには隣の部屋に移動しようとする男の姿。
「馬鹿かよ!鬼ごっこは終わりだぜぇぇぇぇ!!」
サトシは撃ちまくりながら走る。
そして、部屋に男の姿をその目で確認し……
「死ねよ、ぶあぁぁぁぁぁか!!」
頭目掛けて乱射した。

「……あ?」
蜂の巣にしたはずの男が、消えた。
嫌な予感がして、振り向き様に銃を構えるが、遅かった。

「ドカン!」

「やっぱり謝って逃がしてもらうか」
永井先生の確変は終了した。
考えてみたら、銃持った相手に鉈って無理すぎる。
出会い頭、撃たれて終了。ティアナのように避けるなんて出来るわけがない。
「幻影で隙突いてグサー、なんてうまく行くと限らんからな」
鉈以外に武器も無いしな、と考えて、一つ案が浮かんだ。
「そうや、この玩具の大砲があったが」
腕にすっぽりと入る筒。これで脅すというのはどうだろう。
「あの銃も玩具みたいな見た目やし、騙せるかもな。
そうやな……この大砲で撃たれたくなかったら逃げてもええぞ。
逃げんなら、この大砲でドカンと【ドン!!】 うわあああああ!??」
ドカンと、と言った瞬間、玩具の筒から何かが飛び出て壁に当たった。
壁が少し崩れる……浩二はしばらく呆然としたが
「ドカン」
また出た、と浩二はこれが玩具じゃないとわかった。
「キタコレー!」

「よっしゃー!」
ティアナの幻影の俺に引っかかって、サトシはくうき砲で吹っ飛んだ。
それを見た永井先生は狂喜乱舞。
「俺つえー!」とか、「これ配信すべきだろ!」とかじじゅうしない。
サトシは顔面をハンマーで潰されたような、悲惨な状態になっていた。
死んだ、と死体をよく見たことの無い人なら思うような顔。
浩二もそう思った。さっきの死体を怖くてよく見ず、埋めもしなかった浩二は

「でべえええ!!ごろじてやばあああ!!!」
「ちょ……ぅうぁあ~!?」
悲惨な死体よりヤバイ表情で銃を撃ってくるサトシに完全にびびった。
逃げよう、と思ったときには肩が撃ちぬかれていた。
「ぅわ!ひぎゃああああ!!!」
痛いより熱かった。
サトシもダメージの影響で、まともに狙えなかったために助かったようなものだ。
恐怖でよたよたと後ずさりながら、ドカン!ドカン!とサトシのいる部屋に撃つ。
もちろん、部屋の中にいるサトシに、通路を後ずさっている浩二の攻撃が当たるはずもない。
だが、それは同時にサトシも浩二を狙えないということだった。

(許さねええ!!絶対に楽には殺さねえぞ!!)
怒りに震えるサトシは、二枚のカードを取り出す。
(使うか……だが、これは……?)
サトシは、こんなカードを知らなかった。
こんなカードがあるはずない……そう思いながらも
(知ったこっちゃねえ!!あいつを殺すのに、出し惜しみは無しだ!!)

(なんでこんな目に会うんぞ!俺が何した!)
俺涙目、どころではないガクブル状態の浩二は、ドカンドカンと撃ちまくる。
このまま後ろに逃げれば、なんとかなる。
またティアナに幻影作ってもらおうとか、最悪なことしか考えていない。
しかし、その頼りのくうき砲の衝撃波が……霧散した。
(な、なんぞー!?)
恐ろしい風圧が、逆に部屋から噴出してくる。
それでもドカンドカンと放っていく、その部屋から人影が現れる。
「ドカン!……へ?」

金髪の、女騎士?
くうき砲の衝撃波は、その騎士に当たる直前でかき消される。
本当にヤバイことに気付いた浩二は、またドカンドカン連呼する。
だが、その全てが騎士には届かない。

「弱者を傷つけるのは、騎士として恥ずべき事ですが……これも運命か」
なにやら、心苦しそうに……しかし、剣を構える。
金色に輝く剣。明らかに、鉈で勝てる武器じゃない。

「待たれよ、騎士王」
部屋から更に男の声。まだいるのかと震える浩二。
出てきたのは、幼女。あの鋏を持っていた子供と同じくらいか?
「我らが主は、残酷な死を所望している。まず、私が四肢を切断せよとの命令だ」
めっちゃ渋い声の幼女。
「夜を切り裂く閃光の戦斧……楽に死ねるものではないぞ」
消えた。一般人の浩二には、そうとしか見えない高速。
くうき砲の衝撃波を回避し、浩二の眼前に現れる。
手に持った閃斧の一振り。

「ア……アアアアアアアア!!!」
浩二の腕が、切り落とされた。
「大義無き行いではあるが……もう片方も頂く!」
閃斧を振りかざす。

「ひぃい、ひゃぁあ!!」
せめてあっさり殺してくれと、泣きながら頭を伏せる浩二。
「なんだと!?」
渋い幼女の驚愕の声。
恐る恐る頭を上げると……なぜか空を飛んでいる。
「ぅあああ、なんぞこれー!!」
「面妖な……!」

(なんなんだ、この胸糞悪い女どもは?)

サトシのブルーアイズ以外に支給されたモンスターカード。
その名は『B.K.M.G【ブラックナイトマジシャンガール】』と『セイバー』
だが、サトシの記憶にそんなカードは存在しない。
ブルーアイズすら上回る可能性を持つカードだが、思ったとおり何か気に食わない。
(嫌がりながらも逆らえず殺す姿も、まあ見てて楽しいけどなあ)
方法はわからないが、逃げた先は上。
いくら逃げても追い詰められるだけだ。
(楽しむぜ……この怪我の分はなあ!!)

「ジーコ!しっかりせええ!!」
博之は、塔の一室へと移動していた。
ビー玉に自動ぶん殴りガスを噴きかけ、それを窓に投げ込み
外山さん自分の名前を呼んでもらう。
それで飛んで進入したのだが、すぐに物音で大変な状況だと察した。
下から聞こえてくるのはどう考えても兄の悲鳴。
再び自動ぶん殴りガスをビー玉に噴きかけ、名前を呼んだのだが

……間に合わなかったようだ。
「くそっ!ほれ、薬草や!これ食っとけ!」
部屋に転がってた縄で出血を止め、切断面を薬草でふさぐ。
酷く暴れ、泣き叫ぶ浩二を押さえつけ、口にも放り込む。
「ティアナはどうした、やられたんか!」
「ティア……足怪我して……上の部屋に……!」
それで一人で……格好つけすぎだと思ったが、自分も人のことは言えんと思った。
「下に、あの銃持ったのがおるんやな!ここで待っとけ、俺が……」

「ま……てぇ!!」
残った右腕で、博之を掴む浩二。

「無理や!!他に強いのが二人もいよる!殺されるが!」
「なら、ティアナ連れて逃げんと!自動ぶん殴りガス置いてくから!」
バットを片手に飛び出していく博之。

体中から、汗を噴出し悶える浩二の頭に、少し冷静さが戻る。
(そうや……ティアに、あんな格好付けたんやったな)
部屋に転がる、ビー玉一つと、自動ぶん殴りガス。
(ティア……俺まだ……詰んでねぇ!)

「あいづら……随分上まで飛んでっだらじいなぁ」
サトシは、傷の治療もせずに追いかける。
セイバーとBKMGも、その後に続く。
通路に点々と続く血。
かなり続く道しるべは、何度目かの階段にも続いていた。
「でめえら!先に上って半殺しにして来い!」
表情を変えず、命令に従う二人の騎士。

だが、やはり感じる。こいつらは俺の命令を快く思っていない。
命令に逆らうことは無いようだが、支給品のくせに、ちっぽけな自我を持ちやがって。
道具は道具らしく、何にも考えるんじゃねえ!

「ぬっ?」
狭い階段を上っていく騎士二人の行く手を、何かが襲ってくる。
「なあっ!?」
セイバーが転ぶ。
BKMGが階段から飛ぶ退くと、襲ってきたものの正体が明らかになった。
「ビー玉……!?」
「うおおおっりゃああああ!!!」
体勢を崩したセイバーに、飛びかかる影が一つ。
「がはっ!」
セイバーの脳天をバットによる鈍い衝撃が襲う。
二撃目を振りかぶる襲撃者……博之!

「はあ!!」
しかし、それをセイバーは許さない。
黄金に輝く剣の一閃が、バットの軌跡と交わる。
ギィイイイン!!と激しい金属音と火花が、巻き起こる。
「こ、こんなバット一本で……エクスカリバーの一閃を!?」
「世の中にはな、神様も殺せるチェーンソーだってあるんぞ!」
拮抗状態の二人。
だが、技術の差は一目瞭然。
セイバーは、博之の体勢を崩させるために身を引き

「がふぉっ!?」
同時に身を引いた博之に、脳天二発目の強打を受けた。
「騎士王!」
「なにやっでんだ!ぞんな屑に攻撃読まれてるんじゃねえぞ!!」
「攻撃ばっかりしとると、ピンチになるのはメガテンで予習済みやが!」
これ以上は防げないというのに、時間を稼がないとならない博之は強がる。
あくまで時間稼ぎなので、あの瞬間、たまたま深く踏み込まなかっただけ。
それでも、セイバーは敵意を高め、再び剣とバットが火花を上げる。

「なんども凌げると思うなッ!」
「心配しなくとも、無理すぎるぅう!」
少しでも引けば、切り殺されるのは目に見えていた。
この状態から、逃げることもできない。

それを打ち破ったのは、意外なことに敵方。
「ぐああ!?」
セイバーの悲鳴。更に頬や足に熱さと痛みが博之を襲う。
「主よ、なにをしている!?」
「まどろっごじいんだよ!俺が仕留めてやる!!」
サトシが、銃を乱射していた。
それは、ほとんどがセイバーに直撃している。

「なにして……お前の仲間やろが!!」
「ごいつらは、死のうが24時間後には再使用でぎる!ぞのまま押ざえでろよ!」
セイバーは、主の命令を忠実に守り、拮抗状態を維持している。
「お前、これでいいんか……!」
「主を選ぶ権利はありません。たとえ外道でも、命令には背けません」
歯を食いしばりながら、後ろからの射撃に耐える騎士王。
「はっ、大変やな、お前も……!」
博之も、頬を掠める銃弾に怯まず押し切ろうとする。
狭い階段のため、BKMGは命令である階段を進むことが出来ない。
セイバーが消えても、博之が押し負けても、跳弾が博之に致命傷を与えても
どう考えても、博之は死ぬ。

その敗北確定の拮抗を破る物音に、気付いたのは博之だった。
足元を、コロコロ転がっていく、ビー玉。
さっき全部下に落ちたはずなのに、なぜまた?
次に気付いたのは、ビー玉が足にぶつかったBKMG。
「……」
全てを看破しつつも、命令無しでは、動かずに済む。
銃撃は止まない。
「何か、手があるなら……非情になるべきだ」
セイバーの声は、愉悦に浸りながら連射される銃声で、サトシには聞こえなかった。
博之も、自分のすべきことを、気付いていた。

「…………永井」
覚悟が足りないのは、誰だったのか。
こんな騎士と打ち合って、まだ覚悟しきれてなかったのか。
何かを守るために、何かを失う覚悟は、等しく必要だというのに。
「浩二ィィィ!!」
博之の言葉は、階段の上で般若心経を唱える男に……届いた。

「びゃははははは!!馬鹿が飛んでぎだぜ!!」
サトシは大笑いした。
飛んで逃げたのに、飛んで戻ってくる。死にたいとしか思えない。
「セイバー!!」
浩二は、セイバーの真上を通過する。
セイバーはその浩二を

視界にもいれず、博之との押し合いを続ける。
「で、でめえ!?」
「命令無しで、私たちは動けない」
脳が沸騰しかけるサトシは、BKMGに命令する。
「命令だ!あのチンパンジー野郎を攻撃じろおおお!!」
「……了解した」
ビー玉に頭を突っ込みながらも、浩二はサトシに向かって走った。
「死ね!死ね!でめえがどう足掻こうが、無理なんだよ!!」

「燃えるぜ、その言葉ああああ!!!」
ゲームの配信のときはいつもそうだった。
「お前には無理」と言われて、永井先生の心にはいつもやる気が満ちていく。
でも、それはやる気が満ちるだけで、実力が変わるわけじゃない。
結局、永井浩二は、いつもうまく行かずに失敗していく。
そして、今回もまた、結末は同じ。
腕を失った男の踏み込みは、あまりにも遅くて、隙だらけだった。
最速たるBKMGが踏み込むには、あまりにも十分な隙。
その閃斧の一振りは、刹那のうちに永井浩二を切り捨てる。

四肢を切断しろという命令に従い、その両足を、一瞬で。
「ばっ……馬鹿がでめええええ!!」
重力に従って、鉈はBKMGの頭を叩き割る。
消滅するBKMG。

部屋の置いていかれたぶん殴りガスを吹きかけたビー玉を、階段から転がしただけ。
セイバーに切り殺されなかったのは、目の前の敵を押さえる命令に、浩二が干渉しなかったため。
BKMGが、あっさりとその命を奪わなかったのは、新たに下された命令が
「攻撃しろ」であり、「殺せ」ではなかったため。
元々下された命令である「四肢を切断しなぶり殺せ」を打ち消さない命令だったため。
様々な要因が、折り重なった奇跡。

「魔法……カード」
永井先生のやる気の炎が、その行動をまだ支えていた。
永井浩二に残された、最後の抵抗の手段が、最期の奇跡。それは

「死者蘇生を発動……復活させるんは、ブラックナイト、マジシャン、ガール!!」
消滅したBKMGを、雷撃の中より、不死鳥のように蘇らせる、最強のカードだったこと。

「セイバーーーー!!!」
サトシの頭の切り替えは、早かった。
「BKMGを破壊しろ!!」
セイバーは、博之をあっさり弾き飛ばして、黒い騎士へと肉薄する。
「銃持ったガキを……こ、うげき 」
「その言葉……待っておりました!!」
黒い騎士は、その金色の髪をなびかせ、疾る。
だが、セイバーの特殊効果が発動する。
「私が居る限り、マスターを傷つけることは不可能!」
二つの金の閃光を、次に彼らが目にしたのは交差した後のこと。
セイバーも、BKMGも健在……否
「……傷の分、私が遅かった」
騎士王が消滅し……BKMGが膝を屈した。
「ちい!」
銃を連射するサトシ。
「ぼう、ぎょ……」
銃撃を、BKMGの防御壁が防ぐ。

「主……なぜ、貴方は戦ったのだ?」
BKMGは、血を噴出しながら動かない、浩二に語りかける。
「なんで、て……やっぱり、男はかっこ、つけたいだろ、が」
「大義ではなく……目の前の女を選んだか」
「でもなぁ……何度も、守ってもらったティアを、見捨てて逃げたら、おかんに、殺されてまうが」
防御壁が、小さくなる。
「ふふ……ティア、か」
「なんぞ……もう、眠いわ」
「……ティアナ・ランスターは、お前が守るに相応しい女だったか?」
「……好みやった、かも、な。キスくらい……」
そこまで言って、はん、と笑い
「俺……じじゅう、しろよな」
そう言って、永井浩二は、動かなくなった。

何も言葉が出なかった。
ただ、動かなくなった兄にフラフラと近づいて。
「貴様はこの男の死を無駄にするのか!!」
BKMGが吼える。
「フェイト・T・ハラオウンの複写に過ぎぬ私は、もはや消える!!」
その姿が薄く、透ける。
「この男の守りたかった者、お前が」
言葉を紡げず、騎士は消えた。
「この……馬鹿乙が!」
二色の甲羅を全力でサトシに向かって投げる。

「ぶぁああか!!」
サトシは避けながら銃を撃ちまくる。
もう敵にもなりゃしない。
バットと銃で、戦いになるわけが無い。
BKMGという、あまりにも大きな壁を乗り越えたサトシにとって
永井博之など、その程度の認識でしかなかった。

なぜ、彼は慢心を捨てないのだろう。
太古より、絆の力に敗れ去ってきたというのに、この男は同じ愚を繰り返すのか。
回避しながらの銃撃は、安定せずに博之には当たらない。
「ああ、任せとけ!!」
博之は床のビー玉を鷲掴みにしていた。
それを、サトシに投げる。
「眼くらましのづもりかよ!」
そんな手に乗るか、とサトシは構える。
調子に乗って、連射したから当たらないのだ。
狙えば、一発だったと今更ながら悔やむ。
ビー玉なんて関係ない。顔面に当たるビー玉を無視して、照準を合わせ

「ギイイイイイアアアア!?」
焼けるような痛みが、サトシを襲った。
傷口がびりびりする、痒い、痛い、苦しい!
ビー玉の中に混じって、なにやら鍵のようなものが混じっていた。
傷口に炎症を起こしかねない、塩素が付着した鍵が。
「でめええええ!!!」
ロールバスターを装着した腕を再び博之に向けて
振り下ろされたバットによって、その腕があまりにも鈍い音を響かせる。
「ジーコ!守ってやるから!」
そのままバットを大きく振りかぶる。
あの黒い騎士が紡ぐはずだった言葉。
「ティアナを、代わりに助けてみせるが!」
想いを乗せ、バットを振り下ろす―――




「どっかあん」
反対側の手に装着されたくうき砲が、博之に闇を与えた。

最初にBKMGの切り落とした浩二の腕は、くうき砲を装着した腕だった。
それを拾い、装備していたことに、博之も浩二も気付かなかった。
サトシ自身、ドカンドカンと、浩二の真似をするみたいで、使わずにいたのだ。

「畜生が、ふざけるな……ふざけるんじゃねえよ!!」
ドカン、と浩二の死体を吹き飛ばし、壁に叩きつける。

「ドカン、ドカン、ドカン、ドカン、ドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカン!!」
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
銃と大砲を、撃って、撃って、撃って、撃って、撃って。
どんどん、死体の原型が崩れていく

「てめえええ!!俺に逆らったのによお!勝手になんで死んでんだ?ああ!?」
誰かもわからなくなった死体を、サトシはまだ痛めつける。
「オラ!猿が、屑が!生き返って悲鳴をあげろよ、汚い悲鳴を!
許さねぇ、こんなことじゃ許さねぇ!この死体を「使って」あの雑魚女を壊してやる。
感謝しろよ?お前みたいな屑が、俺様に使ってもらえるんだからな!
ひゃは、ひゃはははははははは!!!」
やっと、少し気が治まった。
下のヲタチを連れてきて、すぐにでもあの女を壊してやる。
………いや、その前にこっちの屑にも俺の腕を折った礼を忘れてた。

「おーら、ドカ「パスッ」あ?」
なんだよ、しょぼい音出しやがったな。
糞大砲が、俺の気が治まらねえじゃねえか。
……くそ、疲れたのか眠くなっちまった。
体が支えられねぇ……起きたら殺すか。

なあに、お楽しみは、これからだ。



sm99:世界最強の国技/球技 時系列順 sm100:奇跡の価値は(後編)
sm99:世界最強の国技/球技 投下順 sm100:奇跡の価値は(後編)
sm102:両手に花  Flowers of the abyss 外山恒一 sm100:奇跡の価値は(後編)
sm94:愛媛のジャンク/凡人打開配信(後編) 永井博之 sm100:奇跡の価値は(後編)
sm94:愛媛のジャンク/凡人打開配信(後編) 永井浩二 sm100:奇跡の価値は(後編)
sm94:愛媛のジャンク/凡人打開配信(後編) サトシ sm100:奇跡の価値は(後編)



|