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エアーマンが倒せない? ◆jVERyrq1dU





ある程度の広さを持つこの空間。山中にある高台故に、監視にも向いている。
むき出しの岩がいくつかある。土もからからに乾いていて地面は固い。
そんな場所に二体のロボットが対峙していた。お互い睨み合い、闘志を燃やす。

一方は、
正義の心を持ち、英雄の代理人と共に主催打倒の思いが詰ったボールを配り、幾人もの仲間を得てきた。

もう一方は、
悪の心を持ち、天空の城の王と共に殺し合いに乗り、幾人もの参加者を排除してきた。

一見正反対に見える二人だが、一つだけ共通点がある。
それはお互いがお互いを敵視してきた事だ。彼らが、敵対し合ったのはいつからだろうか。
お互いの存在に気づいた時?ゲームが始まった時?それともさらに過去に遡るのだろうか。

ロックマンは自身の腕に装着されたロックバスターを構えた。照準をエアーマンに合わせる。
エアーマンもまた、その動きに合わせ、エアーシューターの照準をロックマンに合わせた。
そのまましばらく硬直していた二人だったが、一方が口を開いた。

「エアーマン!僕はお前を絶対に倒して皆を守る!」
ロールちゃん、遊戯君、ニート君、ハルヒさん、富竹さん、そしてまだ会っていない人達。
僕の使命は『守る』事だ。こんな奴に負けるわけにはいかないんだ。

「ほざけ!俺はDr.ワイリー様の名に賭けて負けない!」
エアーマンが叫んだ。こちらもロックマンと同様に負けられない理由がある。
勝って勝って勝ち続けて、優勝し、自分を作ってくれた御方にデータを届けなければならない。

お互い絶対に負けられない。必ず勝つ。
ロックマンにとっても、エアーマンにとってもこの戦いは特別なものだった。

「「勝負だ!!!」」

次の瞬間、ロックマンは横に移動しながらロックバスターを、エアーマンはエアーシューターを相手に向けて放った。
お互いの『弾丸』は敵に向かって超スピードで距離詰めていく。
二人ともこれまでの戦いの中で負傷している。ロックバスターであろうとエアーシューターであろうと一発が命取りだ。

前方から逆三角形の竜巻が押し寄せてくる。エアーシューターはロックバスターとは違い、
一度に複数の弾を放てる事が出来、点というより、面を攻撃するのに適した武器である。
ロックバスターよりも避けにくいのは確実だろう。そういった意味では、ロックマンは不利だった。

ロックマンは竜巻が眼前に迫ってくる間、ひたすらエアーマンを狙い撃ち続けた。
エアーシューターに弱点があるとすれば、それはロックバスターに比べて連射が出来ない事だ。
だから出来るだけ長く攻撃を続ける。自分の武器の有利な点を生かす。ロックマンはそう考えている。

エアーマンは動き回り、飛んでくる弾を避ける。何発か当たったがこれくらいは仕方が無い。
連続して当たらなければなんて事は無い。
エアーマンは手に持ったサテライト30を固く握り締めた。
(勝つためならば何だってしよう。俺はムスカに習って、奇策を使う!)
「武装錬金!」
エアーマンが増える。一人、また一人と増えていき、全部で四人になった。
増殖するに伴い、エアーマンの体力が削られた。四人のエアーマン達のスピードが落ちた。
(充分動き回るには4人が限度か!)

ロックマンは眼前に迫った竜巻をジャンプしてぎりぎりの所で避ける。
一発だけではない。何発も連続してやってくる。ロックマンは必死に避けつつ、
ロックバスターを難なく避けるエアーマンに気がついた。この距離からでは当たらないのか?
過去に何度もエアーマンと戦ったあの小部屋とはやはり少しだけ面積が違うようだ。
(やっぱり僕もエアーマンも何かのせいで性能が変わっている。だから当たらないんだ。だったら距離を詰める!)
ロックマンは竜巻を避けつつエアーマンに向かって走り出した。懸命に動いたおかげで竜巻は一発も体に当たっていない。

……!? 見間違いではなかった。エアーマンが四人に増えている。
「例の幻だな!? もうそんなものは通用しないぞ!!」

「やはり接近して来るか!だが甘い!『幻』と言っている時点で貴様の負けだ!!」
サテライト30は幻を作り出す道具ではない。『本物』の身体を増殖させる事が出来る道具なのだ。
「いくぞロックマン!! エアーシュータアアアァァァァ!!」
四体のエアーマンが一斉にロックマンに向かって竜巻を放った。ロックマンの視界が逆三角形で埋め尽くされた。
「四倍だああああぁぁぁ!!!」
さらにエアーマン達はロックマンの動きを封じるため、暴風を起こす。これでは接近する事も難しいだろう。

前方からは竜巻の弾幕。さらに、移動を制限する激しい向かい風。

(慌てるな、落ち着け。冷静になれロック!どうする、どうかわす?
右か左かそれとも上か!?エアーシューターの死角を探れ。見つけるんだ!)
大量の竜巻が押し寄せてくる中、ロックマンはいかに避けるか必死に観察し、思考した。
右に飛んでも、左に飛んでも竜巻から逃れる事は不可能。ならば上に飛ぶというのは……
(駄目だ、死角なんて無い。どこに飛んでも竜巻に当たる!!)

「ゲームオーバーだ!!スクラップになってしまえ!!」
エアーマンが叫んだ。彼の言う通り、このまま竜巻をくらえばスクラップになってしまう。
かといって、避ける事が出来ないのは明白である。

しかし、ロックマンは諦めていなかった。猛獣の如き脚力を最大限に使い、地面を蹴り、飛んだ。
飛ぶ方向は前。地面と水平に飛び、竜巻に頭から突っ込んで行く。
(避ける事が出来ないならこれしかない!当たる面積を最小にして防御!!)
ロックマンは両腕で自身の頭を守り、竜巻の弾幕に対して垂直に突っ込んでいく。
確かに避ける事が出来ないなら、この方法がベストなのかもしれない。
ロックマンの頭を守る両腕に痛みが走った。竜巻に切り刻まれているのだ。
「小細工した所で無駄無駄無駄ァッ!!竜巻の量は四倍だ!耐えきれるかロックマン!?」

竜巻のもたらす激痛がまず腕を襲い、続いて頭、胸、背中と次々に竜巻が被弾する。
腕が竜巻によって破壊されていく。腕を構成している部品が少しずつ切り刻まれる。
腕だけではない。頭も胸も足も同じだ。ロックマンの身体を竜巻がバラバラに分解していく。
やはり四倍のエアーシューターだけあって、竜巻の量も多かった。どれだけ耐えればいいのだろうか。
この攻撃はどれほどの痛みを味わえば、終了するのだろうか。
余りの痛みに気絶しそうだった。思わず悲鳴を上げる。ロックマンにはこの一瞬の出来事が何分にも感じられた。
全身が引き千切れそうなほど痛い。
しかし、ロックマンは希望だけは捨てていなかった。

(竜巻から身を守るために精一杯の事をした。今は凌ぐ時なんだ。ここは耐え切る、堪える。死なない!)
「うおおおおおおおおおお!」
ロックマンは無意識に雄叫びを上げ、気合を入れる。

地面が近づいてくる。もう襲い掛かってくる竜巻は無いようだ。全てどこかへ飛んでいった。
長く、激しい攻撃だったが耐え切れたようだ。今度はこっちのターンだ、とロックマンは意気込む。
ロックマンは地面に腹から落ちた。激痛により悲鳴を上げる身体をうつ伏せの状態から無理やり引き起こし、
エアーマンの位置を確かめた。さっきまでと同じように前方にいる。しかし一人しかいない。
残りの三人は前方にはいなかった。

「ど、どこだッ!!」
激痛で舌もよく回らない。ロックマンは周りを見渡した。残り三人のエアーマンは意外と簡単に見つかった。
後方に一人、斜め右後ろに一人、左側に一人、そして前方に一人。ロックマンは四人のエアーマンに囲まれていた。
嫌な予感が脳裏に走った。

「四倍エアーシューターを受けて生き延びた事は褒めてやろう。しかし、貴様の敗北は揺るがない」

(まさか……まさかエアーマンは)
ロックマンはエアーマンがしようとしている事になんとなく気づいたようだ。
ロックマンを取り囲んだ四人のエアーマン。この状況、このタイミングで、
エアーマン達がする事を予測出来ない程、ロックマンは愚かではない。
必死に次の対抗手段を考える。

「青ざめたな……勘のいい貴様は悟ったようだな。
この陣形を見てさっきの攻撃で死ぬよりも恐ろしい結末になるのに気づいたようだ」

(どうする。考えろ。冷静に、冷静になるんだロック!
奴は間違いなく四倍のエアーシューターを放ってくる。さっきは一方向のみからの攻撃だったからなんとかしのぐ事が出来た。
しかし、今度は四方向。周りから襲ってくる……)

さっきの方法ではもう通用しないだろう。かといって避ける事も出来ない。どうしようもない。
元々、武器の性能と数に差があったのだ。直線的な攻撃しか出来ないロックバスターのみのロックマンに比べ、
面を攻撃出来るエアーシューターや、手数を増やす事が出来るサテライト30を持ち、
おまけに暴風を起こす事も出来るエアーマンは、戦闘能力においてロックマンの上だった。

「逃れることはできんッ!貴様はチェスや将棋でいう『詰み』にはまったのだッ!」

考えろ、思考を冷徹にし、反撃の手段を編み出せ!奴は風を操る、僕にはロックバスターがある!
エアーマンを葬る最良にして最も効率的な攻撃方法を……!

「四倍エアシュータアアアァァァァァ!!!」
「ロックバスタアアァァァァァァ!!!」

エアーマン達が竜巻を放つと同時に、ロックマンは前方のエアーマンに向けてロックバスターを連射した。
竜巻が周りから距離を詰め、接近してくる間、ロックマンはわき目も振らずに一心不乱にロックバスターを撃ち続けた。

(無駄な悪あがきをよくするものだ。こんな攻撃で一矢報いる事が出来るとでも思っているのだろうか。
ロックバスター程度、今ぐらい距離が開いていれば簡単にかわせる)

エアーマンはロックバスターの弾丸に合わせて跳び、空中に逃げて弾丸をかわした。
別に当たったとしても、それほど困らない。エアーマンは四体いるからだ。
わざと当たって、三体にし、疲労を減らす事も出来た。
エアーマンがそれをしなかったのは、ロックマンが渾身のロックバスターを避けられ、絶望の表情を浮かべるのを見たかったからだ。

空中でロックマンの様子を窺う。現在進行形で竜巻の弾幕がロックマンを襲っていた。
ロックマンはさっきのように地面と水平に飛び、自分から弾幕に飛び込むような事はしていなかった。
ただ背中を丸め、諦めたかのように俯き、地面に伏しているだけだった。

もはや防御でも何でもない。ただの『避難』であった。
まるで台風になす術も無く怯える人間共だ、エアーマンは思った。

次々と竜巻がロックマンにぶつかる。何発も何発も。
ロックマンは必死に耐えているようだ。背中を丸め、足を腹の方に寄せ、体全体を丸めてうつ伏せているだけである。
案外、防御の手段としては良いかもしれない。これはこれで当たる面積を最小限に出来る。
ロックマンはここも耐え凌いで、次に備える事にしたようだ。
自分が絶体絶命であるのはおそらくロックマンも気づいているだろう。
しかしここは形振り構わず防御せざるを得なかったらしい。はたして彼に反撃の機会はやって来るのだろうか。


(大したことはない。やはり俺の方がロックマンなんぞより優れている。長く時間がかかったが、ようやく証明する事が出来る。
この距離では奴にまともな攻撃手段は無いに等しい。この距離を常に保っていれば自分は負けない。
ロックマンに出来る事はただひたすら防御するのみ……!)
エアーマンはロックマンの無様な姿を見て、ほくそ笑んだ。宿敵の哀れな姿ほど気分を高揚させるものはない。

やがて、竜巻の弾幕はロックマンを通過し、あさっての方向へ消えていった。
ロックマンは竜巻が通り過ぎた後も立ち上がろうとしない。そのまま地面に伏している。
一向に動く気配がない。死んでいるのだろうか。エアーマンの位置からは夜の暗さもありどうもよく分からない。

(……死んだふりをして隙を突こうとしているのかもしれない。ここは念には念を入れ、完全なる止めを刺す!)

エアーマンはエアーシューターの発射口をロックマンに向ける。ただし一体だけ。
四倍エアーシューターは破壊力は凄いが疲労も並ではない。

「死んだふりをしているのかロックマン!」
試しに声をかけてみる。反応はなかった。依然として動かない。

「止めだロックマン。例え死んだふりをしていたとしても俺は貴様には近づかない……もう助からんぞ……!

  エアシュータアアアァァァァァ!!」

エアーマンは照準をロックマンに合わせ、エアーシューターを発射した。小型の竜巻がロックマンに向けて突き進む。
ロックマンは未だに動かない。エアーマンは今度こそ、本当に、勝利を確信した。

(完膚なきまでの圧倒的勝利……! 性能、知略、そして戦闘能力、全てにおいてロックマンを超えた……!
怨敵ライトの鼻っ柱を叩き折る。俺は勝ちましたワイリー様……!
あの憎たらしい宿敵をいとも容易く蹂躙した……!)
「ククク……ハハッ!ハハハハハハハハハハ!!」
エアーマンは高笑いをした。竜巻がロックマンへと距離を詰める。

その時、ロックマンがぴくりと動いたのにエアーマンは気づいた。
高揚した頭を切り替える。まだ死んでなかったようだ。
(来るかロックマン!何をしようとしても俺は決して慌てない!冷静に貴様を鉄くずに変えてやる!)

エアーマンはロックマンが何かの方法を用いて攻撃してくると思っていた。
しかしその予想は外れていた。ロックマンは体の姿勢を変え、ただエアーマンから離れる方向へ地面を転がっただけだった。
竜巻が迫る中、必死に転がり続けている。あまりに滑稽で、惨め、エアーマンの目にはそう映った。
同時にエアーマンはロックマンの姿が何か可笑しくなってきた。あのロックマンが必死になって逃げているではないか。
惨めで哀れで、さきほどまでの動きはもはや見る影もない。

(ふふ逃げているだけか……!どれだけ転がったところで立ち上がらない限りはエアーシューターをかわす事なんて出来ない!
ふふふ、滑稽。滑稽だなロックマン)
「はははは!逃げるだけか!そんなものか、その程度かロックマン!!」
再び大口を開けてロックマンをあざ笑う。
「そら、竜巻が来たぞ!こっちを見てみろ、目の前に竜巻があるぞ!最後の光景としては悪くないだろう?」
竜巻がロックマンに、当たる。
「はははやった!当たった死んだ!!やりましたワイリーさまああぁぁぁ!!褒めてください!!」





「甘いぞエアーマン!!!!」



エアーマンは目を疑った。竜巻がロックマンに当たると思った瞬間、
何かが竜巻によって巻き上げられ、まるでカーテンのようにエアーマンの視界を封じたからだ。
さらに嫌な事に、何かが巻き上げられたのと同じ瞬間にロックマンが地面を蹴る音が聞こえた。
エアーマンはロックマンを見失ってしまった。

(くっ!死んだふりだったのか。このギリギリ、土壇場の状況になるまで、奴は瀕死を演じていたと言うのか!!
それにしてもこれは何だ!)

エアーマンは視界を塞いでいる何かを見た。おそらく太陽が出ていれば難なくロックマンを見つける事が出来ただろう。
しかし今は夜だ。視界を塞ぐ障害物に加え、暗さもある。エアーマンにはほとんど何も見えない。
視界を塞ぎ、空中に巻き上がっているものは何なのか。目を凝らす。
やはり見えない。しかしこれが何かは分かった。自分の所に、巻き上げられた何かが降ってきたからだ。

(これは、この視界を塞ぐ物は……砂か!しかし、ここの地面は固い。岩や石だらけだ。飛ぶような砂なんてほとんど無いぞ!!
にも関わらず何だこの量は……!どうして視界を塞ぐほどの砂がある?この砂はどこから持って来たんだ!)

「エアーマン、忘れたのか?」
少し離れた所からロックマンの声が聞こえた。それと同時にロックバスターの銃撃音が響く。
増殖した三体の俺が攻撃されているのか!?エアーマンが気づいた時、何かが爆発する音が聞こえた。
一体がスクラップになったようだ。エアーマンはロックマンの言葉が気になった。
何を忘れたというのか。

「僕はただ耐え凌いでいたわけじゃない」
今度は別の方向から声が聞こえてきた。そしてまたエアーマンの分身が爆発する音が響いた。
ロックマンはエアーマン達の位置を把握しているらしい。彼らが行動をとる前に決めてしまおうと、考えているようだ。

奴は俺にヒントを与えようとしているのか?エアーマンはロックマンの言葉の意味を考える。
しかし分からない。奴は何をしていたんだ。

(……クソッ!とにかくここは逃げなければ。奴がどこにいるか全くわからん!
俺達の位置はロックマンに完全に把握されているようだ。動き回って位置を変えなければ!
ロックマンの妙な言葉に翻弄されてては駄目だ!)

エアーマンは闇雲に動いた。もう一体の俺も自分と同じ思考に至り動き回っているはずだ、エアーマンはそう考えた。
しかし、後方から爆発音が響いた。ついに分裂したエアーマンは全て破壊され、元の一体になってしまった。

(逃げるのが遅れたか!しかし、こうやって動き回って奴に位置を把握されないようにすればなんとかなるはずだ。
もうサテライト30は使わない方がいい。あれは体力を使いすぎる!)

少しずつ舞い上がっていた砂が地面に落ち、視界が回復してきた。
回復するにつれ、エアーマンはロックマンを見つけようと懸命に見渡す。

(もうすぐ見つけれるはずだ。それにしてもこの砂はいったい何なんだ!?)

「ッ!?何だこれは!」

動き回っていたエアーマンは地面に開いた妙な穴に落ちた。いきなりだったため足が少し痛む。
穴の大きさは深さが約60cm、半径が約30㎝といったところだろうか。

「これはいったい……!」

エアーマンが困惑する間も空気中の砂は落下する。辺りは元の暗闇に戻りつつあった。

(この穴が何なのかはどうでもいい。さっさとロックマンを見つけなくてッ!)

エアーマンは背中に冷たい何かが当たっているのを感じた。
ロックバスターの銃口である。

「何よりも険しく、厳しい道のりだった。僕がお前に近づくためにどれほど苦心したか想像出来るか?」
後ろからロックマンの冷徹な声が聞こえた。次の瞬間、背中に衝撃が走る。
「ぐおおおお!」

背中に重い衝撃が走り、エアーマンは倒れた。余りの痛みにもだえ苦しむ。
それでも、悶えつつ、怨敵の顔を睨んでやろうと体を傾けた。
今には壊れそうでボロボロなロックマンがそこには立っていた。

「貴様いったい……!どんな方法を使って!」
「僕はあの時、うずくまっていた時、ただ凌いでいたワケじゃない。
穴を掘っていたんだ。ロックバスターで……!地面を……!石を砕き、粉砕し、細かく細かく、砂に変えた……!
お前に気づかれないようにしたり、砂が飛んでいかないようにするには苦労したよ」

ロックマンはロックバスターをエアーマンに向けた。その瞳には静かな殺意と純粋な怒りが宿っていた。

「お前から見ればさぞ滑稽だった事だろう。案の定お前は僕を笑った……!
だが……それこそが狙い……!お前の油断を誘う事こそが狙い……!」

ロックマンが詰め寄る。完全にロックバスターの射程範囲。撃たれたら確実にかわせないだろう。
エアーマンが顔が少しだけ青ざめた。

「そしてお前は油断し、冷静になっていればなんとかなっていたであろう砂のカーテンに……」
ロックマンはにやりと笑う。
「動揺した……! そうだろう?あの時すぐに行動をとられていれば僕は終わっていた。

 さあ……!裁きの時間だエアーマン」

エアーマンは青ざめていた。ロックマンの姿に怯えているという事実を心中で必死に否定する。

(こ、コケにしやがって……!だが俺は何があろうと勝負を諦めたりしない。最後の最後まで死力を尽くして……

 勝利をもぎ取る!!)

ロックマンとエアーマンは、存在しないはずの心臓が、高鳴ったような気分になった。

((決着をつける!!))


「ロックバスタアアアアァァァァァァ!!!」
ロックマンが至近距離からロックバスターを連射した。

「エアシュータアアアアアアアァァァァァァ!!!」
その次の瞬間、倒れていたエアーマンは、ロックマンにではなく、目の前の地面に向かって竜巻を発射した。

「ぐああああ!」
地面に撃った竜巻によってエアーマンの体は傷つけられた。
しかし、これでいい。エアーマンの狙いは自身に竜巻を当てる事にある。

エアーマンは竜巻によって上空に吹き飛ばされた。さっきまでエアーマンがいた空間にロックバスターの弾幕が突き刺さった。
エアーマンが飛び上がった次の瞬間、ロックマンもボロボロの体で地面を蹴って飛び上がり、エアーマンを追った。

エアーマンは空中で反撃の態勢を整える。このままロックバスターの射程から逃れられたら良かったのだが、
そんな甘い相手ではない。

再び空中で対峙する二人。ロックマンはロックバスターを無我夢中で連射する。
エアーシューターが放たれるまでに出来るだけの弾を撃ち込みたい。
エアーマンに弾幕が命中した。ボディが壊れ、彼の体を構成する部品が壊れていく。
ロックマンはひたすら撃ち続ける。

「ぐっ!!だが甘いぞロックマン!俺がただやられると思うか!エアシュータアアァ!!」
「エアーマン!!真の覚悟はここからだ!!ロックバスタアアアァァァァァァ!!!」

ロックバスターが命中し続けるエアーマンからいくつもの竜巻が射出された。
瀕死のロックマンを真の死に追いやる凶弾。空中では避ける事も出来ない。

何発かは外れ、後方へ消えていったものの、残りの弾は全てロックマンに命中した。
ロックマンは歯を噛み締め痛みに耐える。どこかへ飛んでいってしまいそうな意識を必死に繋ぎ止める。

「こんなもので……!こんなもので僕が死ぬか!!お前に殺された琴姫さんはもっと痛かったぞ!」

なおもロックバスターを放ち続ける。エアーマンもロックマンと似た、ボロボロの姿に変わっていく。

(い、いかん。このままではまずい!)
対抗手段を考える。次にエアーシューターを発射するまで少し時間がかかる。そこまでエアーマンの命はもつのだろうか。
(そうだ!)

「吹き飛んでしまえロックマン!」
エアーマンがとった手段は暴風でロックマンを吹き飛ばすというもの。
ロックマンを吹き飛ばしてロックバスターの射程から外れることが狙い。

しかし、エアーマンはロックマンを吹き飛ばすことが出来なかった。
お互い相手ばかり見て地面を気にしていなかった。そのため二人とも地面にうまく着地出来ずに、衝突した。
衝撃がもろに二人を襲う。

エアーマンはボロボロの体にムチを撃ち、ふらつきながら立ち上がった。
ロックマンを見ると起き上がってこない。ぴくりとも動かない。

「は、ははは!そりゃそうだ!ここで立ち上がればそれこそ化け物だ!はははは」

エアーマンは笑った。もはや立っているのも難しい。

「立ち上がるさエアーマン……!」
「は……」

ロックマンがゆっくりと立ち上がる。片腕は取れ、足はボコボコに変形し、腹は深くまで削れていた。
体の至る所に傷があり、火花が散っている所もある。身体はまさにスクラップ寸前だった。
それでも彼の瞳だけは不自然なほどに輝いていた。強靭な意志を宿して燃えていた。

「……ふ、ふふふボロボロじゃないか!俺もボロボロだがお前の比じゃない。
立ち上がったのには驚いたが、もう勝負の結果は火を見るよりも明らかだな!」
「……そうだなエアーマン。お前の敗北は火を見るよりも明らかだ」

「はは……」

エアーマンの心に怒りの炎が燃え上がった。

「嘗めるなよロックマン!!」

エアーマンが怒りの叫びを上げるのとほぼ同時に、ロックマンはエアーマンに向けて走り出した。
足が変形しているため、その動きはぎこちない。

「来るかッ!」
もう何発目だろうか。エアーマンは走りよってくるロックマンにエアーシューターの照準を合わせた。
おそらくロックマンのボディはもう死んでいる。彼を支えるのはエアーマンから皆を守りたいという意思だけだ。
ロックマンは懸命に走りながらロックバスターを放つ。少しでもエアーシューターを撃つのを遅らせたい。

「エアシュータアアアァァァァ!!」
ロックマンは死に物狂いに走り、エアーマンに飛びついた。すぐさまエアーシューターの発射口を体全体で塞ぐ。
「貴様!」
「お終いだエアーマン!僕もお前も!」
竜巻が発射されロックマンの体を切り刻む。発射口を塞いでいたので竜巻の全てがロックマンに命中した。
しかし、竜巻で傷つくのはロックマンだけではない。

(さっきエアーマンが地面に向けて竜巻を放って、飛び上がった時、僕は見た。竜巻で奴の体が傷ついていた。
何かでエアーシューターの発射口を塞げば奴も傷つくはずだ)

「ぐあッ!」
自身の腹の辺りで自分の竜巻が暴れた。内側からの破壊だ。
体の中が熱くなってくる。このままではまずい。

(だ……駄目だ……このままでは死ぬ……!爆発してしまう)
「何か、何かを……!」
エアーマンは思索する。その間も次々と竜巻がエアーマンとロックマンを襲う。

(エアシューター、サテライト30何でもいいから助かる術を、術を……!)
サテライト30を握り締める。慌てているためか、結局何も思いつかない。先ほどロックマンに言った言葉が思い出される。
もうエアーマンは、『詰み』だということだ。

「うがああああ! 助かる術助かる術、助か、たす……!」
(そ、そうだ!サテライト30を使)

「ロックバスタアアアアァァァ!!」

エアーマンの頭に向けて最後のロックバスターを放つ。エアーマンの頭部が砕け散っていく。
次の瞬間、エアーマンはロックマンを巻き込み粉々に爆発した。

ロックマンも爆発により身体が吹き飛び、胸から下が引き千切れた。

頭と胸部だけになったロックマンは地面に激突する。
もはや痛みすら感じなかった……。



 ▼ ▼ ▼
……僕はぼんやりと空を眺めていた。僕の体は胸から上しか無い。
それから下はどこかに飛んで行ってしまった。捜そうとは思わない。
というより、捜せない。

僕はもう長くないだろう。次の瞬間には死んでいるかもしれない。まだ意識を保てているのが不思議なくらいだ。

エアーマンから逃げようとすれば逃げれたかもしれないな。
僕は苦笑した。

だけど、ここまでがむしゃらに戦った事に後悔はない。
僕の心を満たすのは大きな満足感とほんの少しの不安だけだ。
不安というのはロールちゃんや遊戯君達の事。
彼らは生きてこのゲームから脱出出来るのだろうか……。
いや……きっとやってくれるはずだ。僕がエアーマンを倒したように、皆も続いてくれるはず……。
きっと……このゲームから脱出してくれるはずだ。

僕は、僕の仕事を果たした。我ながらよくやったものだ。
死ぬ事への恐怖なんて微塵もない。それよりもここまで僕に着いてきてくれた僕のボディに感謝したいくらいだ。
仕事をやり切ったという心地いい達成感がある。結構、嬉しい。

頭の回転が遅くなって来たような気がする。そろそろか……。

ふと、この殺し合いで最初に出会ったスパイダーマンさんの事を思い出した。
仲間を集めるためにテニスボールを配ろうとしたんだ。あれが始まりだった。

僕はなんとなく呟いてみる事にした。おそらくこれが最後の言葉だろう。
遺言……とはちょっと違うか。別に誰かに聞いてもらう必要も無い。
ライト博士とよくした口の動作テストみたいなものだ。

僕より先に死んでしまったスパイダーマンさんへの報告だ。

「スパイダーマンさん……僕たちがテニスボールを配り、仲間を集めようとした事は無駄じゃなかったよ」

死に際だと言うのに驚くほど穏やかな声が出た。ああ、神様、もしいるのならどうか最後まで言う時間を下さい。

「僕が死んでも仲間達が後を継いでくrっっ!」





ガシャン!! 『ティウンティウンティウン――――』




何者かがロックマンの頭部を踏み砕いた。その何者かは機能が完全に停止したロックマンを見下し、冷笑を浮かべた。

エアーマンは生きていた。

「クッ!クカカカ!ハハハハハハハ!」
ロックマンに比べればいくらかまともなものの、
それでもボロボロなエアーマンはここぞとばかりに身体を大きく揺らし大笑いした。


悪あがきというものはしてみるものだ。あの時、ロックマンにとどめを刺されかけた瞬間、
最後の手段として必死にサテライト30を使ってみた。
体力を相当消耗していたので正直言ってうまくいくとは思っていなかった。
まさに悪あがきだ。結果は言うまでもない。

なんとか分裂出来た!
元の俺はそのまま消滅してしまったが、『俺』は違った。逃げ切る事が出来た。
背中からの爆風が少々熱かったがな。

「ハハハ!思ったよりも使い勝手がいい武器だ!」

俺はふらふらしながら、心地のよい充実感の中、ロックマンの体を踏み潰した。頭も、肩も、胸もだ。

しこたまプレスした後、俺は半ば倒れるような感じで潰れたロックマンの上に座った。
体はボロボロで重い。しばらくは動けそうにない。
ロックマンのパーツを使い、ムスカの智恵を借りればなんとか修理出来るだろうか。

「ククク、確かテニスボールがどうとか言ってたな」
近くに落ちていたロックマンのデイパックからこぼれているボールを見た。

おそらくゲームに乗っていない参加者にボールを配っていたという所だろう。
あれは奇襲に利用出来るかもしれない。まあ、そこら辺の事はムスカに任せよう。

自分の尻の下にあるロックマンの体を見る。ははは、無残なものだ。
それにしても笑みが止まらない。
ボディは限りなく疲弊しているが、俺の心を満たすのは特大の満足感だけだった。


ロックマンは自分の仕事を果たしたと満足して逝ったのだろうか。
どれだけ頑張っても、どれだけ身を裂いても、
何回やっても何回やってもロックマンはエアーマンを倒せなかった。



【ロックマン@ロックマン2 死亡】
【残り34人】


【C-3 山道中央部・高台/一日目・夜中】
【エアーマン@ロックマンシリーズ】
[状態]:疲労困憊、全身ボロボロ、最高にハイ
[装備]:サテライト30@真赤な誓い
[道具]:支給品一式(水一本消費)、ねこ鍋@ねこ鍋
[思考・状況]
1.しばらく休んだ後、ムスカを捜し、ボディの修理を試みる
2.他の獲物を捜しながら、元の世界にはなかったデータを集める
3.ロール。そして俺の邪魔をした者たちは必ず倒す
4.しばらくはムスカと同盟を組み、協力する
5.優勝して元の世界に帰り、ワイリー様の世界制服計画を再開する
6.テニスボールを何かに利用出来ないかな
【備考】:首輪の代わりに動力源に爆弾が埋め込まれていることに気付きました
【備考】エアーマンの近くにロックマンの下半身と支給品が落ちています

sm156:Stars Strike(後編) 時系列順 sm159:FloweringNight BR~月まで届け、最速の俺~
sm156:Stars Strike(後編) 投下順 sm158:さらなる結束へ(前編)
sm145:OVERLAP ロックマン 死亡
sm145:OVERLAP エアーマン sm166:黒より暗い人物(前編)



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