雨ふり


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

負けるな比呂美たんっ! 応援SS第27弾

『雨ふり』


雨 雨 ふれ ふれ かあさんが
蛇の目でおむかえ うれしいな

かあ

すぐやむかと思ったのに
こんな日に当番なんてついてない
もう誰も残ってないし
昨日の雨で置き傘使って乾かしたままだし
かあさん、か…

携帯を取り出す
一番最初に現れるアドレス
思わず指先が動きそうになるたび
慌てて閉じる
さっきから何度も同じ事の繰り返し

念のため
と交わした携帯番号とアドレス
今だ使った事はない

『迎えに来て』
そう言えば彼はきっと来てくれる
だけどこんな事お願いしていいものだろうか?

『遅れる』
とだけメールをしようか?
今日は一緒に課題をする約束なのに
でも、遅れたところで雨が止むとは限らない

さっきから玄関で雨が弱まるのを待っているのに
全然弱くならない
いっそ、このまま走って帰ろうか?
でも、ずぶ濡れで帰ったらおば様に怒られるだろうし、
もし彼に見つかったら
『素直に迎えに来いといえ』と怒られそう
迎えに来てくれたら嬉しいけど
やっぱり悪い
一番いいのは傘を忘れた私を
彼が見つけてくれて相合傘が理想かな
でももうこんな時間だし
彼はとっくに帰ってる
なかなか漫画のようにはいかないな

時間はどんどん過ぎてゆく
あれ、校門のところ誰かがやってくる
こんな時間に来るなんて
忘れ物でもしたのかな
先生?
いや学生服だ
なんだか背格好が彼そっくり
クスッ
バカみたい
何でもかんでも彼に結び付けてしまう
こんな感じなんだろう?

雨、全然弱まらない
時計をみる
何度も伸ばした期限を先送り
彼へのメール
『迎えに来て』
『遅れる』
どちらにしよう?
表示される愛しい名前を眺て迷う

『仲上 眞一郎』

小さい頃から知っている名前
忘れられない名前
大切な名前
独り占めしたい名前



「お困りですか?」

突然近くから声がした

「え?」

顔をあげると彼がいた

「あれ?」

彼が微笑んでいる

「どうしたの?」

じゃ、さっきのはやっぱり彼?

「忘れ物してね、途中で雨が降ってきたもんで、引き返した」

? 意味がよく分からない

「ハイこれ」

彼はそういって見覚えのある折り畳み傘をかばんから出してきた

「それ、私の?」

「ああ、今朝 比呂美朝練だったろ? 
 比呂美の出たあと天気予報で雨が降るかもって言っててな」

「じゃ、眞一郎くんが持ってきてくれたの?」

「持ってきたのは俺だけど、気がついたのは母さんだ」

「おば様が?」

「ああ、『念のため持ってってやれ』ってさ」

「そう」

おば様の顔が浮かぶ
気にかけてくれることがありがたい
でも、当たり前か
なんといっても彼のお母さんなんだし

「あれ、でもどうして引き返してきたの? 
 お昼に渡してくれればよかったのに…
 ちょっと待って!
 まさか忘れ物ってこれ?
 これのためにわざわざ?」

もう、涙がでるくらい嬉しい

「あー、それはだな、雨が降らなかったら、誰かさんに
 『おせっかいな男の子ってバカみたい』って
 怒られたくなかったんでな」

彼、困ったような表情を作って言い訳してる
ワザとだ、絶対、ワザとだ
恥ずかしい、ものすごく、恥ずかしい

「…も、もうっ、ヘンな事覚えてるんだからッ」

あの時の感情がリフレイン、ホント、恥ずかしいったらない
たぶん今、耳の辺り赤いはず

「冗談、なかなか人目があると渡しにくかったんでな…」

「あ… うん、そうだね」

気を使ってくれたんだ
学校では今まで通りの約束だし…
きっと雨が降らなかったら
さりげなく玄関に戻されていたのかも

「帰ろうか」

「うん…」

何だか夢のよう
どうせ夢ならもっと素直に
それに、いまのお返しを…

「あ、あのね」

「ん?」

「私ね、忘れっぽいの」

「ん?」

「だからね、今この傘使っちゃうと明日また忘れそうなの」

「うん?」

「よろしければ ご一緒、よろしいですか?」

「え、でも」

「もう、女心が分からない?」

「えーと、俺の傘に一緒にって事?」

「うん、嫌?」

「でも」

「もう誰もいないし、傘で隠れるから、人目、気にしなくてもいいから…」

「…そうしようか」

「うん」

彼は私の顔をしばらく見つめて答えてくれた
最後は少し強引だったかな
彼の気が変わらないうちに入れてもらう

「おじゃましまーす」

「そっち、大丈夫か」

「うん、そんなにこっちに傾けてくれなくていいよ」

「でもな」

「もう少し側に寄ってもいい?」

「あ、いや」

「このままじゃ 雨に濡れて風邪を引いちゃうかも」

「ああもう、分かりました、お好きになさってください」

「あー、なんか嫌そう」

「嫌じゃないけど…」

「恥ずかしい?」

「ああ」

「大丈夫、普通にしてれば気にならないよ」

「ほんと、女心って分かんないな」

「いーの」

「俺も女心勉強しないとな」

「ダーメ」

「どうして」

「眞一郎くんは女心なんて分からなくていいの」

「さっきと違うぞ?」

「眞一郎くんは私の心だけ分かってくれればいいんだから」

「…」

「もう、何か言って」

「あー、比呂美は男心を勉強した方が…」

「こういうの、恥ずかしい?」

「ああ」

「ふーん、よくわかんない、
 だから眞一郎くんの心の中、もっと私に教えてねっ」

「…降参です」

「クスッ」







●あとからあとがき
8話まで視聴済み

微妙なふたりの距離感、学校での立場、眞ママの軟化をとりあげました
このふたりがうまくいくためには眞ママの軟化は絶対条件でしょうから…
無理なら駆け落ちでもするしかないし…
ちなみに『側に寄ってもいい?』という台詞は作者のお気に入りです。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。