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「I'm so Happy」







    5月某日の午前10時過ぎ…
    爽やかな風が漂う中、俺は駅前で待ち合わせの約束をしていた。
    誰と待ち合わせの約束をしてるのかって?まぁ、それはしばらくすればわかる事だ。
    最近の俺は寝る時間も遅くなりがちになり、正直な話まだ眠い。
    「ふぁぁ…4時ごろまでゲームやってたのがアダだったか…」
    軽く欠伸をして、目の方をこする。しかし、我ながらバカだな。
    大学では高校とは時間割の形態が異なるためか、登校時間が2時間目からということもよくある。
    そういった原因もあり、俺の生活習慣は乱れがちになっている。

    そして数分後、俺の目の前に一人の女性がやってくる。
    「おーっす、久々じゃん」
    「おう、ちょーど時間通りだな。お前のことだし遅刻するかと思ってたがな」
    「はぁ??何言ってんのさ、あたしが遅れるわけねーだろ!」

    頭にカチューシャをつけ、フランクな口調の女性、田井中律
    そう、俺の目の前にやってきた女性の名だ。
    こいつとは中学時代に3年間同じクラスであり、よく一緒につるんでいた。
    しかし中学を卒業した後、俺は地元から地元から少し離れた私立高校へ行きこいつは地元の女子高へ進学した。
    2年前の高2の時、一度会ったのを最後に去年はお互いの忙しさから1度も会わなかった。
    メールでのやり取りは時々行っていたものの、実際に会うのは久しぶりだ。
    キッカケは2日ほど前に律の方から俺宛に

    「今週の日曜日ヒマ?もしアレだったら、久しぶりに会おうぜ?」

    というメールが来て、こうして久しぶりに会うことになった。

    「大学の調子はどうだ?」
    俺は律に聞いてみた。
    「うーん、割と楽しーかな。まぁ、授業は難しいけどなー」
    「授業かぁ、お前のことだしアレか?授業中は爆睡状態なんじゃねーのか?」
    「うっせぇやい!ちゃんとやってるってーの!!」
    こいつがどこに進学したのかというと、ここらへんでも割と有名な某名門大学だ。
    パッと見、勉強などとは無縁に見えるヤツだが生意気にも所属大学の肩書だけはいい。
    ちなみに俺の進学した大学は…おっと、ここから先はあまり言わないでおこう。

    「今思ったけどさ、やっぱあんたって服装とかって結構手抜きな感じだよねー」
    いきなり何を言いやがる、まぁ実際のところ今日の俺の格好はかなりラフだ。
    とても女と一緒に出かけるような服装ではない。
    「うっせぇ!大きなお世話だ!!」
    「へへっ、すぐ怒るとこもあんま変わってねーな」
    そう言ってきた律はピンクのパーカーを身に纏い、首にはネックレスがキラリと輝く。
    耳にはシルバーのピアスが光り、唇はピンク色のリップと派手すぎないナチュラルメイクがなされている。
    いつの間にこいつはこんなに垢ぬけたのか、大学に入るとやはり結構変わるものなんだろうか?
    似合ってるぞ、って言ってやりたかったが先ほどの発言でこれはナシにしよう。

    「ところでさ、今日どこ行く?」
    「お前の行きたい所でいいよ、別にどこでもいいぜ」
    そういや俺はあらかじめ会う約束をしていたのに、どこへ行くのかというのをさっぱり考えていなかった。
    「じゃあさ、商店街でも回ろうぜ?あそこの商店街色々あるしさー」
    「そうだな、俺はそれでいいよ」
    この近くの商店街は割とよく行くところだが、こいつと行くとなると雰囲気もまた変わってくる。
    一人で行く、ないし友達と行くともまた違ったものだ。


    そして、今俺と律は商店街を一緒に歩いている。
    律の甘い香水の匂いが香ってくる、そのくらいの距離だ。
    「何かさ、こうして隣歩いてるとあたしたちカップルみたいだよな」
    「ま…まぁ、そうだな。そう見られてるんじゃないか?」
    実際、この商店街は男女二人一組で歩いているのを見るのも珍しくない。
    たぶん俺たちもカップルの一組だと見られているんだろう。

    「おい!ここ入ろうぜ!!」
    律が行こうと指したのは音楽ショップだ、こいつは音楽をやっておりこういう店には目がない。
    ちなみにパートはドラムである。
    「ああ、別にいいぜ」
    そうして俺たちはこの音楽ショップに入っていく。


    「おっ、このスティックいいじゃん!!うーん、買おっかなー?」
    ドラムのスティックを手にとって喜んでいる律がここにいる。
    俺と律は地下の楽器コーナーに来ている、ここにはギターやベース、ドラムと一式の楽器が揃っている。
    ちなみに言うと、俺は音楽とはあまり縁がなく出来る楽器というとリコーダーくらいなわけだ。
    「相変わらず音楽好きだなー、律は。俺はもっぱら聴く専だしなぁ」
    「そりゃあねー、音楽はあたしとは切っても切れないようなもんだしな」
    律は嬉しそうに語り出す、こいつは中学時代も音楽の授業の時は張り切ってたっけか。
    「そういや、今律って大学の軽音サークルに入らずに高校時代のメンツとやってるんだよな?」
    「そだよ、まぁ高校時代よりも集まれる時間減っちゃったわけだけどさ」
    少し苦笑いを浮かべて律は語る。集まれる時間が少なくなるというのは、やはり寂しいものなんだろう。
    「唯はともかく、澪とムギは結構忙しいみたいだしな」
    「ああ、秋山か。あいつ結構いいトコの大学行ったらしいな」
    澪とは、律の幼い頃からの友達で秋山澪という。
    俺も中学時代はそれなりに面識はあった方だが、見た目は割とよく俺的には割とタイプだった。
    「でも忙しいものは仕方ないしな、数少ない時間の中であたしたちはやってるよ」
    そう律は語る。
    こういう気丈なところが、こいつのいい所なのかもしれない。


    こうして、俺と律は音楽ショップを後にした後商店街の色々な店を回っていった。
    本屋では俺がゲーム関連の雑誌を見ている時に、律は音楽関連の雑誌やファッション誌を見ていた。
    その後には俺には場違いなメンズショップたるものに行ってみた、生涯殆ど行った記憶がなかったわけだが。
    ファッションには正直疎いし、別にそこまで興味がないのだが
    「あんたのファッション無関心なところをあたしが矯正してやるよ!」
    と律がこう言うものだから、ほぼ強制イベント的なもので入る事になった。
    そこで俺は律先生の元で服やズボンをいくつか選ばされ、試しに着たりしてみたのだが案外悪くなかった。
    律のファッションを見る目は割といいのかもしれない、信頼の律先生みたいな。

    そんな感じで商店街を回っていると、時間帯は午後の3時ごろになっていた。
    昼飯はすでに食べたものの、何か甘いものを口にしたくなってくる。そんな時間帯だ。
    「はぁ〜、何か甘いものでも食べたいなぁ」
    「そうだな、俺もそう思ってたところなんだよな」
    俺と律は同じタイミングでそう思っていた模様。
    デザートが食べれる店はあるにはあるがここからは少し遠い、しかも逆方向だ。
    さすがに戻るのは面倒なので、俺と律はそのまま進行方向へ進むことにした。
    そして、少し歩いた所にカラオケボックスのジャンボカラオケ(通称ジャンカラ)が見えてきた。
    「あのさ、これからカラオケなんてどう?カラオケならデザートなんかも食べれるし」
    「ん、そーだな。あと今の時間帯だったら半額らしいしな」
    どうやら、今の時間帯は半額で入る事が出来るようだ。
    「カラオケか…俺、あんま行った記憶ないんだよな」
    「確かにねー、あんたってあんま行かなさそうな顔してるしなー。あたしは大学入って結構なペースで行ってるけど」
    「うっせぇ、ほっとけ!」
    あんまカラオケ行かなさそうな顔とは失礼な、まぁ実際そうなんだけどさ。
    俺はさっきも言ったように基本聴き専だし。
    てなわけで、俺と律はデザートを食べるという名目の中カラオケボックスへ入っていった。


    時間帯の割にはそこまで人は多くなく、順番待ちになることはなかった。
    受付を済ませた後、俺と律は17番の部屋へ入っていく。
    「さーって何歌おっかなぁ〜、あたしレパートリー広いから逆に迷うんだよな〜」
    律はデンモクを手に取り、嫌味っぽく言った。雰囲気的にもこいつは確かにカラオケ慣れしてそうな感じだ。
    「へー、ぜーたくな悩みですねぇ。少なくとも俺はお前より持ちネタ少ないですよ〜だ」
    俺は口を「3」の形にして軽くぼやいた。
    「おい、とりあえず何か頼もうぜ。俺たちデザート食おうとしてるんだろ?」
    「それもそーだよな、じゃあメニュー見ようぜ」
    俺と律はメニューを見る、そして俺はクリームあんみつ、律はチョコパフェとケーキを注文した。
    「律先生、そんなに食べると太りますよ〜?」
    「う、うるさいっ!好きなんだからいいだろ!!こんくらい大丈夫だよ!」
    女性の最も気にすることの一つ、それは体重。
    もちろん律も気にしているうちの一人だが…こんなんじゃマジで太るぞお前?
    まぁ、とりあえずここはカラオケボックスだ。歌う場所だ。
    そういうわけで律はデンモクに再び手をつけた。
    「どうせだったらさ、点数表示のやつやろーぜ?」
    おまっ、それ何のイジメですか?俺シロートさんですよ??
    「そ…それはやめようぜ。俺が涙目になるだけじゃねーか!」
    「いいじゃんいいじゃん、面白いしさ。自分の実力がどんなモンか把握できっし」
    律さんはとても鬼ですね、点数表示とか恥ずかしいっつーの!!
    「…好きにしろ」
    「オッケー、じゃあまずはあたしからと…」


    「89点か、あたしにしてはまずまずだな」
    自信ありげに語ってらっしゃる律さん、伊達にカラオケ慣れしてるわけではなさそうですな。
    実際、律の歌は悪くなかった。普段ドラムやってるこいつだから歌の方は未知数…
    だと思ったけど、そんなことはなかった。普通に問題なく聴ける部類だ。
    「まぁ、俺からしたら悪くなかったと思うぞ。」
    「新歓コンパやらゼミコンやらで行く機会多いしさ、そりゃ上手くなるよーだ」
    新歓コンパか…俺、サークルとか特に所属してないしな。無縁なモノだよ。
    「ところで、次はあんたの番だぜ?」
    そうこうしてるうちに俺のターンが回ってきやがった、ドロー!モンスターカード!…ではない。
    「Janne Da Arcかぁ、あんたにしては意外なチョイスだな。あたしの周りでも好きな子多いけど」
    俺の入れた曲は今は活動休止になってるバンド「Janne Da Arc」の楽曲だ。
    友人からのススメでここのバンドの曲はよく聴く、オリジナルアルバムもさりげに全部揃えてる。
    律は俺の方を期待しながらジロりと見てきた。何だよ、そんなに期待しても大したもんじゃねーぞ。
    そして俺は律からマイクを受け取った。
    「き〜みをだき〜よ〜せて〜ゆ〜めのつづ〜き〜を見よ〜♪」


    「採点結果は…80点か。うん、まぁまぁだったよ」
    チョコパフェを頬張りながら律はそう言った、ありがとござんした。
    「そうか、そう言われると悪い気もしないな…キー高めだしちょいキツかった」
    ふぅ…さすがにここの曲は普段カラオケに行かない俺にはキツかったな。
    「あとさ…あんたの選曲センスもなかなかだね。これ結構女の子に受ける曲なんだよね」
    律にとって、この曲はなかなか評判が良いみたいだ。こいつの顔を見てるとそう思う。
    まぁ、確かに歌詞の内容なんかすると恋愛モノの曲だってのはわかる。なんせちょっと恥ずかしかった。
    べ、別に深い意味はないぞ??
    歌い終わり、俺は店員の持ってきたクリームあんみつに手をつける。
    1曲歌った後は甘いものが口にしたくなるもんだな。

    しかし、そこで思わぬ不意打ちを食らう。
    「えへっ、もーらいっと」
    律のスプーンが俺のクリームあんみつを一口分かっさらっていきやがった。なんて図々しい…
    「おいっ!俺のクリームあんみつ食うんじゃねぇ!!チョコパフェとケーキでまだ満足できないのかよっ!」
    「油断してるあんたが悪いんだよーだっ!」
    なーんて生意気な子なんでしょう、ねぇホント。
    「じゃあさ、これでおあいこになるでしょ?はい、口開けて…」
    俺は律に言われるがままに口を開いた、そして…

    スッ…

    気が付いたら、俺の口の中にはスプーン一杯分のパフェが含まれていた。
    それはもちろんこいつの食べかけのパフェだ。
    「おまっ…いきなり何しやがる…!」
    「どう?さっきも言った通りこれでおあいころ?あんたのあんみつとあたしのパフェでさ」
    律はしてやったりの顔で笑っている。
    というかこれは所謂…そ、その…間接、キスってやつなんではないだろうか?
    まったく律のやつ、ホントこいつはいきなりぶっ飛んだことをやってきやがる…
    「あ、あのな!人のものを勝手に取るのはドロボーと同じでな…!!」
    「あははは、何不機嫌になっちゃってんのさ。ひょっとして間接じゃなくて…の方がよかった?」
    そう言って、律はいたずらっぽくピンクがかった唇に人差し指をつける。
    「なっ??!そ、そういう意味じゃ…!!?」
    おい、これってまさかひょっとするとひょっとして…
    そうすると、律はいつもの口調で
    「へへへ、じょーだんだってのじょーだん!!そんなわけねーだろ!」
    悪い冗談はやめてくれ…俺の心臓の鼓動が一瞬凄まじいことになったぞ。
    いや、でも実は一瞬期待してしまった。こいつがこんな事言い出しやがるとはな…
    「じゃー次はあたしの番だね、曲は…と」



    こうして、俺と律は5時間ほどぶっ通しで歌い続けた。
    律のヤツ、なにが1時間延長しようぜだ。俺の喉のライフポイントはあまり残ってない。
    入った頃には3時ごろだったのがすっかり日も落ちてやがる。
    そして、今俺たちは待ち合わせの場所と同じ駅前にいる。
    「今日は楽しかったよなー、また来ようぜ」
    どうやら律はご機嫌な様子、楽しかったならまぁいいか。
    「そうだな、また気が向いたら呼んでくれや」
    カラオケとはあまり縁がない俺だが、こいつとやると悪くなかった気がした。
    案外ぶっつけでもどうにかなるのな。
    「割とあんたの歌っていい線いってるよね、予想してのとイメージ違った」
    律さんよ、あんたどんな俺をイメージしてたんだ?
    「あと、もしよかったらさ…またあの曲、あたしに歌って欲しいな…I'm so Happy」
    I'm so Happyとは、俺が本日1曲目に歌った曲である。先ほども言ったとおりかなり甘い歌詞の曲だ。
    「ああ、俺の…まぁ、決して上手くはないけれどよければまた歌ってやるよ」
    「へへっ、次行くときはもっと上手くなってろよな」
    よく言うぜ、わかりましたよ。その気になればお前なんざ抜いてやんよ。

    「あとさ、ちょっと忘れてたことがあるんだよね…」
    ん?何だ??忘れてたことって??何か忘れ物か??
    「とりあえず、ちょっと目瞑って貰ってもらっていい?」
    「??」
    俺は律の言うとおり、目を瞑った。視界は真っ暗になった。
    その瞬間…

    "チュッ…"

    律の柔らかい唇が俺の唇と触れ合う感触がした。

    「…おまっ!忘れてたことって…」
    「あははっ、あんたってホント乗せられやすいよな〜。あんたのファーストキスはこの怪盗りっちゃんがいただいていきました〜♪」
    恥ずかしかった、こんな駅前で人通りの多い中でまさかキスだなんて…
    しかし恥ずかしいという感情よりも、むしろ嬉しいという感情の方が上の方にやってきた。
    「じゃあな、また遊ぼうぜ〜」
    「あ、ああ…」
    そう言って、律は帰路へ向かっていった。
    なんというか、本当に1日中アイツのペースに呑まれていた感じだった。
    最後にはキスまでしていきやがって、ホント掴みどころがないヤツだ。


    でも、そんなところも含めて律のことを…俺は好きなのだろう。




    出典
    【けいおん!!】田井中律はお料理可愛い140【Dr.】


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