電撃戦/Blitzkrieg ◆qwglOGQwIk




「この辺でいいか……むっ…………」
「どうした、ロムスカ」
「見ろ、早速だが来客のようだ」
ムスカはエアーマンに首輪探知機の画面を見せる。
そこには北から猛スピードで迫ってくる点が一つと、二つ組の点と一つだけの点がまばらに表示されている。
ムスカが指し示しているのはこの猛スピードで迫る点のことだろう。

「我々に接触されるのは不味いのが分かるな、エアーマン」
「ああ、折角の奇襲がばれては水の泡だからな」
現在ムスカとエアーマンが隠れている岩場の裂け目の他、北部の山岳地帯は見渡す限り険しい斜面や岩山、裂け目だらけである。
その天然の要害ともいえる土地を発見し、首輪探知機で索敵を行っていたところ防衛網に一つ引っ掛かったというわけだ。
ロックマン達が罠にかかるのを待っているエアーマンとムスカにとって、この見知らぬ第三者に奇襲の情報を持っていかれるのだけは避けねばならない。

「接触まではまだ時間がある、距離100まで迫ったら襲撃の準備だ」
「しかし、どうやって撃退するのだ、ロムスカよ?」
「それは考えてある、それまでに私の考えたプランを君にも披露しておこう」




俺は山岳を一人駆けていた。
放送でこそ無事が確認されたとはいえ、あの怪物達や青いツナギの男のようにこの辺りは危険であふれている。
正直言って戦闘能力的には不安の付きまとういさじ達を早急に保護し、ロックマンとの約束も果たさなければいけない。
やることは多い、だからこそ俺は急いで……。

――唐突に嫌な予感がして立ち止まった。
その後すぐに予感の正体は判明した。岩山の裂け目から現れた青い扇風機型のロボットと男……。
あのまま進んでいたら間違いなく踏み潰されて奇襲を受けていた。自分自身に備わったスパイダーセンスに今回ばかりは感謝した。
間一髪避けたと思った奇襲の後、コンマ一秒の思考の間に敵は次の一手を繰り出していた。
うおっ!? 吹き飛ばされただと!
俺はあの場に踏みとどまろうとしたにもかかわらず、あまりの強風に体ごと吹き飛ばされてしまった。
なんとか適当な岩に手をかけて風がやむまで耐えしのぐも、敵はもう次の一手を繰り出していた。

「ブラックマジシャン、攻撃だ」
その声を受けて咄嗟に岩場を転がり落ちる。次の瞬間には黒色の球体が自分のいた場所を吹き飛ばしていた。
地面について受身を取った俺はようやく敵の姿を再び視界に収めることができるようになった。
「お前達はこんな愚かな殺し合いに乗ってしまったのか!」
「答える必要はない」
「そうか、ならば押し通る!」
「くるなら来たまえ、スーツ君」

その言葉に反論をしたかったが、敵はもう次の攻撃を仕掛けている様子であったため防御体制に入る。
俺が向かう洞窟方面にやつらがいるため、この場を逃げ出すことさえできない。いや、しない。
英雄の代理人として、奴らを倒して救うッ!

俺は岩山を駆け出すも、結局は相手の扇風機の前になすすべもなく吹き飛ばされる。
スパイダーブレスレットさえあればスパイダーストリングスによる遠距離攻撃ができるが、無い物をねだっても仕方がない。
頼りになる武器はサテライト30一つ、だが不用意に分裂しても体力を消耗するだけだ。

相手の扇風機による風によって接近戦は不能、だが手持ちの武器では遠距離攻撃も不能。
ならば、隙を作るッ!
俺はサテライト30を用いて4体に分身する。
その瞬間猛烈な負担と頭痛がかかるが、構ってはいられない。
それぞれ順次突撃を仕掛ける。相手の旋風にわずかな隙さえあれば、それで接近は可能ッ!
第一陣が吹き飛ばされるが、予想通り風の弱まった瞬間に旋風攻撃は来ない。
第二陣と第三陣を順次突撃させる。
少しは相手に影響があるかと思われたが、一体は魔法使いの魔法によって撃墜、残る一体もそのロボットに軽く組み伏せられてしまう。
だが、これは囮。先ほど分身したときに分かったのだが分裂すればするほど複雑な動きがし難くなるのだ。
よって3体は隙を作るために活用し、もう一度一つに戻ったときが勝負の瞬間。
相手の旋風の来ない上空から俺は飛び掛る。あの魔法使いも連続で魔法を繰り出せないのは判明している。
さあ、これで終わりにしてやるぞ。

だが、今更俺の頭に嫌な予感が走る。
空中から奇襲を仕掛けた真上の俺めがけて、扇風機の男は腕から猛烈な竜巻を繰り出した。
「エアーシューター!」

その竜巻に体を切り刻まれ、空中を舞う。
空中をボロ切れのように飛ばされる俺めがけて、更なる追撃が襲い掛かる。

 ブラック・マジック
「 黒・魔・導! 」

「う、うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」


咄嗟にサテライト30で分身するも、エアーシューターで切り刻まれた傷までは戻らなかった。
ゴロゴロと転がる俺めがけて、青いロボットが俺の上にのしかかり、体に押し当てた腕からさらにエアーシューターで追撃を仕掛けた。
「ぐはっ!」

……もはや、分身する体力すらなかった。
「さて、止めだ」
「エアーマン、少し待て」
「ロムスカ、何故待つ?」
「尋問してからでも遅くは無い、無駄だとは思うが情報収集だ」

酷い顔の男は俺の頭を掴み上げ、顔と顔を近づけさせる。
「3分間待ってやろう、君は何故この山道を急いでいたのかな?
 正直に話せば、もしかしたら命だけは助けてやるかも知れんぞ?」
「……答える必要は無い」
「そうか、そんなに死にたいのか」
「俺は負けない、絶対に負けないッ……!」
「ハハハ、抵抗する力すら残っていない君がかね? 笑わせる」

「俺は負けたかもしれない、だが俺には仲間がいるッ! 俺の貫き通した信念は曲がってはいないッ!
 俺は英雄の代理人スパイダーマッ! 悪に屈する心など持ってはいないッ!」

「……残念だ、君さえ良ければ我々の仲間にする気さえあったのにな」
「そんな提案、こちらから願い下げだ」
「やれ、ブラックマジシャン」

俺の体が魔導に飲まれ、消えてゆく。
ガリアに父さん、敵を取れなくてすまない。
ひとみ、新子、拓次、それにみんな…………すまない。

そして、福山。
俺は、英雄の代理人になれなかったよ……。

「……やれやれ、実に物分りの悪い男だったな」
「ロムスカ、貴様の戦術は少しばかり間抜けではないか? 最も重要な奇襲にまず失敗しているではないか」
「……たしかに、だが相手にも何か探知能力があったのかもしれないぞ? 奴の足音は不自然に停止していたからな」
「むう……しかしロムスカどうする? カードはもうこれで使えないのではないか?」
「まだ一枚残っている、それにあのスーツ男から奪ったこれもある」

ムスカはスパイダーマンから回収したサテライト30をかざす。
一緒に回収したディパックから説明書を取り出し読み、使い方を理解するとムスカが分裂した。
「「どうだ、すばらしい成果ではないか。カード一枚使った価値は十分にあるぞ」」
「ほう……これは便利だな」

ムスカは何度か分身を繰り返し、分身すると疲労する事、そして分身体を増やせば増やすほど負担になることも理解した。
それを見るエアーマンは、ムスカからサテライト30をひったくり、データ収集と興じて同様に分身を繰り返した。

「これはエアーマン君が使ったほうがいいな、私が分裂したところで大して戦力になるまい」
「しかし、それでは貴様が……」
「何、無力に見せかける戦術というのもある。ミラーフォースはそのほうが好都合だからな」
「そういうものか……」
「さて話は変わるがエアーマン、早速だが移動するぞ」
「突然どうしたロムスカ?」
「見ろ、この光景を、我々は少しばかり派手にやりすぎた。誰かに見られていなかったとしても音が伝わるかもしれん。
 それにこれでは何者かが荒らしたのが一目瞭然ではないか。奇襲はできん」

エアーマンが周りの光景を見る。その山岳地帯は旋風と黒魔導によって、抉れたクレーターだらけの見るも無残な光景に早変わりしていた。

「それでどうするんだ?」
「南東に向かおう、ここからではロックマン達の点を探知できん。奴らが罠にかからなかったら、この奇襲は無意味になるのだからな」

エアーマンとムスカはその斜面を再び移動し始めた後、そこにはもう何も残ってはいなかった。


【C-3 山道北西部/一日目・夕方】

【エアーマン@ロックマンシリーズ】
[状態]:ボディ一部小破、左腕で回路のショート(戦闘には支障無し)、エネルギーを少し消費
[装備]:サテライト30@真赤な誓い
[道具]:支給品一式(水一本消費)、ねこ鍋@ねこ鍋
[思考・状況]
1.南東に移動し、ロックマン達の探知をする。
2.他の獲物を捜しながら、元の世界にはなかったデータを集める
3.ロックマンとロール。そして俺の邪魔をした者たちは必ず倒す
4.しばらくはムスカと同盟を組み、協力する
5.優勝して元の世界に帰り、ワイリー様の世界制服計画を再開する
【備考】:首輪の代わりに動力源に爆弾が埋め込まれていることに気付きました

【ムスカ@天空の城ラピュタ】
[状態]:少し顔が腫れている
[装備]:DMカード(ブラックマジシャン(次の夕方まで使用不可)、魔導戦士ブレイカー(次の午後まで使用不可)、聖なるバリアミラーフォース)@遊戯王デュエルモンスターズ
     首輪探知機(残り電池80%)@バトルロワイヤル
[道具]:支給品一式、DIGIZO HYPER PSR(残り二十分程度)@現実、上海人形、花粉防止用マスク、テニスボール*2
[思考・状況]
1.南東に移動し、ロックマン達の探知をする。
2.小僧他(ニート、ロールちゃん、富竹、ハルヒ、ロックマン、ゴマモン、遊戯)は必ず殺す
3.しばらくはエアーマンと同盟を組み、協力する
4.優勝してラピュタ帝国の盛大なる復活を


【スパイダーマン@東映版スパイダーマン 死亡】
【残り41人】



sm122:身体は子供、頭脳も子供 時系列順 sm126:信仰は儚き人間の為に
sm122:身体は子供、頭脳も子供 投下順 sm124:人として軸がぶれすぎて、もはやぶれてない(前編)
sm117:震える山~侵食汚染~ エアーマン sm145:OVERLAP
sm117:震える山~侵食汚染~ ムスカ sm145:OVERLAP
sm117:震える山~侵食汚染~ スパイダーマン 死亡



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最終更新:2010年03月18日 11:35