true MAMAN特別編・こんな想い出もいいよね~前夜~


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「もう仕度全部終わった?」
「え?ああ、旅行の?うん、もうばっちり」
 部活の後、ロッカールームで着替えながら、朋与と比呂美は明日からの修学旅行の話をしていた。
「朋与はまだなの?」
「あたしももう終わってるんだけどさぁー、荷物が多くて多くて」
「・・・・三泊四日で移動は制服なんだから、そんなにならないと思うんだけど」
「はあ?何をおっしゃいますか比呂美さん?旅館の中でまさかジャージで歩き回るつもり?
旅館着いてすぐとお風呂の後、それに夜のパジャマで最低9着は要るでしょう?」
「そんなに着替えても気がつく人いないって」
「あぁ~ヤダヤダ、これだから亭主持ちは。よろしい、教えてあげましょう。
「修学旅行の旅館の中、それは学校の中でありながらプライベート空間でもあるという二つの
世界の狭間。女子はここで学校とは少しだけ違う顔を見せるの。普段は制服姿しか見ていな
い同級生どもに『女』を見せ付ける最高のステージ!あからさまな勝負服でなく、それでいて
他の女子との違いを作り出すファッション!女子同士のファッションチェックは熾烈を極め、勝敗
が決すれば勝ち誇った笑み!決して負けるわけにはいかないのよ!」
「朋与さーん、帰って来て下さーい」
「いい?これは勝負なのよ。あなたみたいにご亭主の好きなピンクのセーターだけ着てればい
いなんて考えじゃ渡っていけないのよ」
「そのご亭主って言うのやめて・・・・」
「よしわかった!それじゃあしょうがない。私が今から比呂美の部屋に行ってファッションチェック
をして上げよう」
「いやいいってば」
「ついでだから今日はお泊りにしよう。比呂美の家の方がうちより近いし、そうすれば朝の早いの
も恐くない。これぞ一石二鳥!呉越同舟!」
「朋与、呉越同舟は違う・・・・」
 比呂美は諦めたようにため息をついた。



 比呂美の部屋には朋与と、あさみも来ていた。朋与が、
「どうせならもう一人」
 と、携帯で呼び出したのである。
「きれいに片付いてるねえ」
 あさみが感心する。
「そう?でも、結構部屋の隅は汚れてたりするのよ」
「凄いきれいだよ。私の部屋なんかベッドの上以外は座ることも出来ないもん」
「・・・・あなたの家には絶対行かない事にするわ」
 あさみの部屋を想像して、朋与が心底嫌そうに言った。
「それはともかく、案外家具が少ないのね」
「え?そうかな」
「うん。もっと色々置いてあると思ってた」
「そりゃあさみさん、詮索したら野暮ってものよ。卒業したらまた仲上君の家に戻るんだから、そん
なに家具増やす必要なんて無いって。ねえ?」
「別にそう決まってる訳じゃ・・・・」
 比呂美は言葉を濁したが、そのつもりではあった。眞一郎の母、理恵子との間には1年以上に
渡って深い深い溝が掘られており、今はそれをお互いに埋め直しているところだった。卒業したら仲
上家に戻り、家業の手伝いをしながら関係を築きなおすつもりでいる。
 自分は強情で、意固地で、娘となるには不出来だったが、仲上家の嫁としては理恵子から認めら
れたい。それが比呂美の将来設計だった。
「あー、それもそっか。戻ったら使わない家電も多いもんね」
「まぁーそれにしてももう少し色気のある部屋でもとは思うけどねぇー。もしかして、ご亭主の趣味も
入ってる?」
「だからそれはやめてって――」
 その時、玄関の鍵を開ける音が聞こえた。
「ただいま」
 眞一郎が、まるで自分の家のように入ってきた。
「眞一郎くん、駄目――」
「ただいま?」
「今、仲上君ただいまって言わなかった?」
 眞一郎は目の前の光景に一瞬ポカンとした表情を見せたが、すぐに事態を飲み込んだ。
「あ、あ、い、い、いや、お邪魔します」
「いいいいいらっしゃい眞一郎くん、どうしたの?」
「ああ大した用件じゃないんだ。お袋がおかず作りすぎたから、比呂美の所へ持って行ってやれって。
丁度いい、お客さんがいるならみんなでどうぞ。ええと、それじゃ」
「ま・ち・な・さ・い」
 朋与が呼び止める。
「はい、なんでしょうか黒部さん・・・・?」
「なぜただいまだったのか、ゆーっくりとお聞かせ願えませんこと?お母様の料理をつつきながら」
 比呂美が深いため息をついた。



                       続

ノート
音を伸ばすとき、朋与は「ぁー」とか「ぇー」、あさみは普通に「ー」です
僕が書く朋与はすっかり国語の苦手な人ですねw
最初は朋与達は家まで来なくて、風呂上りにいつも通り裸で出てきた比呂美と合鍵で入った眞一郎が鉢合わせして、1話で実現しなかった「キャーH!」をさせようとも思ったんですが、朋与が空気読まずに付いて来ちゃいました。



ネタバレ(本編の展開に関る話なので知りたくない人は読まないで下さい)
 本文中に比呂美がママンとの溝を埋めることについて少しだけ触れていますが、実はママンの比呂美に対する想いと、比呂美のママンに対する想いは少しだけずれています。
 比呂美は「自分は娘としては失格だった」と思っているのに対し、ママンは「自分は母親となる資格はない」と思っています
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