【狙われた醒徒会長】


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「同士諸君!」
 薄暗い部屋の中で、赤城《あかぎ》は声を張り上げた。
 その部屋には赤城の他に、二人の男がいた。一人は痩せていてメガネをかけている青山《あおやま》で、もう一人は肥満体形の男である横井《よこい》であった。ただならぬ雰囲気を発しているこの三人は双葉学園の生徒である。
 三人はある目的のために同盟を組んでいた。
「ついに決戦の日は来た! この日のために我々は血のにじむような訓練をしてきた。今日、我々の努力は報われるのだ!」
 赤城がそう言うと、青山はメガネを押し上げながら呟いた。
「ふふふふ。僕たち三人があの日和見主義者共ばかりの組織から離れて早一年。僕たちの思想こそが正しいことを奴らにみせつけてやる」
 横井もポテチをムシャムシャと食べながら奮起する。
「そうだね赤城くん。青山くん。俺たちが同盟を組んだのはまさに運命だったんだ。俺たち三人なら絶対にやれる。なんてったって俺たちにはこれがあるからね」
 横井は用意してきた鉄砲を机の上に置いた。
 赤城はそれを手に取り、不気味な笑みを浮かべる。その姿は悪魔のようであった。
「くくくく。さあ行くぞ諸君」
 赤城はバンっとポケットから取り出した一枚の写真を机に勢いよく置いた。
 その写真に写っている人物は学園で最も名の知れた人物である。
「我々の標的は双葉学園醒徒会会長。藤神門御鈴だ! 心してかかれ!」






 作戦内容はシンプルなものだった。
 一年にも及ぶ調査により、赤城たちは御鈴の一日の行動パターンを完璧に把握していた。
 今日のこの時間は醒徒会室へ向かうため、階段を使うはずだ。赤城はその付近で待機をしていた。彼はまだ鉄砲を持ってはいない。この時点で鉄砲をブラブラと持ち歩いていればすぐに捕まってしまうだろう。
「こちらレッド。ブルー、返事をしろ。オーバー」
 赤城は小型の通信機で青山に連絡をした。
『こちら。ブルー。準備は万端だ。オーバー』
「ではこれより作戦を開始する。頼むぞブルー。オーバー」
『わかっている。オーバー』


 青山は赤城がいる校舎の下階にいた。
 そこで御鈴が来るのを待っていた。
「千里眼、発動!」
 青山の異能が発動する。彼の目には何キロ先の光景が見えるのであった。
 そこでは御鈴がこちらに歩いてくるのが見えた。おそらくこのままのペースならば約五分ほどでここに到達するだろう。
 御鈴は何も知らない無邪気な顔で、白虎を抱きながら笑っている。あの笑顔が驚愕に満ちることを想像し、青山は少々興奮した。
「こちらブルー。イエロー応答せよ。オーバー」
『こちらイエローだぜ。オーバー』
「もうすぐ目標Xが到着する。時間は五分五十四秒。あと十秒後に異能の発動を開始しろ。オーバー」
『オーケー。まかせろよ。オーバー』


 通信を切った後、横井は行動を開始した。
 横井は赤城がいる校舎とは別の校舎にいた。距離で言えば二十メートルは離れているだろう。
 使われていない教室の窓から横井は外を眺める。そこから目の前の校舎の窓際に立っている赤城の姿が確認できた。
「よし。あそこだな。俺の異能の出番だ……」
 横井はポテチの油でべっとりとした手で鉄砲を握りしめ、頭の上に掲げて異能を発動する。
 だが彼の異能を発現するのには時間がかかった。そのため、青山に千里眼を使わせて御鈴がここを通る時間を計算させていたのだ。
 時間が経つにつれ、次第に横井の手の周囲の空間が歪んでいった。
「物体転送《アスポート》!!!!」
 その直後、わずかな光を放ち彼の手にあったはずの鉄砲が姿を消した。
 その代わりに、手前の窓に立っている赤城の腕に鉄砲が出現した。
 横井の異能は物体を別の場所へ転送する能力だ。ただし転送場所が視界に入っている必要があった。
「よし。上手くいった!」
 横井はガッツポーズを取った。


 赤城の腕に鉄砲が転送された。
 すぐさま赤城は階段の方を振り返り、鉄砲を構える。すると階段の踊り場には、青山の計算通りに御鈴がやってきていた。
 赤城の異能は『完璧射撃《パーフェクトシューティング》』だ。精神を極限まで集中して、超精密射撃を可能にするのであった。
 彼は狙った獲物を絶対に外すことは無い。
 赤城は御鈴に向かって、そのトリガーを引いた。
「ふははははは。“御鈴会長びしょ濡れ大作戦”! 大成功だああああああ!」
 赤城が手に持つ鉄砲――“水鉄砲”の銃口から勢いよく水が噴射された。水は綺麗な弾道を描き、御鈴のもとへと飛んでいく。
 『御鈴会長ファンクラブ』の中の異端的な派閥、『会長はまだブラをしていない派』である彼ら三人はある一つの目的を持っていた。
 それは御鈴会長がブラジャーをしているかどうかを確かめることであった。自分たちの推測こそが正しいことを証明するために、彼らは水を御鈴にぶっかけて、服を透けさせて確認しようと言うもくろみだったのだ。
 この作戦が決行できるのは今日まで。なぜなら明日から衣替えで、冬服になってしまっては水をかけても服が透けることがないからだ。
 だから彼ら三人は最後の戦いに出たのであった。
 赤城の脳裏に今までの特訓の走馬灯が流れる。弱い異能しか持たなかった自分たちが、必死に特訓をして異能を底上げしたのだ。上手くいけばブラをしているにしろ、していないにしろ、いいものが見れる。この努力は報われるべきである。そう信じて赤城は水が御鈴に到達する瞬間を待った。
 しかし――
「あらあら御鈴ちゃん」
 そんな声が突然聞こえてきた。
 目の前に一人の女生徒が現れた。それは黒い長髪が似合う美女であった。
 彼女は御鈴の前に立ち、赤城の視界から御鈴を消してしまった。
「なにいいいいいいいいい! 通りすがりのババァにかかってしまったああああ!」
 必然的にその黒髪の女に水がかかってしまう。
 それはもうびっしょりと盛大に彼女の全身を濡らしてしまった。
「…………」
「おお理緒。何を濡れ濡れになっておるのだ!」
 御鈴は突然水をかけられてしまった女にそう言った。彼女の髪も濡れていて顔に張り付いてしまっている。
 黒髪の女はゆっくりと水が飛んできた方向――赤城の方を向いてニッコリとほほ笑んだ。だがその影のある笑顔を見て赤城は戦慄した。
 その女の顔を確認し、赤城は「終わった……」と心の中で呟く。
 赤城が水をぶっかけてしまったのは“水使い”の醒徒会副会長の水分理緒であった。
「うああああああああああああああああああああああああああ!」
 校舎に絶叫が轟いた。その後彼らがどうなったのかは語るまでもないだろう。


 END



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