【冥王星でぼくはタンゴを踊る】


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元が縦書きなのでラノ推奨
ラノで読む

ちなみに派生設定の聖痕オメガサークルに目を通しておくとわかりやすいかもしれないです



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 【冥王星でぼくはタンゴを踊る 第一話】


 「詩人の男は世界を憎んで森の奥に住む。若くして死んだ娘のために詩を綴った」―――――――筋肉少女帯〈詩人オウムの世界〉

        ※※※


         1


 初めて嗅いだ人間の焼き焦げる臭い。
 それはとても耐えられないほどの悪臭で、脳に直接その臭いが届き、吐き気が我慢できるものではなかった。
 異の中のものが逆流してくるように込み上げてきて、ぼくは溜まらずその場で吐いてしまう。気持ち悪い。
 ねっとりとした胃液と唾液が口の中にまだ残っており、口の中がむわっとしている。頭がズキズキと痛み、胸の鼓動が破裂しそうなほどに高鳴っている。
 それは日常では絶対にありえない光景。
 なんでだ。
 なんでこんなところで人が焼け死んでいるんだ。
 目の前に転がる死体は完全に焼き焦げ、もはや性別すら判断できないほどに真っ黒になっていた。夜の町の道路になんでこんなものがここに転がっているんだ。
 ぼくはただコンビニに買い物をしてきただけなのに。
 なんでこんなものに出くわさなきゃならないんだ。
 ぼくはショックでコンビニ袋を地面に落としてしまう。中に入っていたシュークリームたちは潰れてしまった。だがそんなことは問題ではないほどにこの奇妙な光景にぼくは唖然としていたのだ。
 星が輝く暗黒の夜空、それとは対象的に未だにその焼死体には炎が少し残り爛々と輝いていた。それはつまり、今、この場でこの死体は焼かれたということを表している。
 周りには家は数件しかないが、田舎とはいえ、それでもこの場で人が焼かれて普通気が付かないはずがない。
「なんだってんだよこれ・・・・・・」
 ぼくはたまらずその場から走り出そうと、震える足を押さえながら前を見据える。
 だが、何時の間にかそこには一人の男が立っていた。
 一体いつからそこにいたのか、最初からそこにいたのか、それはぼくには理解できはしなかった。
 目の前の男、いや、少年と呼べる年齢で、実際に真っ黒な学ランを身につけていた。長髪長身で眼鏡をかけている。そして何故かこの真っ暗な道で彼は携帯ゲームをいじっていた。それはこの目の前の焼死体と相まって実にシュールな光景である。
「よお、お前が滝沢丈《たきざわじょう》だな。ふーん、ジョウ、ジョーね。まるで昔の漫画のキャラクターみたいな名前だな。パンチドランカーやサイボーグみたいだ」
 少年はシニカルな表情でそんな意味不明なことを言っていたが、それでもぼくには理解できる部分が少しだけあった。
 滝沢丈。それはぼくの名前だ。
 何故彼はぼくの名前を知っているのだろうか。
「お、お前は誰だ。なんでぼくの名前を知っている!」
 ぼくは得体の知れない男に恐怖を感じ、その場から逃げ出したい気持ちを抑えながら目の前の男に問う。男は携帯ゲームからぼくに視線を移し、
「僕か、僕の名前はギガフレア。まあ名前なんてどうだっていいんだけどな。でもクローリングカオスの野郎はお前のことをアークジェット、なんて呼んでたぜ。だっせえ名前だよほんと。センスの欠片も感じねえ」
 等とまた意味不明な単語を羅列していおり、コミニケーションを取れる相手ではない、ぼくは直感でそう感じていた。
 ギガフレア(とても本名とは思えないが)と名乗った男は携帯ゲームをポケットにしまって、右手をぼくに向かって突き出した。
「な、なんだよ?」
「黙ってろ殺すぞ」
 鷹のような鋭い眼光をぼくに向け、ギガフレアの掌から火花が散った。
 その刹那、ぼくの視界を真っ赤な炎が支配する。



              2


 四月。
 桜が咲き乱れて美しい光景が世界に溢れる季節。
 だがぼくは世間の楽しげな光景が憎く思えるほどに、十六歳になったばかりのぼくの世界は壊れていた。壊れきっていた。
 姉さんが死んだ、三日前に。
 姉さんの名前は桜川夏子《さくらがわなつこ》。苗字が違うのはぼくたちの両親が離婚し、ぼくが父に引き取られ、姉さんが母に引き取られたからだ。母が再婚し、桜川という性に変わった。
 東京に引っ越してしまった姉さんとは一年に数回しか会うことはなかったが、それでもぼくは姉さんが大好きだった。
 優しく聡明だった姉さん。
 誰よりも綺麗で、誰よりも輝いていた姉さん。
 ぼくが護ると約束した姉さん。
 ぼくのお嫁さんになってくれると言った姉さん。
 ぼくを抱きしめてくれた姉さん。
 なのに死んでしまった姉さん。
 身体中をぐちゃぐちゃの肉片にして帰ってきた姉さん。
 なぜ姉さんは死んだ! 誰が殺した!
 ぼくは姉さんが死んだと知らされた日から世界への憎悪が止まらなかった。不条理で残酷この世界のぼくと姉さんに対する仕打ちはあまりに許せなかった。
 身が焦がれるような心の痛み。電撃のごとき怒りが収まらない。そしてこの怒りをどこに向けたらいいのかぼくにはわからなかった。
 姉さんの死因はわからなかったのだ。いや、直接の死因は出血によるショック死であったが、その姉さんの死体は不必要なまでに破壊されていた。
 首がねじ切られ、臓物はぶちまけられ、四肢は砕かれていた。それを病院で見た母はショックで倒れこんでそのままその病院に入院してしまい、父も翌日に失踪した。逃げたのだ現実から。
 そして家にはぼくだけが残された。
 母の話では姉さんは東京湾に浮かぶ学園都市、双葉学園に在籍していたらしい。ぼくにはそこがどんな学校なのかよく知らないが、姉さんはその学園内で死んだと聞かされた。いや、殺されたのだ、その学園都市の中の誰かに。
 ぼくは学園都市の潜入を試みようといていたが、あの学園都市に入るのは何故か相当厳しいらしい。まともなやり方では侵入は不可能だ。それにぼくが行ったとしてもあの何万人といる中で犯人を捜すのは不可能に近い。
 警察は転落死などという馬鹿げた捜査結果を出していたが、ぼくはとても納得できるものではなかった。ぼくがやらない限り姉さんの死は永遠に謎になってしまう。
 それだけは駄目だ。
 それだけは許せない。
 姉さんの死を忘れさせない。
 必ず姉さんを殺した犯人を見つけだしてやる。
 だがやはり現実の壁は厚く、ぼくはどうしたものかと途方にくれていた。
 姉さんが好きだったコンビニの安っぽいシュークリーム。それを仏壇に供えるためにぼくは深夜コンビニに向かった。
 夜風が気持ちいい。爽やかな潮風と、星々が輝く夜空を見上げていると、姉さんが死んだことなんて世界にとって何も影響がないように思えてぼくは心が痛んだ。
 そんなセンチメンタルな気持ちで道路を歩いていて、ぼくは焼死体に遭遇し、ギガフレアと名乗る男と出遭ったのだ。
 ギガフレアは手から火花を爆ぜさせたかと思うと、地面から炎が発生し、それがまるで意志を持つかのように地面を疾走し、ぼくに向かってくる。
 いや、正確には炎はぼくの後ろに通り過ぎ、後ろから爆風が轟いてくる。
「あ、熱い!」
 熱風が背中に当たり、ぼくはその場から離れる。後ろを急いで振り向くと、巨大な炎の塊が渦巻いている。
「な、何だよこれ! お前なにしてるんだ、いや、何をしたんだ!?」
「なんだお前、異能を見るの初めてなのか。ふうん。どうやらその調子じゃまだ目覚めていないようだな。面倒くさい奴」
「な、何言ってやがる、それにこんなことして町が火の海に――」
 なってはいなかった。炎はまるで見えない壁がそこにあるかのように道路からは漏れることなくその場だけでうねっていた。
 それは実に奇妙な光景だ。
「安心しろ、ヴェイプの奴が空間隔離《セーフティ・エリア》で他に被害がいかないようにしているんだ。空間隔離はポピュラーな能力だが汎用性が高いからな。僕の能力もこの中ならある程度制御できる。お前に火が当たらないように気をつけてやるからびびんなっての」
 能力? 空間隔離? 一体何なんだこいつは、何を言っているんだ。
 ぼくは様々な疑問が頭に浮かび、混乱で頭がどうにかなりそうだった。
「解りやすく言えば、超能力だよ。僕らは異能、と呼んでいるがな。そして僕らは異能者ってやつだ」
「異能? そんな漫画みたいなこと――」
「あるんだよ、漫画みたいなことが現実にな。それに、お前の姉ちゃんだって僕らと同じ異能者だったんだぜ」
 ギガフレアはへたりこんでいるぼくを見下ろすように長身を屈め、その鋭い目でぼくの目を覗き込んでくる。
 なんでこいつは姉さんのことを知っている。誰なんだこいつは。
 いや、それよりも重要なのはこいつが言ったこと、姉さんが異能者だって、こんな炎を操って人を殺すような化け物と一緒だって。
 冗談じゃない。
 そんなことがあってたまるか。
「それに、その弟であるお前も、異能の力を秘めているんだ」
 ギガフレアは真剣な眼差しでそう言う。ぼくも超能力者だって? いや、そんなことあるわけない。こんな得体の知れない不気味な男の言うことなんて信じられるか。
 だが、目の前の炎は嘘やまやかしでもなく、熱を持ち、ぼくの背中を少し焦がしていた。
「まあ、詳しい話は後でいいだろ。それよりあいつをどうにかする方が先だ」
 ギガフレアは視線をぼくからその後ろに向ける。
 先ほどギガフレアが炎を放った場所、その先に人影があった。
 ギガフレアの炎がその人影を包もうとしても、一瞬にしてかき消されていく。それもやはり人間の力ではない異能の力。
 ぼくはその人影もまた、異能者と呼ばれる人間なのだと確信した。
 目の前の男は不気味なほどの巨体で、恐ろしい形相でこちらを睨んでいる。丸太のような太い腕、それが気味悪く脈うち、その形状を変えていく。
 その男の腕が巨大なハンマーのようにさらに肥大化する。
 まるで鬼のようなその男は、ぼくらに向かって背筋が凍るような殺意を放っていた。
「オメガサークルの改造人間か。科学者どもの玩具如きが僕ら聖痕に勝てると思っているのか」
 ギガフレアは挑発するように地面の焼死体の頭を蹴り、思い切り転がす。それをみた目の前の鬼のような男は、さらに怒りを込めた表情に変わり、失禁しそうになるほどの殺意をぼくたちに当ててくる。ぼくは恐怖で身体が動かなくなるが、ギガフレアはシニカルな表情なまま相手を見据える。
「おい、お前の名前はなんだ。殺す前に名前くらい教えてくれよ」
「オレ、名前、レント。オマエ、アダージョ殺した。ユルサナイ。コロス。コロス! コロス! コロス!」
「そうかレント。この女はお前の連れだったか。悪いな焼き殺しちゃったよ。まああの悲鳴は随分と色っぽかったぜ。お前も聞きたかったろレント」
 そのギガフレアの言葉を最後に、鬼のような男、レントは地面を思いきり蹴って巨体に似合わない凄まじいスピードでギガフレアに向かって走ってくる。
「さあ来いレント。殺し合いをしようぜ」
 そしてまたも煌々とした炎の光が夜空を輝かせる。


             3


 レントの巨体とギガフレアの炎に挟まれ、ぼくの身体はひき肉になり焼肉になってハンバーグの様になってしまう。
 はずであったが、ぼくの身体に痛みも何もなく、それどころか心地いい夜風にさらされている。目を開ければぼくはなぜか空中に浮いていたのだ。
 いや、そこに浮遊感はなく、見えない床があるように僕は空中に座っているようである。
「な、なんなんだこれ。これがぼくの超能力なのか?」
 そうふと呟くと、
「違うよ、これは私の能力だよ」
 瞬時に否定されてしまった。その声の主はぼくよりさらに高い位置に立っており、その人物は可愛らしい女の子であった。まだ十歳前後であろう、ボサボサとした物凄く長い栗色の髪をなびかせて、ぶかぶかのパーカーを着ており、ウサ耳つきのフードを頭から被っていた。
 しかしこの位置だとスカートからは中が見えてしまっている。それ紐つきの大人がつけているような下着であった。
「おい、パンツ見えてるぞ。しかもなんで子供がそんなエロい下着はいてるんだ」
「見せてるの!」
 その少女はふふんと幼い顔を艶やかな微笑に変え、ぼくと同じ視線まで降りてくる。まるでそこに見えない階段が存在するかのように段々と降りてくる。
「へえ、キミが新人さん? なかなかカッコイイね」
 少女は身体をくねらせるようにぼくに擦り寄ってくる。見た目は子供なのに、なぜか大人びた妖艶さを感じさせる。
「ちょっとまってよキミ、新人ってなんのことだよ」
「あー、まだギガフレアから聞いてないんだ。じゃあまあそれは後でいいでしょ。まず自己紹介から、私はヴェイパー・ノック。長いからヴェイプって呼んでね」
 少女は天真爛漫な表情でぼくに笑いかける。さっきまでの下界での惨状が嘘のように感じられるほどに平和な表情だが、やはりこの空中に浮いているという非現実感により、逆に違和感しか残らない。
「ぼくは滝沢丈・・・・・・」
 思わず名乗ってしまったが、問題は無いだろう。どうせギガフレアにはしられているのだ。構う物か。
「そっかー。あなたがカオス様の言ってたアークジェットの滝沢丈か。ふーん。でもまだ異能には目覚めてないんでしょ」
 ヴェイプと名乗る少女は不思議そうな目でぼくの顔にをまじまじと見る。あと少しでその柔らかな唇がぼくの唇に当たりそうな距離だ。とても可憐なこの少女に、ここまで顔を近づけられると、そんな趣味のないぼくですらドギマギしてしまい、自分の単純さに呆れてしまう。
「異能とかわけわかんないよ、大体なんでぼくは空中に浮いてるんだ。キミの能力って言ったよね」
「うん、私の能力の空間隔離は、ようするに見えない壁を作るってだけなんだ。でも濃度を変えると外側からは中で何が起きているか認識できなくすることもできるんだよ。応用すればこうして空中に足場を作ることもできるよ」
 ヴェイプは自慢げに自分の能力を語り出している。何故か活き活きとした表情で、それだけ見れば歳相応の少女に見える。
「それにギガフレアの炎は強すぎて制御できないの、だから私が空間を囲んで炎が走るレールを作ってるのよ、私がいなきゃギガフレアなんてただの人間火災でしかないんだから。隠密行動じゃ無能よ無能」
 ヴェイプは楽しそうにそう言う。
 だがそれはこの少女もあの殺人に加担しているということだ。それなのに彼女は何一つ罪悪感などないように笑ってる。それはちょっとした恐怖だ。
「キミたちは一体なんなんだ・・・・・・なぜ人を殺したり戦ったりしてるんだ・・・・・・」
 ぼくは一度に色々起き過ぎて頭が混乱していた。情報の整理をしなくてはならない。冷静になれ、冷静に。
 ヴェイプは少し頭をひねって考えこんでいる。どうやら彼女はあまり頭がいいほうではないのだろうな、という印象を受けた。
「人に説明するのって難しいんだよねー。どっから言ったらいいんだろ。えっと、私たちが所属してる組織は“聖痕《スティグマ》”ってうの」
「聖痕・・・・・・?」
「そう、ラルヴァっていう怪物たちを神と信仰してる間抜けな組織よ。私たちは別にそんなもんに興味ないんだけどね。ただ他に居場所がないだけで」
「ラルヴァ? 怪物? またわけのわからないことを・・・・・・」
 ぼくは本当に頭が痛くなってきた。次々と理解の範疇を超える単語の山に、もはや脳が追いついていかない。
「細かいことはいいよ、とにかくキミは私たちの仲間になるんだよ」
 ヴェイプは真剣な眼差しでぼくを睨みつけるようにしている。
 仲間。
 ぼくがこの殺人鬼共と仲間。
 そんなことごめんだ。ありえない。
 ぼくは下を覗き、ギガフレアとレントが戦っているのを見る。
 ギガフレアは炎を空中に出現させ、ヴェイプが形成している見えないレールに沿って炎を疾走させる。炎はレントに直撃するが、レントはまるで熱さなど感じていないようで、ハンマーのような両手を炎に向かって振り払い、炎はかき消されていく。
「ちっ、肉体変化系かこいつ。皮膚と筋肉を硬質化してやがるな――」
 ギガフレアは吐き捨てるようにそう呟き、バックステップで後ろに下がる。その直後、ギガフレアの鼻先をレントの巨大な腕が掠める。空を切ったレントの腕は地面にぶち当たり、コンクリートの地面は粉々になっていく。もし少しでも判断が遅れていたらギガフレアの身体もあのようにぐちゃぐちゃになっていたのかもしれない。
「オマエ、ニゲルヨクナイ。大人しくシネ」
「馬鹿が、死ぬのはお前だ。こんがり焼いてやるから大人しくしろっての!」
 ギガフレアは距離をとり、炎を次々と放っていく。
 しかし、レントは怯まず攻撃をしかけている。ぼくはその光景をやはり非現実的なものとしか思えなかった。
 まるでこんなの化け物同士の戦いじゃないか。
 ぼくは自分を支えている見えない床から飛び降り、民家の屋根に飛びうつる。
 こんな連中と関わっていたら命がいくつあっても足りない。
「あ、どこいくのジョー!」
 何がアークジェットだ、意味がわからない。
 ぼくは滝沢丈だ。そんな珍妙な名前なんていらない。
 ぼくは民家の瓦を伝ってその場から離れる。ヴェイプはぼくの名前を叫びながら睨んでくるが、追ってくる気配はない。恐らく彼女がこの場から離れれば、ギガフレアの補助ができないのであろう。超能力といえど万能ではないらしい。
 瓦から塀に飛び移り、そのまま地面に戻ってくる。後ろを振り向けば、もうさっきまでぼくが居た場所、ギガフレアが戦ってる場所には何も映ってはいない。
 夢だった、わけではなく、これがヴェイプの言っていた空間隔離のなせる業なのだろう、外からでは彼らの姿を認識できなくなっているようだ。
 ぼくはヴェイプとギガフレアが追ってこないのを確認し、その場から全力で駆け出した。目の前の狂った現実から目を背けるようにぼくは夜の町を走りだした。
 しかしぼくが走っているのは家とは正反対だ、しまったと思ったが、どうせ連中はぼくの家ぐらい既に押さえてるだろうと思い、そのまま目的もなく走る。
 走っていくうちに息が切れてきて酸素が頭に回らなくなってくる。
 頭がぼーっとしてきて、足がガクガクと震えている。四月の夜だというのにとても暑く、ぼくの身体は汗でべたべたしていた。
 姉さん、なんでぼくがこんな目に遭わなきゃならないんですか。
 ぼくはただ姉さんの死の真相が知りたいだけなのに。
『お前の姉ちゃんだって僕らと同じ異能者だったんだぜ』
 ぼくはギガフレアのその言葉を思い出す。それが本当なら姉さんは彼らと同じようにこんな風に化け物のような戦いをしていたのだろうか。
 細い身体で争いごとに向かない優しい性格の姉さんが、そんなことできるものか、きっとあんな化け物共に蹂躙されて殺されたに違いない。
 許せない、あんなやつら・・・・・・何が異能者だ、ぶっ殺してやる。
 ぼくはあの場から離れたことで、恐怖よりも怒りがこみ上げてきた。だが何の力も無いぼくがあいつらに太刀打ちできるのだろうか。
 ぼくは走って疲労を感じるからだ休めるために、神社に向かった。林の階段の上にあるそこなら、奴らも気づかないだろう。ぼくは長い階段を登り鳥居を潜って社の入り口に腰を下ろす。
 深呼吸をして息を整わせて、ぼくは状況を整理する。
 奴らは聖痕と名乗っていた。そしてあのレントのことをオメガサークルの改造人間だと呼んでいた。
 その二つは組織名だろう。何の? 超能力者の? その二つは敵対しているのか。聖痕の奴らはぼくを仲間にすると言っていたな。ぼくが姉さんと同じ超能力者だからと。だとするとあのオメガサークルのレントは何が目的なんだ。
 あの焼死体はレントの仲間らしい、ギガフレアがそいつを殺したからあんなに怒っているということはわかる。しかしそれでもなぜその二つの組織はぼくの目の前に現れて敵対しているんだろうか。
 わからない。未だに情報が足りない気がする。
「みんな貴様が狙いなのだよ、滝沢丈」
 ふと、この人気の無い神社に、そんな声が響いた。
 ぼくは誰かがそこにいるのかと辺りを見回すが、そこには誰もいない。だが、それは空耳ではなく確かに聞こえてきた。
「どこを見ている、ここだ」
 ぼくはばっと空を見上げる。
 そこには点のような黒い影があった。まるで黒い星のようなそれは急速でこちらに向かって落下してきた。
 それは、その黒い星は、人間であった。
 轟音と共にその落下してきた人影は地面に激突し、凄まじい砂や石の粉塵を撒き散らしてぼくの視界を塞いだ。有り得ないことだがその人影は空から地面に落ちてきたのだ。まるで隕石のように。
「な、なんだ!」
 ぼくは両腕に顔を庇いながら、砂嵐が止むのを待った。やがて砂が引き、そこには一人の男がまるで何事も無かったかのように悠然と立っていた。
「やあ滝沢丈。いや、聖痕は貴様のことをアークジェットと呼んでいたな」
 その若い男はもう四月というのに全身を真っ黒なスーツとコートで覆い、手にも皮製の真っ黒な手袋をしていた。まるで夜の闇と同化しているような不気味な男。
「誰だお前は」
「オレはオメガサークルの改造人間、タクトだ」
 その男、タクトは素直にそう答える。まるで素性を知られても何も問題ないかのような、死に行くものに何を教えても問題ないとでも言いたげな口調であった。
「オメガサークル・・・・・・。さっきのデカブツの仲間か、お前たちは何だ、何が目的だ」
「貴様の抹殺だ。あの厄介な白き魔女の弟とである貴様も異能者だというなら、我々の強敵になりかねないからな。芽が出る前に貴様を始末させてもらう。悪く思うなよ」
 白き魔女。
 タクトはそう言った。
 ぼくがその弟だと、それはつまり白き魔女とは姉さんのこと。
「白き魔女・・・・・・姉さんのことなのか・・・・・・」
「そうだ、お前の姉はギガフレア同様、聖痕の殺し屋だったんだよ。あの聖痕の黒き魔女キャスパー・ウィスパーと対を成す最悪の異能者、それが白き魔女、お前の姉だ」
「う、嘘だ! 姉さんがあいつらと同じ人殺しなんて――」
「なんだ貴様知らないでいたのか。ふん、可哀想な奴だ、大好きなお姉さんに隠し事もされて、貴様は姉に愛されてなどいなかったのだろうな。くくく」
 タクトは馬鹿にしきったような表情でぼくのことを嗤っている。
 無知で愚かなぼくを嗤っている。
 ぼくは、姉さんのことを何も知らなかったのだ。
「なら、姉さんを殺したのはお前たちなのか・・・・・・」
 ぼくは目の前のタクトを睨みつける。姉さんが聖痕なのだとしたら、敵対している彼らオメガサークルが姉さんを殺したのではないか、そう考えていた。しかし、ぼくの考えは間違っていたのか、タクトは鼻でぼくの問いを笑った。
「なんだ、それすらも知らなかったのか。白き魔女を殺したのは我々ではない、双葉学園の連中だ。連中は危険分子であるお前の姉を、消したのさ」
 タクトは大げさに手を広げてジェスチャーをしていた。
 双葉学園、それは姉さんが通っていた学園の名前だ。
 なぜ今この場でその名前が出るんだ。
「ふぅ、しかしリップサービスが過ぎたようだな。オレも久々に仲間以外と会話したからつい口が滑ってしまったようだ。冥土の土産には十分だろ、後の詳しいはあの世で姉さんに聞くんだな」
 タクトはさっきまでの軽薄な表情を一瞬で変え、鋭い目でぼくを見つめる。そして、右手をゆっくりと上げ、まるでタクトを掲げる指揮者のようにその腕をぼくに向かって振った。
 危険を察知したぼくは横に飛び、地面に転がる。石礫が身体に当たり、痛いのだが、その判断は間違っていなかった。
 ぼくが先ほどまで居た場所は轟音と共に地面が思い切り削られ、その衝撃波は真後ろの社にぶち当たり、社を完全に破壊してしまった。決して小さくない社なのにも関わらず、爆発したように木片が当たりに飛び散る。もしあれが直撃していたらぼくの身体もああして粉々になってしまっていただろう。
 それを見てぼくはぞっとする間もなくその場から立ち上がらねばならなかった。タクトは避けたぼくに舌打ちしながら追撃を放とうと、ぼくに向かってまた手をかざしてきたのだ。
 ぼくはまた避けようと身体を立ち上がらせようとするが、タクトが手を振るほうが遥かに早く、衝撃波は目で見えないが地面を削り、砂埃を起しているのでこっちに向かって疾走してくるのが理解できた。ぼくは這いずりながらも避けようとしたが、間に合わず、足に衝撃波が直撃する。
 激痛。
 足の骨が砕かれ、脳に直接痛みが伝わってくるようだ。右足のみに直撃したのだが、ぼくの身体全体はその衝撃でぐるぐると回転して地面を転がっていく。タクトが放った衝撃波は勢い余ったように真後ろの林に当たり、木々を粉砕していく。
「ぐうああああ!」
 ぼくは今まで感じたことのない傷みに襲われ、足を押さえてその場から動けなくなってしまった。
「おいおい手こずらせるなよ。貴様だって楽に死にたいだろ。マゾじゃあるまいしこれ以上苦痛を味わいたいわけじゃねえだろ」
 動けない芋虫のように這いずり回るぼくを見下すようにタクトはゆっくりとぼくに近づき、その冷徹な目でぼくを見下ろした。
「ふん、だが異能に目覚めてもいない奴がオレの業を二度も直撃から逃れるなんてな。貴様はよくやったよ、さすがはあの白き魔女の弟だ。貴様が異能に目覚めていたらやはり厄介な相手になっていただろう。今この瞬間に殺せてよかったぜ」
 タクトは褒めているのかわかないようなことを言いながらぼくの顔面を思い切り蹴り上げた。顔の中心に傷みが走り、熱が集中していく。鼻血が洪水のように溢れ、神社の地面を汚していく。脳を揺らされたため、視界も朦朧としてくる。吐きたい気分だ。
 タクトはうずくまるぼくの顔を手で鷲づかみにする。
 ぼくの頭に直接あの衝撃波を叩き込むつもりなのだ。
 今度こそ確実に死ぬ。
 こんなことならギガフレアたちから逃げるんじゃなかった。
 今さら後悔しても遅く、ぼくは今ここで死ぬのだ。誰にも知られずに、頭を砕かれて死ぬのだ。脳漿をぶち撒け、無様に死ぬのだ。
 負け犬のように。
 虫のように。
 姉さんのように。
 死ぬ。
 死ぬ。
 死ぬのだ。


              4


 姉さんの肌は白かった。
 白く美しかった。だが肌以上に姉さんの髪の毛は真っ白だった。
 それは生まれつきで、原因はわからなかった。色素が完全に死んでいるようであった。周りからは奇異の目で見られていたが、ぼくはそんな姉さんの透き通るような白い髪の毛が大好きだった。
 幼い頃、眠るときは姉が隣にいて、その髪の毛に触れていないとぼくは眠れなくてよくぐずっていたものだ。
 姉さんはどんなに周りからその白い髪の毛をバカにされても、決して屈することなく、その芯の強い眼差しを返していた。
「丈が私の髪の毛を好きってだけで私は十分よ。他の人にどんなにバカにされても平気」
 姉さんはそう幼いぼくに語っていた。ぼくにはそれが嬉しかった。誇りに思っていた。
 愛する姉さんを護るためなら世界をも相手にできると。
 しかし、幼いぼくは無力で無知だった。
 九年前のある日、姉さんは母と一緒に家を出て行った。幼いぼくにはそれが理解できなかった。なぜ姉さんはぼくを置いていっていまったのだろうか。
 それは仕方のないことではあったが、ぼくは納得できなかった。
 姉さんを護りたい。
 ずっとそう思っていた。
 でも姉さんは死んだ。
 殺された。
 そしてぼくもここで死ぬ。
 いやだ、ぼくは姉さんを殺した奴に復讐するまでは死ねない。
 死んでたまるか、殺されてたまるものか。
 こんなところで!
「な、なんだ。何が起きている!?」
 タクトは混乱しているようにそう叫ぶ。
 当然だ、ぼくの顔を掴んでいる自分の手が手袋ごと焼き焦げているのだから。ジュウジュウと音をたて、タクトの手が焼けどで爛れていく。
「くそ!」
 タクトは諦めたようにぼくから手を離す、そして数歩距離をとり、またも手を振りかぶって衝撃波を放つ。
 だが、ぼくはそれを避けた。
 普通ならば有り得ないスピードでぼくはその見えない攻撃を避けた。まるでイナズマのような速さで。足を怪我しているのにも関わらずに。
 砂煙が舞い、地面が抉れるが、ぼくはやはり無傷であった。
 タクトは愕いたようにぼくを見つめている。当然だ、一番驚いているのはぼく自身なのだから。
「ちっ、お喋りなんかしてないでさっさと殺すべきだったな。目覚めたか、異能に」
 そう、ぼくは本能で自分が異能に目覚めていることを感じていた。
 体中に未知のエネルギーが溢れている、そんな感覚である。
 もう足の痛みはない。折れてはいるが、なぜか無理矢理動かすことができるようだ。
「しかし何の能力なんだお前・・・・・・その動きは肉体強化系のようだが、オレの手を焼いた所を見ると超能力系か・・・・・・?」
 ぼくもまだ自分自身の能力がなんなのかよくわからない。
 ただ一つわかることは、今のぼくは、強い。
「タクト。キミはぼくに勝てない。諦めろ」
「はっ! いきなりでかいこと言うじゃねえか。異能に目覚めてハイになってるようだな。ちょいとお灸をすえてやらねーとな。死ぬほどきっついのをよ!!」
 タクトは両手を指揮者のように振るい、次々と衝撃波を放ってくる。辺りの地面が次々と吹き飛んでいく。
 ぼくはタクトの手の動きを読み、その全てを避けていく。
 ぼくの身体はまるで雷のように素早く反応できる。今のぼくに彼の攻撃は当たりはしない。タクトとの距離一気に詰まっていき、タクトは焦りの表情を見せる。
「くそ!」
 タクトは足元に衝撃波を放ち、空中に思いきり跳躍をした。恐らくそれは最初に現れた時と同じ方法なのだろう。彼の能力は空気を圧縮した衝撃波を自由に操れるようだ。
 どうやらすぐに撤退の判断をしたらしい。未知数の相手は様子を見る、タクトは相当頭が切れるようだ。
 だが、逃がさない。
 殺す。
 ぼくは同じように跳躍し、空中に舞ったタクトに追いつく。
「貴様・・・・・・!」
「逃がさないぞタクト。お前はぼくの敵だ。最初の敵だ」
 タクトは衝撃波を放とうと、手を振りかざそうとするが、ぼくはその腕を思い切り掴み、それを封じる。
 そして、そのままタクトの腕を根元から引きちぎる。
 ぶつりと昆虫の足でも千切るように簡単にそれは出来た。ぼくの今の力ならそれが可能だ。人の身体の一部を引きちぎるリアルな感覚が掌に伝わってくる。
「うごあああああ!」
 タクトは腕がもがれた激痛に苦悶の表情を浮かべ、叫び声を上げる。
 今まで自分が圧倒していた相手に蹂躙される気分はどうだ、そう問いたくなるほどに今のぼくは暴力に陶酔していた。
 圧倒的な自分の力に。
 夜の闇に舞う血に、骨に、肉に。
 ぼくは笑っていた。
「滝沢丈おおおおおおおおお!」
 タクトは全力でぼくの力に抗おうとするが、ぼくはそれを無視し、空中で絡み合いながら、タクトの腹部目掛けて渾身の力を込めた蹴りを繰り出す。
 下に向かって蹴ったためにタクトは地面に凄まじい勢いで落下していく。そこは丁度神社の階段の途中で、タクトは石段に身体をぶつけ、その衝撃で石段そのものも破壊されていく。ぼくはバランスをとりながら階段に着地する。
 ぼくのキックを受けて、タクトの内臓は完全にぐちゃぐちゃに潰れてしまったのだろう、口から大量の血を吐いてうずくまっている。
「言っただろ、お前じゃぼくに勝てないよタクト」
「ああ、そのようだな。この化け物め・・・・・・」
 ぼくはその言葉に腹が立ち、握り締めたままの千切れたタクトの腕に力を入れてしまう。その瞬間凄まじい火花がぼくの手から放たれ、眩い光が当たりを包む。そしてタクトの腕はプスプスと焼き焦げてしまった。
 だがそれはギガフレアのような炎によるものではない、これは――
「なるほど、電気・・・・・・か・・・・・・」
 タクトが消え入りそうな声でそう言う。その通りに、これは電気だ。ぼくの腕から超強力な電気が発生し、タクトの腕を焼いてしまったのだ。これこそがぼくの能力の正体。
 聖痕がぼくのことを電磁加速《アークジェット》と呼んでいた理由がわかった。
「なるほど、な。自分自身の神経と筋肉に電気を伝わせて身体能力と反射神経を底上げしていたのか。電気の力で自分の肉体を加速、強化させているわけだ。しかし無意識でそこまで能力を使いこなすとはな・・・・・・さすがは白き魔女の弟、オレ如きが適う相手ではなかったわけだ」
 タクトは血を吐き散らしながらそう語る。
 自分がこのまま死ぬのを理解し、最後の言葉をひねり出そうとしているようだ。
「だがこんな無茶な能力の酷使は必ず貴様の身体を崩壊させるぞ」
「それがどうした。姉さんが死んだ時、ぼくの魂も同時に死んだ。姉さんの敵と戦う力を得るためなら、この肉体がどうなろうと構うものか」
 ぼくは吐き捨てるようにそう言い、死に逝くタクトを見下ろした。
 タクトは苦痛に顔を歪ませ、虫の息になっている。ほっておいてもこのまま死んでしまうだろう。
「楽になりたいか」
 ぼくはそう問う。
「マゾじゃねえからな。苦痛なく死にたいよオレは」
 タクトはそう答える。
 ぼくはその言葉を聞き、タクトの首に全力で蹴りをいれ、完全に折ってしまう。即死だった。
 タクトはこれで死んだ。
 ぼくが殺した。
 だがぼくに罪悪感は一切無かった。これからの戦いを思えば、武者震いすら感じるほどにぼくは高揚していた。
 ふと後ろを振り向き、町のほうを見ると、炎が爛々と輝いている。
 町が燃えていた。
 ぼくが育った故郷が、まるで新たなぼくの誕生を祝うように篝火の如く燃えている。
 何人もの人間たちの悲鳴が聞こえる。
 みんなみんな死んでいく。
 炎の中、死んでいく。


              5


 ぼくが神社の階段を降り、炎の町を見ていると、中から人影が出てきた。
 その人影は業火の中でも焦げ一つない。人影は二つ。
「よお、滝沢丈。逃げ出した先に安らぎはあったかい?」
 ギガフレアとヴェイプがそこにいた。
「もうジョー! 勝手にどこかいかないでよ!!」
 ヴェイプはぷりぷり怒りながらぼくの腕に纏わり付く。どうやらヴェイプの空間隔離の力で二人は炎の影響を受けないのだろう。
「思ったよりこいつに手こずってな。空間隔離を解いて全力で燃やしてやったよ。制御ができないからこの町も全部燃えちまったが、別にいいだろ」
 ギガフレアは丸こげになったレントの死体を引きずりながら、まるで町が燃えていることなどどうでもいいという風に笑っている。
「あ、何これすごい血! もう先に言ってよ服汚れちゃうじゃん!」
 ヴェイプは自分でくっついてきた癖にぼくを突き放す。確かに今のぼくの身体はタクトのねっとりとした返り血で真っ赤に染まっている。
 ギガフレアは視線をぼくから外す。後ろに転がっているタクトの死体を見つけたようだ。ギガフレアは指をぱちんと鳴らし、それと同時にタクトの死体が一瞬で燃え尽き、灰になってしまった。
「まさかオメガサークルの刺客を一人で始末したのか・・・・・・。どうやら異能に目覚めたようだな滝沢丈、いや、アークジェット」
 僕は血まみれになった拳を強く握りしめる。
 爪が皮膚を貫かんほどに、強く。
 それは、人殺しの実感をこの手に深く刻み込むかのように。
 もう日常に戻ることはできない。町も燃えた。家族も失った。
 ぼくの中の世界は姉さんが死んだ時に終わったのだ。
 今見えるこの世界は、姉さんを殺した間違った世界なのだ
「ふん、随分と綺麗な眼になったじゃないか。僕たちと同じ眼だ。世界を憎む者の眼だ。ようこそこちら側へ。ようこそ聖痕へ」
 ギガフレアは手をぼくに向かって差し出した。
 ぼくはその手をとり、握り返した。
 喜んでこの憎むべきこの世界の敵になろう。姉さんが魔女と呼ばれていたのなら、ぼくは世界を滅ぼす魔王になってやる。
 さあ戦いの始まりだ。
 死ぬまで綴ってやる、世界を憎む詩を。


                               つづく






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