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さまよえる記録装置

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匿名ユーザー

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さまよえる記録装置 ◆CUPf/QTby2


殺し合いをしろって先生が言うんだ。
そんなの無理だよ。ボクはそういう構造じゃないから。
人に危害を加えられないように、プログラミングされているから。
それが、ボク――桐野ラキ(きりの・-/男子七番)――の仕様なんだ。

首輪から流れた電流は、僕の運動機能を完全に停止させたけど、
みんなが“意識”って呼んでるこの認知能力を停止させることは出来なかった。
なんだかちょっと回りくどい言い方になっちゃったかな。
つまり、ボクには、教室で倒れてから会場に運ばれるまでの記憶があるんだ。

だから、自分がされたことも、ボクはちゃんと覚えてる。
ボクには録画再生機能がついていて、ボクが見聞きしたことを
映像の形で人に見せることが出来るんだけど、
誰かがボクの録画スイッチを入れちゃったんだ。

あ、「スイッチを入れる」って言ったけど、
ボクの身体のどこかに録画ボタンがあるってわけじゃないよ。
そういう仕様だったら、誰かが間違って押しちゃうかもしれないもん。

ボクの録画用プログラムは、キーワードで起動するんだ。
キーワードは日本語の単語5つで、製造時にプログラミングされるんだけど、
ユーザーがあとで自分の好きな言葉に変えることも出来る。
でも、そのためには桐原重工にユーザー登録して、アドミン権限を取得しなきゃいけないんだ。
ボクはまだテスト段階のベータバージョンで、正規ユーザーはまだいない。
天君のお父さんやお母さん、それから千里さんは、アドミン権限を持ってるけどね。

でも、千里さんは、ボクのことがあんまり好きじゃないみたいなんだ。
嫌いとか、言われたことはないけどね。でも、顔を見てたら分かるよ。
ボクと一緒にいるときの千里さんは、あんまり楽しそうじゃないから。
ボクやきららを自分と同じクラスに編入させたのも、
ボクたちを人前に出したくなかったからじゃないのかな。
好きじゃないから。自社製品として誇れないから。信用していないから。
存在意義に疑問があるから。問題が出たときにすぐに対処しなきゃいけないから。
だから、手の届く場所に置いてるんじゃないかな。

でも、それは、千里さんが健全な証拠なんだよ。だってね――

          □ ■ □

深夜の森に放置されたボクの身体は、すぐに自由を取り戻した。
ゆっくりと身を起こし、服についた汚れを両手ではたき落とす。
ボク、きららのワンピースと同じデザインのキャミソールとショートパンツを着てきたけど、
白い服だから、汚れたら目立っちゃうんだ。虫がくっついてても嫌だし。
で、一通り身なりを整えてから、そばにあったデイパックの中身を確認した。
先生の言ってた「殺し合いをしろ」っていう話とそのカバンに関係があるのは、ボク、知ってたよ。
だって、ボクをここに運んだ人が一緒に置いていったモノだからね。

カバンの中に入っていたのは、水や携帯食といった野外活動用品一式と、下剤。
ボクは殺し合いを止めなきゃいけないけど、下剤は使えるんじゃないかな。
だって、お腹の具合が悪くなったら、殺し合いどころじゃなくなっちゃうもん。
あ、でも、使いどころには気をつけなきゃ。人間の排泄物って、雑菌だらけだから。
細菌兵器みたいな発想で利用されたりなんかしたら、大変なことになっちゃうもん。

うん、でも、そういう部分を考慮したら、人間の体ってうまく出来てるよね。
殺し合い向きっていうか。人体にとって有害なモノを、自前で生成出来るんだから。
あ、ボクがこんな黒いことを考えてるなんて、みんなには内緒だよ?
ボクは安全で可愛い愛玩用のレプリカントなんだからね。

……なんだか話が違う方向に行っちゃったね。続きを話さなきゃ。

支給品の確認を終えたボクは、夜の森をさ迷い歩いた。誰かと合流するために。
ボクは、人間の命令には逆らえない。その秘められた願望を機敏に察知して、
相手が満足するよう振舞うことが、ボクの存在理由なんだ。
だから、時と場合によっては、殺し合いの真似事をしなきゃならない。
そういう世界でしか満たされない人だって、いるんだから。

でもね、さっきも言ったけど……、
ボクは人間に危害を加えることが出来ない仕様になってるんだ。
だから、あくまで真似事だけ。後に残る怪我を負わせたり、
生命活動に影響を及ぼすような行動には、自動的にブレーキがかかるんだ。
たとえ、自身の死によってしか満たされない人が相手だったとしても、ね。

それでもボクの安全性は決して完璧なんかじゃない。
ボクの中には、殺しの真似事をするために必要なデータが入っている。
つまり、人を殺さずに済む方法。でも、それって、どうすれば人は死ぬのか、
それをちゃんと知っていなければ実行できないことなんだ。
だから、ボクの中には、殺人に関するあらゆるデータが入っている。
それが、ボクの安全性の正体なんだ。



森の中をさ迷い歩いていたボクは、こちらに近付く轟音を捕捉した。
何の音なのかはすぐに分かった。ボクは一度でも聞いた音は忘れない仕様だから。
でも、あの音なら、たとえ一度も聞いたことがなかったとしても、
なんとなく察しがついたかも知れない。だって、あれも、レプリカントの一種だから。

轟音の主が停止したのが分かる。ボクはそちらに歩を進める。
ハッチの開く音がする。ほら、やっぱり韋駄天だ、雅光君が外に出るんだ。
彼の立てる物音がする。ボクは忍び足でそちらに近付く。
雅光君を捕縛して、韋駄天を回収するために。
雅光君が声を上げる。ボクに気付いたからじゃない。
携帯電話に着信したんだ。彼の発した言葉から、相手は蝶野先生だと分かる。

あ。それってつまり、この島には携帯電話の電波が届くってこと?
それとも、雅光君が使っているのは一般的な携帯電話じゃない?
衛星電話か、もしくは桐原重工のテクノロジーによるもっと特殊なシステムか。
分からないけどね。ボクには電波を解析する機能は備わってないから。

ボクの機能、レコーダー内の記憶媒体に雅光君の声が蓄積していく。
雅光君の声は弾んでいた。学校にいるときとは全然違う。

「おうおう分かってるよ。麓山留夏は最後まで残しておくように、だろ。
 ……なるべく努力はするさ。もらった金の分は働きますよ。
 ま、こっちも桐原社長を殺せれば後はどうでもいいしな。
 ……あの女、韋駄天の経費を全面カットしやがった。
 殺さないと維持できなくなって今年中に廃棄処分だぜ?ふざけてやがる。
 ……おう!まかせとけ――」

雅光君の言葉が途切れ、緊張と戸惑いがその声に滲む。
彼は、襲われていた。両工スパナを持った夕璃菜さんに。
彼女の動きに迷いはなかった。通話状態の携帯電話を踏み潰して救難ルートを断ち、
睾丸を蹴り潰して身動きを封じ、スパナの先端で眼球を潰し、重みで頭蓋を叩き割る。

……もしこれが、私怨による私刑の類だったら、ボクは雅光君を助けただろう。
勿論、韋駄天に乗り込めないようにした上で、の話だけどね。
私怨っていうのは、雅光君ひとりがターゲットになるわけだから、
雅光君を確保する際に加害者に逃げられたとしても、何の問題もない。
人間、生きていれば誰かを殺したいほど憎むことくらいあるでしょ?
まして、雅光君はクラスメイトを殺してるんだから、恨みを買うのはむしろ自然なんだ。

でも、夕璃菜さんは違う。彼女のこの凶行は、怨恨殺人なんかじゃない。
彼女は生粋の殺人者、人殺しに享楽を見出す無差別殺人鬼だ。
この場にいたのが雅光君じゃなくても、やっぱり殺していただろう。

そしてもし、この場にいたのがボクじゃなくてきららだったなら……、
きららなら、自分の身を囮に使って雅光君を逃がすだろう。
それが、彼女の仕様なんだ。そして、彼女の限界でもある。

彼女は被害者を無視出来ない。人の死を見過ごせないんだ。
たとえ相手が凶暴な殺人鬼であっても、己の身を犠牲にしてその生命を救おうとする。
殺人鬼の命を救った結果、更に多くの人命が彼の凶行によって犠牲になる、
そんな可能性については考えられない、いや、考えることくらいは出来るよ、
『被害者』が常に清廉潔白とは限らないことだって、勿論考えられるだろう、
でもそんな『考え』は、彼女の判断には何の影響も及ぼさない。
だって、そういう仕様だから。プログラミングされていない行動は出来ないから。

そう。人命尊重っていうのは、ホントはすごく危険なことなんだ。
それが平等であればあるほどね。勿論、こんなこと、口には出さないよ。
反社会的なことや、反社会的な行為を正当化するようなことは言えないように
プログラミングされているからね。でも、たとえ、言葉に出来なくても、
コレがボクの根底に流れる思想だってことには変わりないんだ。
この思想が、ボクの仕様を作っている。そして限界を作ってしまう。

惨殺される雅光君の姿を、ボクはただ見ていることしか出来なかった。

ボクを生み出した人はきっと、人類に絶望していたんだろうな。
ボクを、っていうか、レプリカントという存在を、ね。
そうでなきゃ人間の形をした別のものなんて創らないよね。まして人間の代わりなんて。
だから、ボクらレプリカントのことを好きになれない千里さんは、健全な人だと思うんだ。



顔の潰れた雅光君の死体にも、その場に放置された凶器にも、ボクは手を触れなかった。
『犯罪現場の保全』、これもボクの仕様なんだ。
つまり、難しいことはみんな警察の人に任せます、ってこと。
ここは無法地帯、警察の人なんてどこにもいないし来てくれない、
そんなことボクだって分かっているけど、仕様には逆らえない仕様なんだ。

だからボクはまた彷徨う。ボクを制御するこの仕様、この枠の外にいる誰かを探して。



【???/一日目・深夜】

【男子七番:桐野ラキ】
【1:ボク(たち) 2:名前+さんor君(たち) 3:名前+さんor君(みんな)】
 [状態]:健康、録画中
 [装備]:女物のキャミソール&かぼちゃパンツ
 [道具]:下剤、支給品一式
 [思考・状況]
  基本思考:クラスのみんなをここから脱出させる。
  0:誰かと合流したい。
  1:犠牲者を増やさないよう行動する(したい)
 [備考欄]
  ※現在地はB-3エリア周辺のどこかです。
   早期に覚醒していたため、遠くまで移動している可能性もあります。
   具体的な場所は後続書き手の方にお任せいたします。
  ※ゲーム開始以降の可視範囲の出来事をすべて録画しています。
   ただし、再生にはキーワードが必要です。詳細はさまよえる記録装置に。



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