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D-2草原大炎上戦(中篇) ◆jVERyrq1dU




「あいつら……どこまで行ってんのよ……」
川に落ち、水を飲んだせいだろう。咳き込みながら川から這い出るハルヒ。
「ったく……」
デーモンに助けられなければ、ハルヒはKASのアイスソードによって首を飛ばされ死んでいた。
だが、もう少し丁寧に投げて欲しかった。ハルヒは相変わらず不機嫌である。

「それにしても……あいつ……」

KASという男を見ていると、どうもあの男を思い出してしまう。
自分と手を組み、一人でレナ達塔組をほぼ壊滅状態にまで追い込んだあの男。
鬼神の如き強さを持っていたあの男。

「くそ……あいつが本当にTAS以上の実力者なら、さすがのデーモンでも危ないかもしれないわ……」

世界が自分の思い通りに動いている事はとっくの昔に気づいている。
それでも、私は世界を支配するために、最大限の努力をしなければならないだろう。
結果は決まっている。私達の勝利だ。しかし……

しかし、その結果は私達の努力という前提条件がなければ成立し得ないたろう。

「このままあいつをデーモン一人に任せてなんておけないわ。
万が一デーモンが負けるという事もある。私も加勢しないとね……」

だけど……どうやって?
ハルヒは思考する。しかし、その思考は復活した怪物の乱入によって中断される事になった。

「いいえ……貴方はここで……死ぬの…よ」
「!?」
ハルヒは声が聞こえてきた方向へ振り向く。信じられない光景が広がっていた。
「まだ死んでないの!? うざいのよ!このしつこいくたばりぞこないめッ!」
自らの手でボコボコにぶちのめした筈の女が立っていた。

「ふふ…私って……本当にもう人間じゃないのね……見なさい、あそこの草原」
閣下が指差す方向をハルヒは見つめる。草原が枯れていた。
よく見ると、閣下の足元に生えている雑草も次第に枯れていく。

「エネルギードレインよ……この力のおかげで……なんとか動ける所まで自己回復する事に成功した
ふふふ……神様でも……私に近づくといずれ死ぬ…わ」
その言葉を聞き、ハルヒは閣下の頭から指先に至るまで、体全体を注視してみる。
とても回復したようには見えない。奴は未だに瀕死だ。

「回復? けひひ……何言ってんの?ふらふらじゃない。何がエネルギードレインよ馬鹿馬鹿しい」
ハルヒはからかう様に、にまにま笑った。これくらいの相手なら私にも余裕で殺せる。
「ふらふらで充分よ。分からない?私の今の相手は、デーモンじゃないもの……あんただけ……ひ弱な神様一人だけ……」
挑発的な口調で、閣下は言う。両目はしっかりとハルヒを睨みつけている。

それはどういう意味よ……!
ハルヒは怒りでわなわな震える。

「神に向かって……その口のきき方──

 ────舐めんじゃねぇわよッッ!!」

ハルヒは木刀を握り締め、閣下に殴りかかる。荒ぶる怒りに任せた攻撃。
しかし、閣下はいとも簡単にその木刀を片手で受け止める。

「嘘でしょ!? 馬鹿みたいにぼろぼろな癖に……!!」
「私の……」
閣下はぎりぎりと木刀を捻る。ハルヒは必死になって抵抗する。
「私の木刀を返せ!!」
「く……ぬ……! ばっ馬鹿! ふ、ざ、け……!」

「私の────木刀を返せ!!」

ハルヒはついに木刀を握る事が出来なくなり、手を離す。
そして、その場に膝をつけ、倒れた。閣下はそんなハルヒを虫けらを見るような目つきで見下す。
「おし……まいよ、あんたは。……この、怪物め!!」
閣下が怒りにまみれた表情で一喝する。

自らを神といい、人とはとても思えない残虐な行為を平気でした。
一欠けらの罪悪心も持たず、人間に対する情なんて勿論一切無い。
とても同じ人間(まあ私も人間じゃないけれど)とは思えない。
こいつは悪魔だ。鬼畜だ。キチガイだ。

「何睨んでんのよ……この愚民」

圧倒的に追い詰められたはずのハルヒが呟く。下から閣下を睨みつけて。
呆れた女だわ……、閣下は思う。そして、ハルヒから奪い返した木刀を構えた。
甚振ってやりたいところだけど、ここは我慢する。一撃で殺してKASの加勢に行かなければ……。

「まさかあんた……私を本気で殺せると思っているのかしら?」

何かワケの分からない事を言い出した。ついに狂ったか……。いや、元からか。

「何度も言うけど私は全知全能の神なの。こんなところで死ぬはずがないの。
ただの、一介のクズ人間が、神様を殺せると本気で思っているのかしら?分不相応な考えね。立場をわきまえなさい。」

「馬鹿、なんじゃないのあんた。……そうね……逆にこう言えるんじゃない?
ここで私に殺されるって事はつまり、あんたは神じゃなかったのよ」
「けひひ……馬鹿ねぇ。貴方、まるっきり理解してないわ。
いい? 神様っていうのはね。万能で、傲慢で、端麗で……そんな存在なのよ。全宇宙は神である私を中心にして回っている。
貴方はそんな存在を前にしているの。さて、まずはその暴虐不尽な態度を改めてもらうわ」

「ふふ」
なんかこいつを見ていると、笑えて来る。滑稽だ。あまりに滑稽。自分が神だと信じ込んでいる。
「貴方が神なら……私は閣下 「口を慎め!!」 」

「……人の台詞に割り込みしないでもらえるかしら」
「口を慎め。貴方は神を前にしているのよ?
証明してあげる。貴方は今から木刀を私の頭に振り下ろす。だけど、その木刀は私には届かない。
ぎりぎりで止まる。確実に。絶対に。何故なら私は神だから」

何をどう間違えればそういう結論に至るのだろうか……。
……もう何でもいいわ。これ以上こいつの高説に付き合っている暇などない。
さっさと殺してKASを助けに行かなければ。もうだいぶ傷も治ってきた。

「残酷な神はここで死ぬ。さようなら。私達はデスゲームを破壊する」
「けひひ、ええさようなら。貴方にはもうすぐ神罰が下る。地獄へいってらっしゃい」


私は木刀を振り下ろした。全ての怒り、恨み、憎しみ、汚い感情を全て洞爺湖の木刀に込めて。
KASに礼を言わないとね。あいつのおかげで私は生きていられる。この怪物に仕返しが出来る。
そして……殺し合いをぶち壊すことが出来る。


草原はデーモンの放った炎によって、至る所が火の海だ。
それでも川原は植物が少ないため、あまり燃えていない。
日光の光が地上を照らし続ける中、木刀の風切り音が響いた。

ガンッッ!!

────けひゃ♪



時間は少しだけ遡る。草原の遥か上空では……

「い、いい加減にしろよお前!」
「あ、あんたの方こそ!」

KASとデーモンの不毛な争いが続いていた。
二人の内、少なくともデーモンはすでに下らない争いだと気づいている。
しかし一度始まってしまい、ここまで長期戦と化した勝負。もはや引くに引けない。
絶対に相手よりも上を行き、地面へと叩き落す。

「た、たけぇ~~」
もうどれくらい飛び続けただろうか。KASは地上を見下ろし、そのあまりの高さに恐怖する。
すげぇww城見える!塔見える!大樹まで見える!
落ちたらヤバイ。絶対ヤバイ。まあマント着けてるから大丈夫だろうけど!

「あははは!よそ見してたら死ぬよ!オラァ!」
「ほいっと」
「ぐっ! 何なのよその回避力は!?」

当たらなければどうということはない。
いつもVIPマリオで腕を磨いているKASにとって、空中での安定感に欠ける蹴りを避けるぐらい朝飯前だ。
それにしても……とKASは考える。KASには気になる事があった。

どこまでもどこまでも上に行けたらヤバイんじゃないかなぁ。
もしかしたらずーっと上を通れば簡単に脱出できるんじゃないの?
はは、ねーよ。

KASはこの持久戦が始まった当初、久々に頭を使い、ある仮説を打ち立てていた。
それは上空にも禁止エリアがあるという説。
例えばKASが宇宙でも生きられる存在なら、鍵ジャンプで殺し合いを脱出出来るではないか。
だからいずれ禁止エリアに突入するはず。そう思っていた。しかし実際はいつまで経っても上昇出来る。

俺が間違えてたなんてありえねエエエェェェーーーーーッ!

「ごふッ!」
突然、KASの頭が『凹んだ』

「え?」
「は?」
「ぐぎゃ??」
デーモンの仕業ではない。KASの間抜けな姿を下から眺めて、頭に疑問符を浮かべている。

「こ、こんな所に何故孔明の罠がぁ~~~~」

そのまま落下していくKAS。頭にはしっかりとたんこぶをこさえている。鍵も一緒に落ちてくる。

「何なのか知らないけど馬鹿ね」
「あっそれだけはやらんッ!」

KASは鍵だけは死守しようとするが、バランスを崩してしまいそれどころではない。
その結果、鍵はデーモンにキャッチされ、KASはそのまま落ちていった。悔しそうな声が聞こえてくる。
デーモンはそんなKASを見下ろしつつ、思考する。

相当な高度だから、あいつが地上に着地して体勢を整える前に、追いついて追撃できるだろう。
とりあえず、あいつの事は後回しでいい。今気になるのはこちらの方だ。
デーモンはゆっくりと上昇し、KASが頭を打った空間へと手を伸ばす。
あいつは何かで頭を打ったように見えた。何かあるのか?

指先が何かに触れた。何だかよく分からないが、つるつるしている。透明な何かがある。
そのまま手を横に滑らせていく。透明な何かは地面と平行を保ち、いつまでもどこまでも続く。

まるで天井だ。透明な天井。何なんだこれは?
主催者が仕掛けた脱出防止用の天井か?
いや、わざわざ空全体に天井を張るよりは、禁止エリアを駆使して逃げられないようにした方が遥かに簡単で、安価、な気がする。
これは……何だ?



「やれやれだぜ」
某三部主人公の名台詞をカッコよく決め、KASはふわふわと落下していた。

まさかあんな所に孔明が潜んでいるとは思ってもなかった。あんちきしょう、油断できない奴!!
それにしても……あの最低オカマ野朗なかなか降りてこないなあ。

「あっ!キタキタキタキタキタ!」

KASは落下しながら頭上を見上げる。デーモンが超スピードで降りてくる。

「けひゃぁーーーッ!」
来やがったな……孔明以上の最低鬼畜野朗め。お前だけは俺が許さん!
鍵がなくたって新たな作戦ぐらい考えてあるぜ!

シュバッ シュバシュバッ

「一手も二手も三手も先を熟読する男、KAS!」

チャーチャチャーチャチャチャ(ポコポコポコ…)チャチャッチャチャー


「くらえスパイダーマァァふごッッ!!」
KASがスパイダーブレスレッドから糸を発射する直前、デーモンのドロップキックがKASの腹に突き刺さった。
城で食べた食物を吐き出すKAS。デーモンは器用にKASへとせまり、後方からKASに抱きつく。
KASは青い顔をしながら振り払おうと必死に抵抗するが、それは叶わない。

「何を……する気なんだっていう」
「おやおやドロップキックが相当効いたみたいですねぇ。で・す・が、ここからが本番ですから」

デーモンはKASを抱き抱えたまま、地上へと急加速する。

「地面に叩きつける気だな?」
KASはデーモンの耳元で呟く。相変わらず顔は青い。
「無駄だぜ」
「五月蝿い」
デーモンはKASの纏うマントを強引に引っ張った。さすがのKASもこれには慌てた。

「ちょ、待て!マント脱がすとかそんなの反則だぞ!そ、そんな敵VIPマリオにもいないだろうが!」
「はぁ~~? 何言ってんの?」
デーモンはマントをばらばらに引き千切る。
そして、KASを地上へと思い切り放り投げた。鍵もマントも失ったKASは物理法則に従い地上へと落下していく。

「嘘!嘘!!嘘ォ!!!死ぬ!これは死ぬ!ここ地上何階だよ!?いくら俺がマリオ状態でもこれは\(^o^)/」

デーモンは不適に微笑み、悲鳴と共に落ちていくKASを見下ろす。
さてと、あいつは何をするか分からない奴だ。ただ今からディバインバスターの準備を開始する。

生きとし生ける全ての下等生物どもよ。魔王の業火を食らえ……地上を全て……焼き尽くす!

 ▼ ▼ ▼

────けひゃ♪

  けひ♪
けひひひひ♪

なんぞこれ……折角カオスワールド脱出できたのに……これどう見ても未だにカオス継続中やないか……

「哀れなものね」
「そうね……貴方は危ないから下がってなさい」
「永琳さん、本から連中が出てきました……気が動転しているようですが」

博之は地面にへたりと座り込み、混乱する頭を整理しつつ、辺りを見渡す。
彼の隣では未だに幼女形態のクロミラが、がちがちと震えていた。
目の前に立っているのは三人。全て見覚えがある人間だ。

一人目はハルヒ。
レナと水銀燈が危険視していた人物だ。殺し合いに乗っているらしい。
あの頃はあまり理解できなかったが、惨劇を見てしまった今では簡単に納得できる。
ハルヒは殺人鬼だ。

二人目は看護婦のような女、おそらくこいつが八意永琳だろう。
こいつもゲームに乗っている。レナとキバを襲った性悪女だ。

三人目は古泉樹。
こいつとの因縁は格別深い。
博之、ジーコ、ティアナ、水銀燈の四人を悪魔のような少年と共に襲撃し、水銀燈の体を半壊させた。
こいつも殺人鬼だ。水銀燈の仇をとってやらなければ。


────こいつらはチームやったんか!!


そして……一際目を引く、倒れている見知らぬ女。何度も何度も剣で斬られたのだろう。
数え切れないほどの浅い切り傷が体に走っている。
どうしてこれだけ斬る必要があったのか。何故わざわざ浅く斬っているのか。普通は一撃で殺すはずだろう。
それは閣下の着ていたシルバースキンが彼女を守っていたためであるが、博之には当然分からない。

なぜこうなったかと言うと、閣下の木刀がハルヒに当たる瞬間、永琳が閣下を妨害したためだ。
永琳は王者の剣で閣下の背中に斬りかかった。
しかしシルバースキンに阻まれ、永琳の力を持ってしても浅い切り傷しかつける事が出来なかった。
閣下は振り返り、永琳に攻撃を仕掛けたが、所詮瀕死の体、永琳には到底敵わなかった。


「う……おぇぇ」

クロミラが吐いた。
女の遺体は見ていて吐きそうになるほどズタズタなのだ。
クロミラが吐くのも分かる。
博之もまた、死体のあまりの荒れっぷりに気が動転し、動けないでいた。

「ク、クロミラ……お前邪魔になるやろが……さっさと元の格好に戻れ」


「ところでデーモンって奴はどこ?」
「……どうしてあいつの事知ってるのよ」
「ああ~~遊戯にね。聞いたの」
「あいつに? なるほど。で……聞いた後殺したってワケね」
「ああ、そういう訳じゃあないのよ」
はあ!? と声を荒げるハルヒ。

「色々あるんですよ……大丈夫です。別に裏切ったわけじゃありませんから」
「……けひひ、また何かあくどい事考えてるのね……」
「そういう事です。デーモンはどこですか?」
「…………」
「なるほど……」


とにかくあの女を連れてここから逃げなあかんわ……。
さすがに三人相手は無理やろうし、その上デーモンとか言う奴までおる。


「おい、クロミラ……ええ加減元に戻れ。あの女の生死確かめて逃げるぞ……」
「……分かった」
クロミラが幼女形態から元のカード状に戻ろうとした時、空から何かが降ってきた。
落ちてくるのはどうやら人間のようだ。悲鳴が聞こえてくる。

「イッッッヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「あいつ!助けんとまずい!」

博之はもう誰かが死ぬ所など見たくなかった。知らない人であろうととにかく助ける。
KASの落下地点へと走る。落下地点は奇しくも閣下の極近く。
閣下に近づいていく途中、博之は突然体が重くなるのを感じた。
違和感を感じたがそのまま走る。

「TASけ、じゃねぇ! 誰かKASけてぇ!」
「待っとれよ!」

懸命に走る。が、このままでは間に合わない。

「う……!」
博之は思わず目を逸らす。間に合わなかった。あいつ直で落ちてもうた……。
急いで駆け寄る。普通は死んでるが、何かの間違いと言う事もある。
「おい!しっかりせえ!」
博之は残りの薬草全てをKASの口に押し込み、無理やり飲ませる。
頼む!頼むからもう死なんといてくれ!
藁にもすがる気持ちで祈る。


「あ……? なんぞ、これ。亀の甲羅?」
KASの体の下には甲羅の破片があった。

こいつどうやったんか知らんけど甲羅の中に体入れて……落下の衝撃から体を甲羅で守ったんか……。
わざと背中から落ちて……考えたな。もしかしたらこれは……。

「あ……おっさん……誰だ?」
息も絶え絶え、KASは口を開いた。
「良かった……! 良かったのう!」
「だからおっさん誰だよ……」

「はーい。 そろそろいいかしらぁ?良かったわねKAS、生きていられて」
「ハルヒ……お前、俺らを騙しとったな……」
博之はハルヒを睨みつける。
「そんな昔の話どうでもいいわ。それより見てよこれ」

ハルヒは拳銃を握り、幼女クロミラの頭に銃口を押し当てていた。

「ええ加減にせえよ……こんの鬼畜がァッ!!」
クロミラはハルヒに抑えられ、涙目になっていた。
「けひひ、鬼畜じゃないわ。神様よ」
「クロミラ心配すんな。助けたる」

「おおっと別に殺す気なんてないわ。さっさと隣にいるお友達を助けてあげなさい」
八意永琳が言う。信じられるか!
「ひ、博之、俺を助けなくていい!俺は平気だ!」
「ッ!? 馬鹿言うなクロミラ!」

「落ち、落ち着けよ。冷静になれ。俺は死にはしねぇよ、変身を解けばいいだけだからな。
今はこいつらの言う通りにして、そこの二人を助けてやれ……」
クロミラの言により、博之は思いとどまる。
「だ、だけどな。俺が変身を解いたら……俺はこいつら三人の物になると思うんだ。
どう考えてもこいつらの方が俺に近い、からな。それで構わないさ別に、人間の命より道具を優先するなんて間違ってる」

「クロミラ……お前、何が言いたいんぞ」
「そ、そうなったら今後俺がッ!」
クロミラの声が一段と大きくなる。
「俺が敵になっちまうだろうけど……なってしまうが────

 ────遠慮なくぶちのめしてくれて構わねえからな!」

「あ……当たり前やが!」
クロミラはその叫びを最後に、自らの手でパッチを外し、元の状態に戻った。

「!? これはどういう事!?」
ハルヒが驚く。古泉は冷静に萌えもんパッチとクロスミラージュを拾い、何なのか見る。
「このパッチは物を擬人化させる支給品らしい。それでこのカードがさっきの幼女に……」

「おい、あんた大丈夫か!」
博之はズタズタになった閣下に声をかける。体を揺さぶり、反応を待つ。
「なあ、起きろ!あんなアホに負けてええんか!?」
閣下の頬を何度も平手打ちする。シルバースキンはすでに解除されていた。

「っさいわね……さっさと逃げなさい……」
閣下がかすれた声で答えた。博之は閣下が口を開くのを見て表情を一変させる。
「良かった。安心せえ!お前もあいつも見捨てん!」
「逃げ……て…」
「え、なんて?」
閣下は思うように声が出ないようだ。耳を澄ましてみたがどうも聞こえ難い。

その時、何かが三人の元へ飛んできた。
飛んできた物体はすぐに爆発し、辺りを燃やす。爆弾というより火炎瓶に近い。
「お前ら……!」
「おっさん! 後ろ!」

永琳は博之の後頭部を思い切り峰打ちした。
そのまま首を飛ばしても良かったが、折角なので生かしておいてデーモンの実力を確かめる事にする。
博之の意識は飛び、足に力が入らなくなる。そのまま重力に従い、地面に仰向けに倒れた。

「罠だった……のよ…!」
火炎瓶の炎が周りの雑草を次々に燃やす。閣下にとっては大切なエネルギー源。
周りに生物がいなければ、エネルギードレインのしようがない。
KAS、博之から体力を貰っても仕方がない。閣下はヴィクター化を解除した。
「く……そ…負けんぞ……わしは」

「多分手遅れっぽい……」
KASが上空の一点を凝視する。KASに習い、二人も上空を見つめる。
デーモンがいた。何か、巨大なエネルギーを溜めているようだ。
大技でも仕掛ける気だろうか。

「多分……あれは…ディバインバスターよ」
「ディバ……?」
「物凄い威力を持った……技よ」
「そっか……」

「けひゃひゃ! どう足掻いても絶望ねぇ!」
遠くからハルヒのけたたましい笑い声が聞こえてきた。


「あいつうざいな」
「そうね……」
「おっさん、名前なんていうの?俺はKAS!」
KASがえらく陽気な声で言った。
「あんたこんな時に……」
「シリアル禁止だぜ閣下ロット」

「俺の名前は、永井博之だ。おっさんって……まだ二十代やが」
「っていうかおっさんとか以前に人間なの? 凄くカオスな外見じゃない……」
「ああ、これは色々あって……」

「やっぱりこういう時は……俺の屍を超えていけ展開がベストっていう」
「「は?」」
KASの意味不明の発言に二人は困惑する。
「博之まだ動けるだろ?」
「当たり前やが……嫌でも動かな死ぬしな……でも、正直言ってお前ら二人抱えていけるとは思えん……」
「思いっきり…殴られたもの……当然ね」
「閣下ロットはどう見ても動けないし、ここは俺しかいないぜ」

閣下はKASの言葉を聞き、ますます困惑する。
こいつ……本気なの?

「貴方がおとりになるって事よね。あなた自身が助かる術は……あるの?」
「モチのロンッ!」
KASはぼろぼろの体を無理やり動かし、勢いよく立ち上がった。

「やいやいやい! この最低オカマ野朗!ゲーム界の唯一絶対神KAS様を殺せるもんなら殺してみろォッ!」
天を仰ぎ叫ぶ。デーモンを挑発する。
「さっさと逃げろっていう。よーし、俺の屍を越えていけ!」
さっと、二人の方を向き、小声で囁くKAS。

「KAS……!死にかけの私の方が……!」
「おとりにすらならんわ……行くぞ閣下」
博之がゆっくりと立ち上がり、閣下を引き起こす。
少しふらついたが、なんとかバランスを整える。
頭から出血しグワングワンとするが、我慢せざるを得ない。

「けひゃひゃひゃひゃ!とろとろ逃げてるわよデーモン!さっさと撃ちなさぁい!」

「KAS、元気でね……死んだら殺してやるわ」
「おk、閣下も元気でな……」
博之は閣下に肩を貸し、ゆっくりではあるが死に物狂いに逃げる。
KASもまた、デーモンを挑発しながら、辺りを跳ね回る。


「駄目よ博之……! やっぱりあいつに助けられっぱなしじゃ耐えられない……!」
「……ッ! そうは言うても……! そうじゃ!あのカードがあった!」
博之の脳裏に浮かんだのは強靭!無敵!最強!で究極かつふつくしいモンスターカード、青眼の白龍。
確かもうそろそろ使えてもいい頃合だ。その他にも色々と使えるカードがあった。

「くそ、どこにいれたんな!」
逃げながら、デイパックの中を探る。
閣下を連れながらなのに加えて、デイパックの中には様々な物が入っているので目当ての物は中々見つからない。
「……はよせなあいつが……!」

「させないわ」
「博之危ない!」
後ろから永琳が斬りかかってくる。
閣下の呼びかけもあり、博之と閣下はなんとかぎりぎり避ける事が出来たが、バランスを崩し両者とも倒れてしまう。
永琳は、瀕死の閣下は無視し、博之へと剣を振る。博之は即座に立ち上がり回避に努めたが、永琳は止まらない。

彼女の剣術は華麗で、少しずつ博之を追い詰めていく。



「ディバインバスター!!」


空が激しく発光した。破壊の光線が地上へと放たれる。

「勝負だデーモン! フッブーキ☆スペクタクル」
KASのアイスソードから吹雪が放たれ、ディバインバスターとぶつかり合う。
「もっとだもっとおらに力を!!」
アイスソードを握り締め、死に物狂いに吹雪を放つ。しかし──

「無駄無駄無駄ァッ!」

ディバインバスターの威力には及ばない。光線は吹雪をも飲み込み、KASへと迫る。

「あ、やべえ」
「KASゥゥーーーーーーッ!!」

炸裂するディバインバスター。大地は焦土と化す。




「即死ね」
閣下の近くで永琳が呟いた。博之は口をぽかんと開けてディバインバスターの凄まじい威力に見入っている。
「……死んじゃいないわよ……!」
「あんた!? まだ……!?」
永琳が驚愕するのも無理はない。
ぐちゃぐちゃの瀕死であったはずの閣下が、ゆっくりと……立ち上がった。

「いい加減死になさい!」
「させるかぁッ!」
博之は永琳に向けて拳を放った。それを刀で受け止め、切り返す。
博之もかなり回復してきた。一進一退の攻防が続く。

(KAS……KAS……)
こんなに後悔するならやはりあの時、無理やりでもKASを引き止めておけば良かった。
どう考えても、瀕死の私よりもKASが生き残った方が主催打倒に役立つはず……いえ、そういう打算的な考えじゃなくて!
とにかくKASには生きていて欲しい。絶体絶命の自分を助けてくれた最速の男。
命を落としてでも守るべきだったんだ……

……もしかして私……KASの事を……。
いえ……そんな馬鹿な事あるわけないわ。私は閣下よ……。

「KAS……KAS……カッ……」
大声を……出せ。彼の名を呼べ。呼べば必ず答えてくれる。何故なら彼はヒーローだから……

「KASゥッ!!!」

しかしKASは答えない。KASの代わりに目の前に現れた人物がいる。
殺人鬼、古泉一樹だ。日本刀を握り締めている。
正確には逆刃刀とであるそれを古泉は握り、閣下に切り込む。
その一撃をまともに受けた閣下は、そのままへたりと倒れこんだ。


「へへ……しぶと過ぎる男、KAS……」

なんとか、生き残ったぜぇ……へへ……吹雪でディバの邪魔するだけじゃ足りなかったよなあ。
だから俺はとっさに閃いた。

「オサレブレスレット……サンキュー……」
このブレスレットを使って糸を飛ばし、ぎりぎりのところでディバの直撃を避けた。
まあ……それでも瀕死ですけど。

「KASゥッ!!!」
おお、この声は閣下か……答えたいけどもう喋れね……
ああもうヤバイ…限界だわこれ……
つーか、閣下よくあんな大声出せたな……なんという回復力…
返答したいけど…出来ません、サーセン

「か……か…………かっ……か…お、俺は………約束通り………生きてる、、ぜ」

声は出ない。こんな小声では誰にも聞こえないだろう。
だから俺はアイスソードで合図をする事にした。アイスソードを天に向けて真っ直ぐに持ち上げる。
体中が痛いけど、我慢するんだぜ……


「か……す…」
間違いない。あれはKASが持っていた剣だ。
「おやおやゴキブリ並ですねえ」
閣下は古泉に踏みつけられ、立ち上がろうにも立ち上がれない。
しかし、この安堵感はなんだ。KASは生きていた。約束通り生きていた。
事態は全く好転していないのに、この安堵感はなんなんだ。

「かす…KASゥ…」
到底聞こえないだろう。こんな声では
「かっ……か」
お互いの声は届かない。しかし、絆が二人を結びつける。


────ハルヒがKASに接近する。


「うが…ぁ」
「おやおや暴れないで下さい。貴方はただ見ていればいい。さあ、涼宮さんが彼に止めを刺しますよ」
「がぁあぁぁぁあああぁ!ど…け!やめ…ろ!やめろハルヒ…!」
ハルヒが閣下を挑発的な眼差しで見つめた。薄く微笑んでいる。

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ

「はな…せえ!離せ!」

やめろやめろやめろぉおおぉぉおおおぉお!!




──ぐしゃ
ハルヒがKASの頭を踏み潰した。





「や…………………………………………………………」
「さて、貴方も死んでください」

閣下の背中に、逆刃刀が突き刺さった。閣下は一度びくんと痙攣した後、動かなくなった。



許さない許さない

「どうです涼宮さん。殺せましたか?」

許さない許さない許さない

「当たり前でしょ。どれだけ私を嘗めてんのよ」

殺してやる殺してやる

「嘗めてるわけじゃありませんよ。貴方は女性ですからね」

殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる

「私は女とか以前に神なのよ。ほ……ら…見なさい、これどう考えても死んでるでしょう?」

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

「ああ、ほんとですね。それは死んでます」

「ッ!?」
「どうしたの、小泉君」
「な、なんか急に体がだるく……」

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない

「許さない………殺してやる………」

「馬鹿な……これじゃどうやったら……」
剣を彼女の背中に突き立ててやったはずだ。これだけやって死なないなんて。
これじゃあどうやって殺せばいいんだ。

「KASううううぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーッ!」

古泉は自身の体力が吸われていくのを感じた。
恐ろしいほど急速に、体力が減っていく。
とうとう古泉は立てなくなり、地面に倒れた。

閣下のヴィクター化はついに第二段階を迎えたようだ。
エネルギードレインは止まらず、暴走を開始する。

「デーモン!」
ハルヒは直感的に危機を感じ取り、空に浮かんでいるデーモンを呼ぶ。
閣下は自身の背中から逆刃刀を抜き、古泉の方へ捨てた。
そして洞爺湖の木刀を握り締める。シルバースキンを発動させる。

本能的に生死の危険が迫っていると感じた古泉は拳銃の引き金を引き、何発も撃ちまくった。
しかし、全弾シルバースキンに弾かれる。

「今更この程度で怯むと思うか?私が!この私がッ!」

古泉はたまらず逃げ出す。閣下はそんな古泉に、思い切り木刀を振るった。

「がっ!」
木刀は古泉の肋骨を軽く粉砕する。閣下は倒れた古泉に向けて、さらに追撃の一撃を繰り出す。
しかし、突如古泉の前にデーモンが現れる。木刀をシールドで防ぐ。
「私のシールドの前では無駄無駄無駄ァ!」

火花を散らす木刀とシールド。
エネルギードレインによって次第に体力を削られていくデーモン。

「私の怒りはこんなもんじゃない!!!」
「う……そ…」
木刀が徐々にシールドを押していく。
そして、ついにシールドが砕けた。

「ぐあっっ」
閣下の怒りの木刀がデーモンの肩に当たった。肩の肉を裂き、怪物に大きなダメージを与える。
しかしこれで怯むデーモンではない。爪を伸ばし、以前したように閣下の体を貫こうとする。

閣下はそれ以上に速かった。光速のスピードで木刀をきり返し、二撃目を放つ。
横薙ぎがデーモンの頭部へと迫る。咄嗟に危険を感じ、デーモンは左手を防御に回す。
しかし、木刀の威力はデーモンが考えていた以上に大きかった。

「ギャアアアアアア」
デーモンの左手が引き千切れ、宙を舞う。

「これが……私の怒り!そしてここからの全ての攻撃は──」

閣下がうずくまるデーモンの脳天へ、木刀を振り下ろす。


「──KASの怒りだ!」



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