【トモダチの話をしてみようと思う】


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――私の話をしてみようと思う。

私は双葉学園に通う2年生。身長はクラスでも前から数えたほうが早い。
勉強は得意な方で運動は少し苦手。人と接するのはもっと苦手。
……終わってしまった。
話し始める前はもっといっぱいっぱい話せるかもしれないと思っていたのだけれど、
思い起こせば話せるようなことがないもないことに気が付いてしまった。
……困った。
嗚呼、そうだ。一つだけ。一つだけあった。私の自慢の、ううん、私の大切なトモダチ。
今日はその話をしてみようと思う。

その前に私の能力について話をしておかなければならないと思う。
私の能力――『共有者』。
他人に私の意思を、感情を、痛みを与える力。
私に他人の意思を、感情を、痛みを伝える力。
この力のおかげで私は、私たちの一族は代々魔女として忌み嫌われてきた。
なんだかこれだけでさっきの説明より長くなってしまったのは気のせいだろうか。
何はともあれこの力で私は子供の頃から家族以外の、事情を知る使用人からは避けられ、
事情を知らずとも本能で理解していた同級生たちからは距離を置かれ不気味な「ナニカ」を見る目で見られていた。
思い返せば酷いものだったが私は悲しくはなかったし辛くもなかった。
だって――最初からトモダチが与えてくれる温もりなんてものを知らなかったのだから。

さて、そのトモダチと出会った時のことを話そうと思う。
彼女は――言い忘れていたが女性なのだが同じクラスになった時に隣になった人だった。
身長が高く、胸が大きく、胸が大きく、やっぱり胸が大きかった。
正直に話すと初めて会った時の顔を思い出せないのではあるがそれはまあ異性でも同性でも仕方のないことだと思う。
そんな彼女と初めて話をしたのは昼休みの時間のことだった。
訂正しよう。「彼女の声が聞こえてきたのは」だ。
あまりにも強すぎる意思は時として私の能力に反応し関係なしに聞こえてきてしまう。
盗聴のようであまり気分のいいものではないがこれでも訓練したほうで随分とマシになったものなのである。
幼い頃は頭が割れそうなほどの他人の心が流れ込んできて人を本当に信じられなくなっていた時期もあったほど。
……もう一度訂正しよう。その時ですら私は人間を信用してなど居なかった。
なまじ使い方を覚えた能力のおかげでより鮮明に人の醜い心のうちを知ることが出来てしまったからだ。
そしてそんな使い方をしている自分に更に自己嫌悪を持ってしまった。
私は人間が嫌いだったがそれ以上に私は私が嫌いだった。
話が脱線してしまったので戻そう。
その時、「彼女の声が聞こえてきた」のだ。
第一声は「玉子焼き♪ 玉子焼き♪」。
我が心の耳を疑ったが確かに私のお弁当には玉子焼きが入っていた。
第二声は「おおぅ! タコさんウィンナーもあるじゃないかぃ!!」
確かにある。あるけど。あるんだけれど。
彼女は私の方をチラ見するどころか凝視しながら広げたお弁当箱と私の顔を行ったりきたりし、
涎を垂らしながらやはりその視線をお弁当箱と顔を行ったりきたりしたりさせた。
更に高まる心の中の声に絶えかねて私は思わずお弁当箱を突き出しこういってしまった。
「よかったら少し食べますか?」
と。
後悔はその返事を聞く前にしてしまった。
「ごちそうさま!!」
彼女の生の第一声。弁当箱は空である。
「おおぅいいのかぃ!?」
彼女の生の第二声。弁当箱はさっきから空である。
もちろんこのやり取りは間違っては居ない。
「ごちそうさま」が先で「いただきます」があとだった。
そんな珍妙な光景に私は思わず吹き出して、どうしようもなくおかしくて、この数年で初めて大きな声を出して笑ってしまった。
何がおかしかったのか分からないという表情の彼女をよそに私は笑い続け、笑い終える頃には休み時間は終わりを告げていた。
そして私は何を血迷ったのか、学園に入って以来一度もしたことのなかった行為――「自分から話しかける」を実践することになった。
理由は簡単なものだった。私に、学園で心を読む化物と知らない人間が居ないはずの私に、平然と近づいて来た彼女に興味が湧いたからだ。
今となってはなんとも馬鹿みたいな理由で近づいて来たのを知ったあとではあるがこれが始まり。

そう、これが始まり。
私と彼女の――アクリスとの始まり。
私のことを『ミィちゃん』とあだ名で呼んでくれた初めてのトモダチとの始まり。
そしてこれは私たち『トリオ+1』が結成される少し前のお話だ。



最後になったが私の名は「織式部 有栖」
どこに「みぃ」などと付いているのだろうか。
私は知らない。


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