【Bossのなつやすみ~成宮金太郎編~】


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「Hey、Boss。そろそろ起きないとチコクするヨ」
「うぅん、あと五分」
 黒いスーツを着込みサングラスをかけ、褐色の肌をした大男が、寝坊癖のある少年と母親のような会話をしている。
「Boss……マネーはイチ秒でウゴクといつも言うヨ」
「分かった、今起きる。五分で行くから外で待ってろ」
 少年はベッドから出て男に指示を出した。
「OKヘリで待ってるヨ」
 男が出て行った部屋で、少年は身支度を始めた。
 少年の名は成宮金太郎、彼を起こした大男は個人的に雇っている秘書のアダムスという。
 金太郎は普段双葉学園の中を出ないため、外での活動を一切任せている有能な男だ。
 その人間の総資産と金運が↑↓-の三種類でわかる金太郎が見て、いつも上向きの金運を保っているのが何とも頼もしい。
 今朝は男子寮に入ってきていたが、それは一重に金太郎が学園にしている莫大な寄付に物を言わせた特別措置である。
「ジャスト五分さすがBossネ」
「いつも言ってるだろ、金は一秒で動くって」
 これも特別に着陸させたヘリに乗りながら金太郎が言った。
 今学園は夏休み中である。
 とは言っても学園の生徒の夏休みはとても短い。
 授業は無くても、ラルヴァ出現のための待機があるからだ。
 金太郎は出動のメンバーには入っていないが、結局学園に残る事になり、学園を離れられるのは十日程であった。
「Boss今日は楽しそうネ、やはりファミリーに会うの楽しみカ?」
「べ、別に関係ねーだろ」
「HAHAHA、そういうところBossもまだ子供ネ。私そういうの好きよ」
 照れ隠しに金太郎は操縦席を蹴りつける。
「NO、アブないよ。オちるから大人しくするヨ、OK?」
「けっ」
 金太郎はふて腐れて窓の外を見ている。こんな風に金太郎が年相応の反応を見せるのは、今ではアダムスの前だけであった。

 程なくしてヘリが目的地に降り立つ。
 今回の休みに合わせて開発した別荘地だ。
 ヘリから出た金太郎を迎えるため、現地の人々は盛大なパレードを催していた。
「何だこれは」
「みんなBossにお礼言いたいヨ。それじゃバカンス楽しむネ」
 立てた親指を突き出し、アダムスがヘリを離陸させていった。
 金太郎が周りのテンションの高さに困惑していると、華やかな歓迎の輪から二人の壮年の男が金太郎に近づいてきていた。
「この度は本当にありがとうございました。ウチの建材を発注してくれたおかげで、私共社員一同路頭に迷わずに済みました」
 男の一人が涙を浮かべて金太郎に頭を下げる。
 助けてくれと泣きついてきた時はひどいマイナスだった総資産もプラスになり、金運も上を向いているようだ。
「べ、別に、どうせ作るなら良い物を使いたかっただけだし……」
 どっか行けとしっしと振り出した金太郎の手を掴み、男が泣き崩れる。
「私共も、別荘地として整備してくれたおかげで、最低限の開発で仕事が増えました。成宮様にはなんとお礼を言ったら良いものか想像もできません」
 もう一人の男が穏やかな笑顔で話しかけてくる。
「あーもう、とにかくあんたらのためにやった事じゃねーから、蓮次郎が虫捕りがしたいっていうから場所探してただけだし。なあ、そういう訳だからもう行っていいかな」
「それはすみませんでした。ただ本当に村一同感謝の気持ちを伝えたいと思ってやったことです。どうぞ許してやってください」
 笑ってはいるが金運はまだ-で、こちらはまだまだこれからといったところか。
「怒ってる訳じゃねぇよ」
 ただ学校の朝礼をはじめ、このてのイベントはダルいのである。
「あー、兄ちゃんもう来てる!」
 パレードの後方から声が聞こえた。
 麦わら帽子に、肩から提げた虫かご、体と同じくらいの長さの虫捕り網を持って完全な虫捕り少年となった弟の蓮次郎だ。
「兄ちゃんスゲーよ、ここ。めちゃくちゃデケぇクワガタがいるよ」
 嬉しそうに虫かごを見せてくる。
「うわ、凄いな蓮次郎お前が捕ったのか」
「うん」
 満面の笑みで答える蓮次郎とそれを暖かく見守る金太郎。
「よーし、どっちが強いの捕まえれるか勝負だ」
「うん」
 駆けていく二人。生まれてすぐ父を亡くした蓮次郎にとって、金太郎は兄であると同時に半分父親のような存在だった。
「ああそうだ、あんたら年賀状とか送ってくるなよな、めちゃめちゃ来るから、ハガキも景品も置くとこ無いんだよ」
 途中で金太郎が振り返り挨拶に来た大人二人に言った。
「兄ちゃーん、早く、早くー」
 少し先で蓮次郎が手を振って待っている。
「わかった、今行くから」

 その日の夜アダムスから連絡があった。
「ああオレだ。今回の面会希望者は何人だ? そんなにか、わかった。どっか一カ所に集めておけ。それと全員分の資料も作っておけよ。明日から一週間完全にオフにするけど、明けたらすぐ見るから」
 ちなみに今回金太郎が作った別荘地は、日本の伝統建築がすぐ近くで見られると話題になり、海外でバカ売れしたという。
 その売り上げと、今後の観光収入で二、三年後には黒字に転換するだろう。
 こうして世界経済を動かすビジネスマン、成宮金太郎の夏休みは終わっていく。



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