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そして殺人者は野に放たれる

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そして殺人者は野に放たれる ◆CUPf/QTby2


「板倉ぁ、先生は悲しいぞぉ!」

その言葉とは裏腹に、蝶野杜夫(ちょうの・もりお/2-D担任教師)は喜色満面、
卑屈だったはずの双眸は自信と精彩に満ち満ちてぎらつき、得意げにこちらを見下ろしている。
一刻も早く、この状況を覆さねば。自分にはもう、猶予などないのだから。
手足を拘束されたまま、板倉竜斗(いたくら・りゅうと/男子三番)は思案する。
しかしそれすらも許さぬとばかりに蝶野の声が意識に割り込み、彼の思考を攪拌する。

「大切な教え子が、よりによって、悪名高い過激派組織に所属していたとはなぁ。
 板倉ぁ、テロは犯罪だぞぉ? 教え子が犯罪者に成り下がるとは、実に、実に残念だ!」
「……その割には、楽しそうだな?」

板倉は冷ややかに呟いた。挑発でも侮辱でもなく、ただ率直な感想を述べただけ。
方策などない、意図すらない、それでも黙って殺されてやるつもりなどなかった。
最愛の姉を、平穏な生活を奪ったカルト組織の構成員に何か言わねば気が済まない。
しかし蝶野はにたりと笑う。その言葉を待っていたと言わんばかりに、愉悦する。

「板倉君は今でもちゃんと先生の気持ちを分かってくれるんだなぁ。先生、感激したぞ。
 ……実はだねぇ、板倉君。君に、更生の機会を用意してあげようと思っているんだよ。
 僕は教育者だ、道を誤った教え子を見限ることなんて出来ない! 当然じゃないか!」

熱弁をふるう蝶野、しかしその声は込み上げる忍び笑いを抑え込むべく濁りに濁っている。

「それで、だ。板倉君、さっきの生中継は見てくれたかな?」
「……ああ」
「先生はね、君にも殺し合いに参加してもらおうと思っているんだ」

先程の教室でのやり取りは、この視聴覚室の巨大スクリーンに映写されていた。
その映像は、板倉に不快感を与えるべく、状況に応じて切り替わる。
教室には複数の隠しカメラが仕掛けられており、プロジェクターに接続したノートパソコンを操作して
映写すべき映像を選択する者がいた。赤い髪の小柄な少女、板倉を捕えた張本人。
いや、捕えただけでは終わらなかった。名門女学院の制服に身を包んだ彼女は――

彼女――骨洞芙蘭(ほねぼら・ふらん)――の視線を背中に感じながら、
板倉は神経を逆撫でするような蝶野の声を、その言葉を、息を殺して耳に入れる。

「殺し合いを勝ち抜き、最後の一人になれば、君は無罪放免だ。
 君の資質を存分に発揮できるよう、板倉君だけ首輪を特別仕様にしてあげたよ。
 6時間に一度誰かを殺さなければ、強制的に首輪が爆発するってわけだ。
 ゲームは深夜0時にスタートする、だから朝6時までに一人、昼12時までにまた一人。
 朝6時までに5人殺しても昼12時までに一人も殺さなければ、ドカン!
 どうだいどうだい板倉君、俄然やる気が湧いてくるだろう!」
「……事実上の死刑宣告というわけか」
「人聞きの悪いことを言ってくれるねえ。僕は君に恩赦を勝ち取るチャンスをあげたんだよ?
 法の裁きを受ければ確実に死刑になるっていうのに、ねえ。実に寛大な処置じゃないかぁ」

蝶野はククっと喉を鳴らす。
板倉は理解した。利用されるのだ、殺人機械として。神楽のような立ち回りを期待されて。
そして、やはりこれは死刑宣告、恩赦など決して存在しない。
たとえ優勝台に辿り着いても、自分のような危険人物を彼らが野放しにするはずがない。
自分は死ぬまでこの仇敵に殺人機械として利用されるのだ。板倉は歯噛みした。

「……君だって、自分のしたことの意味を分からないわけじゃないだろう?
 過激派組織に所属して、松平君を襲撃しただけでも大問題だっていうのに、その後、
 何をとち狂ったか、自分の所属する組織の構成員を通行人もろとも皆殺しにしたなんてなぁ。
 大切な教え子が大量殺人犯に成り下がって、先生はどれだけ悲しんだか!」

口の中に血の味が広がる。蝶野の言葉は真実ではない、しかし事実だった。
背後で芙蘭が口を開く。自分を無差別大量殺人に至らしめた少女の声がしじまを漂う。

「少しは感謝したらどうなのかしら。自由意志を奪わないであげるのだから……」

そう、彼女にはそれが出来る。相手の脳に侵入し、その支配権を掌握出来るのだ。
あの日、組織の命令で松平左京を襲撃した夜。板倉は芙蘭に脳を侵され、
気付いたときには自らが籍を置く過激派組織の構成員を皆殺しにしたあとだった。
いや、正規のメンバーだけではない。無関係の一般市民まで手にかけていた。
それはもはや、無差別大量殺人だった。

理不尽に殺された姉の仇討ちをしたかった――そんな言い訳は通じない。
享楽的な殺人者に身体を乗っ取られた――それを証明するすべはない。

いや、たとえ証明出来たとしても、付け入られるような事態を招いたのは自分自身。
復讐に生き、殺人に対する忌避感すらも失った身でありながら、今更何を被害者ぶるのか。
血の海に立ち尽くす板倉の身柄を確保したのは、警察ではなくテロ組織だった。
ネイサン・ホーマー率いるテロ組織、自身を利用し陥れた芙蘭の在籍する非合法組織、
最愛の姉を奪った“教育委員会”の背後に存在する巨悪が板倉を捕縛したのだった。

視聴覚室の扉が開き、一組の男女が顔を見せる。
白い髪に赤い瞳、透けるような肌に纏うは黒。
仇敵のネイサン・ホーマーが、見知った少女を伴って現れたのだった。

ドレスの裾を揺らめかせながら迷いのない足取りでこちらに近付く少女の赤い眼は虚ろ。
床と天井と壁の間の何も存在しない場所を眺めながら、鈴の音のような声で彼女は言う。

「……そろそろ時間です。彼を、会場に……」
「おまえは、黒嵜……」

板倉は彼女を知っていた。クラスメイトの黒嵜暁羽(くろさき・あげは/女子七番)。
どこかのカルト教団の関係者だとは噂に聞いていたが、ホーマーとの繋がりは未聞だった。
しかし確かにこうして並んで立つと、彼女にはホーマーの面影があるように思える。
それとも、アルビノという特徴的な共通点ゆえに、そう感じるだけだろうか。
板倉の疑問に応えたのは、意外にもホーマーその人だった。

「暁羽は私の血族でね。幼い頃から私の手伝いをしているのだよ。
 ……さて、蝶野君、あとは我々に任せてもらおう」

これ以上、俺に何をさせるつもりだ――板倉はホーマーをねめつけた。
その直後、弾かれるような痛みが首に走り、彼の意識は闇に落ちた。



【D-4 分校/一日目・深夜】
【男子三番:板倉竜斗 GAME START】

【蝶野杜夫 主催】
【黒嵜暁羽 主催】
【ネイサン・ホーマー 主催】
【骨洞芙蘭 主催】

[備考]
※松平左京を襲撃した犯人(松平のキャラ設定参照)は板倉竜斗でした。



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GAME START 板倉竜斗
000:試合再開 蝶野杜夫 012:大 誤 算
GAME START 黒嵜暁羽 011:無貌の“貴方”
GAME START ネイサン・ホーマー
GAME START 骨洞芙蘭 011:無貌の“貴方”

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