【続 虹の架け橋 プロローグ】


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   三周年記念作品
   投稿週間中は大きな仕事が入っているため、事前投稿とさせていただきます



  キャラ紹介、のようなもの

 スポーツ刈りの少年が、すやすや寝息を立てている。
 彼の名は朝倉太陽。双葉学園・初等部六年B組の男子児童だ。
 町内の野球クラブに所属する、成長期真っ只中のスポーツ少年だが、こうしてパジャマを着て仰向けになっている姿は、ごく普通の子供と変わりないあどけないものである。
と、そこに誰かが部屋に入ってくる。
「いつまで寝てんのよ、太陽!」
 きんきんとした甲高い大声に、彼はびっくりして起き上がった。
 彼女は高等部の制服の上に「コンビニショップあさくら」のエプロンを身につけていた。太陽の姉、朝倉うさぎである。
「早く朝ごはん食べちゃってよ」
「っせーな、朝っぱらから!」
 バタンと閉まった扉に、怒鳴り返した。
 眠気が完全に飛んでしまった太陽は、不機嫌そうな様子で着替えに入った。学園指定のブレザーは苦手なので、六年間ずっと、ジャージの上着に短パンという組み合わせである。
 食卓に置いてあった朝食をあっという間にたいらげ、ボロボロの学生かばんを手にし、下のお店の様子を見に行った。店内は朝食目当ての学生や社会人でごった返しており、バイトはもちろん、うさぎや、彼の母親も忙しそうに働かされている。
 それをはたから眺めていて、ゾッときた。
「こんな店で働くの、ごめんだね」
 お店の跡継ぎ候補はそう、ひとりごちた。
 自動ドアを出る。ひんやりとした朝の風。久しぶりに訪れた青空。
 そして、そこには雨上がりの虹を思わせる、明るい笑顔が待っていた。
「おはよう、太陽くん!」
 両目のぱっちり開いた、黒髪の少女。元気いっぱいな声は、昔からちっとも変っていない。
 森田虹子。太陽のガールフレンドである。
「おっす、虹子」
「一緒に行こ!」
 足取りも軽やかに、少女は横に並んだ。しかしそんな無邪気な女の子に、太陽は嫌そうなため息を見せつける
「お前な、いつまで俺と一緒に行くつもり?」
 虹子はなぜ、太陽がそんなことを言うのか、わからなかった。小首をかしげる。
「太陽くんは嫌なの?」
「むー」
 嫌ではない。
 でも、とても恥ずかしい。
 太陽は、虹子と一緒にいることに、抵抗感を持つようになっていた。
 小学六年生になっても、彼女は彼によく懐き、今でも彼の家に遊びに来ては、一緒に夕飯を食べたりしている。三年生まではお風呂も一緒に入っていた。
 でも成長していくにつれ、だんだんと太陽に、心境の変化が訪れつつあった。こっぱずかしくて、落ち着いていられない、ばっと顔を覆いたくなるような気持ち。
「あ、朝倉だ!」
 太陽は「やべっ」と焦る。友人たちに見つかってしまった。三年生の頃からずっと一緒の、悪友たち。
「お前やっぱ、森田と付き合ってんだな」
「そ、そういうわけじゃねえ!」
 案の定、彼らは容赦なく冷やかしを入れてくる。顔を真っ赤にしている太陽は、虹子をその場に置いて、友人たちのところへ走っていってしまう。
「いいのか、カノジョほっといて」
「そうじゃねえって言ってんだろ? まー、一緒に行こうぜ」
「んじゃ校庭でサッカーしない? ちょうどいい人数だし」
「お、いいぜ!」
 男友達に合流し、心の底から楽しそうに振舞う太陽。
 遠くに行ってしまった彼の笑顔を、虹子は一人寂しく眺めていた。とても切なげな視線で。
「おはよう、にじちゃん。どうしたの?」
 虹子の親友の中里郁美が通りかかったのは、その直後のことだった。


  プロローグ、のようなもの

「あなたはね、指に虹を巻いて生まれたの」
「にじ?」
「そう。みんなを幸せにする力だよ」
 私の大好きなお話だ。
 ママから私の秘密について聞かされるのが、とっても好きだ。
「レインボーロード」。魔法で虹を呼び出す、幻想的なちから。
 出現させた虹はとても大きくて頑丈で、その上に乗って歩くことすらできる。走り回ることさえできるんだ。だから、たくさんの人々が、「虹の架け橋」と賞賛してくれた。
 そんな力を持って生まれた自分が、とっても誇らしい。
「あのね、ママ?」
 顔を上げて、ママを見つめる。
 私にはやりたいことがあった。
 それは、一日でも早く虹を上手に出せるようになって、ママと一緒に――。
「じゃ、ママは出かけてくるね」
 それを聞いた瞬間、私の心は芯まで凍りついてしまう。
「また出かけちゃうの?」
 どれだけ私が悲しそうな声を出しても、ママはそれを聞いていないかのように、無言で立ち上がる。私から離れていってしまう。
「今度はいつ帰ってくるの?」
「ちゃんといい子にしてるんだよ?」
「ママ、ねえ、ママってば!」
 焦ってまくし立てた私のことなど、まるで知らないそぶり。愛するママは私に背を向け、大きなトラベルケースを片手に、去っていった。
「やだ! 行かないで!」
 いくら声を振り絞っても、喉が潰れてしまいそうなくらい大きな声を出しても、ママは振り向いてくれやしない。玄関がバタンと閉ざされ、私はまた、この広々とした高級マンションに一人ぼっち。
 悪夢でもなんでもない。これが私に与えられた、いつもの日常。



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