【魔女と空 おまけ】


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【魔女と空】 おまけ
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「どうすりゃ遠野みたいに女子と話せるようになるんだ?」
 クルエントゥスとの遭遇戦から二日後。久世空太は、早くも回復し登校していた。今は昼休み、クラスメイトの遠野彼方と雑談しているうちにポロリと疑問がこぼれ出た。
「は?」
 遠野彼方という人間は物怖じしない。たとえ相手が誰であろうとも普通に会話が出来る。
 朝の挨拶にさえ勇気がいるような美少女であれ、あっさりと声をかけ、あまつさえそのまま楽しそうに話題をつないでゆく。これは多感な年頃の少年達にとってなかなか出来ることではない。どうすればそんな真似ができるのだろう。
「女子って……そっちだって普通に話してるじゃない」
 空太はこれまで異性と付き合った経験がない。かといって異性が苦手なわけでもない。ただのクラスメイトや戦友としてならば、声をかけるのはたやすいことだ。
 だが、今の空太には少し意識している相手がいる。──瀬野葉月。生意気で、そのくせ寂しがりな魔女だ
 吊り橋効果などとは言いたくはないがあの件以来、葉月のことが気になっていた。しかしその後も学園への報告の際に二度ほど顔を合わせているが、とても楽しく会話ができたとは言えなかった。どこか不機嫌そうな顔をしていたことを思い出す。
 さらには明後日の放課後には先日のメンバーで打ち上げと称してカラオケ屋にてちょっとしたパーティーを企画している。いつもならば楽しむこともできるのだが、葉月を前にしてどう振る舞えば良いのか分からなくなっていた。
 俺は中等部のガキか、と嘆いてしまうのも仕方が無いだろう。
「普通、か。いやそうなんだけど、そうじゃなくてだな。……なんというか遠野ってモテるような会話得意だろ」
 空太が知る限り、女子達の彼方への評価に悪いものはない。
『遠野くんは楽なんだよ、色々とね』
 とは、とある少女の彼方への評である。
 彼方は異性を前にしても照れたりはしない。照れ隠しに邪険にしたりしないし、恥ずかしさから傷つけるような言葉を吐いたりもしない。だからこそ『楽』なのだろう。
 別に口説き文句を知りたいというわけではない。楽しませるか、せめて一緒にいて不機嫌にさせない位の事ができればいい。
「ああ、なるほど。そういうことね」
 なんとなく言いたいことは伝わったらしい。ここでからかったりしないのが良いところだ。
「相手が誰でも同じだと思うよ。普通でいいのに」
 そして気軽にそんなことを言うのが悪いところだ。それが出来れば苦労はしないのだ。残念だがウイットに富んだ会話術もなければ度胸もない。
「それに僕だって別にモテるわけじゃないよ」
 いつものぽややんとした笑みではなく、どこか悟ったような笑みを浮かべて遠くを見やる彼方。
 確かに女性と接することは多くとも、浮いた話は聞いた事が無い。商店街のおばちゃんや子供達に慕われるというのもここで言うモテるとは違うだろう。
 空太が知る限り、女子達の彼方の評価に悪いものはないが、同時に恋愛対象としての評価については良いものは聞いたことがない。皆「友達としてならいいんだけどねー」と口を揃えて言う。
 彼方とて年頃の少年である。女性とおつきあいしたいと思うし、懸想した相手がいなかった訳ではない。しかし色々あった末に、気がつけばお互いに良い友人になってしまっていたりするのである。
 信用も信頼も出来るが、いまさら恋愛感情は抱けないという『異性間に友情は成立するのか?』という命題の答えにひとつの参考例として挙げてしまっても良いくらいの見事な友情関係を構築してしまうのだ。
「それはそれでいいんだけどさ」
「いいのか」
「友達や仲間が多いのはいい事だと思うよ?」
 100人の敵がいても100人の味方がいればこちらは100と1人。戦えば勝つ。結果が分かっていればそもそも戦わなくて済むだろう。と、まるで武道の達人のような事を言う。そりゃあ無茶だろうと心の中で突っ込んでおく。
「猫にはモテてるみたいだけどな」
「いやあ、それほどでも」
 てれてれと頭をかく。何でそこで照れるんだよ、とこのクラスメイトに彼女が出来ない理由がなんとなく分かったような気がした。
「まあでもさ」
 と言葉を置いて、逸れていく話題を戻す。
「相手は中等部の子なんだし、そんなに気取ったこと考えなくてもいいと思うよ」
「え? 中等部?」
 確かにあの魔女達は後輩だろうし、見るからに中等部の学生だと分かる。しかし自分が気にしている少女は瀬野葉月であって、他の魔女ではないのだ。誰と勘違いしているのだろうか。
「五人とも二年生っていうから、13歳か14だよね。あの歳であれだけ飛べるんだから将来が楽しみだってキリエさんが自慢していたよ」
 怪我をしているキリエに代わって報告書を代筆したのだが、弟子達を褒めまくるキリエの言うままでは客観性に欠けるとされて二度ほど書き直すはめになったとこぼす。
 スパルタではあるがあれで子煩悩的なところが強いらしい。決して当人達にもらしたりはしないようだが。
「13か14歳……」
「確か久世くんにも中二の妹さんがいるんだよね? ならそういうのをふまえて気軽に話せばいいと思うよ。うん」
 その彼方の言葉に妹の姿が思い浮かぶ。自分と同じく異能に目覚め、双葉学園に在籍中だ。無口で人付き合いが苦手で少々ブラコン気味なのが心配だが、なんとか友達もできてうまくやっているらしい。
 なるほど、そういう接し方もありなのか。ってそうではなくて、と首を振る。
 そういえば最初の自己紹介で二年生とは言っていたが高等部とは言ってなかったと思う。それにしても──
「……中二であんなにでかいのか?」
「あー、確かにねぇ。僕よりこのくらい低かったから167、8かな? 女の子としては背が高いよね」
 でもキリエさんなんか182センチもあるんだよ、5センチいやせめて3センチ分けてくれないかなぁ、と続ける彼方の言葉は空太の耳には届いていなかった。
 思わず左手を見る。わきわき。咄嗟の行為とはいえ鷲掴みだ。
 おっぱい星人の三島大地とは違って女性のバストサイズやカップ数が分かるわけではない。ただ実際に触れての圧倒的な量感が脳裏に蘇っていた。
「……中二であれは育ち過ぎだろ」
 わきわき。



「んぅっ」
 ふいに疼いた乳房の痛みに、瀬野葉月は思わず声をあげた。
 場所はグラウンド。体操着とブルマを着て同期の魔女達と五人でランニング中だ。
 魔女式航空研究部──通称『魔女研』。航空研究部から派生した部員15名のそれは、神秘的な印象と違って体育会系の部活動であることはあまり知られていない。
 この五人は、つい先日ラルヴァ討伐の初陣を飾ったばかりではあるが、一日の休みをおいただけで放課後の教練が再開されていた。
 基礎体力作りの走り込み。
 彼女達中等部組は、帚に跨がるよりこうして身体を動かす時間の方が長い。魔女の言う魔力の操作や飛行技術の研鑽よりも優先されるのが体力作りである。
 グラウンドの隅ではベンチに座ったキリエが目を光らせている。見た目に反して実に面倒見のいいキリエは、弟子の教育には熱心で、そしてひたすらスパルタであった。
「ふぅ」
 疼いた胸につい手をやる葉月。
 ──あの時、久世空太が力いっぱいに鷲掴みしたそれには思った通りくっきりと痣が残っていた。
 あの場では文句を言うどころではなかったが、乙女の胸をなんだと思っているのだろうか。触るどころか鷲掴み、そう! わーしーづーかーみーまで!!
 きゅーっと顔が紅潮していくのは羞恥か怒りのせいか。
 だいたいあの男はデリカシーがない。あの後二度ほど顔を合わせて報告書を仕上げたというのに、そのことについて謝るどころか一言も触れはしなかったのだ。
 そのくせ飛行については饒舌になって、まるで子供のように目を輝かせるものだからどうしようもない。まさしく空バカだ。まあ笑うとちょっと子供ぽくて可愛いといえなくもないけど。
 このこの、と空想上の空太のお尻を帚で叩いて満足したところで、ふと恐ろしい想像が浮かんだ。
 ──ひょっとしてアイツ、小さい方がいいとか言うんじゃ?
 思わず後続の魔女達を振り返る。大切な仲間だ。その内訳は並みが二人。自分ほどではないが大きいのが一人。そしてちっちゃいのが一人。むろんバストサイズのことである。
 いやいやいや、そんなまさか。
 不安を振り払うように首を振ってスピードをあげる。問題のふたつのふくらみがぶるんと揺れた。
「葉月ちゃんまた変なこと考えてる」
「どーせ久世先輩のことでしょ」
「ああ、とうとう葉月ちゃんが変なキャラになってしまいました」
「……色ぼけ」
 背後から聞こえよがしの会話が届く。
「ああもう、聞こえてるわよ! アンタたち!」
 逃げるようにさらにダッシュ。しかし引き離すどころか追いつかれてゆく。飛行能力では遅れをとっていても、脚力に関しては他の四人の方が上だった。
「……そんな重いものをふたつもつけているから遅いのよ」
 呼吸も乱さずに呟きながら葉月に追いついた。横目で揺れまくるそれに冷たい視線を送ってくる。
 一方、葉月もまったく揺れないそれを見返す。
 背は低く、起伏に乏しく、手足だけがすらりと長い。しかし同性の葉月から見てもある種独特の愛らしさを感じる容姿だ。ダッコしてぎゅーしたいくらい。
 そちら方面の趣味をもつとすれば、明らかに葉月より彼女の方を選ぶだろう。
 これまで恋愛とは無縁であったとはいえ、女としては自分の容姿にはこだわりを持っていたし、自信もあった。92センチのFカップ。憧れのキリエにだって負けてはいない。
 しかしそれが特殊な性癖を持つ相手に通じるであろうか? 小さい方がいいとなると、明らかに自分は範疇外ではないか。
 いや、むしろマイナス効果? 自分の胸を見た空太がフッと鼻で笑う姿が脳裏に浮かんだ。
 ガーンという擬音つきでショックを受けている間に、あっさりと引き離された。
「おおー、はりきってるねー」
「帚だと一番遅いのに走るの速いんだよね」
「三島先輩に言われた事を気にしてるんですよ」
「……胸の大きさが魔力の強さではないということを証明してあげるわ」
 ぐるぐると嫌な想像が頭を巡るうちに、四人とも葉月を追い抜いていった。
「おっさきー」
『瀬野、何をしている。走れ! 走れー!』
 拡声器を使ってキリエが叫ぶ。
「……」
 ──ブツリ
 頭の中でぐしゃぐしゃと絡まってしまった糸を引きちぎる。
 一見クールに見えて激しやすいのが葉月という少女である。
 ああそう、そういうことならいいわ、と火が点いた。
 週末には打ち上げであの時の面子が揃うのだ。ならば改めて確かめてあげようじゃないの。
「見てなさい、久世空太。わたしは音速を越えた魔女なのよ」
 そう訳の分からない言葉を呟いて、瀬野葉月はいくわよ、と闘志を燃やして四人の背を追うのであった。


 ──自分の魅力をおかしなやり方でアピールする瀬野葉月と、妹に対するように接する久世空太。二人の関係が進展するのは、まだまだ先のお話し。


おわり






フェードアウト
画面隅でビャコにゃんががおーと叫ぶ





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