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 全ての人が、人であるために。   ◆WB4ih.bmzelP

アメリカ合衆国西海岸、ちょうどカリフォルニアの辺りの沖から500kmほど行った
所にセント・マデリーナ島という小さな島がある。世間ではあまり有名ではないものの
風光明媚な観光地であり、その質はハワイやグアム、マイアミなどといった
世界有数の観光地と比較しても全く劣ることはない。
しかし、それほど質がいいならば世界的に名が知られていてもおかしくはないのだが、
セント・マデリーナ島の近く、と言っても結構離れているのだが、ハワイがあり、
旅行会社はこぞってハワイを薦め、更に人間には有名な観光地に行ったということを
自慢したくなるというつまらない癖がある。ハワイに行った、と話せば周囲の人間は
羨むだろう。しかし、セント・マデリーナ島に行ったと話したところで返って来る反応は恐らく
「セント・マデリーナ島?何処そこ?」
であろう。しかし、幸運にもこの島のことを知り、訪れることが出来た観光客が抱く感想は決まっている。

人が少なくて快適だと。しかし、それは観光で来た人間の話であり、仕事でやって来た
人間にとっては、檻に入れられ目の前に魚か或いは鰹節を置かれた猫と同じような
気持ちになる。女性、しかも日本人でありながらFBIに所属するうら若き刑事である
南空ナオミもその一人であった。彼女は、自分がこれまで追って来たある事件の重要参考人が
この島に潜伏しているとの情報をある筋から入手し、それを追って来たのだった。

「それにしても…何もこんな島に隠れなくてもいいと思うんだけど…」
警察署の中の署長室、ソファに腰掛けて用意されたコーヒーをすすりつつナオミはぼやく。
彼女は、この島に降り立った後真っ先に警察署へと向かい、簡単な手続きを踏まえた後、
署長に自分の身分とこの島にやって来た目的を話した。
人当たりのいいこの島の住人らしく、署長は笑顔で出迎えてくれた。ナオミが美人だというのも多々あるかもしれないが。

挨拶もそこそこにナオミは最近一か月以内にこの島に出入りした人間のリストを要求した。
彼は即座に空港、港に電話をかけ、ナオミの要求をそのまま先方へと伝える。
しかし、観光地であるためにそれなりに人の出入りは多く、まとめるには時間がかかるとのことだ。
次に彼は給湯室に内線電話をかけ、コーヒーを用意するように連絡した。5分程経ち、
職員がコーヒーの入ったポットを持って来た。…コーヒーメーカーごと。

ナオミは失笑した。おかわり自由ということだろう。
コーヒーメーカーのプラグをコンセントにつなぎ、ナオミと署長に一礼して部屋を後にする職員。
しかし、彼はコーヒーカップは用意したものの、それをコーヒーに注いで行かなかった。
普通はそこまでやるだろう。訝しげな顔で彼が出て行ったドアの方へと目を向けるナオミ。
署長はそんなナオミの様子に、微笑みながら語り始める。
「この警察署では来客があった時、カップにコーヒーを注ぐのは私の役目でしてね。
一番上に立つ人間自らもてなすことで、『開かれた警察』をアピールしているんですよ」

なるほど、と彼女は感心した。世界の警察全てがこうならば犯罪の発生率はもっと減るのではないか。
世界の多くの人々が警察を身近に感じ、信頼し、頼りにする。そしてそれに応える警察。
そんな理想的な関係が生まれるのではないだろうか。…今はまだ叶わないかも知れないが。

空港と港から資料が届くまでの間、2人は適当に他愛のない雑談をした。話題が犯罪などの
重い物に及ぶことはなく、この島の空気を表すかの如くに明るい話題で盛り上がった。

さて、ナオミは情報提供者からこの島には何か表沙汰に出来ない事情があると聞いていて、
FBIの捜査官として気にしていた。それを上司に話した時、あるものを渡された。
デザートイーグル.50AEとそのマガジン5本だ。この拳銃は世界最高の威力を持つ50AE弾を発射出来る。

一部では、この拳銃と弾丸で殺せない生き物はいないと囁かれているほどだ。
しかし、何故それほど強力な拳銃を渡すのだろう。あの島にはジュラシック・パークが
あるとでもいうつもりだろうか。それに、自分には警察に入った時から相棒として
使っている拳銃、ブローニング・ハイパワーがある。
それを上司に話したところ、ただ一言
「何も言わずに持って行きなさい」
と言われた。ナオミはまだ不審に思っていたが、お守りとして持って行くことにした。

あの上司は何かを知っている。しかし、それが何かは解らない。解れば苦労しない。
そんな時、彼女の頭の中に一つの考えが浮かぶ。目の前にいるこの初老の男性。

この島の司法と正義の象徴たる警察署のトップならば或いは何か知っているのではないか。
ナオミは、これまでの明るい雰囲気を壊すのを覚悟で署長に問いただした。
「署長さん。この島には何か『いわく』があるって聞いたんですが、何かご存じないですか?」

しかし彼はそんなナオミの唐突な質問にも動じることなく、笑顔で返すのだった。
「いいえ。この島にはそんなものはありませんし、あったとしても私が放っておかないでしょう」
署長のその言葉を聞き、愛想笑いを浮かべるナオミ。署長は何も知らなかった。
いや、むしろそのいわくが警察に知られてはならないものだったとしたらどうだろうか?
例えば…マフィアの武器工場があり、それを検挙しようとすればその事実を
白日の元に晒すことになり、観光地としては致命的な痛手を被ることになる。

この島は観光が主産業だ。そうなれば、恐らくこの島の経済は立ち行かなくなるだろう。
FBIはその事実を掴んでいても実行することによるデメリットが大きすぎるために
傍観するしかないという状況なのだろう。
ナオミがしばらくそんなことを考えていると、部屋のコピーファクシミリからピー、と音がして
ものすごい量のプリントが印刷され始めた。

全て印刷し終えるのに3分程掛かり、署長がたった今印刷されたばかりの
プリントの山をナオミの前へと持って来てくれる。ナオミが、一時間程前に
要求したこの島に出入りした人間のリストだった。その高さは…15cmはあった。
しかも、一枚の書類につき、記載されているのは一人で、はっきりいって個人情報保護法に
抵触しても全くおかしくない内容だった。警察だから許されるのだが。

ナオミは書類一枚一枚に目を通して行く。その多くは他愛もない観光客であり、
彼女のこれから先の人生にて全く関係ないであろう人間たちである。
しかし、あまりにも量が多いので、ナオミが追っている人物の名前と特徴を話し、
署長にも手伝ってもらうことにした。しかし、一向に見つからない。ここでナオミは手を止める。
「…西園寺世界さん?変わった名前ね。ご両親はどんな願いを込めてこの名をつけたのかしら…」
彼女が手にした書類は、西園寺世界という女子高生の情報だった。この少女もまた、
ナオミのこれから先の人生で何の関わりのない人間の一人なのだろう。少なくとも、
ナオミはこの時点ではそう思っていた。そしてまた書類を読み進める。
15枚程読み進め、再び手を止める。
「この人、あの中田英覚の娘じゃない…どうしてこの島に?それにこの内容…」
次に彼女が手にした書類の情報は、中田美香という女性のもので、日本の大物政治家、
中田英覚の実の娘であり、つい最近エリート銀行員である結城美智夫という男性と
結婚したのだが、この書類によれば一緒にやって来たのは賀来巌という神父であった。

「結婚直後にもう不倫?しかも神父と…政治家の娘は世間知らずなのかしら…」
そしてまた、書類を読み進める。めくっては隣りに置きを繰り返し、5分程経ったところで
3枚の書類を手に取ったナオミは思わず吹き出してしまう。
「こんな偶然もあるのね…」
彼女が手に取っていたのは、日本の東京葛飾区の警察署に勤務する警官、両津勘吉、左近寺龍之介、ボルボ西郷の書類だった。

特に両津は日本警察の中でもトラブルメーカーとして知られていて、その噂は
太平洋を隔てたアメリカ合衆国FBIにも届いていた。
その噂を耳にしたナオミは彼に興味を持ち、前々から一度会ってみたいと思っていたのだ。
まさかこの島で一緒になるとは思っていなかった。
「両津勘吉さんね…ご縁があればお会いしましょう」

そうつぶやき、ナオミはまた再び書類の山を少しずつ減じていくが、一向に目的の人物のものにはありつけない。
そして、部屋の大時計が正午を告げる鐘を鳴らした直後、遂に書類の山は片付いた。
が、結局目的の人物の書類は見つからなかった。署長もあまりの書類の多さに少々疲れているようで、
ソファの上でくたびれていた。ナオミはそんな彼に労いの言葉をかける。
「署長さん、お疲れ様です。後片付けは私がやっておきますから休んでいてください」

署長は今度は笑顔を消し、ナオミに答えた。
「そうしたいのは山々なんですが…どうやら事件のようですな」
そう言われてみると先程から一階の方が騒がしい。何かあったのは確かなようだ。
ナオミは懐のブローニング・ハイパワーの安全装置を外し、一階へと向かう。
デザートイーグルはそのまま懐の中にしておいた。
署長も部屋に飾ってあったサブマシンガン、
イングラムを手に取り、デスクからマガジンを取り出し、銃に命を吹き込む。

2人は階段をおり、一階へと降り立つ。それにしても、この騒ぎならば署長に連絡を入れるだろう。
それとも、それが出来ない程混乱しているとでもいうのだろうか。
署長は未だパニックの収まらない署員や民間人をなだめるのに終始していて、
事態を把握するにはナオミ一人で動く必要があった。どうやら、この騒動の中心は警察署の
正面玄関にあるようだった。混乱の中、慌だしく動く人込みをかき分け、ナオミは正面玄関へとたどり着く。

その刹那、彼女は言葉を失った。バリケードを展開し、銃を撃ち続ける警官隊の先にあるもの。
それは…人間の姿をした得体の知れない異形の集団だった。外見は腐り果てた死体そのものだが、
直立し、少しずつこちらにやって来る。しかも、信じられないことにマスコミがこの様子をリポートしていた。
特ダネ狙いは結構だがはっきりいってこんな映像を見せたらパニックを煽るだけだということに
気付かないマスコミにナオミは苛立ちを覚えたが、今はそれどころではなかった。
リビングデッドの集団は、少しずつ数を増やしながらこちらへ向かって来る。
この分ではいずれバリケードは突破される。私が加勢したところでそれは変わらない。だけど―!
ナオミは警察の人間としての正義感から、逃げるのではなく、この集団と戦う道を選んだ。

警官隊に加わり、懐のブローニング・ハイパワーを取り出し、目の前の異形に銃口を向ける。
そして、そのトリガーを弾こうとしたまさにその時だった。
「止めておいたほうがいい。これから先生き延びたかったらここは彼らに任せるのが得策だ」
何者かに声を掛けられる。しかも、この異常事態においてひどく冷静な口調だった。
驚いて後ろを振り返ると、そこに立っていたのはまだ20歳くらいの青年だった。

ナオミは、自分の正義に基づいた、あの異形との戦いを止められたことに怒りを露わにし、
目の前の青年に食ってかかった。
しかし、そんなナオミの激昂にも全く動じることもなく、青年はただ冷静に語る。
ここはいずれ突破される。そうなればナオミが撃った弾は無駄弾だ。あいつら、
だんだんと数を増やしているようだから。それならばその弾を危機に陥っている人を
救うために使ったほうがよほど有効だと。
そして青年は最後にこう締めくくった。

「弱きものを救うことこそに、警察の存在意義はあると思いますけど」
ナオミは面食らった。自分が警察に入った理由。世界中にはびこる犯罪。それに怯える人々。
彼女はその人たちを少しでも救うことが出来たらという純然たる想いから警察に入った。
では…ここであの異形たちに銃を撃ち続けることがそれに繋がるかを考えると…否と言うしかない。
青年の言うように、異形は今この瞬間にもその数を増やしているのだから。
「…解ったわ。それにしてもあなた、随分冷静ね。見たところ民間人みたいだけど」

「あ、自己紹介してませんでしたね。俺は一樹守。雑誌編集者をやってます。
冷静なのは、多分『あの体験』のおかげです。それはまたそのうち話しますから」
目の前の青年、一樹を冷静たらしめる経験がどういうものなのかナオミは気になった。
が、ここで問い詰めても話してくれそうにない。それに彼自身そのうち話すと言っている。
「自己紹介ありがとう。私は南空ナオミ。FBIの刑事をやってます。それで、これからどうしましょうか?」

「僕はあなたに着いていきます。民間人が警察に指示するのもおかしな話でしょう」
確かに、とナオミは苦笑した。こういう非常事態の場合、率先して収拾に当たらなければならないのは
警察であり、民間人が警察を指揮するなど考えられないことだった。
「じゃあこの警察署の裏口から脱出しましょう。ここは…もう無理そうだから」

バリケードの方を向くと、異形の軍団がバリケードのすぐ手前まで近付いていて、
今はまだ保ってはいるが突破されるのは時間の問題だった。
一気に裏口めがけて走り出す2人。だいたい半分程来たところで一樹は立ち止まり、あるものを拾う。
ナオミには見覚えのあるものだった。署長が持っていたサブマシンガン、イングラムだ。
しかし、当の署長の姿は何処にもない。周りの人間達は今もパニックの真っ直中で、
聞くだけ無駄だろうと2人は判断した。イングラムを携えて2人は再び走り出す。

そして、裏口のドアを蹴破り、外へと脱出する。正面の騒ぎに比べて裏口は静かなものだった。

異形の姿も見当たらない。ひとまず落ち着き、息を整える。
「それで、どうやって危機に陥っている人を探すんですか?闇雲に動くだけじゃ私たちだって危ないでしょう?」
唐突にナオミが切り出す。しかし、一樹はその問いに不敵に笑い、ナオミに逆に切り返した。
「俺には、雑誌編集者としての足、知恵、そして『あの島』での経験があります。
それと、南空さんの刑事としてのスキル、経験をあわせればいいんです」
一樹の言うことは抽象的で具体性がない。ナオミは解りやすく説明を求めた。
それに対して一樹は説明を始める。編集者として様々な情報を収集するための行動力、
様々な壁を乗り越えるための知恵、『あの島』で手に入れた異形への対応力に
ナオミの刑事としてのスキル、つまり銃の扱い、犯人に勘付かれないための
身の潜め方、何より事件解決のための常人にはない優れた頭脳とそれを生かすための経験がある。

「あいつらに襲われたら大抵の人間は大きな悲鳴をあげるでしょう。俺達は今話した能力で
身をうまく隠しながら叫び声がした方へ駆け付ければいいんです」
正直、そんなにうまく行くとは思えなかったが、今は一樹の話すそのやり方に懸けるしかなかった。
ここでナオミは彼に切り出す。彼の話す『あの島での経験』を問いただした。

苦笑し、肩をすくめながらもゆっくりと語り出す一樹。
「夜見島、という島をご存じですか?」
ナオミにはその名前に聞き覚えがあった。不思議な事件が絶えない島だったからだ。
30年程前の話だ。夜見島近海でのフェリー座礁、海底ケーブル切断、そして何より…
一夜にして島の全住人が謎の失踪を遂げたのだ。ただ、それと一樹の体験と何の関係があるというのだろうか。

「ここから先は信じられない話になりますが…聞きますか?」
コクリと頷くナオミ。一樹は再び語り始める。去年、雑誌「アトランティス」の取材で夜見島を訪れた時、
異界に取り込まれ、そこでいろいろな謎を解き明かし、その元凶を打倒して無事現世に帰還したというのだ。
やはり信じられない話だが、実際この島にも異形は今存在しているのだ。現世でありながら。
「これで俺の話は終わりです。ところで南空さん。この島で生き残るために何か目標を定めませんか?」
唐突に切り出す一樹に戸惑うナオミ。生き残るための目標?そんなの脱出することに決まっている。

しかし、すぐに考え直す。それは目標じゃなく目的だ。何だろう…ここでナオミは閃いた。
あの異形が生まれたのには必ず何らかの理由があるはず。それを究明することだ。
そして、この惨状を未来永劫繰り返さないための方法を模索する。これがナオミの
生き延びるための目標だった。それを一樹に話す。
「刑事らしい、いい目標ですね。俺の目標は…これ以上あの異形を増やさないよう、
『全ての人が、人であるために』戦うことです」

全ての人が、人であるために。この2人の目標は違えど、この点では共通していた。
いや、この2人だけじゃない。今もこの島で人である者は心の中でこう思いながら生きているはずだ。
誰もこれ以上異形が増えて欲しいなどと望むはずがない。
それはつまり、この島に生きる全ての人に人であって欲しいと願うのと同義だ。
そして、南空ナオミと一樹守。今、この2人の若者はその願いを叶えるための戦いにその身を投じるのだった。

【G-05/警察署裏口/一日目・日中】

【南空ナオミ@DEATH NOTE】
 [状態]:冷静・疲労殆どなし
 [服装]:薄い長袖のシャツにジーンズ
 [装備]:ブローニング・ハイパワー(13/13 9mmパラべラム弾使用。予備39発
     デザートイーグル.50AE(8/8、50AE弾使用。予備弾40発)
 [道具]:FBIとしての身分証。腕時計。携帯電話。ショルダーバック 
 [思考]:1:これ以上異形を増やさないために人々を救済する。
     2:島からの脱出
 [備考]:両津勘吉、ボルボ西郷、左近寺龍之介、西園寺世界、賀来巌の容姿を把握しています。

【一樹守@SIREN2】
【状態】冷静・疲労殆どなし
【服装】SIREN2にて着ていたあの服。
【装備】イングラムM10(32/32 9mm弾使用 予備弾なし)
【道具】携帯電話、腕時計、パソコン(リュックサックの中)、手帳、リュックサック
【思考】1:全ての人が、人であるために戦う。
    2:島からの脱出

【備考】視界ジャックは現実世界につき、使えません。
    また、夜見島での経験により、それなりのサバイバル能力を獲得しています。