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モクバ死す 海馬の涙 ◆BRxsUzTn5A




海馬瀬人はあの忌まわしき部屋から飛ばされた後、一人孤独の中にいた。

「モクバ……モクバ……モクバ……俺の………俺の………大切な弟……」

彼の顔は生気がまったくなく、目は泥沼のように濁っていた。手はだらりとぶらさがったままで体はその場で一本のくたびれた棒のように突っ立っていた




弟、モクバは死んだ。





嘘だと思いたかった。すぐに部屋の隅から出て来て無邪気な姿を見せてくれるということを想像したかった。
しかし、それは自分の今まで全否定していたオカルトを肯定するのに等しかった。

そうだ、モクバは死んだ。俺に降りかかった生温かい血、間違いなくモクバのものだった。
どうしてモクバは死んだ。何故、何のために。自分の弟に何の罪があったのだろうか。

海馬の心はやり場のない怒りと、深い悲しみで満ち溢れていた。

そういえばかつて俺と闘ったアメルダとかいう奴も自分の弟を亡くしたと言っていたな。敵の気持ちなど少しも分かりたくはなかったが
奴の気持ちというものは今の俺の気持ちのようなものだろうか……。かつて俺は奴に「どんなことがあっても弟は守る」と言いきってやった。
だが、どうだ。守るべき弟を手も出せずにみすみす殺され、訳も分からないゲームで命の危険にさらされている。ふふん、最高のお笑い種じゃないか……

海馬の目からつぅーと一筋の滴がこぼれた。それは挫折と悲しさという名の重りが増えれば増えるほど滴はどんどんあふれ出ていく



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



涙が止まらなかった。海馬にとってこれほどの涙は初めてのことだった。
そしてしばらく時が経った後、ふとあの部屋で悪魔のようなヤツの言っていたことを思い出した。


〝優勝者はちゃんと元の世界に返してやるし、何でも願いを一つ叶えてやるのサ〟



俺がこのゲームに乗ればモクバを生き返らせてもらえるのか?もう一度、モクバと会えるのか……?

『そうだ……瀬人。殺しあいにのるのだ。貴様はかつて私を力をもって、絶望の淵へと蹴落としたではないか。あの時と同じようなことをすればいい。』

海馬の耳にふとちいさな悪魔の囁きが生まれる。その声は昔、自分が嫌悪したあの男の声にも似ていた。
だが、今は何故だろう。地獄の中に垂れ下がっている一本の蜘蛛のように感じていた。

「………………」
弟を失い、心に大きな穴が開いた海馬はこの囁きを無言で聞いていた。
『貴様がどうあがこうとモクバにはためにならん。貴様も元の平和な日々を取り戻したいのだろう……?』

海馬はモクバと共に過ごしていた日々を思い出す。

幼い頃、孤児として彷徨った悲惨な日々……
過酷な英才教育を受け、心身ともに疲れ果てた時にモクバが見せた白い竜の絵……
そして、海馬コーポレーションで共に助け合い、共に闘ったデュエルの日々……


「……本当に殺しあいにのったら、元の生活に戻れるのか?」
海馬はすぐ後ろに、赤い炎の悪魔がいるような錯覚を感じた。その悪魔はニヤニヤ不快な笑みを浮かべているような顔で自分を見ている気がした。
『ああ、そうだとも。貴様の知り合いもよもや貴様が殺しあいにのっているということは思いもしないだろう。』
海馬はすぐ後ろにいるであろう悪魔にキッと睨みながら、こう言った。


「だが、断る」
『何!!』
「この海馬瀬人の最も嫌いとするのは他人の思惑通りにはまり、いい様に利用されることだ」
『貴様……!』
先ほどの柔和に聞こえた声はみるみるうちに声が荒げていく。

「つまらん邪魔をされるのは不愉快だ。消えろ、二度と俺の耳元に表れるな!!」
海馬はしつこく耳元に囁いてくる不快な声に向かって叫ぶが、返答はなくただ、自分の声が木霊するだけだった。
後ろを振り向いて見ても自分以外に存在している者は誰もいなかった。
「俺も相当疲れているな……幻覚を見るようになるとは」

人が生き返る……そんなオカルトじみた話などあるものか。いや、絶対あってたまるか。
俺のやり遂げるべきこと、過去の道程で消え失せた者どもの屍を越え、未来へのロードへと進むこと。
それが……モクバへの餞……守ることの出来なかったモクバへの償い……



海馬はふと上を見上げた。



そこにはぽつんと、一番星が夜空に光っていた。






【C-5 草原/一日目 深夜】
【海馬瀬人@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:弟を失ったことにより強いショック、無力感、挫折
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品(1~3)
[思考・状況]
1:とりあえず一人になってこれからどうするか考えたい
2:殺しあいには絶対にのらない



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