【騎士の宿業1 AD1999 エンブリオ】


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A.D.1999 それは人知れず世界が生まれ変わった年。
地球の命運を変えた同年7月のある日の夕暮れは、まるで翌日訪れる世界の変革を祝福するかのごとく、
黄金色の陽光に照らされていた。

それが、最悪人類が拝む最後の夕日となるかも知れないと危惧していた者は、当時何人いたであろうか。

非常に数少ないが、その日を最後にさせないために、人知れず戦う者達が居た。
後の世に"Members in 1999"と称される、当時最高峰の異能者達による同盟。
老若男女を問わず秘密裏に集められた異能者たちの、小規模ではあるが、最初で最後の世界同盟。


―――※―――


表面上は一介の高校生として生活していた北神 静馬(きたがみ しずま)も、同盟の一員であった。
彼には、後に「ラルヴァ」と呼称されることになる、未知の生命体を素手にて倒滅せしめた際に、
その生命体を武装として手にするという力を持っており、その力で数え切れないほどの未知生命体を
討伐してきたという経歴を持つ。

『預言』に示されたその日、彼も例外なく同盟の召集を受け、決戦の地へ赴いていた。
彼が最後にこの世界に残したのは、帰ってくると誓ってそのままにした自室の私物と、幼馴染に宛てた
「大事な話があるから、次の休みに時間を作って欲しい」というメールだけ。


―――※―――

「さて、じゃ、やりますかね」
緊張感が足りなさ過ぎる、と周りからは中傷されることもあるが、その力は同盟内でも評価されるものである。
「直接、素手で倒滅しなければならない」という制約故に必要とされた高い身体能力と、時に人知を超え
異能者にも実現できない能力を発現しうることもあり、その能力は特筆されるべきものであった。

今回メンバーが向かうのは、『預言』の日に合わせるかのように太平洋上に出現した、「エンブリオ」と
命名された未知生命体。目的は、エンブリオへの進入、及び内部存在に敵性が確認された際の倒滅。
一対多数を前提に組まれた、殲滅力重視の能力者、その数10名程という少数精鋭による編成となっている。
その身姿は様々。年並の背格好に流行と動きやすさを考慮した服装の高校生、いかにも鍛え込んだ風貌の坊主、
およそ戦場に向かうには似つかわしくない可憐な少女、線は細いが利発そうな少年、風格漂う壮年の神父、
銃器の山の整備に余念のない流麗な女性、持ち込んだ資材の山に埋もれる者、精神集中に励む者、
見てくれにはまるで統一感はないが、その行動理念と目的は一つ。

「にしても、あのデカブツに入るにしたってこの人数、少なすぎね? せめて藤神門のバァ様でもいりゃ
 十二神将の戦力で押せそうなものだがなぁ……ま、バァ様歳だし、しゃあないか」
「静馬、もう少し言葉を弁えたほうがいいぞ。奥方様に対し無礼であるぞ」
「へいへーい。オマエはいっつも一言多いよなぁ、堂雪(どうせつ)よぉ」
「オマエが抜け作なだけだ、静馬。もう少し立場と言葉遣いを弁えろ」
同盟に下って以来一番長い付き合いになる、どこぞの破戒僧だという堂雪とそんな話も交えつつ、洋上に浮かぶ
エンブリオを目指す……のだが、

「なぁ、どう見ても殺る気満々の迎撃体勢にしか見えないのは俺だけかね?」

既にエンブリオの一部が開口しており、そこから敵性存在が多数出現、こちらの到着を待ち構えている。
「つかあの数、リアルにやべぇんじゃねぇの!? これまでの会戦とは桁が違ぇ!」
「静馬、怖気付いたか? 船に残って震えながら終わりを待っていてもいいんだぞ?」
「おやおや堂雪さん、何を仰いますかね? むしろやる気が出るってもんだ!」
限界ギリギリの速度で海上を驀進する高速艇の甲板から、半ば投げ出されるようにエンブリオ開口部に雪崩込む
能力者達。それを迎撃するために、開口部から、あるいは通路の奥から、湯水の如く湧き上がる未知の生命体。


人知れず世界が生まれ変わる前の、最後の戦いの幕開けの時、来る。


―――※―――


静馬は一人、半有機構造体の通路を駆ける。
元々作戦の主体が単独行動による殲滅掃討である以上、そうなるのは必然。
「ほいやっさ! っと……やっぱ追撃能力があるとはいえ、鎖鎌ってのは使いにくいなぁ!」
静馬が今未知生命体の腸を掻っ捌くのに用いたのは、以前狩った未知生命体を『変質』させた鎖鎌。

彼の能力は、先にも触れたように、素手で絶命せしめた未知生命体を、その生命体が持つ異能を封じた
装備品へ変質させる、というもの。
変質した未知生命体は携行品か装身具のいずれかになるが、但し同時に持てるのは携行品として一つ、
装身具として一つの合計二個のみ。使用しない時はメダルの形で保管される。
携行品と装身具の同時装着は可能だが、能力を発現させられるのはどちらか一つだけ。
形状は狩り倒した未知生命体の持つ能力と体構造に依存するところが大きく、本人の意思は不在。
そして、絶命せしめた未知生命体が携行品か装身具かのどちらになるかは、完全に運頼み。法則性はない。
さらに言えば、一度『変質』させてしまうと取得に対し拒否権はなく、新しく手に入れたものに置き換わる。
明らかに攻撃向けの能力を持つ装身具、防御・後方支援向け能力の武器となりうる可能性も充分にあるが、
取得してみるまで分からない。強くなるかも弱くなるかも、全ては運次第というリスキーな能力である。

装備を解除し生身を晒し、脆弱となった猫を噛み砕きに来る絶大な力を持つ窮鼠に相対する必要性がもたらす
リスクは計り知れないものであるが、その結果がランダムというのだから、やりきれないものがある。
だがそうしなければ、静馬には未知生命体と戦う術は拳のみになってしまう。

今の静馬の装備は、
「噛み付くまで狙い続ける」蛇に似た未知生命体が変質した鎖鎌
「波動の盾」と名付けられた、防御壁を生み出す能力を持つ四本腕の猿型未知生命体を変質させた籠手
この二種である。
鎖鎌をひとたび放てば、追撃の末に一太刀浴びせて戻ってくるまで「波動の盾」は使えないという、
実に相性の悪い武器防具の組み合わせである。
防御向け能力の未知生命体が防具に変質してくれたことだけが現状での救いといえば救いではあるが。

相対した未知生命体の群れを執念深い蛇の牙にて撃破しつつ、静馬はさらに先を目指す。


―――※―――


やがて通路が一際広く大きくなる。相変わらず生々しい通路を駆けつつ奥地を目指す静馬の前に現れたのは……
「でかっ!? ……こいつは、カバか?」
大きめの邸宅くらいのデカさはある図体をしているが、短胴短足、頭部というか口がやたらデカい。
まるで、幼児が描いたカバの落書きのようだ。

気だるそうに動く瞳が静馬を捕捉するや否や、
BMOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!
半有機体の床を豪快に揺らして、突如カバ型は静馬の想像を絶する速度で爆走を始め、
「うおおおおぉマジかああぁ!!! カバのくせに速ぇ!?」 *1
静馬は陸上部で慣らした健脚で突っ走るものの、カバ型はそれよりもなお速く突進、向き直った静馬は即座に
「『波動の盾』開放!」
突進に対し波動の盾で防御を図るも、突撃の衝撃までは相殺できず、静馬の体は容赦なく吹き飛ばされる!
「うぉああああぁぁああああ!?!?!?!?!」


超特急で吹き飛ばされ落下、受身も碌に取ることもできず、床に叩きつけられ転がらざるを得ない静馬だが、
「がっは!? っ痛つつ……怪我の功名、距離を離せたはいいが、あんなんどうするよ……?」
何とか身を起こす静馬に駆け寄る男が一人。その表情は、「やれやれ」、そのものである。
「威勢よく出て行った割に、転がって出てくるとは。実にオマエらしいなぁ静馬よ」
「やっかましいわ堂雪! ……そういうオマエこそ、面倒そうなの連れてきたなぁ」
堂雪が相対している方を一瞥し、静馬は軽く悪態を吐く。
「図体だけのカバほどではない、と思うがな。こちらはもっと厄介だ……よもや、空間切断などという能力を
 持ち合わせているとは」
鋼の翼持つ小型のプテラノドン、とでも言うべきか。今はホバリングでこちらの動向を探っている。
「ははっ、前門の虎に後門の狼、ってのはこういうことを言うのかねぇ……来るぞ!」
静馬は鎖鎌を振り回しプテラノドン型へ、堂雪は念仏を唱えつつカバ型へ、一直線に駆け抜ける!


―――※―――


鎖鎌を放ちつつ、プテラノドン型の動向を探るべく意気揚々と駆ける静馬であったが、
「空間切断、ってコイツはヤバすぎだろ!?」
あのデカい図体のカバ型は、同じくらいデカい堂雪の「金剛仁王」に任せてしまったほうがいい。
そう判断してカバをなすりつけはしたが、こっちもこっちで相当ヤバい。
何せどれだけ追撃かけても空間切り繋いで逃げられたらリセット、そして鎖鎌はその特性ゆえに延々命中するまで
プテラノドン型を追い続ける羽目になり、「波動の盾」が使えない……さすがに空間切断などという代物は、
生身で防げる訳がない。
直撃=即死、間違いない。
(くっそ、ああいうのが武器で手に入れば最高なんだがなぁ)
と考えていても、攻撃が当たらなければ倒せないわけで、皮算用には意味がない。

「どうやりゃ当たるかねぇ。都合よく捕捉できるような能力持ってる敵がいるとは思えんし……」
追いかけては逃げられ、を繰り返す鎖鎌とプテラノドン型とのチェイスを目で追いながら、策を練る。
常套策は狭い空間に追い込んで機動力を奪うことだが、地図もない場所でそんな都合のいいポイントを探せるとは
思えないというのがまず一点、そして空間断絶で逃げられたたオシマイというもう一点、以上から狭所作戦は
却下せざるを得ない。
となれば堂雪の「金剛仁王」と組んで、追い込んで捕縛してもらったところをバッサリ、というのも手だが、
そうなるとカバ型を相手するヤツが居なくなる。

二体二。数では互角かもしれないが、質がケタ違いすぎる。二体一にできても勝てるか危うい。
「さっすが母艦、奥地は精鋭揃いってか……!」
今更ながらに、本拠地の恐ろしさを身を以って思い知らされる。


―――※―――


「出でよ、『金剛仁王』!」
数珠を鳴らしての念仏が終わると同時に、堂雪の真下から身の丈8mはある巨漢が姿を現す。
突進してくるカバ型未知生命体に対し、堂雪を肩に乗せた金剛仁王は敢然と立ち向かう。
カバ型の猛突撃を真正面から受け止める金剛仁王、だが
「ぐぅぅぅぅっ! なんという突進力! よもや金剛仁王が押されようとは……っ!」
じりじりと押される金剛仁王、尚も歩みを止めないカバ型……だが、カバ型は頭を振るい金剛仁王の
拘束を振りほどき、巨大な口を大きく開くと息を吸い込み始める。
「吸い込まれる……! よもや、こちらを吸い込むつもりか!?」
だがしかし、堂雪は見てしまった。流れ込む空気の流れが一点に収束する光景を。
そして、その一点を中心として、景色にゆがみが発生していることを。
吸引された空気、否、空間がカバ型の口内に凝集され、そして
「馬鹿な……空間の圧縮、だとぉ!?」

限界まで凝集圧縮された空間は、カバ型の吐き出す息に合わせるように、元のあるべき姿へ戻ろうと、
戒めから解き放たれた自由への讃歌の如くに、一斉に解き放たれる。
その勢いは衝撃波を生み、金剛仁王の巨躯すら容易に弾き飛ばす!
「ぬぉああああああああぁ!!」


金剛仁王は霧消し、堂雪は為すすべなく弾き飛ばされ、床を転がる。
「ぐぅ、ぐぬぬぬ……よもや、あのような能力を持っていようとは」
「いやっふー堂雪、そちらも景気よさそうで、何より何より」
結局のところ、お互い決定打に欠いたままの再合流を果たす静馬と堂雪。
静馬はニヤニヤとした表情を浮かべてはいるが、同時の余裕の無さも滲ませていた。

「静馬……貴様、厄介なものに目を付けられおってからに……!」
「お互い様だ! 今だに鎌が戻ってこなくて防御が寂しいんだよ! 何とかしてくれよ、あのイカサマ回避!」
「で、何か閃いたのか? こういう時は、お前の足りない頭でも少しは役立つかも知れん」
「相っ変わらず一言多いなぁ! とりあえず……そうだな、あのカバとプテラノドンを食い合いさせるか?」
「空間切断と空間圧縮、か。さて、食い合いさせて吉と出るか凶と出るか」
「つっても、どうするよ? この相性の悪さはもう最悪と断言していいだろうよ。コイツはちょっと、いや、
 かーなーりヤンチャが過ぎるぜ?」
「だが、ここには我々二人だけだ。ならば我々が、やるしかないだろう!」


「にしても、いい加減戻ってこないこの馬鹿蛇、どうにかならんかね?」
相変わらずプテラノドン型を追ったまま戻ってこない鎖鎌に、静馬はやりきれなさを隠しきれなかった。


―――※―――


再び世に現れ出でた金剛仁王は、静馬と堂雪を肩に乗せ激走していた。
それを追従、猛撃せんとカバ型も激走する。
「ほんっと、マジで速ぇなぁあのカバ。挙句に暫く直線ときたもんだ。仁王ちゃん大丈夫か?」
「茶化すな! そもそも誰のせいでこうなったと思っている!」
「へいへーい……つか相当移動してるはずなのに、外観以上に広くないか?」
「大方、『エンブリオ』自体が空間圧縮を利用して容積以上のスペースを生み出しているんだろう。
 でなければ母艦など務まるはずもなかろう」
「にゃるほど、道理でやたら広いし、これだけ駆けずり回っても堂雪以外誰とも合流できないわけだ」
テンペスターやエルマドニックといった、対多数戦向け能力者は豪快かつ派手に派手に暴れてると思われるが、
その衝撃がないというのが、さらに推察の裏付けを強くする。
この空間は、閉じているはずなのに果てしなく広い。この矛盾の行き着く先は……?

「やっと見つけたぞ先端! ったく、半分消えかかってんじゃねーかよー……伸びるほど消耗すんだから
 程ほどにして欲しいぜ、まったくよぉ」
「先端があった、ということは、ヤツはこの近くに」
「ああ、居るね……右上!」

kyooooooooooooooo!!
表現しようのない啼き声と共に、プテラノドン型が空を割って飛来する。
「どうする静馬、捉えようのない高速の敵と圧倒的なまでの剛力無双、我ら二人には荷が勝ちすぎる!」
「だぁぁぁ! こういうときに『ブラストアーク』か『マクロフォビア』が居りゃ楽になるんだがよぉ!
 留守番のグリ婆は諦めるとして……おーいテンペっちゃ~ん! おらんかえ~?」

呼ぶ声は空しく木霊するだけであっ―――
たかに思えた刹那、熱線が迸り、金剛仁王を切り刻まんとするプテラノドン型の軌道を大きく逸らさせる。
「おおう、コイツは!」
「紛れもなく『ブラストアーク』、ということは」
通路の向こう、熱線が放たれた方角から、幼さのやや残るハスキーな声が響く。
「間に合いましたか、シズマ様!」
「おう! ナイスだテンペっちゃん! あとで頭撫でちゃる!」
「お役に立てて何よりです、シズマ様ァ!」

ブルネットの長髪を揺らして駆け寄ってくるのは、フィルリオーナ・テンペスター、16歳。
体内で練り上げた魂源力を熱線として放出する異能『ブラストアーク』の当代保持者にして、本作戦における
最年少参加者である。
金剛仁王の手がテンペスターを救い上げ、静馬と堂雪が控える右肩へ誘う。
「助かったよテンペス」
「No thank you. Please be quiet, baldness? ねねシズマ様、どうでしたどうでしたぁ?」
「おう! サンキューなテンペっちゃん! さて、これで少なくともこの鎖鎌よりは効果の高そうな攻撃手段が
 手に入ったわけだ。ここから反撃といくか!」
「Yes, sir!」
「……」
やたらと乗り気のテンペスターと打って変わり、眉間にしわを寄せ険しい表情をする堂雪。
「っておい、テンション低いなぁ堂雪よぉ。『ハゲ黙れ』言われた位でしょげんなって!」
「お前ら、後で覚えていろ……で、どうするつもりだ?」
「とりあえずぅ、禿茶瓶に肉壁になってもらってぇ、諸共打ち抜く、ってのはどうでしょう、シズマ様?」
「テンペっちゃん、不穏当な発言は慎むように。とりあえず、どっちか一匹だけでも確実に沈めたい」
「とはいうものの今来たばっかりなんで、豚野郎と紙飛行機がどんな能力か、教えてくださいな?」

二体の動向に注視しつつ、三人は二体の特性を共有、打開策を練り始める。


―――※―――


よし、と膝を叩いて立ち上がる静馬に続いて、テンペスターと堂雪も意を決して立ち上がる。
「行き当たりばったり感満点だが、腰を据えて話し合える状況でない以上は止むを得ん。静馬、テンペスター、
 二人とも心の準備はいいか?」
「おう、やったろーじゃん」
「シズマ様が仕切ればいいのに……ま、頑張りましょうか」

金剛仁王の肩から静馬とテンペスターが降りたとき、タイミングが良いのか悪いのか、遠方よりけたたましい
大音声が鳴り響く。
kyoeeeeeeeeeeeee!!!
飛来するプテラノドン型に相対するは静馬とテンペスター。
カバ型は堂雪の金剛仁王が押さえ込む。互いの激突は、半有機体の床を踏み砕き、旋風を巻き起こす。
「ぐぬぬぅぅぅ……静馬、長くは持たんぞ!」
「わーってるって、任せとけ! そいじゃテンペっちゃん失礼するよ……よっこいしょっと」
「わひゃぁ!? あ、あううぅ……」
「肩車くらい我慢しろっての! はい集中集中! 目標はアレ、OK?」
静馬はテンペスターを肩車し、彼女の体力・走力をカバーすると共に、彼女を「移動砲台」へと変化させる。
発射体勢に入ると身動きが取れなくなるのが「ブラストアーク」の欠点の一つではあるが、肩車する人の
努力さえあれば、その弱点だけは回避できる。
静馬の鎖鎌がプテラノドン型を追い、逃げ道を低火力にセーブした「ブラストアーク」で狭める。
当たれば御の字なのは言うまでもないが、あくまでも目的は牽制と誘導。

「くっそ、一発位当たれよなぁ!」
「はぁ、ふぅ、そろそろ、辛いですぅ……連射はやっぱり厳しい……」
「あともうちょい頑張ってくれ! 無茶を承知なのは分かってるが!」
「大丈夫です、少なくとも禿茶瓶より先に根をあげるなんてことはありえません!」
「そいつは結構、いい返事だ……っとぉ! よし、これで誘い込み完了、かな」
「あとは禿茶瓶次第、ですね……」
自動追尾の鎖鎌と散発的なブラストアークで追いたてつつ、プテラノドン型の後を追う。


その先には……
「ぐ、ぬ、ぬぅぅぅぅ! やっと来たか静馬!」
堂雪と金剛仁王は、カバ型の空間圧縮の超吸引に耐えつつ、その背にプテラノドン型が来るのを待っていた。
「こっちはいいぞ! そろそろ退避しろ堂雪!」
「ああ、外すなよテンペスター!」
「貴方に言われるまでもありませんわ! はぁ、すぅぅ……」
金剛仁王がカバ型との力比べを止めて退避した瞬間、口腔内の圧縮空間が弾け、その衝撃波は三人のみならず
プテラノドン型にも牙を突き立て、カバ型以外全員の全身を容赦なく叩く。
「『波動の盾』開放! ぐぬぬぬぬっぅぅぅ……」
自身とテンペスターの身を「波動の盾」で防ぎつつ必勝の機を探る静馬と、その上で機が訪れる瞬間に備え
力を蓄えるテンペスター。
もがくプテラノドン型、カバ型の口、テンペスター、一直線に並ぶ瞬間が、我慢の末にようやく訪れる。
「よし今だテンペっちゃん! Get set, ready …… fire!」
予想外の衝撃を食らい無様に宙を舞うプテラノドン型の背に、テンペスターの口から放たれる超高熱線、
戦神の光鎗<ブラストアーク>が突き刺さる!
「そのまま、押し込めぇ!」

gyoooaaaaaaaaaooooooo!?!?!
絶叫を撒き散らしながら吹っ飛ぶプテラノドン型は、今だ大きく開かれたカバ型の口、そして喉の奥へと
突き込まれ……カバ型の口が閉じ、ごくり、喉が鳴る。
「いよっしゃ狙い通り! はっは、流石にお仲間からの予想外の攻撃にまでは対応できなかったようだな!」
「油断するな静馬、まだカバが残っ」

めきょ べき ばり

一瞬の沈黙。
カバ型の背中が割れ、翼が生える。カバ型の巨体には明らかに分不相応な小ささの、鋼の刃で出来た翼。
カバ型未知生命体の全身が、翼が生えた部位から変質を始め、カバとも龍ともつかない容姿へと変貌する。
「何……だと……!?」
「たべ、た……?」
変態を終えたとき、そこには、先ほどまでよりも遙かに強大な敵が、聳え立っていた。
「マジかよ……さっすがに、ここまでくると冗談にしか見えんぞ……」

カバ型の龍、略してカバ龍が、禍々しく吼える。
静馬らに今出来ることは、ただ一つ。


ツールボックス

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