【月に一度のアレ】


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月に一度のアレ




 少女には悩みがあった。
 それは月に一度、少女の身に起こることである。その日が近づくと少女は憂鬱になってしまう。
(やだなぁ……)
 そんな風に考えてもそれは避けようがないことで、抗うことができないことである。それは少女が十二歳の時から始まり、それから毎月のようにそれは続いている。
「ねえ、委員長。今日あたし|アレの日《、、、》だから、体育休むね」
 もじもじと恥ずかしがりながら少女はクラス委員にそう告げた。
「大丈夫? 保健室までついて行こうかしら?」
「ううん。平気。一人でいけるよぅ」
 クラス委員の心配そうな視線を後に、少女は言うことの聞かない身体を引きずりながら、保健室へやってきた。だが、部屋に入っても誰もいない。どうやら保健教師は外出中のようである。
(でも、ちょうどいいかも)
 彼にいつも世話になるのは申し訳ない気がしたのだろう。それに、彼にこのことで世話になるのは少々気が引ける。女として、それはあまりよいものではない。
 少女は勝手に保健室のベッドにもぐりこんだ。保健室独特の清潔な臭いのするシートに包まるとなんだか安心する。ここの保健教師の煙草の臭いも染みついているが、それも少女には心地よかった。
(うう……)
 少女は体を丸め、体を支配する違和感に耐える。血がうずき、興奮して寝付けない。
 やがて何を想ったか少女は服を脱ぎ、下着一つつけず、一糸纏わぬ姿になった。ようするに全裸、丸裸である。少女は脱いだ服をベッドのわきに畳み、再びベッドに寝転がった。



 しばらくの間少女は眠っていた。
 ふと、目を開けると、窓が目に映る。窓の外はもう半分以上日は沈んでおり、すっかり暗くなってしまっていた。
(寝すぎちゃった……)
 むにゃむにゃと目をこすり、ぼんやりとする頭をぶんぶんと振っていると、頭上から声が聞こえてきた。
「ようやく目が覚めたか。まったく、ここはホテルじゃねーんだぞ」
 そこにいたのはここの保健教師であった。少女は驚いて思わず声をあげてしまう。それも仕方ないだろう。今少女は丸裸出、こともあろうにその教師はその裸の少女を抱きしめながらベッドの上に腰かけていたのだから。
「うう……先生のエッチ!」
「はぁ? 何言ってんだよ。今日、お前は|アレの日《、、、、》なんだろ。大人しくしてろよ――てのは無理な話か」
 そう言って教師は少女を抱きしめ、膝に載せながらお腹を撫でた。
「くすぐったいってば先生――」
「お前の体、暖かいな……」
 教師は裸の少女を強く抱きしめる。少女にとってそれは嫌なことではなかった。むしろ彼に抱きしめられると、天にも昇る気分で心が落ち着くのだ。
「ああ、そうだ。お前にプレゼントがあるんだよ」
 教師は席を立ち、鞄からあるものを取り出した。
 それは、とても人間にプレゼントするものとは思えないものである。革製で、リング状のそれを、にこやかに笑いながら少女に見せつけた。
「く、首輪?」
 そう、それはリードのついた赤い首輪だ。「つけてやるよ」と言う教師に少女は一瞬躊躇するものの、彼の言葉には逆らえず、黙ってしまう。教師は少女の首にかちりと首輪をかける。それはとてもよく似合っていた。教師はリードを手に持ち、少女の体をくいっと引っ張る。
「ほれ、このまま散歩に行くぞ」
「え? え? このまま?」
「そうだよ。じゃねーと意味ねーだろ」
 教師に促され、少女は裸のまま四つん這いになり、まるで犬のように歩いていく。その行為に慣れているのか、二人は堂々と夜の校舎を出て、学校の中庭にやってきた。
(誰かに見られたらいやだなぁ……)
 自分が首輪を繋がれ、夜の学校で歩かされているのを見られたらとっても恥ずかしい。少女は今の自分の姿に羞恥を覚えているようである。だが|アレの日《、、、、》のせいかのか、体はむずむずしてそんなことも忘れそうになる。
「さて、俺も久しぶりに身体を動かすか。これも立派な運動だ」
 そう言いながら教師はズボンから棒をぼろんと出した。それを見て、少女はそれに勢いよく咥えはじめた。
「おいおい、がっつくなよ。夜は長いんだ。焦るな焦るな」
 教師は頭を撫でてやるが、少女はもう自制がきかなくなっていた。その棒を丹念に舐め上げ、下品な音を立てながら嬉しそうに咥え続けた。
「ほれ。お前の大好きなタマもあるぞ、それも二つ」
 教師のその言葉に少女は目を輝かせる。
 少女の理性は解放され、身も心も野性的になっていた。











◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「もうこんな時間になってしまったではないか。もうすぐ『銀ちゃんのコスプレ大賞』が始まるのに、間に合うかのう……」
 その日、吸血鬼のショコラーデ・ロコ・ロックベルトは夜遅くまで補習を受けていた。全教科赤点――どころか全部零点だった彼女では仕方のない事だろう。それでも見たいテレビのために、夜の校舎を駆けて、早くアパートに戻ろうとする。だが、ふと窓を覗くと、中庭から何やら人影が見えた。
 夜の住人である吸血鬼には暗闇でも目が効くのだ。そこにある人影が見知った顔だとわかり、ショコラは窓から飛び出して、中庭に足を踏み入れる。
「アルーーーーーーーー! わしじゃーーーーーー! 一緒に帰るのじゃ!」
 ショコラはその人影に向かってそう叫ぶ。その人影は保健教師の瀬賀《せが》或《ある》であった。
「よお、お前こんな時間まで補習かよ。アホだなぁ」
「うるさいのじゃ、それよりお主、こんなところで何をしておるのじゃ?」
 こんな夜の中庭ですることがあるのだろうか、と、ショコラは首をかしげていた。
「ほれ、あれだよあれ」
 そう瀬賀の指さしたところには、茶色の子犬がはしゃぎまわっていた。いや、それは犬によく似ているが、犬ではない。
 狼だ。
 子狼が棒のような長い骨を咥えながら走りまわっていた。
「あれは……もしかしてバカワンコかのう? とうとう頭まで犬になってしもうたか」
「ああ、確かにありゃ大神《おおがみ》だよ。お前は知らないだろうが、あいつは一月に一日だけ人間の姿を保てなくて、ずっと狼の姿になっちまう日があるんだよ。しかもその日は理性が無くなって、夜には頭まで野生化しちまうってわけだ」
「人狼の悲しき習性よのう。哀れじゃ」
「まあ、あいつもこの習性を恥ずかしがってるみたいでな。俺がこうして誰にも見られないよう、夜に野性を発散させてやってるんだよ」
 ショコラは楽しそうに中庭を自由に駆け回る子狼――大神《おおがみ》壱子《いちこ》を見やった。狼に変身可能な人狼族の壱子は、今はもうただの一匹の狼になりきっているようである。
「ほれ、ボール二個あるからお前にも一個貸してやる。せっかくだから遊んでこいよ」
 げらげらと笑いながら、瀬賀はショコラにゴムボールを一つ渡す。
「あいつボール遊びが好きみたいでな。これがまたおもしれーんだよ」
 そう言って瀬賀はボールを遠くに放り投げる。すると、壱子はワンワンと吠えながらボールのほうまで走っていった。
 ショコラもそれは面白そうだとボールを握りしめる。
 そして、ふと空を見上げて、ショコラはそれに気付いた。
「おお、綺麗じゃのう」
 それを見て思わずショコラはそう言葉を零す。
 今日は月に一度の――満月だった。



 (了)







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