SS > 短編-けいおん!メンバー > > サマーバケーション


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今日は、放課後ティータイムの皆で、市内のプールに遊びに来た。
ついこの間、合宿で散々泳いだところだけど、こうも暑い日が続くと、
あの冷たい水の感覚が恋しくなってくるものだ。

ちなみに、ムギ曰く「こんなに沢山人がいるプール、初めてだわ」とのこと。



「お!みんなアレ行こうぜ!」

私が指差したのは、このプールのど真ん中にあるウォータースライダー。
プール自体はどこにでもあるようなごく普通のプールだけど、
かなりの高さと角度を誇るこのスライダーは、このプールを
ちょっとした有名スポットに押し上げている。


「いいですなありっちゃん隊員!」
「わ、私は、遠慮しときます。」
「あれー?どうしたの梓ちゅわん♪もしかして高いところはニ・ガ・テ?」
「そ、そんなことありません!分かりました、行きましょう!」
「あずにゃん、大丈夫?足が震えてるけど…。」
「そそそんなことないですっ!!」





「きゃああああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


その瞬間、スライダーから、それはもうプール中に
響かんばかりの悲鳴が発せられた。その間なんと15秒。
落ちてる間中ずっと叫んでいた事になる。しかも一息で。
肺活量、声量、ともに申し分ない。
今年の学園祭は、梓にボーカルやってもらおうかな。


「律!そんなこと考えてる場合じゃないだろ!」
「み、澪!なんで私の考えてることが分かるんだよ!」
「そんなことより、梓のあの声、普通じゃなかっただろ。
 お前がここに連れてきたせいなんだから…」

といって、澪は私の肩に手をかける。

「早く、様子を見に行って、やれー!!」
「ちょ、うわああああああああ!!」

スライダーというものは、自分のタイミングで滑り始めないと
こんなに怖いものなのか。いやあ、いい勉強になった。
…っと、そんなことより梓、梓。



いた。
プールサイドに腰掛けてる梓のその顔は、まさに蒼白。


「お、おい梓、大丈夫か?」
「あ、あんまり、だだだいじょうぶじゃ、な、ないです…」

紫色になってしまってる唇が震えて、まともに喋れないみたいだ。

「おーい、みおー、ムギー!」
「りっちゃん、梓ちゃんは大丈夫?」
「ちょっと大丈夫じゃないみたいだから、あっちの休憩スペースに連れて行くよ。
 私のせいだし、私も付き添ってるから、三人で遊んでて。」


そう言って、梓に肩を貸してやり、休憩スペースに連れて行く。





「ご迷惑をおかけしてすみません…。」
「いやいや、私が無理矢理連れて行ったようなもんだからさ。
 でも、そんなに苦手なら強がらずにそう言えばいいのに…」
「だって…、この年で高いところが苦手なんて、恥ずかしいじゃないですか。」
「そんなこと言ったら澪はどうなるんだよ…。」
「あ、澪先輩…確かにそうですね…。」
「バンドメンバーに隠し事は厳禁だぞー。特に部長の私には!」
「律先輩に弱みを見せるなんて、怖くて出来ませんよ…」
「ん、なんか言ったかー?」
「何でもありません。」

梓の顔色が大分良くなってきた、けど、震えは止まらないようだ。
そういえば、いつの間にか曇ってきて、日差しが弱くなってるみたいだ。

「梓、ちょっと待っててな。」
「え?律先輩?」

私は更衣室に戻り、ロッカーから100円玉を二枚取り出すと、
休憩コーナーにある自動販売機でホットココアを2つ買い、梓の元へ戻った。


「ゴメンゴメン、はい、これ梓の分。」
「え、いいんですか?」
「いいも何も、私のせいだからさ。ずっと座ってたから冷えちゃっただろ。」
「ありがとうございます。…こんな真夏にホットココアが美味しいなんて、
 不思議な気分ですね。」
「ん、確かになー。」

私もずっと動いていなかったから、気付かないうちに体が冷えていたんだろう。
熱々のココアが、全身に熱を取り戻していく感覚を、しばし味わった。


「律先輩。」
「どしたー?」
「バンドメンバーに隠し事は厳禁、なんですよね?」
「ん?ああ、さっきの話か。なんだ、まだ苦手なものがあるのか?」
「いや、そうじゃなくて、…お聞きしたいことがあるんですけど。」
「おお、私に分かることなら何でも聴いていいぞー。」


「澪先輩って、いつから…その…大きくなったんですか?」
「えっ?」


「や、やっぱりいいです!」
「お、おいおいそこまで言っておいてそりゃないだろ。」
「だって…。」


梓がしてる話は、やっぱり、”あの事”なんだろう。
察してやるのがいいのか、聞かなかった事にしてやるのがいいのか…。

でも、何だか梓が思いつめたような顔をしてる、ようにも見えなくもない。


「その話って、もしかしたら間違ってるかもしれないけど…
 む、胸の話だよな?」
「…そうです。」

なんで急にそんな話を、と思わず言いそうになるが、すんでの所で思いとどまる。
梓が突然こんな話をした理由。一つしか思い当たらない。
もし、”高一の3学期くらいから急に成長した”なんて答えを期待してたらどうしよう。


「何ていうか、中一くらいの頃から、だったかな。
 大きくなり始めたときは、体育なんかで男子の視線を浴びるのが辛いって
 よく私に泣きついて来てたなー。」
「うらやましい悩みですよね…。」


はい、”うらやましい”入りましたー!
…梓、気にしてたんだ。
しかも”ですよね”ってことは私も一緒にされてるのか?まあ、そりゃそうか。


「梓は、その、気にしてるのか…?」
「…気にしちゃ、悪いですか。」
「いや、悪かないけどさ…。」
「女の子だったら、やっぱり大きいほうがいいじゃないですか。
 私だって、あんな水着着てみたいけど、胸は小さいし背も低いし寸胴だし…。」


どこからか、”だがそれがいいペロペロ”と聴こえた気がして振り返ると、
『あずさ9号』と書かれたプレートの『9号』の部分が『10号』に直された電車、
のようなものが見えたような気がした。暑さで頭がおかしくなったんだろうか。


「律先輩?どうしたんですか?」
「あ、いや、何か聴こえた気がしたけど幻聴だったみたい。」

なんとなく、梓には言わないでおいた方がいい気がした。


「まあ、こればっかりはねぇ。気にしても仕方ないというか…。」
「律先輩は、澪先輩がうらやましくなったりしないんですか?」
「うーん、昔は羨ましかったけど…ずっと一緒にいたから慣れちゃったのかな。
 そもそも、昔から澪は背も高くて、スラっとした美人だったからなー。
 ずっと一緒にいた私は、引き立て役は慣れっこだったのさ。」


「律先輩だって、充分美人じゃないですか…。」


今度は、幻聴じゃないようだ。



「え?なになに聞こえなかったもう一回言って!!」
「な、何でもありません!」
「えーもう一回くらい言ってくれたっていいじゃんよー。
 普段そんな事誰も言ってくれないんだもーん。」
「わ、分かりましたから抱きつくのやめてください…。」
「ホント!?もう一回言ってくれるの?」


「って、こんな前置きされたら益々言いづらいじゃないですか!?」
「ぷぷぷ、梓顔真っ赤!」
「やっぱり言いません!」
「うーそーだーよー!ねえおねがーいあーずーにゃーん!」







「り、律先輩だって…充分、美人ですよ。」







「こーんにゃろ可愛い奴だなお前はーうりうりうりうり」
「ちょ、ちょっと律先輩いたいいたいいたい、ていうか何で
 こんな恥ずかしい思いしなきゃいけないんですか!罰ゲームじゃないですか!」
「ふふーん、梓の気持ちは受け取ったぜ!さすがにプールには録音機は
 持って来れなかったのが残念だなぁ〜。」
「こ、この人は…。」


気付けば、梓の顔色もすっかり元通り、良くなったようだ。


「よし、梓、充分休憩したし、プールに戻ろうぜ!」
「え、でも皆さんはいいんですか?」
「みんな携帯は更衣室だからなー。私としては、せっかく告白してくれた
 梓と二人きりの時間を過ごしたいなー、なーんて♪」
「こ、告白じゃありませんよ!」
「まあまあ、細かいことはいいじゃん!早く行こうぜ。」
「全くこの人は…。
 …でも、いいですよ。私、波のプールに行きたいです!」
「よーし、そうと決まれば早速行くぞー!」



その後、休憩スペースからいなくなった私達を心配してあちこち
探し回っていた澪たちに見つかって、この夏何度目かの大きなタンコブを作るまで
私と梓は二人だけの楽しい時間を過ごした。




終わり
隊員のみんなも、良い夏を!


出展
【けいおん!】田井中律は素で可愛い66【ドラム】

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