タイトル未定


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負けるな比呂美たんっ! 応援SS第45弾(3回目)

●仕様上のご注意●

 このおハナシは基本的に『こんな事があったらいいな』という作者の独断(増量キャンペーン中)で描かれております。
 本編13話告白の数日程度後をイメージしたおハナシです。
 本作中、回想部分で本編12話直後の補完『的』(でっち上げ)ストーリーも有ります(仕様上、比呂美に甘くなってます)。
 本編の人物設定、世界観等を忠実に考察して補完を試みるものでは全く有りませんので、一部整合性がなかったりする場合が
あるかもしれません。
 ご了承下さいませ。





『タイトル未定』



久しぶりに訪れた このお店
『準備中』の札がかかってる
眞一郎くんが先頭に立ち戸を開けた

「いらっしゃーい」

元気のいい声がカウンターの奥から響く
愛ちゃん やっぱりすごい
本当にお店をひとりできりもりしてるんだ

「きたぜー」
 と眞一郎くん

「おーう」
 と野伏君

「おじゃまします」 
 とわたしがつづく

店内は記憶にある光景とあまり変わってない
ただ、もっと広かったような…?
カウンター、こんなに低かったっけ…?

眞一郎くんが先頭で 向かったのは奥のコーナー席
自然な動作、迷いがない
自分たちのテリトリー、ホームグラウンド?
そんな雰囲気
私の知らない眞一郎くんの居場所…

眞一郎くんは奥の位置に座る
野伏君はテーブルの間を抜けて
眞一郎くんと斜め向かいの辺りに座った
慣れた動き 指定席なのかな?
困った
わたしはどこへ座ろうか
野伏君のお向かい?
それとも 少し狭いけど眞一郎くんのとなり?
えーと 野伏君の隣は愛ちゃん… だよね?

「あー、湯浅さん、嫌じゃなかったら
 そいつの隣に座ってやって?」

戸惑っているわたしに
野伏君が声を掛けてくれた
軽く改まったような態度で

 「なー その方が嬉しいよなぁ、眞一郎ぅ」

続けて眞一郎くんにはニヤニヤ笑いを向けている
男の子同士ってこんなカンジなのかな?
頬が自然に熱くなる…

「うるさいよっ」

眞一郎くんは親しい間柄で許される 少し乱暴な口調で答えて

「ああ、好きなところに座って」

それから わたしにぎこちない笑顔を向けて
辺りをあいまいに示して着席を即してくれた
だけど こんな時 どうしたらいいのかな…






三人で学校をでてからというもの
ずっとこんな調子だった
眞一郎くんはずっと野伏君とばかりお話してた
よく分からない男の子同士のお話
わたしはそんなふたりに半歩遅れながら歩いてた
時々野伏君が会話をふってくれる
そんなことの繰り返し

そっけなく感じた眞一郎くんの態度が気になった
何か気にさわる様なことをしたのかな…
うっかり約束を忘れているとか…
今日、学校で知らないうちに何かあったとか…
だけど、何も思いつかない

眞一郎くんの横顔を眺めながらそんなことを考えてると
ふと こちらを向いてくれた
わたしの視線 気がついてくれたのかな?
今日重なった初めての視線
なんだかうれしくて… 
気がついたら ただ 見つめ返してた

こんなときは
理性が戻るまで ほんの少しかかる
今日もそう
小首を傾げて『なあに』と
無言でやっと問いかけた
だけど…
殆んど同時に顔を戻した眞一郎くんに
一瞬、間に合わなくて
わたしの問いは
気がついてはもらえなかった…

もう一度こっちを向いてくれないかと
しばらく横顔を眺め続けてた
でも 結局 それっきり…
だけど 眞一郎くんの横顔 少し困ってたみたい
困ってるその理由… なんだろう?
少し考えて 気がついた
野伏君が一緒だから
きっと テレくさいんだ
そう考えれば 説明がつく事ばかり…

わたしが眞一郎くんと朋与の三人で歩いたら…
きっと 似たような気持ちになるだろう
決して不快などではないけれど、居心地は少し悪い筈
眞一郎くんへの態度、たぶん朋与の前だと
『ちょっと仲のいい幼馴染みなだけなんだから…』
とか
『別にそんなに好きな訳じゃないんだから…』
なんて
そんな感じに取り繕ってしまいそう…

どうしよう?
いつか そんな場面があるかもしれない
朋与には わたしの想い しっかりと見抜かれてた
それに 嘘をついてたことも たぶん 知られてる
朋与は わたしの話しにくい事 訊いてこないけど
でも 打ち明けられなかったいろんなこと
どこまでお話できるか分からないけど
いつか お話しておかないといけない…

わたしが自分に嘘をついているときも
好奇の目に晒されているときも
朋与は変わらずに いえ わたし以上にわたしを信頼してくれた
本当にありがたかった…
そんな朋与に わたしは本当の事を話せなかった
それが悲しい…

朋与…
おかあさん…
おじさん…
おばさん…

眞一郎くん…

そして

わたし自身…

結局、誰も信じきる事が出来なかった…

わたしが大切なひとたちを信じる事が出来ていたなら
あの日以来の出来事は起きなくてもよかった筈…
何人ものひとを傷つけなくてもよかった筈…
このことを教えてくれたのは…
皮肉にも『封印』だった…

今日
眞一郎くんの大切なひとたちと
あらためて お近づきになる為の第一歩
わたしにとっても 幼馴染に クラスメイト
だけどたぶん 眞一郎くんとの日常的な心の距離は
わたしより近い筈のふたり
わたしは眞一郎くんの大切なひとたちに
受け入れてもらえるだろうか?
本当に 心の底から…

でも… やっぱり 一番気になるのは
眞一郎くんとの心の距離…
もっともっと近づきたい…

わたし 今 少し緊張してる…






「じゃあ おじゃまします」

眞一郎くんの方を見ないようにしながら
結局 眞一郎くんの隣に座った
野伏君の言葉を無にするわけにもいかないし…
何より眞一郎くんは『好きなところ』と言ったんだし…
くっつきすぎないよう
離れすぎないよう
だけどあんまり広くは無い場所だから
こんなにすぐ側に座るのは初めてかもしれない
ものすごくドキドキしてる
さっきから こちらに寄せられる野伏君の視線が恥ずかしい
わたし達の事を承知してくれているひと達の前とはいえ
気恥ずかしさが減るわけではないみたい

眞一郎くんの反応を確かめたくて
チラと隣を窺うと
視線がぶつかった
あわててお互い顔をそらす
あれ いつから見ててくれたの?

なんて思ってたら
眞一郎くん 座ってる位置をずらした
ほんの少しだけど
わたしから離れる様に

もうっ 恥ずかしい
野伏君が見てる前なのに
これじゃまるで
わたしが一方的に好きみたい

あれ…
もしかして
そうだったりして…

違うよ …ね?

『どうして逃げるの?』
『もしかして大胆すぎちゃったかな?』

人前だから 声に出せない問いを
せめて視線に込めて送ってみる
なのに
わたしの視線に気付いていないのか
気付いていないフリをしているのか
全然こっちを見てくれない
そのうち 野伏君に何か話しかけだした
まるで わたしの視線から逃げるかのよう…

もうっ
このままじゃモヤモヤが収まらないし
お話の腰を折るのは気が引けるけど…
抗議の意味も込めて訊いてみる
厭味でも怒ってる訳でも無いよう注意しながら

「ごめんなさい あの… 狭かったら 移ろう…か?」

そんなわたしの言葉をまるで予感していたかのよう
眞一郎くん すぐにこっちを向いて

「い、いや、大丈夫っ」

いつものぎこちない笑顔で答えてくれた
テレてくれているのはある意味うれしいけれど
少しはわたしの立場も考えて欲しい…
まあ、眞一郎くんが不器用なのは
よく身にしみている…
はあ…

ふと見ると
野伏君 ニコニコ顔でこっちを見てる
わたしの視線に気がつくと
急に平静なフリに戻ったけれど
口元には微かに笑みが残ってる
一体どう思われていることやら…
まあ 今さら どうしようもないけれど

「お待たせー」

愛ちゃんが元気のいい声で
トレイを手にやってきた
間が持たなかったので
ありがたいタイミング
さすが愛ちゃん頼りになるっ!
トレイには大判焼やおでんや煮物たち
おいしそうなにおい

「おーきたきた」

野伏君、もうお箸を手にしてる

「本当にいいの?」

気になって一応確認する
今日は愛ちゃんの奢りだそうだ

「いいって、眞一郎のご苦労さん分、
 ミヨキチに手伝ってもらったお礼分、
 比呂美ちゃんも一緒に準備した分、
 あとね、いくつか試作品もあるから
 あとで感想聞かせてくれたら それでいいよっ」

屈託なく笑いかけてくれる愛ちゃん
わたしもこんな風に自然に笑えたらいいのに…
愛ちゃんは女の子のわたしから見ても魅力的
愛ちゃんみたいな女の子 眞一郎くんはどう思うのかな?
なんて 気がついたらこんな事 考えてる
少し嫌… なかなかこの癖 直らない

愛ちゃんはテーブルにトレイを下ろすと
お皿たちを広げはじめた
わたしも慌ててお手伝い

「さっすが女の子だねー
 このふたり いままで手伝ってくれた事無いんだよ」

愛ちゃんはそんな事をイジワル声で言いながらニコニコしてる

「そりゃどーも 気がつきませんで」

ぶっきらぼうなフリをしながら 眞一郎くんが答えた
なんだろう このカンジ
わたしと眞一郎くんとの間にある絆の色とは違う色…
眞一郎くんと他の女の子が目の前で楽しそうにしているのに
いつもなら胸が不安でいっぱいになるはずなのに
不思議とぜんぜん嫌じゃない
ただ、目には見えない絆の強さは羨ましい
わたしもいつかこんな風になれるかな…?

なんて思ってたら
愛ちゃんはスッとわたしの斜め向かいに腰掛けた
野伏君のお隣…
じゃなくて
野伏君のお向かい…
てっきり4人でL字になると思ってたのに
もうっ
眞一郎くんのお隣に座ったわたしって…
これじゃ まるで… おひな様?
恥ずかしい…

そんな わたしの胸の内も知らないで
眞一郎くんと野伏君『いただきます』も言わずに もう手を出してる

「こぉらぁー、乾杯が先ぃ」

愛ちゃんがお姉ちゃんモードでお説教

「もう、めんどくさいなぁ」

野伏君、ワザと少し拗ねた声で抗議しながら
お箸を大人しく取り皿の上に戻した
なんだかカワイイ
愛ちゃんの前だからかな?

「はい、比呂美ちゃん ウーロン茶でいい?」

愛ちゃんがウーロン茶をコップに注いでくれる
ふと見ると
眞一郎くんと野伏君はコーラの瓶にストロー…?
こんな飲み方初めて見た…
軽いカルチャーショック…
いえ 眞一郎くんの世界の新たな発見…
と考える事にしておこう、うん

「あー、オレ達と待遇違うっ」

野伏君がまた抗議の声

「あったり前でしょう 女の子にペットボトル
 ラッパ飲みさせられるわけないでしょう
 ねーっ」

愛ちゃん、最後にわたしの方に笑顔を向けながらそう言った

「あ、わたしにもさせて?」

わたしも愛ちゃんのコップにお茶を注ぐ
こんなやり取りが なんだか楽しい

お茶を注ぎながら ひとつ気がついた
このお店の このメンバーで
いままでコップを使った事がないのなら
他の女の子が同席した事はないのだろう …多分
ちょっと安心…
あ… またこんな事…
この癖 良くない…
眞一郎くんを信じないといけないのに…

「じゃあ、眞一郎、ミヨキチ、比呂美ちゃん、アタシ、お疲れ様でしたーっ」

愛ちゃんの掛け声で乾杯
さあ 何をお話しようかな
こんな場合 最初は愛ちゃんとだよね

「あ、忘れてたっ」

愛ちゃんが何か思いついたみたいに声を上げた
なんだろう?

「比呂美ちゃん、眞一郎っ、おめでとーっ」

プッ

隣から何かを吹きだしかけた様な音が聞こえる

なんなのこれ?

「な、なんだよ それっ」

眞一郎くんもビックリしてる
「お付き合い始めました」とのご報告を
愛ちゃんと野伏君にしたとは確かに聞いてはいるけれど…
今日のこれも何となくそんな気もしたけれど…

気がついたら わたしと眞一郎くん、顔を見合わせてる
けど いまはテレてる場合じゃないっ!
目と目を使って眞一郎くんと緊急ヒミツ会議

『なんなのこれ?』

と これは わたしからの質問

困惑顔の眞一郎くんからの回答は

『知らないよ』

かな? 多分…
眞一郎くんとの若葉マーク付のアイコンタクトは
まだまだ頼りない 

「えーっ めでたくないのーっ?
 比呂美ちゃんは嬉しいよねっ」

愛ちゃんの質問 ご指名された!
顔を見合わせたままの眞一郎くんの顔見てられなくて
思わずうつむいてしまう
頬も、耳の辺りも、もう熱い…
こんな時、どう反応していいか分からない
でも… 黙ってるのも おかしいから
なんとか 顔をあげた

どうか他の話題に移ってくれますように…

周りを見回す
そんな希望 かないそうもない事を思い知る
愛ちゃん、野伏君は期待するような表情でわたしを見てる
チラと見る隣の眞一郎くんは テレて固まったまま…
はあ 逃げられそうもない…
だけど…

「うれしい… かな?」

膝の上 組んでる指先を眺めながら… 答えられた
わたしの素直な気持ちの言葉…
でも、何も隠さなくてよいという事に
慣れない自分が どこか切ない
もっと早く こう出来ていれば…

でも、やっと言えた…
恐る恐る 顔をあげる
愛ちゃん、野伏君はニコニコしながら
うんうんと頷いてくれてる
一番気になる お隣は…
眞一郎くんは真っ赤になってうつむいてた

『封印』が教えてくれた
もうひとつの 大切なこと…
こんな風に素直な気持ちを素直に言えるって
きっと とても幸せな事なんだ
まるで 胸につっかえていた何かが取れたよう
あれ 油断したら 泣きそう

「ほーらぁ 眞一郎ぅ アンタはぁ?」

愛ちゃんは矛先を眞一郎くんに変えた
眞一郎くんはわたしをチラと見てから

「そりゃ うっ 嬉しいに決まってるじゃないかっ」

そう 答えてくれた
愛ちゃんに問い詰められて降参したみたい
でも 眞一郎くんもそう思ってくれるなら 素直にうれしい…
眞一郎くんのこんな言葉 わたしからじゃ とても聞き出せなかった…
愛ちゃんに感謝しないと いけないかな?

「うんうん、長かったもんねー 比呂美ちゃん
 ずうーっとだったもんねぇ 眞一郎もっ」

「「あ、愛ちゃん?」」

隣の誰かと声が重なった
何それ? 困るっ!
小さい頃の恥ずかしい話でも始めるつもり?
それとも…?
ん? 『眞一郎も』って?

「えっ このご両人は昔から両想いだったんですかっ?」

野伏君、ワザとらしい声で訊き返す
何かの実況の聞き役さんみたいな演技

「そーよぅ 小学生の頃から… もう… ねっ?」

「そんな事…」

そんなニコニコした顔で『もう』って言われても…
そんなに前からなんて…
ひとに知られるのは恥ずかしい

「あれーっ あの頃からぁ もうすっごい仲良しだったくせにぃ」

愛ちゃん
わたしの顔を覗き込むように追いつめてくる
あっ
逃がしたわたしの顔 眞一郎くんと正面から向き合った
困ったような 意外そうな顔で わたしを見てる
また目が合ってる… これで何回目?
これじゃ どこも見れない…
胸のドキドキ止まらない…
気持ちが同じと知ってても
恥ずかしさは変わらない
この胸の高鳴りが憶えてる

そう…
あの日もわたしドキドキしてた…

小さかった頃、お祭りの時の あの日…
中学の制服で初めて眞一郎くんの前に立った あの日…
中学の体育祭でフォークダンス、何年ぶりかの指先の感触 あの日…
中学の卒業式 おじさんが撮ってくれた写真 だけど 一緒のフレームには入れなかった あの日…
高校の制服で初めて眞一郎くんの前に立った あの日…
高校の体育祭でのフォークダンス 意識しすぎて 指先をとうとう触れる事が出来なかった あの日…
眞一郎くんが初めて誘ってくれた帰り道 マフラーを巻いてあげることが出来た あの日…
他にも数え切れないほどの記憶たち…

時々のお互いの立場は少しずつ違っても この胸のドキドキは 同じだった…
いえ、違う、だんだん強くなって 抑えきれなくなっていった…
うれしくもあったけど 同時に とても怖かった…
眞一郎くんと過ごした総ての思い出の時間…
胸のうちに こんな想いを隠してたこと…
そんな事 知られるの 恥ずかしい

「愛ちゃんっ!」

(これ以上はダメだからね? 約束したはずだよ)

気がついたら大きな声…
でもいい!
今度は愛ちゃんに
目を使って緊急ヒミツ通信
『ダメ! ダメ! ダメ!』

「ハ、ハイ?」

愛ちゃん とぼけた顔でこっちを見てる
忘れたの?

「ひどいっ!」

ふたりだけのヒミツだって言ったのに

「え?」

「もうっ、ヒミツの約束だったのにっ!」

「あれぇ そうだっけ でもほら もうヒミツにしなくてもいいじゃない?」

もうっ
覚えてたくせにっ
あ これ ワザとなんだ

まだ小さかった あの日
お互いに好きな男の子の名前を告白した
恥ずかしいから同時に口にした名前は

『眞一郎っ』『眞一郎くん…』

同じだった
恥ずかしかったけど
あの頃は好きなひとを独り占めしたいって気持ちより
愛ちゃんと想いが同じである事の方が嬉しかった
今と違って…

「なになに 教えてよぅ」

野伏君が興味ありげに訊いてくる

「あ…」

言葉に詰まる…

喉元まででかかった言葉は

『愛ちゃんだって、眞一郎くんのこと…』

いけない どうしよう…
いくら子供の頃の話でも
野伏君の前では言いにくい…

「ミヨキチはいいの」

愛ちゃん 目を閉じて宣言ポーズ

「そんなぁ オレ、仲間外れぇ?」

野伏君は情けない声色でガックリポーズ
少しかわいそう…

「眞一郎っ?」

「な、なに?」

「あのねー、比呂美ちゃんねぇ 小学校の頃ぉ
 だーい好きな男の子がぁ 居たんだってぇ」

だからそれダメ!

「え?」

眞一郎くん ハッとした表情 それが
ゆっくり わたしに視線が向けられる
わたし今どんな顔してるだろう?
だんだん熱くなる耳の辺りは気のせいじゃない筈…

「ねぇ …誰か知りたい?」

愛ちゃん わたしの前まで身を乗り出して
眞一郎くんの方まで顔を近づけていく

何がしたいのっ?
眞一郎くんだって そんなの どうせもう
分かってる筈なんだし…
って あれ 眞一郎くんの表情…
なんで 少し困って…
いや、不安そうなの…?

あ、まさか
眞一郎くん以外の誰かかも
とかって思ってるの?

信じられないっ!
わたし達あんなに仲良しだったのに
他の男の子なんて
一緒に遊んだりしなかったし
クラスの子から『ふうふー』とか
冷やかされたんだって
眞一郎くんだけだったのに…

でも…
不安そうな眞一郎くん
見てたらだんだん可哀想になってきた
大切なひとに対しての不安な想いはとても切ない
だから もう…

『安心して…』

そう視線に込めて 眞一郎くんにメッセージ送信…
あ、気がついてくれた…

不安そうだった眞一郎くん
わたしの気持ちが通じたみたい
安心した表情に変わった

「コホンッ」

後ろからの咳払いに振り返る
愛ちゃん 顔が赤い なんで?
大げさな咳払いポーズでこちらを見てる

「あーもうっ アツイ アツイ」

ワザとらしく手で顔を仰いでる

「あ…」

わたし ものすごく恥ずかしい事をしてたかも…
また膝の上の指先とにらめっこ…
これで何回目?

「眞一郎、もっと比呂美ちゃんを信じてあげなさいっ
 まあ、比呂美ちゃんのあっつぅーい視線で 誰だか分かったと思うけどっ」

気になって見てみると
眞一郎くん あっちを向いて頭掻いてる

「比呂美ちゃん、もう少し眞一郎をいじめるつもりだったのにぃ」

愛ちゃん 今度はわたしにお説教

「はいっ? あの… ごめんなさい」

軽いイタズラのつもりだったんだよね
よく考えれば そのとおり
大したことじゃな… あれ?
いま 全部 眞一郎くんに知られちゃったんだ
どうしよう
眞一郎くんの記憶の中にいる筈の
わたしの… 秘めた… 恋心… 全部…
もう 取り消したいっ
恥ずかしいっ

「もう… いいわ」

軽くため息をついて 愛ちゃんは終了宣言
よかった やっと…

「じゃあ 次、」

あれ?

「「え?」」

また隣の誰かさんと声が重なった

「ねえ、眞一郎も小学校の頃 誰かさんのことが だーい好きだったよねぇ?
 教えてもらったの あたし 覚えてるんだけどなぁ」

待って 何それ? 聞いてない…

「あ、あれは 愛ちゃんが 無理やり…」

眞一郎くん 愛ちゃんとわたしの顔を交互にみて慌ててる
誰だろう?
もしかして わたし?
期待していいのかな
でも この慌てぶり…
まさか… 愛ちゃん? とか…

「ふふーん 比呂美ちゃんに言っちゃおうかなー」

愛ちゃん イジワルモードで眞一郎くんとわたしを見比べてる

「ちょっと待てっ!」

眞一郎くん 必死…
なんで?

「比呂美ちゃん 聞きたい?
 眞一郎がぁ 将来お嫁さんにしたいくらい
 だーい好きだって言ってた子 だれか…?」

ドキドキが復活してる
試合の時だってこんなにドキドキした事ない

子供の頃の話だし… 
今はわたしの… だし…
怖くない… 筈だよね… だけど…
愛ちゃんから聞かされるの やっぱり怖い
確かめたい 視線が自然に眞一郎くんに向く
けど 眞一郎くん 天井なんか見てる
なかなかこっちを見てくれない…
どうして?
やっぱり わたしじゃないのかな…
顔がゆっくりこちらに向けられた

『誰?』

と無言で問いかける
眞一郎くん バツが悪そうに
ちいさく頷いてくれた…

ふう よかった
肩の力が抜ける…

待って!
何これ?
もし わたしなら…
愛ちゃん わたし達ふたりの気持ちずっと…
あれっ?

「ホントにもう! 仲良しさんなんだからっ」

ふり返ると 愛ちゃん イジワル顔でわたし達を交互に眺めてる

「いっやー 視線で会話するカップルって初めてみたわ」

野伏君 ニヤニヤしながら そんなこと言ってる
自然に眞一郎くんと顔を見合わせる
あれ、「カップル」って、初めて言われたのかな?

「…」

もうお互い言葉も無い…
何してるんだろう? わたし達…

「このふたりはね 昔っから こーなのっ」

愛ちゃん野伏君にご解説

「はあはあ」

野伏君 何を納得してるのかしら

「いつの間にか二人の世界つくっちゃうんだからっ」

愛ちゃんの言葉 何も言い返せないかもしれない
けど…

「そ、そんな事ないよ… ね?」

眞一郎くんに救いを求めてみる

「あ、ああ、フツーの幼馴染ってだけで…」

でも眞一郎くんのお返事も自信は無さそうだ…
ま、あんまり期待できなかったけど…

「ふうん? かくれんぼなんかでも いっつもふたりで隠れてたりとかぁ」

そうだっけ?
記憶を探る…

「眞一郎ぅ 隠れて湯浅さんと何してたんだぁ?」

ちょっと 野伏君?

「す、するって… 別に… なあ」

眞一郎くん 反応が期待通りだよ もう

「う、うん」

他に答えようないし

「あやしーなぁ お医者さんごっこでもしてたんじゃあ…」

「してないっ!」

「うっ、うんっ! そんな事っ してないよっ!」

ああ とんでもない方向に…
お医… ダメッ 想像しちゃ ダメッ

「ふうん、そうなんだ、じゃあ、眞一郎?
 アタシとしたときのこと憶えてる?」

「えっ?」「え…」「いっ?」

うそ?
そんな事…
愛ちゃんは悪戯っぽく眞一郎くんを見つめてる
野伏君まで驚いた顔で愛ちゃんを見てる
眞一郎くん 焦りながら 必死に考えてるみたい

「待てっ、記憶にないっ」

ホッとした
気がついたら眞一郎くんの表情をじーっと見てる自分に気がついた
眞一郎くん チラとわたしを見て顔をそらした
あれ?
わたしの知らないところで結構仲良くしてたりして…
いつの間にかドキドキしてる
なんで?

「そーだっけぇ、あっれぇー?」

愛ちゃんニコニコ顔でにんまりしてる…
あっ!

「愛ちゃんっ!」

気がついたら また大きな声 何度目かな? もう

「もうっ 比呂美ちゃん 本気にしちゃダメだよっ
 一番の仲良しは比呂美ちゃんで アタシは学年も違うし
 仲がいいふたりを 羨ましく思ってたくらいなんだから…」

愛ちゃん 少し寂しそう
愛ちゃんが励ましてくれたあの夜… 思い出す
あれ、いけない まだ きちんとお礼言ってない

「あ… ごめんなさい… つい…」

はあ 眞一郎くんの事になると どうしてもゆとりがない

「でもっ、びっくりした?」

愛ちゃん コロッと表情をニコニコモードに切り替えて…
あれ ドコまでホントなのかしら

「べっ 別にっ こっ、子供の頃の話だし…」

頬の熱さが教えてくれる、言い訳は失敗してるって

「ふうん、その割には焦ってたみたいだけどなぁ、ねえ、眞一郎?」

眞一郎くんに目標変更…
ふう わたしたち いいオモチャみたい…

「そ、そうかな?」

「でもさぁ もしアタシと本当にお医者さんごっこしてたら…
 比呂美ちゃん どうする?
 今から対抗して眞一郎としてみるつもりだった? 」

思わず眞一郎くんと見つめあう
でも すぐに 俯いた
耳まで すごく 熱い

「しっ しませんっ!」

とてもお隣を見られない

「だって…、眞一郎? 残念だったねぇ…」

もう顔をあげられない 声だけ聞いてる

「い、いや、残念とかじゃなくてだな…」

眞一郎くん 声少し上ずってるよ… 何か想像してる?

「じゃあ、比呂美ちゃんは眞一郎以外の
 男の子とお医者さんごっこ、したことある?」

「あ、ありませんっ!」

また、とんでもない事を…
信じてね そんな事あるわけないんだから
わたしの視線はお隣と膝の上を行ったり来たり…

「だって、眞一郎? 安心した?」

愛ちゃんのイジワル声が聞こえてくる

「お、俺は別に… 比呂美を信じてるし…」

眞一郎くん どもってる
ホントに信じてくれてるのかな…

「ふうん、その割には嬉しそうだねぇ?」

愛ちゃんのニヤニヤ顔が思い浮かぶ

「そんな事 ないゾ 」

眞一郎くん 声 裏返りかけてるよ もう

「あれ、ごめんね比呂美ちゃん
 子供の頃の眞一郎との美しーい想い出を
 壊しちゃったかな?」

あ、俯いたままのわたしを心配してくれたのかな
子供の頃の事なのに…
何を心配してるんだろう?
本当に…
眞一郎くんを信じるって決めたのに…
こんなこととで動揺してるなんて…
それに
気のいい仲間同士の冗談…
もう少しうまく出来ないといけない
でも 今日のこれ 恥ずかしすぎる

「え? ううん… 大丈夫だよ わたしって まだまだだなって…」

「比呂美ちゃん?」

「あ、ううん… なんでもない」



タイトル未定2
へつづく…
ツールボックス

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