「情けは人のためならず」by刹那 ◆uFyFwzytqI

 清浦刹那は警察署に近い、2階建ての民家に1人で隠れていた。幸い荒らされた形跡は無い。住人は逃げたのか、ゾンビ化したのか、無人だった。
 とりあえず、ドアや窓に鍵をかけて、即製のバリケードも作った。だがゾンビが大挙押しかけて来れば、ひとたまりもない。
 一応、武器になりそうな物も用意しているが、どこまで有効かは保証の限りでない。
 次に休息と食事だ。まだ水道が使えたので、出来るだけバケツやポリタンクに貯めておいた。食欲は無いが、お菓子を無理矢理胃に流し込んだ。
 
 (状況は明らかに人間に不利。早く何とかしないと)
 刹那が西園寺世界と別行動をとってから目に映る光景は、加速度的に悪化していた。ゾンビが増える一方、それに対抗する人間の数や組織力は、相対的に低下していく。
 人間がゾンビを1体倒す間に、ゾンビは2体増えていくような感じだ。果たして人間に反撃のチャンスが巡ってくるのか……。

 彼女は、ゾンビ・人間の両集団から距離を置いて、状況を冷静に分析していた。争乱に巻き込まれないように、1人で注意深く行動していたのは正解だったようだ。
 現に刹那がこの民家に潜んでいる事は、ゾンビにも人間にも気付かれていない。知的でクールな印象の彼女だが、この状況で更に磨きがかかっていた。
   
 (世界はちゃんとホテルで待ってくれているだろうか?)
 刹那はそれが心配だった。世界は精神的に追い詰められている。
 彼女にとっての最優先事項は、西園寺世界の安全だ。それが揺らぐ事はない。
 
 当面の課題は次の行動だ。警察署で銃を調達しようと思ったが、かなり難しい(第一、使い方を知らない)。
 それを別にしても、保護を求める無事な人間の集団。それらに群がるゾンビ共。両方に対応しようとする警官達。まさに混沌(カオス)を具現化したような光景だ。

 「あそこに飛び込むのはどう考えてもNG。となれば……」
 刹那は素早く決断した。世界をこの家に連れて立てこもる。ゾンビや人間(現状を緊急避難と解釈すれば、彼らも『敵』になり得る)に見つからなければ、数日は保つだろう。
 何より、移動に便利な物がある……。
 もちろん状況は予断を許さない。世界を捜す前に彼女自身がゾンビに襲われる危険は充分あるし、世界がすでにゾンビに……。

 (そんな事はない!)
 刹那は頭を強く振って否定した。大丈夫、世界はきっと無事でいる。
 彼女は内心の動揺を抑えながら、武器を用意して、当面の水、食料をショルダーバッグに詰める。だが、あまり多くの物を持ち運ぶのは無理だ。
 今ほど身長140?余りという、小柄な体格が恨めしいと思った事はなかった。
 
 「とりあえず、どこから捜そうか」
 体格の件を心の片隅に押し込んで、刹那は床に座って観光地図を開く。まずホテルだが、世界の情緒不安定な精神から、じっとしてくれている可能性は低い。
 もちろん、それに越したことはない。ドアを施錠して、ベッドか何かでバリケードを作って静かにしていれば、刹那が戻るまでは持ちこたえてくれるだろう。
 (でも、たぶん無理)
 彼女は首を振った。今の世界にそれだけの機転は期待できない。刹那を捜そうと、ホテルから他の場所へウロウロと彷徨っている、と考えた方が良さそうだ。

 なら、世界はどこに向かう? まず、病院、映画館、水上コテージはどうだろう。距離は近いが、それらへ行く理由がない。
 商店街やショッピングモール、博物館、消防署は、もっと考えにくい。こんな時は、中心街ほど混乱するのがセオリーだ。何より辿り着くのが難しい。
 では展望塔や射撃場はどうか。島の中心から離れているから混乱は少ないかもしれないが、距離が遠い。

 (だめ、どれも違うかもしれないし、正しいかもしれない。世界の行動パターンが読めないとは、我ながら情けない)
 刹那は歯がゆい思いを抱きながら、何とか世界の行き先を絞ろうとした。

 ……結局、消去法で考えて世界の行き先を絞った。この惨状を知らなければ彼女は警察に行こうとするだろう。
 世界が「警察」という言葉にナーバスになっていると思ったから、「銃を調達してくる」と曖昧な言い方をしたが、ハッキリ警察に行くと言えば良かった。
 世界としては、警察には近づきたくないだろうが、そんな事を言ってる場合でないと考えるだろう……いや、考えて欲しい。再会の可能性が少しでも上がる。

 これ以上迷うのは時間の無駄だ。まずは警察署の周辺を捜す。もちろんゾンビやパニック状態の人間には近づかない。どっちも危険だ。
 冷静さを保っている人や集団があれば、世界の存在を確認する。いなければ、聞き込みをする。駄目で元々だ。
 それで見つからなければ、ホテルに行く。後は、捜索エリアを徐々に周辺に広げる。世界がみつかるまで、ずっと。

 「では、捜索開始。世界、無事でいて」
 荷物を背負うと、普段の抑揚に欠ける口調よりも、少し思いを込めたアクセントで呟く。それは、刹那の世界に対する強い絆を表す、確固たる意志が込められていた。
 
 刹那は2階の窓から出るつもりだった。ドアから出るにはバリケードを撤去しないといけない。疲れるし時間が惜しい。
 それに世界をここに連れてくる時、ゾンビの侵入を防ぎながらバリケードを再構築するのは、自分の体格から無理と判断していた。
  
 そして、窓辺に寄った時、
 「だから、こっち来ないでって言ってるでしょー!」
 と、喧騒の中から一際甲高い声が聞こえた。
 
 見れば少し離れた道路で、30歳前後の、乳児を背負った母親(だろう)と、5歳ぐらいの男の子が十数体のゾンビに追われていた。観光に来た日本人親子らしい。
 今の所、ゾンビの間を必死に逃げ回っているが、だいぶ疲れているようだ。男の子は軽快なフットワークでゾンビの足元をすり抜ける。乳児は火がついたように泣き叫んでいた。
 (駄目、あのままじゃゾンビに襲われる)
 刹那は、これまでの経験から、ゾンビは音によく反応すると学んでいた。母親のヒステリーと乳児の泣き声は、ゾンビを誘導するだけだ。
 
 「どうする……」
 刹那は迷った。人情としては、3人を助けるべきだろう。この家に連れ込めばいい。
 だが、そうすれば世界と共に潜伏するプランはほぼ確実に崩れる。動き出す前からイレギュラーが発生するとは、何と幸先の悪い展開だ。

 (世界の幸せを叶えるのが、こんなに大変とは思わなかった)
 溜め息をつく。次の瞬間、窓を開け放ち屋根を素早く下り、地面に向かってジャンプ、着地した。石造りの道が刹那の両脚に強く響く。それを無視して、母子連れに向かった。
 彼女の右手には刃渡り30?ほどの鉈、左手には布の塊が抱えられていた。

 刹那の身長では、ゾンビの頭に届かない。だから彼女はゾンビの行動力を奪う方法で挑んだ。
 刹那は鉈を振りかぶり、ゾンビの膝に叩きつけた。膝を破壊されたゾンビはその場に倒れる。たとえ殺せなくても、立ち上がれなければ、まさに這うような動きしかできない。
 ゾンビの膝を集中攻撃する戦法は当たりだった。そして、何体目かのゾンビを這わせた時、刹那は母子の目の前にいた。

 「大丈夫ですか?」
 「え、ええ。ありがとう……」
 母親は唖然とした面持ちで刹那を見ていた。意外すぎる事態にヒステリーも収まったようだ。母親につられてか、背中の乳児も泣き止んでいる。
 「おぉー、アクション仮面より強くて、しょうらいゆうぼーなカワイイ美少女が助けてくれるなんて、すごい奇跡だゾー!」
 「……そう」
 男の子の口から思いもよらない、大人びた発言が出て刹那は面食らう。だが、背後から聞こえる呻き声に、我に返った。呑気に世間話をしている場合じゃない。

 「私について来て、あの家まで逃げて下さい」
 振り向きざま、ゾンビの膝に鉈を叩きつけながら刹那は母親に言った。一時的だが、刹那が潜んでいた民家まで、地面に這いつくばっているゾンビしかいない。
 奴らの間を走り抜けさえすれば、どうにかなりそうだった。
 「は、はあ、ってうえぇぇっ!? ちょっと、そんなの無理よぉ。」
 母親は情けない声を出す。確かにゾンビが這う地面を通りたい人間などいないだろうが……。

 (よくこれまで生き残っていられたものだ)
 たった今這いつくばらせたゾンビの頭に、鉈を叩きつけながら――トドメは刺せる時に刺しておく――刹那は内心呆れていた。
 いや、今はそんな事を考える時間も惜しい。立つ、這うという状態に関係なく、ゾンビは頭を破壊されるまで人間を襲うのを止めない。それに、立っているゾンビが集まりつつある。
 「時間がありません、行きますよ。でないとあなたも、2人のお子さんも奴らの餌食になるだけです」

 「うっ……!」
 母親に対する最強の殺し文句を言って、刹那は民家へ走り出した。這うゾンビに掴まれないように足元に注意する。
 チラリと背後に視線を向けた。恐怖と必死に戦いながら母親がついてくる。男の子の方は、アトラクションか何かのように楽しんでいるかのようだ。
 (逞しい子……)
 
 4人は民家の前に到着した。母親がドアを開けようとするが、もちろん開かない。
 「ちょっと、ドア開かないわよ。どうするの?」
 母親がうろたえた声を出す。
 「ここから入ります」
 刹那が落ち着いた口調で言いながら鉈を叩きつけると、ガシャンと大きな音を立てて両開きの窓ガラスが割れた。

 「キャッ! 器物損壊」 「緊急避難です」
 刹那は割れた所から手を入れて鍵を開けると、左手に持っていた布を窓枠から床に拡げた。ガラス片で怪我しないための配慮だ。
 「どうぞ、入って下さい」
 刹那はゾンビに相対しながら、母親に言った。
 「はあ……」「どーしたかーちゃん、ファーストレディだろ、あ、もしかしておケツでかくて入んない〜?」
 どんな神経をしているのか、男の子はこんな状況で母親を茶化している。
 「それを言うならレディファーストでしょ!」
 ゾンビに対する恐怖というより、男の子(長男?)への対抗意識から、母親は窓から家に入ろうとした。
 
 「ああ〜、こんな事ならもっと運動しとくんだった〜」
 「分かりましたから急いで下さい」
 這ってきたゾンビの頭を砕きながら刹那は言った。母親が入り、次に男の子を母親が抱え入れれば――。

 「よーし、オラも入ったゾ。後はねーちゃんだけだゾ!」
 「意外ね、でも迅速な行動は歓迎する」
 刹那は内心少し驚いた。母親に似ず、男の子は自力でさっさと入ったらしい。最後にゾンビの膝を一撃してから、刹那も室内に飛び込んで、再び窓を施錠した。
 「で、これからどうするの?」
 母親は男の子を足元に連れながら、刹那に尋ねた。とりあえず建物に逃げ込んだが、ゾンビの脅威は去っていない。奴らは割れたガラスの間から手を突き出している。

 「ここから逃げます」 
 「どうやって?」
 「これを使って下さい」
 刹那はゾンビを警戒しながら、奥のドアを開けて母子を中に入れた。そこは木製のガレージで、1台の小型車が止めてあった。車体に小さく「EV」と書いてある。

 「電気自動車です。運転そのものはガソリン車と同じ筈ですが、運転免許は持ってますか?」
 「一応、ペーパーだけど」
 「充分です。皆さんはこれに乗って安全な所に避難して下さい。車には水や食料をできるだけ積んであります。それと、警察署周辺は危険です。また、ゾンビは音に敏感で……」

 (こんな時に、赤の他人にここまでする義理は無いのに、私は甘い)
 本来は刹那と世界が民家から逃げる事態に備えての用意だったが、「自分の甘さ」から母子連れに提供することになってしまった。
 しかも、ゾンビ対策のレクチャーというサービス付きだ。それなら、こちらから頼み事をしてもいいだろう。

 「ふむふむ……えーと、色々教えてくれて有り難いんだけど、あなたはどうするの?」
 「私の名前は清浦刹那です。今更ですが、よろしくお願いします。そして、これが友人の西園寺世界です」
 刹那はポケットに入れていた世界の写真を母親に見せた。
 「は、はあ、私は野原みさえです。で、長男のしんのすけと、妹のひまわりです。それで、その西園寺さんが何か?」
 母親――野原みさえ――は、謎の恩人(?)の急な自己紹介に面食らいながら、自分たちも名乗った。

 「逃げながらでいいですから、世界を捜してください。そして、もし見つけたら、私の携帯に連絡して下さい」
 刹那は自分の携帯番号を書いたメモをみさえに渡した。
 だが、内心あまり期待していなかった。なぜか携帯が世界に繋がらない。ただの混線ならいいのだが、最悪、基地局(アンテナ)が破損している可能性がある。

 「ごめんね、私携帯持ってきてないの。ダンナなら持ってるんだけど……そうだ! あなた、こんな人見なかった!? 名前は野原ひろしって言って、白い犬を連れて……」
 みさえは、今の今まで忘れていた野原ひろしとシロの容姿や服装を、刹那に教える。だが、刹那に見覚えは無かった。

 「いいえ、残念ながら見ていません。それなら、私も野原さんの御主人と飼い犬を捜してあげます。もし見つかれば、御主人にあなた達の無事を伝えてあげます。
それまでは安全な所に隠れていると良いです」
 「ええ、ありがとう。でも、私達も夫を捜さなきゃ……」
 さすがにみさえは心配そうな表情をする。刹那はみさえの顔をまっすぐに見つめて言った。
 
 「みさえさん、あなたの御主人は、あなたが夫より子供達の安全を優先して、それを許さないような人ですか?」
 「え……それは……そうね! あの人はそんな人じゃない! きっと理解してくれるわ!」
 みさえは目の前のモヤモヤがパッと晴れたような顔になった。刹那はそれを見てかすかに微笑む。
 「では大丈夫です。再会した時には、御主人はきっとお子さんを守り抜いたみさえさんに、尽きない感謝をすることでしょう」
 「ありがとう、清浦さん……」
 みさえは感極まっているようだ。
 「かーちゃん、せかいっていうせつなちゃんの美少女フレンドをさがしてあげなくちゃダメだゾ。女と女の約束だゾ」
 しんのすけが気の利いた突っ込みを入れる。

 「わ、分かってるわよ言われなくたって。ママはそんな薄情じゃありません!」
 みさえがムキになってしんのすけに反論した時、ガシャッと何かが外れて落ちる音がした。
 (ゾンビが入ってくる!)
 もう時間がない。刹那は「早く乗って下さい」とみさえ達を強引に車に押し込んだ。

 「清浦さんも一緒に逃げましょうよ。その方が安全よ」
 みさえが提案する。しかし、刹那はかぶりを振った。
 「私はこの辺りで世界を捜します。それに、一緒に逃げたら御主人を捜す『目』が減りますよ。それは私にとっても同じです。世界を捜して下さい」
 
 「あ、そうか、忘れてた。御免ね……」
 「お気になさらずに。では、幸運を」
 刹那は横引きのガレージシャッターを開けた。奇跡的にゾンビはいなかった。
 「あなたもね。清浦さん、ありがとう」
 みさえはニッコリ笑ってエンジンをかける。電気自動車だからエンジン音は非常に静かだ。これならゾンビの注目を集めるリスクも少ないだろう。
 去っていく電気自動車を見送ると、刹那は注意深くガレージの裏口から裏通りに出た。獲物の人間がいないからか、ゾンビは見あたらない。

 もう民家の中はゾンビだらけだろう。いずれはこの裏通りに溢れるかもしれない。
 (予定が完全に狂ってしまった)
 世界を見つけても、隠れる場所を新しく探さなければならなくなった。だが、不思議と不快感は湧いてこない。

 「情けは人のためならず」
 ポツリと呟く。野原一家にかけた情けが、何かの巡り合わせで返ってくるのなら、それは世界に対してであって欲しい。
 右手の鉈の感触を確かめると、刹那は捜索を開始した。サングラスはかけない。今は人目を気にしている場合ではないのだ。
 
 ――30分ほど捜したが、世界はみつからない。行き当たりばったりでは、やはり無理がある。携帯の時計は13時50分を指していた。
 刹那は思い切って、警察署に向かった。近くで一番人が多い場所――人間とゾンビの戦いが続いている場所――だからだ。 
 警察の建物が見える所に出た。民家から見ていた時と変わらず、人間側の抵抗が続いていた。ゾンビに見つからないよう注意しながら、状況を見守る。

 警官がパトカー等の車両で警察署の前面にバリケードを作り、ゾンビに向かって発砲している。一部民間人も協力して銃やバットのような物でゾンビと戦っていた。
 時折、ゾンビに追われた無事な人が、老若男女問わずバリケードの内側に転がり込むように入っていく。
 TVクルーと思しき人々が、彼らなりの戦いなのだろう、必死に実況していた。ここは安全です、とでも呼びかけているのだろうか。
 時折、カメラがゾンビの方を向く。カメラに刹那が映されている気もしたが、状況把握の方が大事だ。世界も自分も、まさか国際指名手配されている訳でもないだろう。
 どうやら、警察署は辛うじて、人間の領域として確保されているようだった。

 この光景を見て、刹那は自分の気持ちに変化が起きているのを自覚した。
 みさえ達を助ける前は「混沌(カオス)を具現化したような光景」と思っていたが、今は違う。人々が共通の敵を前に結束している、勇気と献身の具現化の光景だった。
 (世界のために、信頼できる人達と出会えたら、行動を共にするのも悪くない。少なくともこの地獄から脱出するまでは)  

 刹那は、警察署周辺の捜索を再開することにした。見つからなければ、一度署内に入り、世界がいるかどうか確認する。
 もし居なかったら、当初の計画通りに捜索範囲を拡げるつもりだ。

 刹那の世界を守る気持ちに変化は無い。ただ、そこに他者の協力を得て、こちらからも協力を惜しまない、という流儀が新たに加わった。

【G−05(携帯電話は不通。原因不明)/路上/1日目・日中】

【清浦刹那@SchoolDays】
 [状態]:疲労(小)。世界を守る責任感。他人との協調。
 [服装]:目立たないような服。
 [装備]:刃渡り30?の鉈(革ベルト鞘を腰に着用済み)
 [道具]:ショルダーバッグ。日用品(パスポート、携帯電話、500mlペットボトル×2、観光ガイド兼地図)。
      非常用セット×2(1セットにブロック状の固形食糧×9個(3日分)、150ml飲料水パック×6個)。 2m四方の防寒・保温シート×2。
 [思考]
  1:西園寺世界を見つけて守る。
  2:世界を守るためなら、他人と協力してもいい。
  3:野原ひろしとシロを捜す。見つかればみさえ達の無事を伝える。 
  
 [備考]
  1:野原しんのすけ、みさえ、ひまわり、ひろし、シロの容姿や服装を把握しています。
  2:桂言葉がセント・マデリーナ島にいるのを知りません。

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
 [状態]:疲労(小)、安心
 [服装]: いつもの夏服
 [装備]: なし
 [道具]: なし
 [思考]
  1:みさえに付いていく。
  2:ひろしとシロが心配。
  3:もう一回美少女フレンド×2(清浦刹那と西園寺世界)に会いたいゾ−。

【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
 [状態]:疲労(中)、期待と不安
 [服装]:いつもの夏服
 [装備]:傘
 [道具]:旅行バッグ(ひまわり関連用品、化粧品、日用品、観光ガイド兼地図、清浦刹那の携帯番号のメモ) 。
     電気自動車に収納している物(パン、缶詰類数日分。水用ポリタンク(20L入り)×2。アウトドア調理セット)
 [思考]
  1:警察署周辺から離れて、別の安全な場所に行く。
  2:ひろしとシロが心配。
  3:西園寺世界を捜す。 

 [備考]
  1:清浦刹那と同等のゾンビ対策の知識(ゾンビは音に敏感など)があります。冷静に対処できるかは別です。
  
【野原ひまわり@クレヨンしんちゃん】
 [状態]:健康。安心   [服装]: いつもの服  [装備]: なし  [道具]: なし  [思考] 1:?????????

 [備考] 野原家共通事項
  ※ しんのすけ達3人がどこに向かっているかは不明です。
  ※ しんのすけとみさえは、清浦刹那と西園寺世界の容姿や服装を把握しています。
  ※ 野原ひろしとシロは無事ですが、しんのすけ達はその事実も居場所も知りません。
  ※ 電気自動車のスタイルや性能は三菱「i MiEV(アイ・ミーブ)」と同じです。バッテリーの残量は8割(走行距離100km程度)です。
  ※ ホテル3階、非常階段に近い部屋の壁に「警察署に行く」という伝言が書かれています。


 桂言葉も清浦刹那と同様、無人の民家にいた。ただし言葉の場合、ゾンビから隠れるためではなく、誠(の首)と2人きりの時間を重ねるためだ。
 周辺住民はどこかへ逃げ出したのか、人の気配がない。ゾンビもより多くの獲物を追ったらしく、見つからなかった。ここは島内のエアポケットになっているらしい。 

 「うふふ、誠君。また2人きりになれて私は嬉しいです」
 誠(の首)は、病院で手に入れたソフトクーラーボックスに保冷剤を大量に敷き詰めて、大切に保存してある。とりあえず半日は保つだろう。
 言葉の感覚では、島の現状がどうなっていようと、「誠」と一緒にいられれば満足なのだ。それを邪魔する存在は、誰であろうと容赦なく排除する。シンプルな基準だった。  

 「それにしても、事実は小説より奇なりと言いますが、こんな事もあるんですね、ちょっと意外です。あ、これなんかいいかも……」
 言葉は「誠」に話しかけながら、クローゼットを物色して、病院のパジャマから自分に合う服に着替えていた。一応、活動的なタイプを選んである。
 さらに、冷蔵庫を開けて、適当な飲み物と料理を用意した。「誠」の分まで。
 
 テレビをつけて、リビングテーブルにソフトクーラーボックスと飲み物、料理を並べると、ソファに腰掛ける。中々良い座り心地だ。
 「ほら、誠君。島中がゾンビで一杯なんですって。噛まれた人もあんな風にゾンビになって、人を襲うんですよ。あそこは……警察みたいですね」
 言葉は食事をつまみながら、返事をする筈もない「誠」に語りかけた。と、不意に残念そうな顔をする。
 「ああ、こうなると分かっていたら、誠君を全部持ってくれば良かったです。それなら誠君がもう一度動いてくれたかも知れないのに」
 彼女は心底残念そうに呟く。
 物静かな口調でありながら、語る内容はもう取り返しのつかない精神的崩壊を起こしているとしか思えないものだった。

 テレビを見るのもつまらなくなったので消そうとした時、
 「え、今一瞬誰か……」 
 言葉はここにいない筈の、見覚えのある顔が画面に映った気がした。何かゾンビの群れの奥に……。

 再びカメラがリポーターからゾンビに被写体を映した時、言葉は今度こそ見逃さなかった。
 「清浦さん!? どうしてここに?」
 言葉はさすがに意外さを隠せなかった。しかし、次に言葉の口から漏れたのは、聞く者の心を凍りつかせるような笑い声だった。

 「うふフ府ふ腐……。なるほど、こういう事だったんですね」
 言葉は唇に笑みを張り付かせたまま、暗く美しい瞳で刹那の顔を突き刺さんばかりに凝視する。カメラが再びリポーターを映した時、言葉はテレビのスイッチを切った。
 「誠君、ありがとうございます。あなたが私を導いてくれたんですね。西園寺さんがいる、この島に……」
 清浦刹那がいるということは、西園寺世界もいる。言葉は女の直感を超えた確信で、状況を正確に推理していた。
 言葉は、民家を物色して、大きめのリュックサックを見つけ、水や食料をできるだけ詰め込んだ。ついでにコンパクトな寝袋も入れておいた。もちろん「誠」も。
 さらに寝室や物置も調べて、武器を見つけ出す。銃器類もあったが、彼女が気に入ったのは別の物だった。
 「えいっ、やっ、と。うん、これは使いやすくて良いですね」
 何度か試し振りをすると、言葉は満足そうに呟いた。

 彼女の手には、刃渡り50cmはありそうな山刀(マシェット)が握られていた。グリップにナックルガードがついていて握り心地も悪くない。
 ご丁寧に、日本刀で言う峰の部分にノコギリ刃までついている。かなりの逸品だ。しかも2本見つかった。
 言葉は山刀を鞘に戻して左右の腰に付けた。この家の住人はかなり本格志向らしく、上質の革手袋まで持っていた。至れり尽くせりだ。
 
 「必要な物は揃いましたね。でも、これどうしましょう……」
 彼女の目の前には拳銃があった。形状はいわゆるオートマチックで、重さは山刀と同じ1kg超程度のようだ。
 しかし、言葉には銃のことは何も分からなかった。ホラーは見るがアクション映画はほとんど見ない。拳銃とライフルの区別さえつけられない程だ。
 
 「まあ、邪魔になる程大きくもないですし、何かの役に立つかも知れませんね」
 結局、拳銃も持っていくことにした。拳銃を、収納する袋(ホルスター)に入れて装着しようとしたが、ストラップが妙に複雑で付け方が分からない。
 試行錯誤の結果、どうやら脇の下に吊るすタイプ(ショルダーホルスター)だと気付いた。
 ようやく体にフィットするようにストラップを調節すると、弾の入った棒(マガジン)も何本か上着のポケットに仕舞った。

 「さあ誠君、行きましょうか。西園寺さんとの決着をつけに……」
 リュックサックの底に収めてある「誠」に声をかけて、言葉は外に出る。
 
 人の姿をした狂気が解き放たれた。
 
【G−03/路上/1日目・日中】

【桂言葉@SchoolDays】
 [状態]:健康。擦り傷。冷静。強い狂気。
 [服装]:活動的な服装。
 [装備]:山刀(ノコギリ刃付き、刃渡り50cm)×2。コルト・ガバメント(45ACP弾。7/7発。予備35発)。
 [道具]:ショルダーバッグ(誠の頭入りソフトクーラーボックス。 500mlペットボトル×3。食料6食分。寝袋)
 [思考]
  1:西園寺世界と「決着」をつける。邪魔者は全て排除する。
  2:誠君(ソフトクーラーボックス)を定期的(約10時間毎)に冷やして保存する。

 [備考]
  1:警察署に向かっています。
  2:言葉の刃物の技能は、少なくとも人並み以上です。。
  3:銃器類については、引き金を引けば弾が出る、という程度の認識しかありません。

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最終更新:2009年07月29日 22:51