唯「zzz…zzz…」
アルス「これ、お嬢さん」唯「zzz…zzz…」
アルス「お嬢…」
唯「zzz…zzz…」
アルス「起きなさい。これ、起き………起きんかああああ!」
唯「っ!!ん~…うぅいぃ~…今何時…っ!誰!?おじいちゃん誰!?」
アルス「ようやく起きよったか…わしはアルス。古の勇者の血を引く者じゃ」
唯「………なぁんだ夢か~」
アルス「…(永遠の眠りにつかせてやろうかの…)夢ではない。お前さんはわしの家の前に倒れておったのじゃ」
唯「ふえ…そういえばりっちゃんにドラクエを頼んでそのまま吸い込まれ…っ!みんなは!?おじいちゃんりっちゃんと澪ちゃんとムギちゃんとあずにゃんは!?」
アルス「いや、わからん。お前だけが倒れておった。いや…お前だけが天から降ってきたと言うほうが正しいかもしれん。まるで伝説として伝わる勇者たちのようにな。ほっほっほ。」
唯「ひど~い。何で笑うのぉ?私たちがその勇者かも知れないじゃんっ」
アルス「お嬢さんが?年寄りをからかうのもいい加減にしなさい。ほっほっほ」
そこまで言ったところで老人は、左手の指全てにつけられた5個の指輪のうち、光の指輪が輝やいていることに気づいた。
アルス「な…指輪が反応しておるのか…?古文書に記されていることが真実ならばこの子が…」
尚も光ることを止めない指輪を見て、老人は語り始めた。
アルス「今でも信じがたいが…どうやらお嬢さんが伝説の…。よかろう,語り継がれてきた伝説をお嬢さんに話そう。」
アルス「フェリス歴1709年、勇者アスラン魔王撃破す。これより300年間、世は平穏を保つだろう。
フェリス歴2001年、災厄再び。魔王ハデス、世界を混沌へと導く。
フェリス歴2009年、人々に抵抗する『勇気』はなく、『希望』を失い、『慈愛』の心を失う。『夢』さえも打ち砕かれるだろう。圧倒的な絶望。その時、光の勇者現る。…というものじゃ」
唯「ふえ……」
唯の頭頂部からは湯気があがっていた。
アルス(本当に大丈夫じゃろうかのう…)「お嬢さん」
唯「あ、私唯っていいます」
アルス「では、唯。古の勇者アスランが魔王ハデスを討伐した時に持ち帰った指輪をそなたに預けよう。家宝として代々受け継がれてきたものじゃ。きっと何かの役に…」
バリーン!!
突然アルスの家の窓が割れた。
窓の外には、2メートルを超す巨躯、赤眼で黒肌のモンスターが立っていた。
唯「きゃあっ!」
モンスター「グギャアアアアッ!!!」
アルス「くっ…魔王の手下か…指輪を狙って…唯、この指輪を!」
アルスは5個の指輪を唯に手渡した。
「おじいちゃん、逃げなきゃっ!」
アルス「無駄じゃ…こやつ、なかなかやりおるわい」
モンスター「キシャアアアアッ!」
アルスの肩口から鮮血が吹き出す。
唯「おっ、おじいちゃん!!」
アルス「ほっほっほ…わしも年貢の納め時かのう…残った力ではこれが限界かっ」
アルスは呪文を唱え始めた。
唯「おじいちゃん、血がっ…」
アルス「唯…いや、伝説の勇者よ…神の祝福がありますように…わしも年じゃ…変な所に飛んでも怒らんでくれよっ!」
唯「早く逃げ…」
アルス「バシルーラ!!」
唯の姿が消え、アルスは膝を落とした。
アルス「ほっほっほ…頼んだぞ…ゆ」
振り下ろさた鋭い爪。倒れるアルス。既に老人は事切れていた。
(続く)
最終更新:2009年06月14日 00:42