5惑星を一夜に、8年ぶりの天体ショー
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 2月29日(水)14時4分配信
3月1日に肉眼で見える惑星の位置を示したイラスト。西南西の空(左)にはおひつじ座の近くに木星と金星、その下に水星が見える。東の空(右)にはしし座の近くに火星が見える。
(Diagrams courtesy Sky & Telescope)
天文ファンにとって、ほぼ10年ぶりのチャンスだ。今週から数日間にわたり、肉眼で見える5惑星すべてを一夜で観察できる。
肉眼で見える5惑星、すなわち水星、金星、火星、木星、土星は、視覚を補う道具がなくても容易に観察できるため、古代からその存在を知られてきた。
しかし、この5惑星を一夜で見られる機会が訪れるのは、2004年以来のことだ。しかも、5惑星がパレードをする今週は、同じ夜空で三日月が半月へとふくらみ、最も明るい恒星であるシリウスとカノープスの姿もよく見える。
◆観察に適した時期と場所
月と7つの明るい天体が一夜で見られるとはいっても、それらが同時に夜空の同じ場所に出揃うわけではない。
天体パレードを見るのに最も適している期間は、2月28日~3月7日だ。この時期の夕方には、5惑星の中では見えにくい水星と火星が今年最も明るく見える。またこの時期は、月が夜空に昇っている時間が長い。
日没の直後、水星は低い西の空に姿を現し、赤さび色の火星は東の空から昇る。
アメリカのシカゴにあるアドラープラネタリウムの天文学者ゲザ・ギュク氏によると、特に水星を肉眼で捉えるのは非常に難しいという。小さな水星は太陽に最も近い惑星であるため、夜間にあまり地平線より高い位置に見えることがない。
肉眼で水星を見つける最善の方法は、まず非常に明るい惑星である木星と金星を見つけることだ。この2つは日没から約30分後に、南西の空に姿を現す。
「木星と金星を結ぶ線を右下へたどっていくと、ほとんど地平線すれすれのあたりに水星が見える。双眼鏡を使うとかなり明るく見えるが、3月初めも終わりのころになると、だんだん暗く、見つけにくくなってくるだろう」とギュク氏は話す。
明るく、黄色っぽく見える土星は、真夜中12時近くに東の空から昇る。ギュク氏によると、天体ショーを見るのに適した場所は、広い野原や丘の上のような場所で、東、西、南方向の眺望が得られるところだという。
◆全部を見られるのは一部の地域
シリウスとカノープスは、年間を通じて最も明るく見える恒星だが、特に今週の日没直後は、これらが2012年で最も高い位置に見える。
地球からわずか9光年足らずの距離にあるシリウスは、地球から見える最も明るい恒星であり、神話の「大きな犬」を表す星座、おおいぬ座のアルファ星として、北半球の冬の空高く輝いている。
シリウスの次に明るいカノープスは、神話に登場するアルゴー船の竜骨部分を表す南天の星座、りゅうこつ座のアルファ星だ。
シリウスは北半球の中緯度地域ではどこでも見られるが、シリウスの右下に見えるカノープスは、アメリカならロサンゼルスやアトランタなど、それより低緯度の地域の人しか見られない。
(カノープスと月を除く)他の6つの明るい天体が今週同時に見られる北限は、北極圏付近だ。北極圏より北ではシリウスが見えなくなる。南限は赤道付近で、それより南では水星を見つけるのが非常に難しくなる。
「これらの天体はすべて夜空で非常に明るい光として見える。この機会を十分に楽しみたいなら、時間をかけて目を暗がりに慣らすといい」とギュク氏は述べている。
Andrew Fazekas for National Geographic News
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最終更新:2月29日(水)17時4分