【藤沢君の合理的聖夜祭】


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 ◆藤沢君の合理的聖夜祭◆





 トナカイもいなけりゃ雪なんか降るはずも無い日本は東京の双葉区の一画。
 ただ寒さだけは海から吹き込んでくる風のおかげで冷たく、この季節が来る度に憂鬱な気持ちになる。
 小さなハロゲンヒーターがなければこの部屋はおそらく冷蔵庫のように冷え込むだろう。
 朝からテレビはクリスマス一色で、昼ごろになった今ではどこそこでイルミネーションだのどこそこでクリスマスフェアだのとカップル向けの情報を垂れ流している。
 昨日は全く散々な目にあったので朝からテレビを見てごまかそうと思ったのだが、どうにも逆効果のようだ。
 見てて何だか切なくなってきたので消そうと思ったその時、小さいテーブルの上に置いてあった生徒手帳型端末から電話の呼び出し音が鳴り響いた。
 出来ればほっといて冬休みを満喫しておきたかったんだが、呼び出し人の名前を見て出ない訳にはいかなくなった。
 寒川 玲子、俺と同じクラスの風紀委員であり、俺の第2の顔である町田 來栖と同じ風紀委員チームの一員だ。
 こいつから電話があるということは、十中八九俺に取っては勘弁被りたい話であるに違いない。
 かといって無視するわけにもいかず、渋々電話を取ることにした。
「もしもし」
「あ、藤沢君、お休みの所悪いんだけど、ちょっとお仕事がありますので、今すぐ中央区のアーケードに集まってもらえます?」
「仕事って、風紀委員か?」
「えぇまぁ、着替えはこっちで用意してますからそのまま来てくれて大丈夫ですよ」
「辻堂は来るのか?」
「もちろん、今回が私たちチームの初めての正式な仕事ですね」
「わかったよ、すぐ行く」
「アーケードの西口で待ってますね」
「あいよ、じゃあ切るぞ」
 そう言って電話を切ると軽くため息をつく。
 色々あって風紀委員に所属することになってしまった俺は、色々あって風紀委員の仕事をするときは女装をしなくてはならなくなった。
 仕事するなら別に男のままでもいいんじゃないかと何度か問い合わせてみたが、あくまでも藤沢來栖と町田來栖は別人物であるという話で色々進んでいるらしく、変更するのは難しいと言われてしまった。
 一度の女装がまさかこのような結果を生む事になるとはと死ぬほど後悔したものの、従わないとあの怖い風紀委員長二人に何をされるか分かったもんじゃない。
 長いものには巻かれろの精神で我慢するしか無いか。
 とりあえず出掛けられるように寝間着から着替え、洗濯物を取り込んで戸締まりをし、通学用の自転車に乗り込む。
 今日は晴れてはいるが風が冷たい、自転車で風を切るごとに耳が冷たくなっていくのを感じながら、待ち合わせ場所へと自転車を急がせていった。




「うーっす」
「おはよー藤沢」
「おはようございます藤沢君」
 自転車を近くの駐輪場で降りて待ち合わせ場所に向かうと、既に寒川と悪友かつ同じチームの辻堂 悠希の二人が待っていた。
 呼び出した寒川はともかく辻堂が俺より先に来るのは珍しい。
 いつもなら呼び出してから1時間は待たせるような時間にルーズなヤツなんだが、流石に風紀委員の仕事をするのに遅刻はまずいとこいつなりに感じたんだろうか。
「辻堂が俺より早いなんて珍しいな」
「一時間前に呼び出されてて今来たんだけどねー」
 やっぱり辻堂は辻堂だった。
「前々から時間にルーズそうでしたので、早めに連絡したのですが……」
「こいつは待ち合わせに来るんじゃなくて迎えに行かないと駄目なタイプだからな……」
「小悪魔系は男に迎えにこさせるもんだってこの前テレビで言ってたもんで」
「お前の場合は悪魔じゃなくて睡魔じゃねぇのか」
「座布団一枚!」
「やったー! とでも言うと思ったのかこのバカ!」
「……仕事の説明していいですか?」
 前を歩いている寒川が立ち止まってこちらを振り返る、冷たい視線が非常に痛い。
 ついいつものノリで会話してしまったがここが学校ではなく、お外のしかもクリスマスシーズンで無駄に人気の多いアーケードだということを失念していた。
 何だか妙齢のおばさんがたにクスクス笑われている気がするぞ。
「あ、あぁ、頼む」
「えぇっとですね、今回の仕事は要約するとアーケードの警備ですね」
「随分とまぁ……なんか風紀委員が出張る必要が無いような気もするが」
「毎年この時期って酒に酔った大学生の異能力者とか独り身で寂しい異能力者とかがたまーに暴れてるんだよね」
 確かにそういう噂を聞いたことはあるな。
 アベックに鉄槌を下して回ったりとかイルミネーションを一部だけ消してみたりだの、まぁ限定的とはいえ厄介なものにはかわりないだろう。
 一番凄い噂で覆面を被った男たちが集団でカップル達に嫌がらせをするとかそういう荒唐無稽のものだったが、それは流石に都市伝説だろう。
 そういうヤツに限って強力な異能力者だったりするし、そんな奴らがいたらニュースになる。
「えぇ、それで今回から私たち風紀委員が人気の多いところの警備を手伝うことになったんです」
「道理ではあるな」
「それでですね、アーケードに溶け込みつつ警備を行うに当たって、こちらの薬局に協力していただくことになりました、はいコレ」
 そう言って薬局の前で寒川が手渡してきた紙袋の中には、大量の百円引きのチケットが入ったポケットティッシュとサンタ1人にトナカイ2匹のコスチュームだった。
「これに着替えてティッシュ配りつつ、暴れた奴がいたら止めろって事か」
「そういう事ですね、ご好意でバイト代も出してもらえることになりましたから張り切っていきましょう!」
「おー、そりゃ太っ腹だね」
「それはいいんだが、サンタは誰がやるんだ? 結構丈短いぞコレ」
 とりあえずコスチュームを紙袋から取り出して広げてみるが、トナカイのコスチュームは全身を覆うダボっとしたものに対し、サンタのコスチュームはどこぞのキャンペーンガールかというレベルの露出度の高さであった。
 一応フォローのつもりなのかボアがついたロングブーツに耳あてがついたサンタの帽子がセットになっているが、正直これは寒い上にこんなおばさんおじさんお子様がいるような場所で着るようなものじゃないだろう。
「何を今更」
「サイズ的に私たちじゃちょっと……」
「寒川お前、俺にこの服着せたいがためにこの仕事受けたんじゃないだろうな」
「な、そんな訳ないじゃないですか! 何言ってるんですか!」
「お前は詰所でのあの発言があるからな……」
「あれは報告書に使おうと思っての発言だって説明したでしょう!」
「まぁまぁ、とりあえず着てみてダメだったら変えればいいじゃん」
「そ、そうですよ! あくまでもお仕事なんですから! 遊びじゃないんですよ!」
 必死に否定すると怪しさだけが増すというのを寒川は知らないんだろうか。
 だが、金銭が絡む以上確かに真面目にやらなければいけない気もする。
 特に俺の場合は風紀委員の仕事を真面目にこなさなければ町田來栖としての生活から解放されないのだ。
「やりゃあいいんだろやりゃあ、ったく……」
 このクソ寒いのにまさか公衆の面前に女装を披露することになるハメになるとはなと思いつつ、サンタのコスチュームを引っつかんで従業員用の男子トイレに向かう。
 この前はサイハイソックスで今度は白タイツにミニスカサンタだ、確実に俺は何か大事なものをひとつずつ粉々に叩き潰している気がする。
 長袖なのがせめてもの救いか、これ以上露出が多い衣装は流石に着たくない。
 そもそも女装自体したくないんだが、いつになったら俺の身長は180㎝をオーバーするのだろうか。
 しかしコレを我慢すればバイト代が出るわけだし、今日の晩飯を少し豪華に出来るかもしれない。
 何事も前向きに考えるべきだな、うん、そうでもないとやってられない。
「よし、頑張るか、俺……」
 とりあえず気合を入れてサンタ帽をかぶり、沈みそうな気持ちをなんとか鼓舞しながらトイレから出る。
 従業員の休憩室に入るとそこには子どもがパジャマにしているようなトナカイの服を着た辻堂と寒川がおり、頭の上にチープな作りのトナカイの角つきカチューシャを嵌めているところだった。
「似合う似合う、やっぱ藤沢にサイズぴったりだったね」
「納得いかないが、確かにお前らが入るサイズの服じゃないわな……俺でもちょっとキツい」
「そ、そうだ、せっかくだし三人で写真とりませんか!」
「……」
「……」
 寒川よ、やっぱりか、やっぱりお前実はバカで変態だったのか。
 薄々そうじゃないかとは思ってたんだが……お前はウチのクラスの中でも割と常識人の立場だと思っていたんだがなぁ。
「す、すいません、私たちのチームの初仕事の記念にと思って……」
「いやまぁ……気持ちは分かるよ寒川ちゃん」
 辻堂、お前もか。
「藤沢の弱みになるからね、コレ」
 もっと最悪だったコイツ! 寒川より直接的な分ヒデェ!
「もうソレはいいから、とりあえず仕事しようぜ仕事、今から何時までなんだ?」
「あ、えっと……17時までですね、その後は仕事を引継して解散です」
「じゃあもうちゃっちゃと決めちまおう、俺が中央、寒川が西口、辻堂が東口でいいな?」
「りょーかい」
「分かりました」
 とりあえずの場所決めと一時間ごとに連絡を取り合うこと、何か起きたら俺がまず駆けつけて、その後反対側のやつを呼ぶことだけ決めてそれぞれの場所に解散し、仕事を始めることにした。




 とりあえず渡されたティッシュは3人で分けても明らかに一日で配り切れない量がある上にまだ他の企画で使った際の在庫があるらしいが、そもそもこのシーズンに薬屋に来る奴の内の何人にこのチケットの需要があるのだろうか。
 しかしながら配らなければ山ほどあるティッシュどもは無くならない、とりあえず暇そうな男にでも押し付ければ問題ないだろう。
 やる気があるようで無いようなできるだけ媚を売った声を出さないと男だとバレるかもしれないな、そうなると面倒だし少し意識して声色を変えてみるか。
「ティッシュどうぞー♪」
 やべぇ俺凄い今キモい声出した、自分で出した声に自分で鳥肌立ててどうするんだ。
 しかしそんな俺の思いと裏腹に、何故か少し照れたような笑いを浮かべてその男はティッシュを受け取ると薬屋に消えていった。
 なんだったんだ一体……とか思っていると何人かの似たような男どもが俺の前に一例に並んでいる。
 なんだ、双葉区からトイレットペーパーでも無くなったのか? オイルショックが再来したのか?
「テイッシュ……欲しいんですか?」
 恐る恐る、できるだけ刺激しないように声を小さくして聞いてみると、まるで示し合わせたかのように男どもが声をあわせて叫びだした。
「ギブミーティッシュ!」
「ギブミーティッシュ!」
「ギブミーティッシュ!」
「ギブミーティッシュ!」
「ギブミーティッシュ!」
「ギブミーティッシュ!」
「ギブミーティッシュ!」
 ムサい男たちが声を揃って飢えた小鳥のようにティッシュをくれとの大合唱。
 周囲の奥様やお店の店員の注目を集めまくって凄い怖い、俺だって怖いんだからせめて遠巻きにこっちを見つめるのはやめて下さいお願いします。
 いい歳した大人が目を輝かせてこっちを見つめているのは何なんだ、お前ら何がしたいんだ。
 何だコレ、俺のせいか? それとも何かしら人間の精神に感応するラルヴァの仕業なのか?
 とにかく場を一旦収めるためにもティッシュをあるだけ配っておいた方が良さそうだ。
 列の一番最初にいる男に向かって恐る恐るティッシュを差し出す。
「は、はいどうぞ」
「サンキューベリーマッチ!」
「ギブミーティッシュ!」
「はいどうぞ」
「サンキューベリーマッチ!」
「ギブミーティッシュ!」
「ありがとう! ありがとう!」
「ギブミーティッシュ!」
「はいどうぞ」
「ううう! 故郷の母さん! 俺ついにやったよ!」
「ギブミーティッシュ!」
「はいどうぞ」
「おおおおお! サンタは本当に存在したんだぁっ!」
 落ち着くかと思ったが逆効果だ、こいつら……ティッシュ一つでここまでとは本当にモテない人生を送ってきたんだな。
 何だか哀れみの感情すら沸いてきたな、俺もモテるというわけじゃないがこいつらを見ると何だが応援したい気持ちになってくる。
 しかし俺が女装だと知ったらどうなるんだろう、俺殺されるかもしれないなぁ……
 とはいうものの人目についてるのはマズい、警備の仕事もあるんだから、ここまで人に囲まれてると警備どころじゃない。
「ギブミーティッシュ!」
 あぁもう考え事する暇すらないな、なんだか周りの店も便乗して店先にセール品並べ出し始めたぞ。
 店長もいつの間にか俺の背後にガンガンティッシュ並べ始めてるし、一体これはどういう悪夢なんだ。
 しかしながらここで止めるとマジで暴動に発展しかねん、警備が目的で来たのに喧嘩を起こすようなマネは出来まい、とにかく何も考えずに配ってしまおう。
「はいどうぞ」
「ありがとうございます! あ、あの! 良かったら握手してください!」
「貴様ッ! 抜け駆けするか!」
「卑怯者! 恥を知れ!」
 配っている最中に一人の男が握手を求め、それに対して後ろに並んでいる男達が非難を浴びせる。
 中には明らかに能力を発動させているものまでおり、まさに一触即発の事態だ。
 もしかしてとは思うがこいつらクリスマスに暴れに来た鬱憤を俺で晴らしてるのか?
「ま、待ってください! 喧嘩は駄目です! 握手なら皆さんにしますから落ち着いて!」
 おい店長貴様何を叫んでるんだ!?
 そんなことをしたら勢い余ってマジで暴動が――
「流石サンタさんだ!」
「俺たちの願いを叶えに来てくれたんだ!」
「サンタっているんだ! 嘘じゃなかったんだ!」
「サンタ最高!」
「サンタ万歳!」
「クリスマス最高ー!」
「クリスマス万歳!」
 ならなかった、いや、ある意味ではなってるのか。
 誰か助けてくれ、いや助けてください、サンタさんでもいいですから助けて!
 俺がそんなことを思いながらティッシュを配りつつ握手を繰り返していると、後ろから声をかけられた。
「うわー、すごいことになってるね」
「誰かアイドルでも来たのかと思ったんですけど、まさか藤沢君だとは」
 辻堂に寒川! そうか、異常を感知して助けに来てくれたんだな!
 いざという時に頼りになるのはまさに友達ということか! これがチームワークなんだな!
「じゃあ私は列整備の手伝いしますね」
「私はお店が大変そうだからそっちにー」
「待って! 助けに来たんじゃないのか!?」
「いやぁだって……正直、目をつけてた人全員がココにいるからさぁ」
「ここで満足して帰ってもらえるならそれが一番でしょう? 頑張ってくださいね!」
 それだけ言い残して寒川と辻堂の二人は列整備と店の手伝いに消えていってしまった。
 あの薄情者共め、いつか天罰が下るぞ! むしろ俺が下す!
 畜生、畜生、何でこんな目に合わなくちゃ……俺が何したっていうんだ……
 俺は絶対クリスチャンにはなれそうにない。
 そんな事を思いながら、せめてバイト代が大量に入ることを祈りつつ、握手を求める男たちに向き直ると、地獄のようなティッシュ配りを再回した。


「ギブミーティッシュ!」
「はいどうぞ」
「握手お願いします!」
「頑張ってくださいね」
 心を殺し、顔面に笑顔を貼付けた機械のような流れ作業で男たちを捌くことに徹すること数時間。
「今の人で最後ですね」
「終わったか……終わってくれたか……」
「ティッシュも無くなっちゃったしお店の商品ももうほとんだカラッポだってさ」
 時刻はもう17時を過ぎておリ、いつの間にか引継ぎの時間を過ぎてしまっていたようだ。
 俺は握手とティッシュだけ配っていたが、既に他の風紀委員がその辺に立っているらしい。
 そんな事にも気づかないほど忙しく、精神力と体力を消耗してしまった。
「そうか……もうどうでもいい……早く帰りたい」
「かなりダメージ受けてるね」
「ずっとニコニコしながら握手してティッシュ配りですからね……」
「お前ら……本当に後で覚えておけよ、絶対に許さないからな」
「まぁまぁ、今日の残りは藤沢に付き合ってあげるからさぁ」
「なっ、なっ、わ、私も一緒に付き合ってあげますよ! 辻堂さん1人じゃ大変でしょうし」
「いやーありがとうありがとう、大量に余ったティッシュをまさか全部配ってくれるとはね! お給料サービスしといたから!」
 俺がそのまま休憩室に戻って突っ伏していると、満面の笑顔の薬局の店長が茶封筒を3つ持って入ってきた。
 このためだけに頑張ってきたようなものだが、今は受け取る元気すらない。
「あ、ありがとうございます!」
「そのトナカイとサンタさんの衣装はよかったらあげるよ、いらなかったら捨ててくれてもいいや」
「じゃあ私たちはこれで……藤沢、立てる?」
「無理……」
「とりあえず運びださないと……ここからだと私の部屋が一……」
 辻堂と寒川が何か話しあっているのを聞きながら、溜まりに溜まった疲労に身を任せて瞼を閉じる。
 今年のクリスマスは最悪だった……それだけを思い、恨みながら俺の意識は泥の中に沈んでいった。



「起きれー藤沢」
「んぉ……もうマーボーカレーは飽きたぞ」
「何言ってるんですか?」
「いや……夢か、いくら好きだからって毎日3食マーボーカレーは酷いよな」
「夢の話をされても困ります」
「ていうかここはどこだ?随分とファンシーな部屋だが」
 俺が目を覚ました場所は、小物やぬいぐるみやらがあふれるこぢんまりとした部屋だった。
 広さ的には6畳だろうか、俺のアパートと同じくらいの大きさだ。
 全体的にかわいらしさを重点においた家具が機能的に置かれておリ、テレビすらちょっとしたファンシーさを醸し出している。
 中央にはフライドチキンやポテトチップスに炭酸飲料のペットボトル、それに小さなサンタが乗ったホールケーキが置かれたこたつがあった。
「私の部屋です、あの後何やっても起きなかったんで背負って連れてきちゃいました」
「寒川の部屋か……って、お前って確か……」
「えぇ、女子寮です、大丈夫ですよ! 誰にも怪しまれませんでした」
「いや、そこはむしろ問題にしないといけない所だってお前気づいてるか?」
 ていうか誰か怪しめよ! 気絶した人間を部屋に運び込むって相当おかしいぞ。
 本当にこの学校大丈夫なんだろうか。
「まぁまぁ、固いことはいいからさ、クリスマスなんだしぱぁーっと騒ごうよ! チキン美味しいよ?」
「いや……でもほら、女子の部屋に男子を連れ込むのって倫理的に……」
「大丈夫です、藤沢君の場合逆はあってもそっちからはまずないですから」
「……」
「……」
「冗談です」
 こいつとの付き合い方と距離を少し考えた方がいいかもしれないな。
「まぁ腹は減ったしな……とりあえず飯だけ食ったら帰るか」
「そーそー、疲れたときは食う! ほらあ~んして、食べさせてあげるから」
「そこまでガキじゃねぇ!」
「じゃ、じゃあ私にあ~んしてください!」
「てめぇは黙ってろこのド変態!」
 結局、飯を食った後にそのままトランプしたりテレビを見て寛いだ挙句に風呂まで借り、一晩女子の部屋で外泊することになるとはこのときは思いもせず。
 この3人でこれから上手くやっていけるかどうかだけを考えながら、目の前の飯をひたすらにうまいうまいと貪っていた。





 藤沢君の合理的聖夜祭  完




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