Amour et trois generation jour pluvieux


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「はい。それでは2‐Bの文化祭の出展は、コスプレ喫茶と決定します」
 真由が一度締める。不承不承、という様子がありありと見てとれる。
 L.H.R.を使用し、一ヵ月後の文化祭の出展物を討議していた。
 コスプレ喫茶を提案したのは、当然ながら男子側の意見である。女子は一斉に反発し、
更に
「だったら男子は全員メイド服着用!」
 との反撃を受け、かなり剣呑な空気になっていった。
 その時、眞一郎が誰に向けるともなく小声で呟いた。
「比呂美のメイド服か・・・・いいな」
 これを聞きつけた朋与が、邪悪な笑みと共に賛成に回り、女子陣営の説得に回り始めた。
 聞こえていない比呂美はかなり積極的に反対の立場をを取っていたが、朋与から何やら
耳打ちされると、真っ赤になりながらも賛成派に転進、理論派論客を失った反対派を押し
切り、コスプレ喫茶が可決してしまった。
 勿論、男子もコスプレする事、衣装はくじ引きで決める事等条件を引き出している。
「さて、実はもう一つ、文化祭の実行委員会として、私と会合等に参加してくれる人を決
めなくてはいけませんが――」
「はぁ?それはクラス委員長と副委員長じゃねえの?」
「悪い。俺が弓道部部長掛け持ちになるんだ。代わりに誰か頼む」
 真由の隣に立っていた下平が手を合わせる。一斉のブーイング。
「はいはいはーい。推薦しまーす」
 朋与が挙手をする。真由が指名すると、朋与は再び邪悪な笑みを浮かべながら、無言で
指を指した。
 指の先には――机に突っ伏して熟睡した三代吉がいた。
 眞一郎が声を出しそうになるが、朋与は口に指を当て、黙ってろと眼で牽制した。
 この喧騒の中、一度も目を覚ます事もなく眠り続けた剛の者は、民主主義と言う名の欠
席裁判により、文化祭実行委員に指名された。



 放課後の体育館。
 バスケ部ではミニゲームが行われていた。
 比呂美にボールが渡り、前を向く。
 前には朋与がマッチアップし、両手を広げ、腰を落としてドリブルのコースを塞ぐ。
 先日の乃絵相手とは比べ物にならない圧力だった。
 比呂美が重心を右に動かす。
 朋与は動かない。
 朋与の後ろに投げるそぶりを見せる。
 朋与は動じない。
 比呂美が左から強引に抜きにかかる。
 朋与が初めて動く。瞬間、比呂美は右に体の向きを変え、右からの突破に切り替える。
「!?」
 朋与も無理矢理立て直して比呂美を捕えようとする。が、一歩間に合わず比呂美のレイ
アップが決まった。
「あぁー悔しい!後一歩だったのに!」
「でも、凄いよ。県大会でも私をノーファールで止められる人、いなかったもん」
 その比呂美を後一歩で止められるのだ。守備力に限れば朋与は県内でも上位だろう。
「でも、無理に人を止めるより、リバウンド取りに行った方がいいんじゃないかな」
「こればっかりは性格で」
 チームリバウンド王とファウル王の二冠に君臨する現キャプテンは、さ、もう一本!と
声を出す。
「・・・・でも、こうして見ると石動さんって、凄いね」
 比呂美が先日の体育を思い出す。
「え、そうだった?」
「そうだよ。朋与、もしかして気付いてないの?」
「?何?」
「・・・・朋与ってね、フェイントにほとんど引っ掛らないんだよ」
 鈍感すぎてフェイクに気付かない事、プラス、パワーに自信があるから後手を踏んでも
気にしない事が理由である。気付いていなかったらしい。
「その朋与から、石動さん、あと少しで逆を取れるところだった。と、言う事は・・・・」
「言う事は?」
「フェイントじゃなく、朋与が動く事に気が付いて向きを変えたんだと思う」
「あの一瞬でぇ~?偶然じゃない?」
「でも、今私でもフェイントじゃ逆取れなかったんだよ?」
「比呂美さんは顔に出ちゃいますもの。H.R.でも簡単に顔真っ赤に赤面させちゃって」
 朋与がニヤニヤと笑い出す。比呂美が思い出して顔を赤くする。
「仲上君にメイド服姿見せたいんでしょ?ほれ白状なさい」
「・・・・朋与、顔真っ赤と赤面は同じ意味」
 比呂美はそれだけ言い返すのが精一杯だった。



 一方、知らぬ間に文化祭実行委員に任命された三代吉は、真由と共に会議室に向かって
いた。
「・・・・誰も起してくれないとはな」
「仕方ないよ、寝てる方が悪いよ」
「氏郷だってもう少しやる気のある奴の方がよかっただろ」
「まあ、そうだけど。でも、野伏君頼まれたらやってくれそうな気がしないでもないし」
「褒めてねえよそれ。なんだよその不確定要素満載の期待」
 会議室に入ると、席が指定されていた。席に着くと、既に隣に乃絵が座っていた。
「あれ、石動さんクラス委員だったの?」
「・・・・違う」
 真由の質問に、ふくれっ面で答える。
「じゃ、何してんだよ?」
「副委員長が図書委員長と兼務だからって、替わりに選ばれた」
「石動さんが?断れなかったの?」
 乃絵が肩をすくめるのと、首を振るのを同時に行った。
「・・・・居眠りしてる間に決められた」
 真由が思わず噴出す。三代吉と乃絵がそれぞれに真由を睨みつける。
「お兄ちゃんから電話があって、つい夜更かししちゃったんだもん」
「あ、ごめんなさい。ちょっとデジャヴが・・・・」
 三代吉の視線に気付いて口を閉ざす。
「あら、三代吉君?」
 その時、後ろから三代吉を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、ルミが部屋に入ってきた所
だった。
「先輩。先輩も実行委員で?」
「バスケ部は三年生が文化祭を引き受ける伝統なのよ。どうせ設営の手伝いだけで、出展
はしないから」
 そう言うと視線を乃絵に向ける。
 だがルミは乃絵には何も言わず、
「それじゃ、また後で」
 そう言ってバスケ部の席に戻っていく。
 乃絵がぶるっと震える。
「なんか、嫌われてるみたい、私」
「気のせいだろ?」
 嫌う理由が思いつかない。
 議長(生徒会長である)が入ってきて、会議が始まった。
 会議は一回目という事もあり、普通に自己紹介と、各出展物の集計、体育会系非出展ク
ラブの役割分担など、無難な流れだった。部屋の振り分けや講堂使用の順番はこれからの
議題らしい。
「――えっと、続いて二年生は、2-A、お化け屋敷、2-B、コスプレ喫茶、2-C、演劇・・・・続
いて三年生、3-A、オブジェ制作、3-B、コスプレ喫茶・・・・」
 えっ、と三代吉と真由は顔を見合わせ、ルミを見る。
 ルミは視線に気付いたが、苦笑して肩をすくめ、首を振って見せた。
「流行ってるのか、あれ?」
「え?何?」
「あ、いや、なんでもない」
 真由の質問は適当に流し、まさしくどうでもいい疑問は忘れ去った。



 いつの間にか雨が降っていた。まだ冷たい雨ではないが、かなりの降りである。
「げ、マジかよ」
 三代吉が愚痴る。置き傘も持っていない。
「天気予報じゃ大丈夫って話だったのに」
 真由も同調しているが、こちらは傘の用意をしている。
「こりゃ相当酷いな――あれ、眞一郎?」
 昇降口に眞一郎が立っていた。やはり傘は持っていない。
「どうしたんだよ、こんな時間まで?」
「いや、図書室で調べ物してたら、降り出してな。止むのを待ってたんだが・・・・」
「ちっ、お前も傘持ってないのかよ。どうすっかな、これは――」
 そう口にした直後に、眞一郎は傘の心配をする必要がない事を三代吉は思い出した。こ
の時間ならもうバスケ部も終わっている。
「どうしたの、眞一郎くん?」
 柔らかな中高音が三代吉の更に後ろから聞こえてくる。
「あ、比呂美・・・・この雨で、傘持ってきてなくてさ・・・・」
「私、持ってるけど・・・・一本しか・・・・」
「えーっと、比呂美、それなら、その・・・・傘に入れてくれない、かな?」
「え、う、うん」
 眞一郎と比呂美は一本の傘に納まって校門を抜けていく。
「初めから待ってたくせに」
 とは三代吉。
「雨に気が付いた時からソワソワしてたくせに」
 とは朋与。ちなみに傘は持っていない。
「さて、傘も、相合傘させてくれる優しい友人もいない身としては、濡れて帰るしかない
のかね」
「真由ぅ~、一緒に帰ろ~」
 朋与は三代吉の同類になる気はないらしい。真由の傘に半ば無理やり入り込んで雨に出
て行く。
「ちょ、ちょっと朋与、もうちょっとそっちいってよ~」
――少しだけ真由に同情した。
「さて、俺もそろそろ・・・・」
「三代吉君、傘ないの?」
 振り返った。予想通り、ルミがそこにいた。
「一緒に入っていく?どうせ、安藤さんのところに行くんでしょ」
「い、嫌、俺は、別に濡れても・・・・」
 三代吉は精神的に二、三歩後退した。一緒に帰るというと、どうしても夏の日のことを
思い出す。
 ルミは悪戯っぽく、あるいは傷ついたような笑顔を見せて、
「そんなに警戒しないで。別に取って食おうってわけじゃないから」
「そうは思ってないですけど・・・・」
「どうせ私もあの店に寄るつもりだったの。だからついでと思ったのだけど・・・・そうよね、
安藤さんもいい気はしないわよね」
「あ、いや・・・・すいません、それじゃ、お言葉に甘えます」
 三代吉としてはどこか釈然としないものがあるが、とにかくもルミと相合傘で愛子の元
に向かった。



 その頃、こちらは全てに釈然として相合傘で帰宅する比呂美と眞一郎。
「ねえ、図書室で何調べてたの?」
「え?ああ、エミューの写真」
「エミュー?鳥の?」
「うん、絵本で描くのに資料がなくてさ。やっぱり、今度動物園に行ってみようかな」
「・・・・ふーん・・・・」
 眞一郎も比呂美の間の意味に気付いたらしい。
「一緒に行こうか?」
「うん」
 比呂美が身体を寄せてくる。傘の中に二人が入らないといけないと言う大義名分がある
だけに、いつもより少しだけ大胆である。
「比呂美、雨当たってないか?」
「うん、大丈夫」
 雨で人通りも少ない。眞一郎も少しだけ調子に乗ってみた。
 比呂美の肩に手を回し、二人の身体が重なるほど密着させた。
「きゃっ!?」
「これだけくっつけば、濡れないだろ?」
「・・・・もう」
 そう言いながらも、比呂美は離れようとしない。眞一郎の身体に腕を回し、更に身体を
寄り添わせる。
「おっと」
「――これだけくっつけば二人とも濡れないよね」
 かなり不自然に身体が密着している為、歩きにくい事この上ない。だがこの場合、ゆっ
くりとしか歩けないというのは、この状態がより長く続くという事で、眞一郎にとってな
んらの不都合も問題もない。
「なあ、H.R.の時、黒部さんに何言われたんだ?」
「え?」 
 思い出して、比呂美の顔がまた赤くなる。
「いや、それまでむしろ前に出て反対してたのに、急に賛成に回ったからさ」
「それは、眞一郎くんが・・・・」
「ん?俺がどうかしたのか?」
「え?あの、眞一郎くんが、私のメイド服姿、見たいって・・・・」
 最後はほとんど聞き取れない。それでも眞一郎は何の話かわかった。こちらも顔が赤く
なっていく。
「え、あ、いや、それは、つまり、その・・・・俺、そんな事言ってたのか・・・・」
「もしかして、自覚なかったの?」
「・・・・・・・・・」
 もしかして朋与以外にも聞こえた奴がいるのではないか。俺はそいつらから変態と思わ
れていないか。その時、また別の考えが浮かんだ。
「・・・・て事は、お前、俺にメイド姿見せたいのか?」
「馬鹿、知らない」
 比呂美に突き飛ばされ、眞一郎は雨の中尻餅を付いた。



「しかし、まさかコスプレ喫茶なんてうち以外に出してくる組があるとは思わなかったな」
 三代吉が言った。会話しないと間が持たないのは、この前と同じである。
「全くだわ。どんな格好させられることだか」
 ルミの声にはそれほど嫌がっているような響きはない。むしろ楽しんでいるようにさえ
聞こえる。
「どんな格好ならいいんです?」
「そうね・・・・執事ならなってみたいわ」
「そりゃ似合いそうだ」
 三代吉は即答した。ちょっと怖いくらいに似合いそうである。
「けど先輩が男装したら、軽くホストクラブみたいになりそうだ」
「そうかもね」
 ルミはフフっと笑って、自分の前髪を軽く跳ね上げて見せた。バスケを引退する前より
多少髪が伸びているが、中性的な魅力は損なわれていない。
「そうだ、三代吉君、携番交換しない?」
「俺とですか?」
「ええ。安藤さんと共通の知人は少ないから、ね?」
「別に、いいですけど」
 その場でデータを交換する。
「・・・・あ、私の名前、変えておいた方がいいわよ」
「何故です?」
「女の子って、彼氏の携帯覗くのは本能みたいなものだから、例え私の名前でも気を悪く
するといけないし」
「・・・・そんなもんですかね。とりあえず名前は変えておきます。何がいいかな」
 ルミは少し考えて
「小鳥遊(たかなし)はどうかしら?私の名前にも重なるし、この先同姓の人に会う可能
性も低いでしょ?」
「そうですね、それにしておきます」
 深く考えず、言われるままに名前を変更する。
 後になって、三代吉はこの事を後悔するのである。



 愛子は編み棒をせっせと動かしていた。
 結局、今回もセーターに挑戦している。最初はマフラーから、とも思ったが、眞一郎に
セーターを編もうとした以上、不恰好であっても三代吉にもセーターをあげたいと思うよ
うになっていた。
 とても穏やかな気分である。
 去年、眞一郎の為に編んでいた時のようなドキドキする感覚はないが、その代りとても
安心するような、落ち着いた気分で編む事が出来る。
 どちらが普通なのかはわからないが、少なくとも今、愛子は自分が幸せだと感じていた。
 窓に影が映る。愛子は毛糸と編み棒を隠し、大きめのタオルを持って入り口に駆け寄る。
「三代吉、雨、濡れなかった?これ、使う?」
「いや、大丈夫だ。高岡先輩の傘に入れてもらった」
「そうなの。高岡さんありがとう。でも、濡れちゃったんじゃない?」
「大したことはないわ。今日はここ寄るつもりだったし、それで私だけ傘を使っていたら、
酷い人みたいだもの」
 ルミは愛子からタオルを受け取ると、右肩を拭いていた。
 三代吉は自分の左肩を見る。ほとんど濡れていない。
「先輩、すいません。言ってくれればよかったのに」
「ああ、いいのよ。このくらい。気にしないで」
 それから、ルミは今川焼きを五個買い、雨の中を帰って行った。
「どうしたの?今日三代吉遅かったね」
「ああ、文化祭の実行委員押し付けられた」
「文化祭?ね、三代吉のところは何やるの?」
「コスプレ喫茶だそうだ。寝てる間に決まったんでよくは知らねえが、湯浅がメイド服を
着たがってたかららしい」
 伝言ゲームは一人目でも十分に脱線する。
「麦端って文化祭外部からの見学も出来たよね?あたしも行っていい?」
「ああ、来てくれよ。俺も今年は堂々と紹介出来る」
「うん!」
 愛子は元気よく頷いた。


                         了


ノート
氏郷真由:
麦端高校2年B組、2-Bクラス委員長
身長 158cm
家族構成 両親、姉
趣味 洋食器蒐集(ノリタケ、ミントン)
姉は元バスケ部8番

下平 広:
麦端高校2年B組、2-Bクラス副委員長兼弓道部部長
身長 152cm
家族構成 両親
趣味 サバゲー(スナイパー)、エアガン改造
名前はシモ・ヘイヘと前漢の李広将軍から。それぞれどんな人かは各自ぐぐろう
男キャラが少なすぎるので出した要員。今後もそこそこ絡むが、これ以上の出世はない
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。